煙の向こうに揺れる言葉

らぽしな

文字の大きさ
20 / 64

エピソード5ー4

しおりを挟む
千草が慌てて準備をしようとすると、
「千草さんは、大変なんだから休んでて。」
義妹が用意をしようと立ち上がる。

その日はほとんど何もしてないから大変でもないのだが、なんだかんだと義母と義妹二人が揃うとあまり何もさせてもらえないのがパターンだ。

「いえ、私が…。」
「いいんだよ、やらせておけば。」
 そう言いながら癖でタバコを取り出し口にくわえたところで、義母に止められていつもの定位置へと向かう。
外回りでは、食事中に吸うのかもしれない。義家族がいないときはそういう失敗をすることはないのに。

どうもこういう気遣いが慣れない。

ふと見ると誰が出したのか、テーブルの上にタブレットが置いてあった。
ロックが解除され、何か写真が映し出されていた。
よく見ると、どこかの店での集合写真のようだった。

それに気づいた義母が、
「先日の大学時代の人との飲み会のときの写真だそうよ。」
と教えてくれた。

夫は真ん中よりに座っていた。
千草は自分が映り込む場合との立ち位置の違いを単純に羨んだ。

いつもだいたい自分は端の方に納まる事が多い。
この人は税理士で、この人は事業を立ち上げたらしいなどと教えてくれた。
面子に歯科医や医者もいるらしいので、ゼミ仲間じゃなくサークル仲間なのかもしれない。

その医者の一人は、学生時代にたまに義実家に遊びに来ていたくらい仲の良い友人らしい。
「あー、そいつは心療内科医だよ。でも、そう呼ぶなっていう変わり者。」
夫がいつのまにか定位置から戻ってきて話に乗っかってきた。心療内科医だが堅苦しいからカウンセラーと呼べというとこの飲み会で言われたとかなんとか。

「あらいい先生じゃない。千草さん、匡尋の悪口言いたくなったらここに言いに行くと良いかもしれないわよ。」
と言って笑っていた。

そんなことでなんだかんだと盛り上がっていたが、千草はそのことで頭がいっぱい人なった。他に写っているひとの話がされていたようだったが、頭に入ってこなかった。

そっか、カウンセラーか。

理由を自分の事から夫への愚痴と転換するだけで、敷居が高く感じていたカウンセラーへの相談に行ってみようという気になるのが不思議だったが、急に興味が湧いてきた。

それがあの場所へ行った数日前の出来事。

そして、その夫の友人であるカウンセラーがほんの少し話を聞いてくれてなぜか紹介してアポまで取ってくれた人が、何でも屋という職業をしているという「御幸 来夢」というあのビルの一室の主だったのだ。

だから胡散臭い職業の人の元へ向かおうと思ったし、心も折れずちょっと古めかしいビルの中まで入ることができたのだった。

実は千草が見たその写真に御幸も一緒に写っていたなんて夢にも思っていなかった。

会場近くのバスで回収してもらえる最寄り駅のアナウンスが流れ、千草は現実に引き戻される。
運良く快速に乗り換えられたのもあり、30分くらいの電車旅だったがこの快速は帰り時間には運行していないので各駅停車にのることになる。

30分くらいなら起きていられるが、それを超すとちょっと自信がない。
多分、夫は付き合いでお酒を飲むだろうし、汐音は場合によっては眠ってしまうかもしれない。
(帰る時は、念の為アラームつけておかないと乗り過ごしそう…。)
と、気が早いが心配になった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

Husband's secret (夫の秘密)

設楽理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...