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エピソード2ー3
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お金に関しての考え方にも違いがあるのも大きい。
夫はどちらかというと、スマホを使った決済やカード決済を主にしていて、現金はあまり使わないらしい。
一方、千草は交通系と一部のICカード系以外だと現金を主に使う。
そもそも、その系統が得意じゃない。クレカ系に関して言えば自分の施設を出た先輩たちが、制限された生活から一変したときにこぞってクレカの罠にハマり、支払いに苦しんでいるのを伝え聞いてから、自分が社会人になってからもなるべく使わないようにしてきた。
そんな事情を付き合っているときに聞いてくれてた。
だから、結婚したからと言って夫のお金を管理するのを断った。
その代わりに、スマホでも決済できるように手配し、クレカも用意したり、手渡しで現金も10万円渡されている。
「足りなくなったら、気軽に言ってね。」
だが、そんな言葉も千草には少々ハードルが高い。
本来なら何不自由せずに買い物ができる環境なのだが、やり慣れていないことを簡単にテキパキとできるほど、新しいことが苦手なのだ。
欲しい物で急がないものは、夫がネットで購入してくれると言ってはくれるのだが、忙しい時期には何かと頼みにくく、つい自分で預かっている現金等で決済してしまう。
ネットスーパーも最初の頃何回か試してみたが、近くの商店街の小さな町スーパーで自分で見て買うほうが良いものも多い。
そしてそこは、最近ようやく一部のQR決済を初めたのだが使い方がよくわからない自分と、同じく使い方をまだまだ把握していない店員さんとのやり取りで他のお客さんを待たせてしまってからは、ずっと現金払いだ。
そうなると、支払いが現金に偏りだし心配になった夫がおそらく義家族に相談するのだろう。
せっかくの貴重な休みを費やして、優しい義妹が千草の様子を見に来るのだ。
千草には家族が居ないので、はじめの頃はとても仲のいい家族に見えて羨ましかったが、なんとなくそのせいで最近は自分だけ家族じゃないような気がしてならない。
千草のことを大事にはしてくれる。とは心から思う。
ただ、長い間一人で生きてきたからどこまで自分に向けて本気で大事にしてくれているのか、尺度がわからない。
間違いなく気は使われている。特に最近は何かに付けそう思う。
義母は何かあった時用に、うちのマンションの鍵を持っている。
そして時々連絡もなくやってきては冷蔵庫になにかが置いてあったり、洗濯物が取り込まれていたりすることもある。
一緒に出かける度に、不慣れなそういう諸々の使い方を夫じゃなく義妹が教えてくれるのだ。
千草のためにとやってくれることには感謝するが、何もできない人だと思われているようで千草は肩身が狭い思いを積み重ねているのも事実なのだ。
甘えることなんて、知らないから。
少しずつ蓄積された千草の窮屈さがそういった方向へと行動させるには十分だった。
夫はどちらかというと、スマホを使った決済やカード決済を主にしていて、現金はあまり使わないらしい。
一方、千草は交通系と一部のICカード系以外だと現金を主に使う。
そもそも、その系統が得意じゃない。クレカ系に関して言えば自分の施設を出た先輩たちが、制限された生活から一変したときにこぞってクレカの罠にハマり、支払いに苦しんでいるのを伝え聞いてから、自分が社会人になってからもなるべく使わないようにしてきた。
そんな事情を付き合っているときに聞いてくれてた。
だから、結婚したからと言って夫のお金を管理するのを断った。
その代わりに、スマホでも決済できるように手配し、クレカも用意したり、手渡しで現金も10万円渡されている。
「足りなくなったら、気軽に言ってね。」
だが、そんな言葉も千草には少々ハードルが高い。
本来なら何不自由せずに買い物ができる環境なのだが、やり慣れていないことを簡単にテキパキとできるほど、新しいことが苦手なのだ。
欲しい物で急がないものは、夫がネットで購入してくれると言ってはくれるのだが、忙しい時期には何かと頼みにくく、つい自分で預かっている現金等で決済してしまう。
ネットスーパーも最初の頃何回か試してみたが、近くの商店街の小さな町スーパーで自分で見て買うほうが良いものも多い。
そしてそこは、最近ようやく一部のQR決済を初めたのだが使い方がよくわからない自分と、同じく使い方をまだまだ把握していない店員さんとのやり取りで他のお客さんを待たせてしまってからは、ずっと現金払いだ。
そうなると、支払いが現金に偏りだし心配になった夫がおそらく義家族に相談するのだろう。
せっかくの貴重な休みを費やして、優しい義妹が千草の様子を見に来るのだ。
千草には家族が居ないので、はじめの頃はとても仲のいい家族に見えて羨ましかったが、なんとなくそのせいで最近は自分だけ家族じゃないような気がしてならない。
千草のことを大事にはしてくれる。とは心から思う。
ただ、長い間一人で生きてきたからどこまで自分に向けて本気で大事にしてくれているのか、尺度がわからない。
間違いなく気は使われている。特に最近は何かに付けそう思う。
義母は何かあった時用に、うちのマンションの鍵を持っている。
そして時々連絡もなくやってきては冷蔵庫になにかが置いてあったり、洗濯物が取り込まれていたりすることもある。
一緒に出かける度に、不慣れなそういう諸々の使い方を夫じゃなく義妹が教えてくれるのだ。
千草のためにとやってくれることには感謝するが、何もできない人だと思われているようで千草は肩身が狭い思いを積み重ねているのも事実なのだ。
甘えることなんて、知らないから。
少しずつ蓄積された千草の窮屈さがそういった方向へと行動させるには十分だった。
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