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第二十二話 旅立ち
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海の皇国行きの船に乗っています。大きい船に乗るのは今世は初めてで、レオ様との船旅は初めてです。
マール公爵とたくさん打ち合わせもしたので準備はばっちりです。何があっても抜かりはありません。マール公爵がいれば外交で困ることはありません。
私の専属の侍女のマナと護衛騎士のマオも同行させています。
リオが同行するとは予想外ですが、ほぼ関わらないので気にしません。
レオ様には身の回りの世話もできる万能の護衛騎士をつけています。彼らなら遭難しても絶対に生き残れますわ。ビアードの騎士は万能で大事な御身を守る備えも抜かりはありません。
私は船の見張り台に登り海の匂と風を堪能しています。
久しぶりの潮風に顔が緩んでしまいます。
「レオ様、楽しいですね。あそこに鳥がいますわ」
「はしゃぎすぎじゃないか」
「私、初めてこんなに大きな船に乗りましたの。王国が遠いですわ。船酔いは平気ですか?」
「今更・・。大丈夫だ」
「マール公爵がレオ様の予定を1日空けてくれました。遊びにいきましょうね」
「エイベルの心配する理由がわかった」
無表情のレオ様に笑いかけます。心配しなくてもエイベルのお土産を忘れてませんよ。
「お土産も一緒に探しましょう。通訳はお任せください。海の皇国のお勉強はばっちりです」
レオ様があまり楽しそうではありませんが初めての視察に緊張しているんでしょうか。
視察は慣れなので、頑張っていただくしかありませんわ。私も昔は緊張しましたもの。リオ兄様に笑われ、伯父様に慰められた思い出が懐かしいですわ。私が失態をしてもクロード殿下がフォローしてくださったのは最初の人生の思い出ですわ。
「殿下、レティシア、そろそろ降りてください」
マール公爵に呼ばれたので名残惜しいですが下に降りました。
「伯父様、私、見張り台で眠ってもいいですか?」
「おじさま?君が倒れたらビアード公爵に怒られるからやめてほしい」
ビアード公爵はマール公爵を怒るんでしょうか。
マール公爵が怒られるのは想像できませんが…。騎士達に檄を飛ばす姿は迫力があり怖いです。
「お父様は心配性です。私は普通です。お父様達が丈夫すぎるんです」
「つい最近、寝込んでたよな」
「あれは訓練に夢中になって体力の限界がきたんです。レオ様、最近エイベルに似てきましたよ。よくないです。お気をつけてください。」
レオ様は人をからかうことを覚えました。思う所はありますが、楽しそうなのでお付き合いしています。
マール公爵が静かに空を見上げます。
「海が荒れる。中に入ってなさい」
マール公爵は風使いなので風の流れを読んでいるんでしょう。私は風の流れは読めませんが一つだけできることがあります。
「水流操作しましょうか?」
「できるのか?」
「はい」
エイベルにもらった魔石で自分を風の結界で囲みます。水流操作中は無防備になるので、防御が疎かになります。座り込み、船の周りの波に魔力を送ります。
「伯父様、進む方向を教えてくださいませ」
「リオ、レティシアの傍で指示出せるか?」
「わかりました。そのまま真っすぐ。」
「わかりました。」
リオの指示に従い魔力を流していきます。
船の速度が上がり海の皇国に段々近づいてきました。
どんどん船が進んでいきますが、物凄く嫌な予感がします。
生前はこのあたりの魔物をたくさん討伐した記憶があります。
そして船の下の魔力の気配にため息を飲み込みます。悩んでる場合ではありませんね。
「リオ兄様、私、少しだけ海の中に潜ってきてもいいでしょうか?」
「え?いや、危ないから」
「船の下に魔物がいるので行ってきます。水の中なら私のほうが得意ですわ。すぐ戻ります」
「待って!!」
水魔法で体を覆い海の中に飛び込むと船の下に大きい海亀がいました。
申し訳ありませんが、討伐します。
海亀は魔力を持ち、波を操り船を壊し人を食べます。魔法で甲羅に籠る海亀を攻撃すると驚いて甲羅から頭が出てきたので水の刃で首を落とします。念のため手足も。しばらくすると海亀の体が消えて白い大きい玉が出てきたので、抱えます。海の魔物は倒すと素材に変わり、亡骸の処理がいらないので大変助かります。海から上がり波を操作して船の上に直地します。
視線を集めてます。
マール公爵が真顔で近づいてきました。私の腕の中身が気になるんですよね。
「マール公爵、これを。高価な素材です。海の皇族にお渡ししても喜ばれます」
海の皇国では至宝と言われる海亀の玉を差し出します。
マナがタオルで体を拭いてくれます。
「お嬢様、着替えてから飛び込んでください」
非常事態だったんです。マナは放っておいて護衛騎士のマオを見つめます。
「マオ、乾かしてください」
マオが風魔法で乾かしてくれましたが海水に濡れたので塩がついてます。洗浄魔法をかけたので綺麗になりましたわ。
「確認したいんだが、ビアード領ではよくあることなのか?」
魔物の討伐のことでしょう。ビアード領の森は魔物が頻繁に出ます。そういえばマール公爵領で魔物には出会ったことはありません。
ビアード領では水魔法の練習をしながら、魔物をよく倒してましたわ。
「はい。エイベルがいれば、私が水の中から魔物を浮かせてエイベルが切り刻んで終わりです。ただ海の魔物は大きいので水魔法で仕留めた方が早いです。海亀を倒したので一時的に波は穏やかになるでしょう。この海域は魔物が多そうなので早く抜けたほうがいいと思います。お許しいただけるなら私達が任されます」
「頼むよ」
「マオ、手伝って下さい」
マオの風魔法に合わせて、ストーム様にもお願いして、風で船を加速させました。ストーム様を貸してくれたエイベルに感謝です。
併用して水流操作しながら海の皇国を目指しました。魔物に出会うことはなく予定よりも2日も早く到着しました。うっかり魔力を使い過ぎたので、隣にいるレオ様を見上げます。
「レオ様、魔力を分けてくれませんか?」
旅立つ前にレオ様と魔力の相性が合うか試しました。王族のレオ様は魔力の量が多いです。レオ様が肩に手を置いて魔力を送ってくれます。おかげで体に魔力が満ちて軽くなりました。レオ様は魔力操作が上手なので受け取るのも不快さはありません。
「レティシア、殿下に頼むなら私が分けるよ。リオでもいい」
魔力には相性があります。合わない魔力は体に毒です。
相性がわかりませんし、恐れ多いです。それにマール公爵の貴重な魔力を私がもらうわけにはいきません。海の上では風の魔力は偉大です。有事の際にマール公爵の魔力が足りないなど、あってはいけません。
「マール公爵家の皆様にご迷惑はかけられません」
「殿下は、」
「レオ様に断られたらやめます。レオ様は魔力が有り余ってるので、よくくださるんです。相性が良ければ、マール公爵にも快くくださいますわ。瞳の色を変える魔道具を貸してくださいませ」
マール公爵に呆れた視線で見られてますが何も言われないので気にするのはやめました。
海の皇国に上陸し、滞在中に泊まる屋敷に着きました。体調不良を訴える方はいないので私の役目はありません。最初の2日間は私は公務から外され自由です。マナに荷物整理を任せて、着替えて護衛のマオを連れて出発です。ロキのためにメイ伯爵家の情報を集めましょう。瞳の色は魔道具で海の皇国民に多い緑に変えました。
まずは海の皇国の冒険者ギルドに行きます。
この国のギルドは身分証明書はいりません。依頼を受ける手続きも簡単です。マオは私の行動には慣れているので無言で着いてきます。不愛想な受付の方との手続きを終えたので、早速海中での採取と魔物の討伐の依頼を受けました。
「マオ、行ってきます」
ローブを脱いでマオに渡します。マオは水の中なら私は自由自在と知っているので、快く送り出してくれました。
自分に水魔法をかけて海の中に飛び込みます。
見つけた魔物を討伐し、採取をして上がると人々の視線が集まりました。これで落とし子と勘違いされるでしょう。海の民達は噂が回るのが早いんです。ギルドで換金して、海の皇国のお金も手に入り軍資金もばっちりなのでお買い物もできます。
「嬢ちゃん、サービスするから寄ってって」
店主に手招きされた店で食事をすることにしました。
食事を注文すると、サービスしてくれたのか量が多いのでマオにわけます。
「うちの店にも、とうとう」
勘違いしている店主の話を聞き流します。海の皇国民は海の皇族を信仰してるので、皇族の血を引く落とし子の寄ったお店は箔がつくそうです。知りませんでした。ようやく店主の話が一段落しましたので困った顔で見つめます。
「地図をなくして困ってるんです。メイ伯爵家をご存知ですか」
「あの悲劇の家か」
「悲劇?」
「嬢ちゃんはまだ産まれてなかったから知らないか。聞きたいか?」
「是非お願いします」
「メイ伯爵は本当は伯爵夫人の妹君と婚約していた。ただ、妹君は病で亡くなられた。今の伯爵夫人は妹を亡くして悲しむメイ伯爵を哀れに思い、自ら志願して妹君の代わりに嫁がれた。ただ伯爵夫人は気性が荒い方でメイ伯爵は苦労されていた」
生前、メイ伯爵夫妻とは交流がありました。確かに伯爵夫人の態度は夫に対しても高慢でしたわ。
「二人の間に美しいローナ様がお生まれになった。ローナ様は器量もよく、伯爵令嬢として人気だった。幼馴染の爵位のない護衛騎士と恋仲だった。メイ伯爵は二人を婚姻させるつもりだった。ただ伯爵夫人は許さなかった。伯爵夫人の計らいでローナ様は皇帝の妾に召し上げられた。皇帝陛下は色を好む。嫁いでしばらくすると皇子を授かられた。その後に悲劇は起こった。」
充分悲劇がおこっていますが、まだ続くんですか?
「悲劇ですか?」
「ああ。ローナ様とお子は帝位争いに参加せず、離宮で穏やかに過ごされていた。ただ第二子を授かった時に、予言者が真の後継者の誕生を告げた。皇族には皇帝陛下以外は初代皇帝と同じ黄の瞳を持つ者は生まれなかった。その時にメイ伯爵夫人は生まれる皇子は次期皇帝と公言したことでローナ様の立場は変わった。妃殿下達は自分の皇子を皇帝にさせるためなら手段は選ばない。ローナ様はたくさんの嫌がらせをされてどんどんお心を壊された。療養地に送られる途中に馬車が襲われ姿を消された。それからローナ様を見た者はいない。」
恐ろしいお話です。ローナ・・。多少は想像をしてましたがここまとは・・。
ローナのためにも頑張らないといけません。そして情報を集めないと、
「捜索はされたんですか?」
「メイ伯爵家が主導で。ただこの頃は国は荒れていたから、途中で打ち切られた。妾の一人を気にかけるほど皇帝陛下は暇ではない」
やけにしみじみと語りますが店主は皇帝陛下の知り合いなんでしょうか・・。
「ローナ様の恋仲の騎士様はどうされたんですか?」
「姿を消した」
「そうなんですか・・。お詳しいんですね」
「この話は有名だ。妾は立場をわきまえなさいという教訓だ。君も気をつけるんだよ。メイ伯爵夫人には近づいてはいけない」
「はい。貴重なお話を聞かせてもらってありがとうございます。」
店主が地図を書いてくれたのでありがたく受け取ります。暗くなったのでそろそろ帰らないといけません。帰る途中でレオ様のためのお菓子を買いました。
「レティシア、戻ったのか」
「ただいま帰りました。レオ様、お疲れ様です。お土産です」
「マール公爵が呼んでいた」
「ありがとうございます。」
レオ様にお土産のお菓子を渡したので礼をして部屋に戻りました。さすがに、動きやすい簡素な服でマール公爵にお会いするわけにはいきません。マナに荷物を預けて、着替えたのでマール公爵の部屋を訪ねました。
「レティシア、出かける時は一言声をかけてくれ」
「かしこまりました。明日も外出してきます」
「行先は決まっているのか?」
「メイ伯爵家を訪ねようと思っています。」
「場所を調べてきたのか?」
「はい。外交問題にならないように気をつけます」
「リオを連れていかないか?」
「できればご遠慮させていただきたいんですが」
「マールの名があれば便利だろう」
「そこまでしていただく理由はありません」
「レオ殿下の機嫌を君が取ってくれるだけで十分だ。好きに使っていい。貴族に接触するなら連れていきなさい」
「かしこまりました」
リオをお目付け役でつけられるのは、公爵令嬢として評価の悪い私の所為なので仕方がありません。怖い令嬢達もいませんし、共に行動しても噂になることはないでしょう。それでも関わりたくないですが、我儘は言えませんしマール公爵の命令には逆らえないので頷きました。
いつも思うんですがレオ様どれだけ問題児扱いされてるんですか!?気にするのはやめましょう。
マール公爵に物言いたげな視線を向けられるのは、どうしてでしょうか。昔はいつも笑顔の穏やかな伯父様でした。生前と違う方が混同しないのでありがたいかもしれません。
余計なことは考えずに明日に備えて休みましょう。
マール公爵とたくさん打ち合わせもしたので準備はばっちりです。何があっても抜かりはありません。マール公爵がいれば外交で困ることはありません。
私の専属の侍女のマナと護衛騎士のマオも同行させています。
リオが同行するとは予想外ですが、ほぼ関わらないので気にしません。
レオ様には身の回りの世話もできる万能の護衛騎士をつけています。彼らなら遭難しても絶対に生き残れますわ。ビアードの騎士は万能で大事な御身を守る備えも抜かりはありません。
私は船の見張り台に登り海の匂と風を堪能しています。
久しぶりの潮風に顔が緩んでしまいます。
「レオ様、楽しいですね。あそこに鳥がいますわ」
「はしゃぎすぎじゃないか」
「私、初めてこんなに大きな船に乗りましたの。王国が遠いですわ。船酔いは平気ですか?」
「今更・・。大丈夫だ」
「マール公爵がレオ様の予定を1日空けてくれました。遊びにいきましょうね」
「エイベルの心配する理由がわかった」
無表情のレオ様に笑いかけます。心配しなくてもエイベルのお土産を忘れてませんよ。
「お土産も一緒に探しましょう。通訳はお任せください。海の皇国のお勉強はばっちりです」
レオ様があまり楽しそうではありませんが初めての視察に緊張しているんでしょうか。
視察は慣れなので、頑張っていただくしかありませんわ。私も昔は緊張しましたもの。リオ兄様に笑われ、伯父様に慰められた思い出が懐かしいですわ。私が失態をしてもクロード殿下がフォローしてくださったのは最初の人生の思い出ですわ。
「殿下、レティシア、そろそろ降りてください」
マール公爵に呼ばれたので名残惜しいですが下に降りました。
「伯父様、私、見張り台で眠ってもいいですか?」
「おじさま?君が倒れたらビアード公爵に怒られるからやめてほしい」
ビアード公爵はマール公爵を怒るんでしょうか。
マール公爵が怒られるのは想像できませんが…。騎士達に檄を飛ばす姿は迫力があり怖いです。
「お父様は心配性です。私は普通です。お父様達が丈夫すぎるんです」
「つい最近、寝込んでたよな」
「あれは訓練に夢中になって体力の限界がきたんです。レオ様、最近エイベルに似てきましたよ。よくないです。お気をつけてください。」
レオ様は人をからかうことを覚えました。思う所はありますが、楽しそうなのでお付き合いしています。
マール公爵が静かに空を見上げます。
「海が荒れる。中に入ってなさい」
マール公爵は風使いなので風の流れを読んでいるんでしょう。私は風の流れは読めませんが一つだけできることがあります。
「水流操作しましょうか?」
「できるのか?」
「はい」
エイベルにもらった魔石で自分を風の結界で囲みます。水流操作中は無防備になるので、防御が疎かになります。座り込み、船の周りの波に魔力を送ります。
「伯父様、進む方向を教えてくださいませ」
「リオ、レティシアの傍で指示出せるか?」
「わかりました。そのまま真っすぐ。」
「わかりました。」
リオの指示に従い魔力を流していきます。
船の速度が上がり海の皇国に段々近づいてきました。
どんどん船が進んでいきますが、物凄く嫌な予感がします。
生前はこのあたりの魔物をたくさん討伐した記憶があります。
そして船の下の魔力の気配にため息を飲み込みます。悩んでる場合ではありませんね。
「リオ兄様、私、少しだけ海の中に潜ってきてもいいでしょうか?」
「え?いや、危ないから」
「船の下に魔物がいるので行ってきます。水の中なら私のほうが得意ですわ。すぐ戻ります」
「待って!!」
水魔法で体を覆い海の中に飛び込むと船の下に大きい海亀がいました。
申し訳ありませんが、討伐します。
海亀は魔力を持ち、波を操り船を壊し人を食べます。魔法で甲羅に籠る海亀を攻撃すると驚いて甲羅から頭が出てきたので水の刃で首を落とします。念のため手足も。しばらくすると海亀の体が消えて白い大きい玉が出てきたので、抱えます。海の魔物は倒すと素材に変わり、亡骸の処理がいらないので大変助かります。海から上がり波を操作して船の上に直地します。
視線を集めてます。
マール公爵が真顔で近づいてきました。私の腕の中身が気になるんですよね。
「マール公爵、これを。高価な素材です。海の皇族にお渡ししても喜ばれます」
海の皇国では至宝と言われる海亀の玉を差し出します。
マナがタオルで体を拭いてくれます。
「お嬢様、着替えてから飛び込んでください」
非常事態だったんです。マナは放っておいて護衛騎士のマオを見つめます。
「マオ、乾かしてください」
マオが風魔法で乾かしてくれましたが海水に濡れたので塩がついてます。洗浄魔法をかけたので綺麗になりましたわ。
「確認したいんだが、ビアード領ではよくあることなのか?」
魔物の討伐のことでしょう。ビアード領の森は魔物が頻繁に出ます。そういえばマール公爵領で魔物には出会ったことはありません。
ビアード領では水魔法の練習をしながら、魔物をよく倒してましたわ。
「はい。エイベルがいれば、私が水の中から魔物を浮かせてエイベルが切り刻んで終わりです。ただ海の魔物は大きいので水魔法で仕留めた方が早いです。海亀を倒したので一時的に波は穏やかになるでしょう。この海域は魔物が多そうなので早く抜けたほうがいいと思います。お許しいただけるなら私達が任されます」
「頼むよ」
「マオ、手伝って下さい」
マオの風魔法に合わせて、ストーム様にもお願いして、風で船を加速させました。ストーム様を貸してくれたエイベルに感謝です。
併用して水流操作しながら海の皇国を目指しました。魔物に出会うことはなく予定よりも2日も早く到着しました。うっかり魔力を使い過ぎたので、隣にいるレオ様を見上げます。
「レオ様、魔力を分けてくれませんか?」
旅立つ前にレオ様と魔力の相性が合うか試しました。王族のレオ様は魔力の量が多いです。レオ様が肩に手を置いて魔力を送ってくれます。おかげで体に魔力が満ちて軽くなりました。レオ様は魔力操作が上手なので受け取るのも不快さはありません。
「レティシア、殿下に頼むなら私が分けるよ。リオでもいい」
魔力には相性があります。合わない魔力は体に毒です。
相性がわかりませんし、恐れ多いです。それにマール公爵の貴重な魔力を私がもらうわけにはいきません。海の上では風の魔力は偉大です。有事の際にマール公爵の魔力が足りないなど、あってはいけません。
「マール公爵家の皆様にご迷惑はかけられません」
「殿下は、」
「レオ様に断られたらやめます。レオ様は魔力が有り余ってるので、よくくださるんです。相性が良ければ、マール公爵にも快くくださいますわ。瞳の色を変える魔道具を貸してくださいませ」
マール公爵に呆れた視線で見られてますが何も言われないので気にするのはやめました。
海の皇国に上陸し、滞在中に泊まる屋敷に着きました。体調不良を訴える方はいないので私の役目はありません。最初の2日間は私は公務から外され自由です。マナに荷物整理を任せて、着替えて護衛のマオを連れて出発です。ロキのためにメイ伯爵家の情報を集めましょう。瞳の色は魔道具で海の皇国民に多い緑に変えました。
まずは海の皇国の冒険者ギルドに行きます。
この国のギルドは身分証明書はいりません。依頼を受ける手続きも簡単です。マオは私の行動には慣れているので無言で着いてきます。不愛想な受付の方との手続きを終えたので、早速海中での採取と魔物の討伐の依頼を受けました。
「マオ、行ってきます」
ローブを脱いでマオに渡します。マオは水の中なら私は自由自在と知っているので、快く送り出してくれました。
自分に水魔法をかけて海の中に飛び込みます。
見つけた魔物を討伐し、採取をして上がると人々の視線が集まりました。これで落とし子と勘違いされるでしょう。海の民達は噂が回るのが早いんです。ギルドで換金して、海の皇国のお金も手に入り軍資金もばっちりなのでお買い物もできます。
「嬢ちゃん、サービスするから寄ってって」
店主に手招きされた店で食事をすることにしました。
食事を注文すると、サービスしてくれたのか量が多いのでマオにわけます。
「うちの店にも、とうとう」
勘違いしている店主の話を聞き流します。海の皇国民は海の皇族を信仰してるので、皇族の血を引く落とし子の寄ったお店は箔がつくそうです。知りませんでした。ようやく店主の話が一段落しましたので困った顔で見つめます。
「地図をなくして困ってるんです。メイ伯爵家をご存知ですか」
「あの悲劇の家か」
「悲劇?」
「嬢ちゃんはまだ産まれてなかったから知らないか。聞きたいか?」
「是非お願いします」
「メイ伯爵は本当は伯爵夫人の妹君と婚約していた。ただ、妹君は病で亡くなられた。今の伯爵夫人は妹を亡くして悲しむメイ伯爵を哀れに思い、自ら志願して妹君の代わりに嫁がれた。ただ伯爵夫人は気性が荒い方でメイ伯爵は苦労されていた」
生前、メイ伯爵夫妻とは交流がありました。確かに伯爵夫人の態度は夫に対しても高慢でしたわ。
「二人の間に美しいローナ様がお生まれになった。ローナ様は器量もよく、伯爵令嬢として人気だった。幼馴染の爵位のない護衛騎士と恋仲だった。メイ伯爵は二人を婚姻させるつもりだった。ただ伯爵夫人は許さなかった。伯爵夫人の計らいでローナ様は皇帝の妾に召し上げられた。皇帝陛下は色を好む。嫁いでしばらくすると皇子を授かられた。その後に悲劇は起こった。」
充分悲劇がおこっていますが、まだ続くんですか?
「悲劇ですか?」
「ああ。ローナ様とお子は帝位争いに参加せず、離宮で穏やかに過ごされていた。ただ第二子を授かった時に、予言者が真の後継者の誕生を告げた。皇族には皇帝陛下以外は初代皇帝と同じ黄の瞳を持つ者は生まれなかった。その時にメイ伯爵夫人は生まれる皇子は次期皇帝と公言したことでローナ様の立場は変わった。妃殿下達は自分の皇子を皇帝にさせるためなら手段は選ばない。ローナ様はたくさんの嫌がらせをされてどんどんお心を壊された。療養地に送られる途中に馬車が襲われ姿を消された。それからローナ様を見た者はいない。」
恐ろしいお話です。ローナ・・。多少は想像をしてましたがここまとは・・。
ローナのためにも頑張らないといけません。そして情報を集めないと、
「捜索はされたんですか?」
「メイ伯爵家が主導で。ただこの頃は国は荒れていたから、途中で打ち切られた。妾の一人を気にかけるほど皇帝陛下は暇ではない」
やけにしみじみと語りますが店主は皇帝陛下の知り合いなんでしょうか・・。
「ローナ様の恋仲の騎士様はどうされたんですか?」
「姿を消した」
「そうなんですか・・。お詳しいんですね」
「この話は有名だ。妾は立場をわきまえなさいという教訓だ。君も気をつけるんだよ。メイ伯爵夫人には近づいてはいけない」
「はい。貴重なお話を聞かせてもらってありがとうございます。」
店主が地図を書いてくれたのでありがたく受け取ります。暗くなったのでそろそろ帰らないといけません。帰る途中でレオ様のためのお菓子を買いました。
「レティシア、戻ったのか」
「ただいま帰りました。レオ様、お疲れ様です。お土産です」
「マール公爵が呼んでいた」
「ありがとうございます。」
レオ様にお土産のお菓子を渡したので礼をして部屋に戻りました。さすがに、動きやすい簡素な服でマール公爵にお会いするわけにはいきません。マナに荷物を預けて、着替えたのでマール公爵の部屋を訪ねました。
「レティシア、出かける時は一言声をかけてくれ」
「かしこまりました。明日も外出してきます」
「行先は決まっているのか?」
「メイ伯爵家を訪ねようと思っています。」
「場所を調べてきたのか?」
「はい。外交問題にならないように気をつけます」
「リオを連れていかないか?」
「できればご遠慮させていただきたいんですが」
「マールの名があれば便利だろう」
「そこまでしていただく理由はありません」
「レオ殿下の機嫌を君が取ってくれるだけで十分だ。好きに使っていい。貴族に接触するなら連れていきなさい」
「かしこまりました」
リオをお目付け役でつけられるのは、公爵令嬢として評価の悪い私の所為なので仕方がありません。怖い令嬢達もいませんし、共に行動しても噂になることはないでしょう。それでも関わりたくないですが、我儘は言えませんしマール公爵の命令には逆らえないので頷きました。
いつも思うんですがレオ様どれだけ問題児扱いされてるんですか!?気にするのはやめましょう。
マール公爵に物言いたげな視線を向けられるのは、どうしてでしょうか。昔はいつも笑顔の穏やかな伯父様でした。生前と違う方が混同しないのでありがたいかもしれません。
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