煙の向こうに揺れる言葉

らぽしな

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エピソード5-5

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移動中、途中からちょっと飽きていた汐音も、バスから降り会場に着くとそんな気配も吹き飛んでソワソワしだした。

移動のバスの中にもいたが、ちらほらと同年代の子供達が見えるからだろう。とりあえず、早起きした眠気はどこかに消えたようだ。
着くと夫に気がついた人が挨拶してきたりり、逆に夫から挨拶したりと忙しい。
そこかしこで、同じような家族紹介や挨拶が聞こえている。

そんな通過儀礼をなんとか通り越して夫が少し大きめなテントまで案内してくれた。
きょうは汐音は夫にベッタリで、今も手を繋いで一緒に歩いている。
見ていると、知らないところへ来た緊張半分、なんだか楽しそうな雰囲気にワクワクしているのが半分といったところだろうか。

夫はと言うと、実はこの数日なんだか時折元気がなく見えた。
千草と顔を合わせると無理やり笑っているような変な顔で笑う。
てるてる坊主を見て喜んでいたのが遠い昔のように感じるほど。

珍しく義家族が来なかったくらいしか、今週はいつもと違うことはなかったはずなのに、ちょっと浮かない顔をしていたような気がする。

それもあってなのか、なんだか汐音の世話も率先しているようにも見える。
まあ、考えても仕方がない。
そんなことより、久しぶりの大人数の場所でだんだん緊張してきた。

大人数だとしても電車の中や店や病院なんかは、全く知らない人だらけで構えなくていいから特に気にならないが今日は違う。
自分にとっては知らない相手でも、ほとんど夫の職場の関係者で向こうもそういう態度でよってくる。
普段から会っている相手をするわけじゃないから、どこまで相手をすればいいのかイマイチ線引が難しい。

そんなことを考えているうちに、目的のテントについたらしい。
個人向けのテントじゃなく、よく学校とかの運動会で設置されるような白い大きなテントで、受付と書いてある。
一応、ここで参加者の出欠と小さい子どもとペットを一時的に預ける場所として機能しているようだ。

事前に説明の用紙が各家庭用に配られていたので、このテントの件も知っていたものの、あまり馴染みのない所で人見知りして利用することはないだろうと覚悟していたのにもかかわらず、ここで遊んでいたどなたかのペットの小さな犬に心を掴まれてしまったらしく、ここで遊ぶと言い出した。

実は千草は、少し動物が苦手だ。
施設ではもちろん犬なんて飼えない。近所に地域猫がいてその猫をみんなで撫でたりすることはあったが、敷地内にいれることは禁じられていたから、小さい頃は泣く泣くみんなで追い出していたくらいだ。

犬は噛まれたりしたことはなかったが、近くで大きな犬を飼う人が多く、よく犬同士が吠え合っているのを見て子どもの頃は怖くて仕方がなかった。

そういうのもあって、できれば犬を預かっている時間にはここで遊びたいと言っても泣かれても連れ出すしかないと構えていたのに思わぬ所から救世主が現れた。

そのあたりをすんなりと有志の方々がクリアしてくれたのだ。
犬はその受付の人の犬なので、心配ならゲージに入れておくし保育士の資格がある人が数人ここで待機しているので、せっかくだから少しの時間二人で楽しんでくれば良いと言ってくれたのだ。

見ると、普段触れ合えない、飼い主に従順な犬に対して汐音や他にも数人いる子どもたちは夢中になっていて、山積みのおもちゃにもお菓子にも気づいていないようだ。

そしてどうやら、その受付の人は夫の上司の奥様とからしく夫も無碍むげに断れるはずもなく、あれよあれよの間に二人は気まずさを抱えたまま、テントの外へと追い出されたのだった。






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