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番外編
番外編② 目玉くんの願い
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「……イオ、元気かなあ」
暗い暗い深海の中で、ぽつりとつぶやいてみる。
「オメー、まだあの子のこと気にしてんのか」
暗闇からチョウチンさんがぬっと現れた。
「デメちゃんよお、俺たちゃこっから出られねえんだ。気にするだけ無駄だぜ」
「いや、そうなんだけどね……」
わかってるんだ、そんなこと。
でも僕は、もう一度イオに会いたい。
深海には光どころか、ほかの生き物の気配や海流の動きだって届かない。
おばあちゃんが昔、「人間を見たことがある」って言ってたけど、あんなに面白い生き物だなんて思ってもみなかった。
なんなんだよ、「にいにを探してる」って。
その想いだけで、海流圏を抜けて深海を飛び出してっちまうんだもんな。
……すごいよ、イオ。
僕がぼんやり遠くを見ていると、チョウチンさんが言う。
「そんなに気になるんなら、ダイオウさんにどうにかしてもらえよ」
僕はハッとした。
どうしてその考えに辿り着かなかったんだろう。
僕は、ダイオウさんのもとへと泳ぎ出す。
「おーい、デメちゃん! 無理だけはすんなよー!」
後ろからチョウチンさんの叫ぶ声がした。
僕は記憶を頼りに泳いでいく。だけど、ダイオウさんの姿は見つからなかった。
「あれ……確かこの辺りだったはずなんだけど……」
もしかして、道を間違えた?
いや、そんなはずはないんだよな……。
その時、ごごごぉーっと地響きのような音がして、僕の目の前に赤い目が現れた。
「やあ。目玉の少年よ、私をお探しかね」
良かった……ダイオウさんだ!
「あの、僕もイオみたいに海流圏を抜けたいな、なんて……」
僕はダイオウさんにおずおずと申し出る。
するとダイオウさんは、深海を揺らすような大声で僕を笑った。
「はっはっは! それはできない相談だね、少年」
「ええっ! そんな……!」
僕はしょんぼりと鰭を落とす。
だけど、やっぱり諦められなかった。
僕はすうっと息を吸い込み、もう一度ダイオウさんにお願いしてみる。
「僕は……、僕はイオに会いたいんです!」
ダイオウさんの赤い目が見開かれる。
僕はさらに話を続けた。
「会ってイオに聞きたい。どうしたらそんな勇気がもてるんだ、って。にいにを見つけることはできたのか、あおみどりの海流にはのれたのかって……」
僕がそう言うと、ダイオウさんの赤い目がぱちぱちと瞬く。
そして唸るように声を絞り出した。
「いやあ、私も君の望みを叶えてやりたいところだがね……君は深海の外では生きられないんだよ」
そう……なんだ。
じゃあ僕は、イオがここに落ちてきてくれない限り——
その時、ダイオウさんが閃いたように言った。
「……うーん。しかし、連絡をとることならできるかもしれないな。少年、それでもいいかい?」
僕はパッと目を輝かせる。
「そ、そんなことができるんですか……!」
「はははっ、やってみなくちゃわからないがね」
そう言ってダイオウさんは触手を動かしはじめる。
すべての触手を見ることは、大きすぎてできない。
だけど地響きのような音が、確かにダイオウさんが動いていると教えてくれた。
やがて暗闇から、とても長ーいお魚さんが現れる。
銀色の身体に赤色の背鰭。
頭から伸びる鰭がひらひらとなびき、とてもきれいだった。
ダイオウさんがそのお魚さんに声をかける。
「ツカイよ。イオという、人間の少女を探し出しておくれ。そして……目玉の少年が会いたがっていたと伝えるのだ」
「御意」
ツカイと呼ばれたそのお魚さんは、微動だにせず、短くそう告げた。
ツカイさんが海流圏へと泳ぎ出す。
その姿はまるで、天に昇る龍のようだった。
……龍なんて、見たことないけど。
ばあちゃんにしてもらったお伽話で聞いただけ。
でも、ほんとに僕はそう思ったんだ。
ねえ、イオ。
君はどんな旅をしたんだい。
もう一度会って、聞かせてよ。
君の世界は、きっと広いんだろうな。
……僕はこの深海で、いつでも君を待ってるよ。
—おわり—
お読みいただきありがとうございます(´ー`)
デメニギスのデメちゃん、いかがでしたか……?
次回は、陸国からあの人が登場!
10/24(金)更新予定です♪
暗い暗い深海の中で、ぽつりとつぶやいてみる。
「オメー、まだあの子のこと気にしてんのか」
暗闇からチョウチンさんがぬっと現れた。
「デメちゃんよお、俺たちゃこっから出られねえんだ。気にするだけ無駄だぜ」
「いや、そうなんだけどね……」
わかってるんだ、そんなこと。
でも僕は、もう一度イオに会いたい。
深海には光どころか、ほかの生き物の気配や海流の動きだって届かない。
おばあちゃんが昔、「人間を見たことがある」って言ってたけど、あんなに面白い生き物だなんて思ってもみなかった。
なんなんだよ、「にいにを探してる」って。
その想いだけで、海流圏を抜けて深海を飛び出してっちまうんだもんな。
……すごいよ、イオ。
僕がぼんやり遠くを見ていると、チョウチンさんが言う。
「そんなに気になるんなら、ダイオウさんにどうにかしてもらえよ」
僕はハッとした。
どうしてその考えに辿り着かなかったんだろう。
僕は、ダイオウさんのもとへと泳ぎ出す。
「おーい、デメちゃん! 無理だけはすんなよー!」
後ろからチョウチンさんの叫ぶ声がした。
僕は記憶を頼りに泳いでいく。だけど、ダイオウさんの姿は見つからなかった。
「あれ……確かこの辺りだったはずなんだけど……」
もしかして、道を間違えた?
いや、そんなはずはないんだよな……。
その時、ごごごぉーっと地響きのような音がして、僕の目の前に赤い目が現れた。
「やあ。目玉の少年よ、私をお探しかね」
良かった……ダイオウさんだ!
「あの、僕もイオみたいに海流圏を抜けたいな、なんて……」
僕はダイオウさんにおずおずと申し出る。
するとダイオウさんは、深海を揺らすような大声で僕を笑った。
「はっはっは! それはできない相談だね、少年」
「ええっ! そんな……!」
僕はしょんぼりと鰭を落とす。
だけど、やっぱり諦められなかった。
僕はすうっと息を吸い込み、もう一度ダイオウさんにお願いしてみる。
「僕は……、僕はイオに会いたいんです!」
ダイオウさんの赤い目が見開かれる。
僕はさらに話を続けた。
「会ってイオに聞きたい。どうしたらそんな勇気がもてるんだ、って。にいにを見つけることはできたのか、あおみどりの海流にはのれたのかって……」
僕がそう言うと、ダイオウさんの赤い目がぱちぱちと瞬く。
そして唸るように声を絞り出した。
「いやあ、私も君の望みを叶えてやりたいところだがね……君は深海の外では生きられないんだよ」
そう……なんだ。
じゃあ僕は、イオがここに落ちてきてくれない限り——
その時、ダイオウさんが閃いたように言った。
「……うーん。しかし、連絡をとることならできるかもしれないな。少年、それでもいいかい?」
僕はパッと目を輝かせる。
「そ、そんなことができるんですか……!」
「はははっ、やってみなくちゃわからないがね」
そう言ってダイオウさんは触手を動かしはじめる。
すべての触手を見ることは、大きすぎてできない。
だけど地響きのような音が、確かにダイオウさんが動いていると教えてくれた。
やがて暗闇から、とても長ーいお魚さんが現れる。
銀色の身体に赤色の背鰭。
頭から伸びる鰭がひらひらとなびき、とてもきれいだった。
ダイオウさんがそのお魚さんに声をかける。
「ツカイよ。イオという、人間の少女を探し出しておくれ。そして……目玉の少年が会いたがっていたと伝えるのだ」
「御意」
ツカイと呼ばれたそのお魚さんは、微動だにせず、短くそう告げた。
ツカイさんが海流圏へと泳ぎ出す。
その姿はまるで、天に昇る龍のようだった。
……龍なんて、見たことないけど。
ばあちゃんにしてもらったお伽話で聞いただけ。
でも、ほんとに僕はそう思ったんだ。
ねえ、イオ。
君はどんな旅をしたんだい。
もう一度会って、聞かせてよ。
君の世界は、きっと広いんだろうな。
……僕はこの深海で、いつでも君を待ってるよ。
—おわり—
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10/24(金)更新予定です♪
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