57 / 64
エピソード13-5
しおりを挟む
ほんの少し、父親とか夫としての自覚が匡尋に芽生えている頃。
妻は驚きとともに視線の端で、普段とは違う光景が展開していくさまをどう受け止めていいかわからずにいた。
昨日の悶々とした問いかけのような光景が、今、目の前で繰り広げられていて、千草は焼いていた卵を少し焦がしてしまった。
さっき美味しそうに焼き鮭も出来上がり、魚焼き器の中で出番を待っている。
ここに越してきてから、朝パン食になったことなんて数えるくらいな気がする。
というか、希望を言わないので和食的なご飯が好きだ言っていたし、出せば黙々と平らげていたからだ。
まあ、煮魚は事前に用意しておくけど、焼き魚はたいてい朝焼くことが多い。
目玉焼き、甘い卵焼き、だし巻き、煮玉子、温泉卵。
納豆、豆腐。
漬物、和惣菜。
時々、目玉焼きがハムエッグになるか付け合せにソーセージがつく。
そんな毎日の繰り返しだった。
そんななか、汐音にトーストをハチミツとリクエストしている。
妻は魚焼き器をちらっと見た。
(さすがに、これは合わないな。)
ハチミツトーストに、卵焼き、そして味噌汁。
変な組み合わせになった。
でも、なんだか汐音と楽しそうに食べている。
焼いた鮭は、今日おかずが足りなかったらほぐして鮭チャーハンにでもすればいい。朝の分のご飯もあまりそうだ。
汐音は固焼きのハムエッグを食べている。味噌汁の代わりに、牛乳が置いてある。
サポート付きの箸を上手に使って。
汐音の一つ一つの行動にいちいち関心している。もっともっと褒めてあげればいいのに、と口に出さずに思っていた。
しかし、そんな珍しい事は長くも続かず、さっさと食べ終わった夫はまたあの定位置にタバコを持って行ってしまった。
このほんの少しだけの変化は、どう受け止めればいいのだろう。お客さんが来るからだろうか。
無邪気に牛乳を飲み干す汐音の仕草に、こんな風に微笑みかけている自分を俯瞰してみられるのは、いつ以来なのだろうか。
(タバコをやめるか減らせない?)
そんなたった一言で解決しそうな悩みだと気づけ無いままに、食べ終わった食器を持って、台所へと足を運んでいる自分がいた。
でも変化はそれだけにとどまらなかった。
夕食への準備に取り掛かる前に、足りない食材や飲み物などを買い出しに行かなければならない。
「今から買い物に行くから準備して。」
そう言うと朝食後にテレビを見ていた汐音は自分の部屋に走っていった。
それが聞こえていたらしく汐音に外出の準備をさせていると、いつもより買うものが多くなるだろうからと、珍しく夫が申し出てくれて久しぶりに汐音と2人きりじゃない買い出しとなった。
「たまには、お父さんと手をつなごうか?」
と、匡尋が声をかけた。
せっかく朝食で歩み寄りがあったのにそんな申し出があっても、汐音は匡尋と手を繋ごうとしない。
ずっとそんなことをしてこなかったので、急にはどうしていいのかわからないのだ。
夫はすぐに諦めたようで、少し後ろから付いてきた。
この光景は他の誰かからは仲のいい家族に見えているだろうか。
妻は驚きとともに視線の端で、普段とは違う光景が展開していくさまをどう受け止めていいかわからずにいた。
昨日の悶々とした問いかけのような光景が、今、目の前で繰り広げられていて、千草は焼いていた卵を少し焦がしてしまった。
さっき美味しそうに焼き鮭も出来上がり、魚焼き器の中で出番を待っている。
ここに越してきてから、朝パン食になったことなんて数えるくらいな気がする。
というか、希望を言わないので和食的なご飯が好きだ言っていたし、出せば黙々と平らげていたからだ。
まあ、煮魚は事前に用意しておくけど、焼き魚はたいてい朝焼くことが多い。
目玉焼き、甘い卵焼き、だし巻き、煮玉子、温泉卵。
納豆、豆腐。
漬物、和惣菜。
時々、目玉焼きがハムエッグになるか付け合せにソーセージがつく。
そんな毎日の繰り返しだった。
そんななか、汐音にトーストをハチミツとリクエストしている。
妻は魚焼き器をちらっと見た。
(さすがに、これは合わないな。)
ハチミツトーストに、卵焼き、そして味噌汁。
変な組み合わせになった。
でも、なんだか汐音と楽しそうに食べている。
焼いた鮭は、今日おかずが足りなかったらほぐして鮭チャーハンにでもすればいい。朝の分のご飯もあまりそうだ。
汐音は固焼きのハムエッグを食べている。味噌汁の代わりに、牛乳が置いてある。
サポート付きの箸を上手に使って。
汐音の一つ一つの行動にいちいち関心している。もっともっと褒めてあげればいいのに、と口に出さずに思っていた。
しかし、そんな珍しい事は長くも続かず、さっさと食べ終わった夫はまたあの定位置にタバコを持って行ってしまった。
このほんの少しだけの変化は、どう受け止めればいいのだろう。お客さんが来るからだろうか。
無邪気に牛乳を飲み干す汐音の仕草に、こんな風に微笑みかけている自分を俯瞰してみられるのは、いつ以来なのだろうか。
(タバコをやめるか減らせない?)
そんなたった一言で解決しそうな悩みだと気づけ無いままに、食べ終わった食器を持って、台所へと足を運んでいる自分がいた。
でも変化はそれだけにとどまらなかった。
夕食への準備に取り掛かる前に、足りない食材や飲み物などを買い出しに行かなければならない。
「今から買い物に行くから準備して。」
そう言うと朝食後にテレビを見ていた汐音は自分の部屋に走っていった。
それが聞こえていたらしく汐音に外出の準備をさせていると、いつもより買うものが多くなるだろうからと、珍しく夫が申し出てくれて久しぶりに汐音と2人きりじゃない買い出しとなった。
「たまには、お父さんと手をつなごうか?」
と、匡尋が声をかけた。
せっかく朝食で歩み寄りがあったのにそんな申し出があっても、汐音は匡尋と手を繋ごうとしない。
ずっとそんなことをしてこなかったので、急にはどうしていいのかわからないのだ。
夫はすぐに諦めたようで、少し後ろから付いてきた。
この光景は他の誰かからは仲のいい家族に見えているだろうか。
0
あなたにおすすめの小説
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる