タチバナ

ルン

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「待ちなさい」

学校を出た二人が依頼所に向かう途中、アズサは不意に言う。

「どうした?」

「私はミナセ・アズサよ。依頼所の人にバレたら大ごとになるわ」

「じゃあどうするんだよ?」

「決まっているでしょう。変装するのよ」

 そう言ってアズサは近くにある服屋を指差した。

「はぁ、まじか」

 ナオトは大きくため息をつきアズサが指差した服屋の中に入る。

 中には数人の客と店員がいたがアズサが入った今でも態度はあまり変わらなかった。もちろん、最初は少し驚いた様子も見せたがそれ以降は通常通りの対応をしていた。

(意外だな。あのミナセ・アズサが来たら、もう少し騒がれるかと思ったが………)

 そんなことを考えつつナオトもアズサの買い物ついでに服屋の中を見て回った。

 そこには色とりどりの服や装飾品などが並んでいたが、ナオトは自分にとってどんな服が似合うなどというファッショナブルな感性を持ち合わせていなかった。

 そのため色鮮やかな服が並んでいるのを見ることを楽しんでも、買いたいという気持ちはほとんど沸き起こらなかった。

「できたわ」

 そんなナオトの後ろからくぐもった声が聞こえてくる。

 振り返るとそこには、ニット帽にサングラス、マスクをつけたアズサが立っていた。

「なにやってんだ、お前」

「変装よ」 

 マスクのせいでアズサの声は若干くぐもっていた。

「どこぞの強盗団だよ」

「何を言っているのかしら」

「お前の方こそ何をやっているのかしらだ。なんでこんなに色とりどりの装飾品があるなかで身に着けたものがそれなんだよ」

「気づかれないようにするにはコレが一番いいのよ」

「あのなー。お前顔は綺麗なんだから、もう少しマシな変装しろよ。髪束ねたりとか、サングラスじゃなくて普通の眼鏡とかでもいいだろう」

 そう言ってナオトは近くにあったシルバーの色の四角いフレームの眼鏡を取った。

 自分のファッションにはほとんど興味を示さないナオトだったが、アズサのあまりに可愛げのない変装姿が少しだけ許せなかった。

「お前、これなんか似合うんじゃないか」

 なんとなく知的なイメージが彼女に合いそうだとナオトは思い、アズサがつけているサングラスをひょいっと取る。

 瞬間二人の目と目が合う。アズサは驚いたようにナオトの顔を見つめた。ナオトもアズサのその表情に驚き、持っていたメガネをアズサに渡さずに見つめ返し続けてしまった。

「いや…なんでそんなに驚いてるんだよ」

 彼女のその綺麗な瞳に見つめられ続け、ドキリとしたナオトはほんの少し声が上ずる。

「あなたが、急に…取るからでしょう」

「あ…悪い…」

「………別にあなたの好みなんて聞いていないわ。だからこのままで行くわ」

 アズサはそう言って、ナオトが持っているサングラスを取り返し、店員の前に持って行った。
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