指先で描く恋模様

三神 凜緒

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第二章

女子高生の過去回想1

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歴史の授業を好きな人って、何が面白いのか理解できない…
今年は特に暑く、学校にクーラーがある訳でもなかったからか、クラスメイトの大半が暑さでダウンしている中、アタイは開かれた窓の向こうを何とはなしに見ていた。

「日本史において、縄文時代においては…文化というものは日本各地で同時に誕生をしているのだが…、中国文化が流入してきた西側から文明レベルは少しずつ上がってきており…」
「――――はあ~~今回もダメなのかな~?」

今日何回目のため息だろうか…先生のありがたい授業の内容が頭の中に入ってこない。
窓から差し込む強い日差しに目を細めながら、アタイは掌の中にあるエンピツを机の上に転がしてた。

「国の中枢も‥九州から中国地方、そして近畿…現在は関東へと徐々に東側へ変わっており…」
「――――全部×ばっかり…やっぱり今回のも脈なしかな‥」

アタイが持っている六角エンピツには、恋占い用の目がついており、ハートが×の0から5個描かれており…六回投げる間に合計して30集まれば運命の人、15で普通、10以下で脈なし…などというルールがあり、誰を好きになる度にこうやって振っていた。

「これは決して偶然ではなく、遷都をするのは疫病や地震などからの厄払いや、旧勢力の貴族や寺などの影響力を排除する為に首都を変え続けた という背景があります」
「あかん…またゼロだ…なんでだろ…」


諦めて、アタイはエンピツの両端に付けていた、二人の名前のイニシャルが彫ってあるキャップを外し‥他の皆と同じようにぐったりと、机に突っ伏した。
すると日差しで温められていたのだろう、机が思い切り熱くて頬を少し焼いてくる…アツイ…外はとんでもなく熱いのに、アタイの心は全く熱くなれない…
日本には四季という物があり、人はその移り変わりに己の心を映し出す。そして、歴史上もっとも謡われた歌は恋の歌だという。

「遷都する上でもっとも大事な事は、その地が誰の勢力にも属していない辺境である事が最も望ましい。一から全て自分の想い通りに作れますからね」
「はあ~暑すぎて何も考えられない方が、幸せだったりするのかな…樹の奴は何か、今日も昨日も一昨日も、東谷君 東谷君だし…あれはあれでうらやましいけどね…」

思えばどうして…アタイはこんなに沢山恋をして、悉く玉砕してるんだろう?
アタイの何が足りない? 相手が単純に運命の人じゃなかったから? そもそも運命ってなんだろ? ゼンゼンワカンナイ…

「日本史というのは他の国と比べても、特に珍しい文化形態をしている事が特徴であり、特に皇室という権威組織と、幕府という権力組織が、それぞれを尊重をしながら共存するという世界でも類を見ない社会形態をしているのが特徴であり‥他の国では権威と権力は同一の組織に集約される場合がほとんどで…」
「――――単純に、アタイが半端者なだけなのかな‥本気で誰も好きになった事ないのかな…うあ~皆あっつい中、元気に走り回ってる…信じられん…」

虚無を見るように…何となく眼下に広がるグラウンドを見ていた‥グラウンドでは上級生たちがサッカーの授業をしているみたいで…皆楽しそうに青春をしているな~って年寄り臭い事を内心考えていたら…

「権威と権力を一致させなかった事こそが、稀有な政治形態を実現した原動力となったのだが… ふ~む…やれやれ…皆して、暑さにやられているな…そんな状態じゃ授業処じゃないか…どうするかな…」
「センセ~!! どうしてセンセーは平気なんですか?」
「私か? 暑い事よりもきつい事を昔から経験しているからかな?」

机に突っ伏しても頬が熱くなるだけできつくなったので、顔を上げ何となく外のサッカーの試合を見ていたら‥ボールがゴールとは明後日の方向へ飛んでいき、それが校庭に生えていた木にぶつかってしまった。すると木から何かが落ちてきたみたいだ。
それが何なのかは分からないけど‥近くにいた男子生徒が一人慌ててその落ちた物に近づき、声をかけているみたい… でもその物体はビックリしたのか怯えているのか、一目散に逃げ去ってしまい…茫然とするその男子生徒の足元にはボールが転がっていた。

「本当に信じられないよな…太田先生って熱血っていう訳じゃないけど、この暑さでもネクタイ締めて、しっかり着込んでるんだよな…」
「絶対に人間じゃないよな…確か野球部の顧問だっけ?」
「野球の練習中も、真夏でもあの背広姿らしいぞ…?」
「うあ~まじかよ…」

アタイは何となく…その茫然と立ち尽くしている男子生徒の事が気になってしまっていた。その逃げて行った物体に対して‥自分が蹴ってボールをぶつけた訳じゃないのに、とても心配していたその雰囲気が気になったのかな?
ただ、恋に疲れていた自分にとって…彼の存在は今までの男の子とは違う雰囲気があった気がしたんだ…

――――そして翌日同じように何気なく授業中も外を眺めていたら…その男子生徒がその木の周りをうろうろしていたのだ… その手に何かエサらしき物を持って…
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