タチバナ

ルン

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「ねぇ、タチバナ君。一つ聞いてもいい?」

 店を出た後それぞれの帰路に進むための別れ道に到着した時ユウナが質問する。

「なに?」

「タチバナ・ソウイチロウのことは嫌い?」

 ユウナのその質問にナオトは一瞬黙りこくった。

「俺は昔ソウイチロウに会ったことがある」

「えっ、そう...なの!?」

「ほんの少しの時間だったけどな。きっとあの人の家族や友人たちが過ごした時間と比べらたら、取るに足らない一瞬の出会いだと思う。でも、俺にとってはその一瞬の出会いが今でも忘れられないほどに大切な思い出だ」

 そう言ってナオトはソウイチロウ出会った当初を思い出す。

 ~~~

『なんだそりゃ。そんなのは名前じゃねーよ』

『それでもそう呼ばれている』

『だったら俺が新しい名前をつけてやる。そうだな、んー。よし、お前の名前は………………思いつかん!』

『はっ?』

『だから思いつかないんだって。人の名前なんてそう簡単に思いつかないだろ』

『………なら、今まで通りでいい』

『そりゃあダメだ。とりあえずお前は名無しの権兵衛のゴンちゃんだ』

『………あまり、いい名前ではない気がする』

『とりあえずって言ったろ。それにお前が今まで名乗ってた名前より100倍マシだ』

 ソウイチロウのその言葉で会話は一旦途切れた。しかし、すぐにその沈黙をナオトは破る。

『………どうして、助けた。俺はあなたを殺そうとした』

『………バカかお前。子供助けるのに理由なんかいるのかよ』

『俺はあなたの敵だ』

『あっそ』

『あなたには俺を殺す権利がある』

『はぁ、本当バカだねお前。人が人を殺す権利なんて誰にもねーよ。それにそもそも俺たちがいま戦ってんのもお前らみたいな子供が不自由なく暮らせる未来を作るためだ。敵だからっていう理由だけで誰かれかまわず殺すわけねーだろ』

 ~~~

「………タチバナ君?」

どこか物悲しいようでいて楽しそうな表情を浮かべたナオト。そんなナオトにユウナは様子を伺いたてた。
 
「ああ、悪い………だから俺はあの人の事を嫌いにはなれない。この国の全ての人があの人を悪人だと非難しても」

「そっか、世紀の大罪人タチバナ・ソウイチロウにもまだ味方はいたんだ」

「あまり周りにばらさないてまくれると助かるかな。今でさえあまり他人からいい目で見られていない上にタチバナ・ソウイチロウの支持者なんて噂が立ったら最悪だからな」

「ふふっ、しないよそんなこと」

「それはありがたいな。嘘じゃないことを祈るよ」

「信じてない?」

「一応は信じてる」

「しないよ。だって私もタチバナ・ソウイチロウのことそこまで嫌いじゃないし」

「そうか…変わり者なんだな、イズミは」

「タチバナ君程じゃないと思うけどね」

 ユウナはニッコリと笑い、お互い別れの挨拶をすましそれぞれの岐路についた。
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