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しおりを挟む薄い腹を撫でてやる。それだけで身悶える青砥を見ていただけなのに、和佐の雄は息を吹き返し硬度を取り戻して膨張する。その変化を敏感に受け取り、びくんびくんっと青砥の下腹部は痙攣した。
「あ、あ、あ、そんな、」
再び熱に浮かされ始めた青砥の目が潤む。
項を噛む為に体位を変えたいなと和佐は思ったが、未だに狭く馴れない青砥のことを考えると今は難しいかもしれない。…まぁ今すぐ噛まなくても、数日中に噛めれば良いか。そう思い直して和佐はニッコリと笑った。
「たぶんあと5日くらいは続くだろうし、たくさんあげるね」
「な、なにが、なに、あ…っ、あっ」
□ □ □ □ □
「ぅ、ん…」
頭が痛く、腹が重い。目を開けた青砥は室内の眩しさに訝った。青砥の私室は拘りなく買い揃えた家具のせいで色味に統一性がなく、乱雑な印象を与える。ところが、目の前に広がる家具は目に痛いほど白で統一されているのだ。ここはどこなのか。起き上がりたいのに身体が重くて動けない。動きを阻む物を無意識に触ると、それは人間の腕だった。その腕の太さに恋人ではないと気づき、心臓が凍る。恐る恐る振り向くと後ろから抱き締めてくる男の、整った容貌が見えた。悲鳴を上げそうになったが、なんとか呑み込んで。とにかく離れようと画策するが、ぐちゅ、という音が下半身から聞こえてきた。何だろうと意識して全身の感覚に意識を向けると、胎内に異物があることに気づいてしまった。
「ひ…!」
少し身を捩っただけで胎内から電気が走ったかのように刺激が駆け巡り力が抜ける。状況が理解できず、青砥は目を白黒させた。深呼吸をして落ち着くと、全身のあらゆる筋肉が悲鳴を上げていることに気づいてしまった。筋肉だけではなく、あらゆる皮膚も部位も痛い。項も、鎖骨周りも、乳首も、腹部も、陰茎も、太腿まで。ズキズキと痛む。肛門に至っては未だに太い杭に貫かれたままだ。開ききった穴の縁がヒリヒリと痛みながら呼吸に合わせて収縮拡張する度に、貫いている杭の太さと熱さを感じ取ってしまい、心臓がドキドキと騒ぐ。
「ん、優也さん?お腹でも空きましたか?」
「うわ…ッ!!」
胎内で急にズルっと動き始めた凶器に、青砥は大粒の涙を零して戸惑った。そんな青砥を覗き込んだ男は驚いたように目を見張る。それも一瞬のこと。ああ、と納得の声を上げながら腰を動かし始めた。
「?、?、?、」
訳がわからないまま俯せに抑えつけられ、腰を捕まれ、ズンッと上から圧し潰すように穿たれる。枕に口を押し付け、溢れる唾液と悲鳴を押し殺しながら、青砥はされるがまま追い込まれた。追い込まれた先で視界が真っ白に染まって、チカチカと星が点滅する。胎内に熱い何かが叩きつけられ、塗り込まれ、息苦しさの中、とにかく早く終わってくれと祈った。
「はぁ、気持ち良かった」
男はそんな感想を零しつつ、萎えた陰茎をずるりと抜き去る。
「だ、だれ、なに、これ」
記憶を探る。男に見覚えはあるが、誰だったどろうか。
「あー…、俺と出会ってすぐヒートになったから覚えてないのかな?」
「ひーと?」
なにそれ。聞き覚えのない単語に瞬く。横たわる青砥の前で男は全裸のまま胡座をかいて座り直した。同じ男なのに相手の全裸に羞恥を覚えて戸惑い、視線を彷徨わせた。
「発情期ってこと。隔世遺伝だったのか、優也さん、Ωだったみたいで。一緒にお酒を呑んでいたら急に発熱して倒れたんですよ?その後はもう酔ったにしては様子がおかしくて、心配してたら、急に脱ぎ始めて。かと思えば俺を押し倒して脱がし始めて襲ってきて───」
「ぎゃあああ、やめろ、やめてくれ、聞きたくない!!覚えてない!!」
オメガとやらについては都市伝説のような、眉唾物程度の知識しかない。自分は凡庸な人間でしかないはずだ、有り得ない。
チラリと男を盗み見る。男の鎖骨周辺に噛み跡、肩口に爪痕らしきものが見えた。中に男の陰茎が入っていた先程の状況といい、相手に困らないであろう男の美しさといい、自分が襲ったことは間違いないと青くなる。
「し、仕事…電話、あ、警察に自首…」
「落ち着いてくださいね。Ωのヒート…発情期は5日から7日間続きます。何が言いたいか分かります?俺達が出会ってから今日で8日目なんです」
「ようか?」
それって何だっけ。青砥の脳は理解を拒否している。
「申し訳ないとは思ったのですが、貴方の荷物から勤め先を調べて、俺の知り合いの弁護士から会社に連絡を入れて貰いました」
「それ、は、ありがとう、ございます」
この返答は正しいのだろうか。青砥は混乱している。
「あと、このまま貴方を帰すことは出来ません。仕事も辞めて貰います」
「け、けいさつ?たいほ?」
やっぱり…と青砥は蒼白となって呟くと、イヤイヤと男が身振り手振りで否定した。
「違いますよ!病院です、病院!十中八九、貴方は俺の子供を妊娠してます」
「にんしん?男ですけど?」
「男でもΩですから、発情期が来た以上はしますよ、妊娠」
「…は?」
「ヒート事故とはいえ責任はとります。いえ、とらせてください。結婚しましょう」
「は???」
この男は彼女の浮気相手ではなかっただろうか。自分は彼女と結婚する予定だったはずだ。まだそちらの破談も話をしていないのに、何故出会ったばかりの男に求婚されているのだろう。
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