煙の向こうに揺れる言葉

らぽしな

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エピソード4-1

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さて、妻が知らないところで思い悩んでいるなんて知らずに、匡尋は天国から地獄へと間もなく落とされるところである。

手に残る感触。最近少しご無沙汰な感触。
妻よりも大きかったな、とかぼんやり考えていた。

そうなると、恐らく仕事場じゃ出さないようなゆるい顔だったのではないかと想像する。
そんな顔で、カフェのテラス席を通り過ぎそうというタイミングで、スマホが振動した。

メッセージが届いていた。後輩の高橋裕二からだった。

「佐々木チーフ、後ろ見てください。」
という一文。

?!
どういうことだ?
そう思いながら、振り向くと今通り過ぎたカフェのテラス席にスーツ姿の男性がこっちを向いて、小さく手を降っていた。

匡尋は一瞬でいろんなことを悟った。
あの、天国のような出来事は、カフェの2~30mほどのところ。

どうやらあの天国のような瞬間を見られてしまったようだ。
高橋は手をふるのをやめない。
無視して行こうかとも思ったが、まだ時間に余裕が少しあるので渋々戻った。


外に数席、こんな少し暖かい日には最適の席を設けているカフェは匡尋の会社の同僚からも人気の高い店だ。
味と値段のちょうど良さで社長をはじめ重役も参加する会議とかに、ここのデリバリーを頼むこともある。
だから、誰かしらいても不思議じゃない。
幸で言えば、見知った顔は高橋だけだった。

だからこそ、なぜ高橋だったのだろう。
気分だけは、天国から地獄だ。

高橋は軽食ランチのつもりで立ち寄ったようで、たまたま空いていたテラス席に荷物を置いた瞬間にさっきの光景が目に飛び込んできたらしい。

最初は匡尋だとは思わなかったらしいが、放心している近づいててきて初めて僕だと分かったので、慌ててメッセージを送ったらしい。

「見てたのかよ。」
「はい、見ちゃいました。」
悪びれることもなく、ニヤニヤしてみてくる。

気恥ずかしい。
「いやあ、あんな事って、あるんですね。」
「部署の連中には言うなよ。」
匡尋は窘めたが、「はーい」との合意の言葉がどことなく軽い。

自分のテイクアウト用のコーヒーのついでに…一応、口止め料代わりに、一番高いサンドイッチも追加で買って与えた。
これなら、会社でちょっと食べられるだろう。
数百円で買収できるなら安上がりだ。

だがそれでも気が気じゃない。高橋はそこでまだ休もうとしていたが、匡尋が戻るというので慌てて自分のモノをテイクアウトにしてもらい一緒についてきた。





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