煙の向こうに揺れる言葉

らぽしな

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エピソード3-1

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御幸の事務所の帰り道。

一瞬、ズキンっと頭というか、心というかなにかに触ったきがした。
不安に思ったけど、すぐに忘れた。

そんなことよりも、近所の奥さんに声を掛けられてハッとして慌てて時間を確認した。

なんでこんな大切なことを忘れていたのだろう。
汐音しおんのお迎えの時間が迫っている。

今日、いろいろと予定を組んだのは今のところ一人っ子の我が子が幼稚園のお泊り会のため不在で、朝から割と自由に行動できるからだった。

急いで幼稚園へと向かう。
お迎えラッシュで保護者がごった返している中を、適当に挨拶しながらかき分け、汐音の教室へとたどり着く。

園児服の子どもたちは、同じ形の帽子を被って保育士さんに手伝ってもらわれながら、競い合って靴を履いている。
この頃の子どもたちはまだまだ背丈もあまり変わらないので、キョロキョロと探してしまう。
すると急に後ろから抱きつかれた。

いたずらを最近覚えた汐音。
千草より先に見つけ、最近一人で履くことにこだわっているので保育士の手も借りず自分で履いて、そっと遠回りして近づいてきたのだ。

千草もお返しに思い切り抱きしめた。

たった一晩会えなかっただけなのに、ものすごく寂しかった…気がするのに、成長というのは早いようで、子どもながらに土日会えないと知っているからか、友達に対して
「またね。」
と手をふるのが忙しく、園をあとにするのに割と時間がかかった。

帰り道、よく行く街のスーパーへと立ち寄る。
いつもなら子どもが押せるカートを選ぶのに、どうしても話たいことがあるらしく、乗って対面になるカートを選んで来た。

「何食べたい?」
そう聞くと、「お肉」と答えた。

この返しはなぜか夫と同じだ。いや、きっと夫がそう言うのを聞いて真似しているだけなのかもしれない。
レシピ名じゃなく、「肉」「魚」あとは、「鍋」。

ジャンルで言われても、結局何を作るか考えることになる。
でも不思議と汐音に言われても不思議と嫌じゃない。夫に言われると何となくイラッと来るのはなんでなのだろうか。

夫に対しても、結婚前の甘い時期ならそれでも良かった。
でも夫婦になり、毎日のことだから多少はリクエストを上げてくれてもいいのにと考えてしまう。
まあ最近、買い物にも付いて来ることはなくなったけれど。

そんなことをよそに、汐音は一晩の楽しい思い出を一生懸命語ってくれている。
子どもって何をしてても可愛いと思うのだが、最近じゃそう思えない人も増えているのか悲しいニュースも多い。
まあ、そんなことを考えてもキリがない。

それよりも、今日はこの子のためにお肉を使った料理を考えなければならない。

結婚を機に、この辺に越してきて嬉しいことの一つは、この商店街がわりと近いということ。
スーパーが小さいこともあり、あまり惣菜類が充実していない分、スーパーもあるこの商店街は惣菜系が割と多いので、メニューが決まらないときや時間的に何品も作る余裕がないときに本当に重宝している。

特に夫がいない日が続くときは、たまに手抜きもできる。
コンビニよりも、温かみがある気がして気に入っている店も多い。

最近じゃ、美味しすぎて特に体調に左右されそうな日はありがたく思ってよく利用する。
そうなると、電子マネーやカード決済をしていない店もやはり多い。
若い店主の店はともかく、そうじゃないところもまだまだ多いのだ。

逆に言うと、未だに昔ながらのスタンプカードなんかをしている店もある。
だから、使う側も抜け出せなくなるのだ。

汐音の話をウンウンと聞きつつ、メインしか決められなかったので、そんな商店街のお気に入りの店に立ち寄りつつ、買い物の締めくくりにパン屋に寄った。

今日はいくつかあるパン屋のなかから、食パンだけ扱う店を選んだ。
汐音がオーブントースターで焼いたパンに自分で味付けするのを覚えたからだった。

夫はごはん派だから、このへんは千草と気が合う。
一人暮らしではなかなかご飯を炊かない。手間ということもあるけれど、レンチンのご飯パックのほうが手軽で保管もらくだからだ。
まあ、それは結婚してからは夕ご飯時に多めに炊いて、一部冷凍という形に変わったけど。

そういえば、今日は一日中体が重い気がした。なんとなく、足とかむくんでいる気もする。
(知らない街を歩いたし、余計な気をはったからかも…)
ただ不思議と汐音と一緒にいるとそのことだけは忘れられるようで、引っ張られるように歩くのが苦じゃない。





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