煙の向こうに揺れる言葉

らぽしな

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エピソード4ー5

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まあ、それでも高橋も大人だから先んじて地雷を踏みにくることもなく、森さんも覚えることもたくさんあり数日はすぐに過ぎていく。

だが、そのせいで一番思い出したくない絶妙なタイミングで思い出すことになる。

新入社員も仕事に慣れ、予定されていた中途入社の人も全員入社が済み、歓迎会も兼ねたレクレーションの日程が近づいてきていた。
親睦会を兼ねて、バーベキューを行うのが恒例行事となっていた。

それまで2週間もあったのに、高橋に任せたこともあり忙しく顔を合わせるタイミングが減り、直接話すとすれば朝と帰りの挨拶ぐらいだけだし。まあ、しょうがない。

そして、その地雷が爆発する舞台が着々と整ってきている。気づいていないけれど。

さて、そのイベント。
参加者名を記載して提出しなければならない。

近くの駅までは自分でいかなければならないが、その駅から現地までバスを会社が用意する関係でリスト化しなければならないからだ。保険とかの兼ね合いがあるらしい。

そこには、既婚者は家族も一緒に、よほどの事がない限り参加しなければならない。もちろん独身者も兄弟や恋人を連れてきても良いことになっているので、わりと大人数の集まりになる。

締切日が近づき、自チームの集計を頼んでいた女性が人数の再確認をしていた。
「佐々木さん、バスの席2名って書いてますけど、3じゃなかったでしたっけ?」
「え?」
と、言われて一瞬ぽかんとしてしまった。

「あれ、佐々木さんお子さん居ませんでしたっけ?」
「え…あ、そうそう。子ども…。うん、そうだった。」
あれ、なんで忘れてたんだろう。子ども…。
あ、小さいから妻の席で一緒にとか思ったのかも。

「3人にしておきますね。たしか幼稚園でしたよね…。」
何か他に言っていたが、適当に返事をした。

(疲れているのかな…、忘れてるなんて。)

去年、去年はどうしてたっけ?

仕事中も帰路もぽやっとそれが頭の何処かに引っかかっていた。
電車に揺られ、晩飯を食い、一服する。

ああそうか、去年は…参加しなかったきがする。

たしか幼稚園で流行の、なんて言ったっけ、エアロ?アエロ?じゃなかったな・・・たしか、何とかウイルスとかいう、風邪のような病気のせいでうつるからとか言って、参加を遠慮させてもらった気がする。

あ、そうか。
他の家族の小さいお子さんも参加するから万が一移したら悪いからって、参加しなかったんだ。
そうだった、そうだった…。

(こういうところ、母さんに叱られるんだよな。)
夫も父親も失格だと。そんなことを妻には悟られたくないからと匡尋は、「定位置」と密かに妻が命名したベランダでタバコを吸いながら思う。

大人になると、前の日の晩ごはんすら忘れてしまうなんて、年寄だけじゃないのか…と思っていたが、そうでもないらしい。

(疲れているんだな、きっと。)
そう思うことにした。



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