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しおりを挟むロージーとしては激しく腰を打ち付ける方が好きなのだが、アレンは小刻みに中を嬲られる方が好きなようだ。それも一人遊びとやらで鍛えた成果かと思うと不満に感じる。
イチから開発してやりたかった。こんなところで感じるわけないと抵抗する16歳のアレンに、痛がられながらも無理やり快感を叩き込んで落としてやりたかった。叶わなかった願いに対し、諦めたつもりでも思い出してしまう。なんて情けないのだろう。
最愛と道を違え、距離を置き続けた年月だけが、ロージーの後悔で、未練で心残りだ。死ぬ間際にも思い出して舌打ちするかもしれない。
「…きす、したい」
「お前…、俺以外にそんなこと言ったら殺すからな」
「ろぉじぃだけぇ」
イキ過ぎて頭のネジが飛んだのか、ふへへとアレンは幸せそうに笑った。つられてニヤケそうになり、悔しさを誤魔化すようにアレンの鼻の頭を甘噛みしてやった。
「───というわけで、俺は引退したい」
王妃、側妃、長男の三人を前にロージーはアレンとの関係に真剣であることと国王引退について説明した。
「やっとご自身も幸せになる決断をなさったのですね」
戦友のように長年共に歩んできた王妃と側妃は喜びに表情を緩めている。結婚当初からアレンへの気持ちを打ち明け、王族の義務として共にあることを受け入れてくれた女傑達である。むしろ、子供達は無事に成長したんだからもういいだろう、早く口説け、いつ口説くのか、人生は貴方が思うほど長くないのだぞと、アレンのことなると腑抜けるロージーを叱咤激励してきた人達だ。
問題は跡取りの長男である。恋愛のことを、しかも同性愛で、妻以外の人間への想いなど、さすがのロージーでも我が子には今まで聞かせられなかった。しかし現役を退くとなれば別だ。
次男が他国の王族に嫁ぐことがほぼ確定したと告げた時、長男は男が男に嫁ぐという異文化に目を白黒させて衝撃を受けていた。ちなみに長男自身は昨年結婚し既に双子の子供がいる。朗らかで大雑把で何もかもを肯定しようとする王妃の子とは思えないくらい、長男は真っ当だ。真っ当すぎて柔軟性がない。案の定、話を聞いた長男は顔面蒼白になり、固まっている。
「へ、陛下。その、あの、」
口をパクパクさせる長男に、本当に誰に似たのだろうかと頭を抱えたくなる。容貌はロージーに瓜ふたつなので血縁関係は疑いようもないのだが。
「なんだ?」
「その、騎士団長殿、は…、まさか、陛下の引退と合わせて退職する、のでしょうか?」
まだ退位については話していない。可能ならアレンにも現役を退いて貰い、離れた地で一緒に隠居したいというのが本音だ。
「そうだとしたら何か?」
「だめ、だめですよ、陛下!陛下の退位は構いませんが、騎士団長の辞職は困ります!あの烏合の衆のような癖の強い騎士達は、今の騎士団長だからこそ慕われ、纏められるんです!後任なんてすぐには見つけられません!」
「───…」
───俺の退位は良いのか。
少しくらい引き止められるだろうと予測していたのに、アッサリ構わないと宣言されたロージーは天を仰ぐ。
「引退も隠居もお一人でお願いします!」
「意味がない!」
あらあらと王妃達は苦笑する。
「騎士団長の後任を見つけるか、王太子を説得するか。どちらも骨が折れそうですわね?」
「何年かかるかしら…」
「いっそ降格して騎士団に入って四六時中アレンと一緒にいたい!!青春をやり直したい!!」
「仮にも国王だった人が入団してきたら周囲の人間が扱いに困るでしょう!!しかも新規入団可能年齢を越えてるじゃないですか!」
「新規じゃない!ロゼリュストではなく、ロージーとしての復帰だ!再入団だ!」
「復帰可能なブランクじゃないでしょう!何年経ってると思ってるんですか!入団試験を受けて再入団するにしても、絶対体力テストで落ちますって!!」
ロージーとて願望や未練が捨てきれないだけで、頭では息子の言い分を理解している。だから放っておいても無責任な真似はしないと確信している妻達は傍観するだけ。むしろ長男は真面目に言い返してくれるからロージーに面白がられて揶揄われているだけ。その事実に長男が気づく日は来るのだろうかとクスクス笑って見守る。
「あいつは、アレンは、俺のものなのに…!!!!!」
「馬鹿なことを言わないでください!あの方の存在は国の財産です!!」
父子の交流は終わりそうにない。面白がっていた妻達も少し呆れて顔を見合わせた。
「まだまだ陛下の治世は続きそうですね」
「そうね」
[完]
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