煙の向こうに揺れる言葉

らぽしな

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エピソード6ー3

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そういえば、父はどうだったのだろうか。

小さい頃からあまり家にいなかった気がする。
一応、ご飯・お風呂・夏休みのイベント・父兄参観…どのシーンも一応はあるけれどそれだってきっと数えるくらいで母と妹と三人での思い出が多い気がする。

あ、叱られたことは沢山思い出せる。役割だったのだろうが子供からすればそんなものだろう。
仕事が忙しいとそんなもんだよ。言い訳だけが湧いてくる。
男同士の関係ってそんなものなのかもしれない。だからか、今も時折父との間に見えない溝があるように思う。

そして手のかからない僕らは、父がいなくてもなんとかなっていたし、母も当てにしなくなってくると働くだけの人になっていた。
まあ、もちろん要所要所では父は父でいたけれど。

だからなのか出張とかは、それぞれが喜んでたきがする。
夫婦仲が悪いわけじゃないけれど、仕事人間で海外に行くのも苦にならない。母と妹は自分の好きなことを自由にできる環境、僕はその半々という感じ。

そんな家族だから、自分が親になるなんて想像できなかったように思う。

そんなことを考えながら、いつの間にか日々が過ぎていた。
会社のみんなの手前仲睦ましく過ごさなければならない。
なーに、取り繕ってさもありなんとしたものはお手の物だ。
取引先に気に入られるようにずっと、そうずっと相手の顔色を伺いながらやってきたのだから。

たった半日だ、何とかなる!と、匡尋は自分にそう言い聞かした。

思っている以上に、汐音が楽しみにしていて帰ったらてるてる坊主がカーテンレールのところにぶら下げられていた。汐音のデザインで、色使いが楽しい。

思い切り褒めてあげるとものすごく喜んでくれていた。
その姿を見て、妻も嬉しそうだった。

そのせいか珍しく汐音が一緒に風呂に入ると言い出した。
先日のお泊り保育でいろいろと見聞を広めたからなのかもしれない。
最近増えてよくわからなかった、汐音のお気に入りのお風呂グッズの使い方を教わった。

懐かしのシャンプー用の水よけはまだ卒業できないようだが、器用に自分でシャワーを浴びている。邪魔にならないように自分も体を洗い一緒に湯船に浸かると自分でカウントを始めた。きっと妻と一緒に入ると同じ様にするのだろう。

20まで間違えずに数えていたことにも感心した。
少しは親ばかの仲間入りができただろうか。脱衣所には汐音の着替えがすでに用意されていた。
自分で体も拭けるが、やっぱり拭き方が甘いので少し手伝うと、今度は一人で用意されたものを着る。子どもって本当に成長が早い。

最近は自分で何でもできるようだ。
そのせいか少し、歯磨きチェックくらいしか出番がない妻が寂しそうに見える。ただここで普通なら優しい言葉でもかけていい雰囲気にとなるのだろうが、匡尋はBBQの件でそこまで思考がまわっていなかった。

(汐音だけでも、行きたいって思ってくれてて良かった。)

今日もいつもの定位置でタバコをふかしながら。久しぶりに父親らしいことができたと嬉しく思っていた。
相変わらず妻の気も知らずに。


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