煙の向こうに揺れる言葉

らぽしな

文字の大きさ
25 / 64

エピソード6ー4

しおりを挟む
実のところ母と妹の影響で、活発過ぎる女性を少々苦手に思っていた。学士時代に似たような女性と付き合ったが、トラウマなのか長続きしなかった。

だから、千草を初めて見てその雰囲気や佇まいをみて心を奪われたのは本当に運命だと思った。
他の受付の人は、謙虚の中にも隠しきれない何かを醸し出していて、苦手だったのに妻は最初から視線も少し外し自分を押し殺していた。
そういうところに好感をもつと、受付対応をされる度に心を奪われていった。

就職して、父の勤め先が取引先だと分かった時はこの会社に来るのが億劫だったのに、この出会いのためだと思うとなんだか嬉しくなったのを覚えている。

父も、結婚をするときになって
「匡尋がもし結婚するなら、「こんな子がいいな。」と思っていたから、お前から言ってきたんでびっくりした。」
と言われた。

だから、場を作ってほしいという申し出にも快く引き受けたらしい。
そういうわけで、僕自身も家族も妻のことを本当に大事にしている。

だから、子どもができたと報告した日。母だけじゃなく父も何故か泣いた。
その姿を見て、僕ら夫婦と妹のほうがとても冷静にいた気がする。
なんだか、つい先日のことのようだ。
子はかすがい、というがずっと距離があった両親が急に元に戻ったようで何かと時間をあわせられるときに何を送ろうか画策してるらしい。

だから、汐音の部屋はおもちゃ箱のように生まれる前から物が占領していた。
その立ち位置から、父は僕のことをどう思っているのだろう。

きちんと夫に、親になっているのだろうか。

正直、今は大事にしすぎてる気もする。
母と妹からすればダメらしいことも妻が大丈夫だというので、世間のボーダーがよく分かってない。
夫という役割を、既婚者から探っているがその行為より少し踏み込んで手伝っている。

好き嫌いはほぼないから、ご飯は何でもいいしお金の負担をかけたくないから現金とカードと両方渡してあるし、買い物を頼まれれば重いものはネットで注文しておくし。不自由はないはずだ。

だけど、匡尋は一瞬だったけれど僕と汐音が喜んでいる姿を悲しそうな目で見ていた、妻の姿を視界の端で捉えてしまったんだ。

彼女には不満がある。
でも優しい彼女はその不満をため息とともに飲み込んで、気づいたときには出会った頃と同じ笑顔で
「晴れるとイイね。」
とてるてる坊主を眺めていたんだ。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

Husband's secret (夫の秘密)

設楽理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...