花の根付く場所

ひづき

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 クレイツには悩みがあった。顔が厳つく、体格も良い為、女子供に怯えられてしまうのだ。その上いつの間にか残虐王などという渾名までついてしまい、ますます距離を取られる始末。36歳という自身の年齢もあり、そろそろ本気で跡継ぎを設ける必要があるのに独身だ。

 そんな折、クレイツのことを残虐王など名ばかりの臆病者だと決めつけて、突然他国がちょっかいを出してきた。しかも演習軍で軽くあしらったら勝手に命乞いを始めるのだから意味が分からない。領土を広げるのも面倒なので取り敢えず和解という形を取り、しかし実質敗戦国の相手に何も要求しないでは面目が立たない。

 だからクレイツは、王族を嫁がせろと要求した。王族としての自覚があれば、クレイツの子を孕むのが自国の利になると判断して夜伽を拒絶しないだろう。寝首を掻かれたところで報復されて滅ぶのは向こうの国である。

 ───馬鹿の考えを推し量る事は難しい。

 結果としてクレイツが得たのは、そんな教訓と、痩せ細った子供。12~13歳にしか見えないのに16歳だという。少年にしか見えない少女かとも思ったが、間違いなく男だった。

 同席した大臣達は憤り、最早子供も使者もこの場で殺して戦争を継続させるべきだ!という勢いだったが、クレイツは目の前の少年から目が離せなかった。大臣や側近でさえクレイツと目が合うと一瞬だけとはいえ動揺するのに、少年は全く動じず真っ直ぐ見つめてくるのだ。

 いざとなればこの少年をそのまま跡継ぎにすれば良いか。クレイツはそう考えて少年を引き取ることにした。



 少年はシュレイダと名乗った。密偵の調査では間違いなくかの国の王族だと言う。人に世話をされることに慣れず、背中に鞭打ちの傷跡を背負った、哀れな少年。同年代の女性と比べても半分しか食べられない程に少食で小柄。環境が変わったせいか一睡もせず。かと思えばクレイツの温もりには容易に微睡むという無防備さ。

 文字は読める。計算も出来る。驚くことに書類仕事も出来る。幾分勝手が違うようで戸惑っていたが、導入さえ教えれば飲み込みは早い。聞けば、祖国では城の床掃除と父や兄の執務を代行していたという。そんなに働かせて置きながら、ろくに飯を与えず、少しでもミスをすれば鞭を振るう、そんな者達。クレイツはシュレイダを知れば知るほど、あの国を滅ぼしてやりたいという衝動に駆られた。

「お前、俺の息子になる気はないか」

 執務室で書類を整理するシュレイダを、正式に養子にして、そのまま王太子にしてしまおうか。そう思って声を掛けた。

「私では陛下のお嫁さんにはなれませんか?」

 きょとん、としたシュレイダに問い返され、クレイツは嘆息する。

 シュレイダを引き取ってから半年、背こそ伸びないが、肉付きが良くなり、血色も良くなってきた彼は最早少年とは呼べない。根付いたままの異常な価値観が影となって彼の雰囲気を一層神秘的なものにしている。そこにいるのは美しい、人を惹き付ける危うい色香を持った青年だ。

「───後悔しても知らんぞ」

 シュレイダが夜な夜な後孔で一人遊びをしていることは影からの報告で知っていた。食べ頃に熟した獲物を前に、これ以上我慢する必要もないだろう。





「ひぁ!ゃ、くる…っ、だめ、いやああッ」

 前立腺をゴリゴリと責立てれば、華奢なシュレイダの身体が過ぎた刺激を逃がそうと暴れる。暴れたところで背後からクレイツに押し潰されるように抱き竦められれば逃げようがない。涎を垂らして、涙を流しながら、びくびくと痙攣しつつシュレイダの欲を締め付けるだけ。

「いって…、いってる、からぁぁぁ、待っん!」

 被虐心を煽るだけの嬌声は口づけで塞ぎ、種を内部に塗りたくる為に腰を動かし、残滓を吐き出す。

 抜きつつ、シュレイダの背中を撫でると、そんな刺激さえ毒になるのか、シュレイダは身体をくねらせて身悶えた。そんな反応に、クレイツの欲望は呆気なく硬度を取り戻してしまう。

「ひ、また…!」

「言ったはずだ、後悔しても知らんとな」

 身を捩ってクレイツの身体を押し退けようとするシュレイダを、ちょうど良いとばかりに横向きにして片脚を抱えて腰を進める。もう何時間もシュレイダを受け入れていた後孔は、吸い込むような勢いで改めて迎え入れてくれた。きつい輪を潜れば、ふわふわとした内臓が蠢いて歓迎してくれる。

「あぁ、最高だ…」

「そこ!きもちぃ…、あ!」

 ……………

 日が高いうちから行為を始め、気づけば夜を越えて朝日が顔を出していた。気絶したシュレイダの身を清めてやり、そのまま腕に抱いて眠る。ヤりすぎたという自覚はあるが反省はしていない。

 もう死んでもいいというくらい、満たされていた。

「───とはいえ、若い嫁を未亡人にする気はないんだ」

 振り上げられたシュレイダの手首を掴んで寝台に沈める。華奢な手から滑り落ちたナイフが床で跳ねた。ぱちくりと瞬くシュレイダの瞳に罪悪感はない。あるのは単純な驚きだけだ。

「寝たふりですか?」

「いや、眠りが浅かっただけだ」

 組み敷いたシュレイダの首筋を甘噛みする。ビクッと跳ねた身体を撫で回し、クレイツは薄く笑った。

「私を殺さないのですか?」

「嫁のイタズラを許さないほど狭量ではないさ」


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