煙の向こうに揺れる言葉

らぽしな

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エピソード6-7

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そこに居たのはあの日、僕がおっ…胸をガッチリと掴んでしまった女性だった。

その胸の上にあるのは、よく見れば見慣れた顔の女性。中途で入った森さんじゃないか…。

「あ、佐々木チーフ。お疲れ様です。」
「おはようございます。」

様々な挨拶も一瞬聞こえなくなるくらい、匡尋は自分のどうしようもない間抜け加減を思い知らされる。
高橋は吹き出しそうにしている。その一方で森さんは冷静だ。

高橋は今日の今日まで忘れているか、思い出してもシラを切り通しているのか半々だったろうが、この今の瞬間で僕が覚えていないことを悟ったからのその表情なのだろう。

森さんは完全に、さも何事もなかったように振る舞おうとして気づかないふりをしていたんだと、今のこの瞬間まで思っていてくれたのかもしれない。

森さん、森あかりさん。
職場の彼女は、全然派手じゃない。職場に溶け込んでいるので化粧だって服装だってきっと派手じゃなく標準なのだろう。

だから全く匡尋がきづける要素がなかった。

新人と違い即戦力として来ているので、高橋だけに一任していたわけじゃない。人手不足も少しあり、自分が担当している取引先を引き継ぐために二人だけで取引先にまで言ったこともある。

なんなら、その前後すら二人きりで通ったのに。
森さんは何事もなかったように振る舞っていた。

僕が気づいて通っていたら、何らかのハラスメントの抵触している可能性もある。

(ずるいだろ、なんで女性はこんなに変わるんだ。)
まあ、変わるのは女性だけじゃないがそういうことに乏しい感性しか持ち合わせていない匡尋はすでに偏見で思っているとも気づいてないが…。

しかも、割と社内にいるときは髪は結っていてメガネを掛けている印象がある。

今日は野外での活動しやすい派手目な格好で髪をおろしていたから、ここでようやくあの日の女性と気がついたのだ。

そしてみんなの格好の餌食になるような、あんなハプニングを本人も言うわけもなく、また若い女性を落とし込むような最低な人間ではない高橋は、僕に対してだけニマニマしているだけ。

つまりそんな感じだから、他のメンバーはしるよしもない状態で僕が狼狽えだしたから、数人はなんぞやという顔をしている。

(取り繕わなければ!)

そのことにたどり着くまで多分1分もなかったのだが、しどろもどろに
「あ、ああ。まあ、楽しんで。」
とよくわからないことを発して慌ててその場を去った。

(どうしよう、ここにいれば妻と鉢合わせしてしまう。落ち着け、気持ちだけがやましいだけで、実際はやましいことはしてない。ただの不可抗力なんだ。)
急いでその場を離れる。

(だ、だいたい今だって、高橋があんな顔しなきゃすぐに落ち着いて対処できたのに。)
と、余計な恨みゴトまで頭の中を駆け巡る。

(よし、どうにか気分を落ち着かせ、アイツらと千草が顔を合わせる前に、心の体裁を建て直さなければ)
そんなことを思いながら戻ると、妻は川のそばで遊んでいる子どもたちをみていた。

危険がないように、川の水を人工的に引き入れるようにしてある。
深さは足首より少し上くらい。でも、水がある限り100%安全ではないので、大人も数人は近くにいる。

まだ水は冷たいどろうけど、子どもたちには関係ないようだ。
あとで、汐音も遊ばせてあげたいとか思っているのだろうが今はそれどころじゃない。

動揺していたからか、当初選ぼうと思っていた飲み物は手に持っておらず、おそらくかなり甘いだろう飲み物とお茶が手元にあった。

そうなるとお茶を飲みたかったのだが、妻の視線がお茶の方にむいていたので、そっちを渡した。

お昼くらいまで会わずにいればなんとか乗り切れると思い、ボトルの蓋を開けた。普段通りを装っていたつもりでも、妻にはなんだか変だと思われていたのに、匡尋は気づいていなかった。

それどころか、匡尋のそんな気持ちも知らず、後を追ってきたのか!というくらい時間を空けずにさっきの少団体が近づいてきた。

ほとんど初対面に近い千草と挨拶を交わす。
その間、自分だけはどうにかこうにか乗り切ったと思っていた。

この出会いがさらなるこの後の波乱の幕開けだったと匡尋は知らずにいた。

数日後、あることをきっかけにして、しかも僕の知らないところで森さんと高橋の二人が我が家を訪れるということを。



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