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閑話 マール公爵の観察日記
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三男のリオと義娘のエレンのお気に入りの令嬢は社交界での評価は悪い。公爵令嬢なのに王宮の行事に社交デビューのパーティ以外は顔を出さないからである。
リオが彼女に惹かれているのは気付いても婚約者として認めるかと聞かれると応援する気はおきない。
社交デビューでは視線を集めていたが特に興味は引かない。家の利もなく外見だけの令嬢を迎え入れる理由はない。リオはビアード公爵令嬢に会うために色々動き回っているが、家としては手を貸すつもりはない。珍しくリオが執務室に訪ねた。
「父上、次の試験で上位に入ればビアード孃をうちの夜会に招待してください」
一応上位にはいつも食い込んでいる。20位以下なら妻からの叱責を受けるのは、本人もわかっているから大体8~12位あたりを維持している。
「一位ならな」
「わかりました」
彼女と接点が欲しいリオの即答に苦笑を隠す。
リオは文句を言わずに頷き、学園に戻った。そして、初めて試験勉強をして一位をとって帰ってきた。
妻が結果を見ていつもやる気を出せばいいのにと普段から程よく手を抜く末っ子を眺めて苦笑している。要領のいい末っ子が一番育てにくいらしい。それでも妹と比べたら楽と笑う顔はどんなに年を重ねても美しい。義妹のローゼは確かに扱い辛く、よくルーン公爵家に嫁いだと関心する。ルーン公爵は完璧主義なせいか抜けている人間に弱いから仕方ないか。治癒魔道士と防御結界の腕は一流なのに戦闘センスだけはなく、攻撃と戦闘においては天才なローゼと足して割れば丁度いい。両極端なルーン公爵夫妻を見て育つ甥のエドワードの将来を妻は心配している。
***
ビアード嬢を招待する夜会はエレンが手紙で指定した。
異国の外交官が集まる夜会でビアード嬢を呼ぶ理由がなく、ビアード公爵家に招待状を送ると間違っていないか確認の文が来た。
リオとの取引だったので間違いなく是非参加してほしいと返事を送る。
呼ばなければ帰らず夜会にも顔を出さないリオが帰宅し、いつもは適当に服を着るのに、珍しく妻に相談していた。
本人は隠しているつもりでもリオの初恋はわかりやすすぎた。
今回の夜会はフラン王国の貴族は少ない。親交の深い外交官一家の接待目的である。フラン王国の恥を曝さないように礼儀作法が未熟な子女は招待せず、大人ばかりである。大人だけだと、接待すべき一家の子女が退屈するので、エレンや妻が許した令嬢は招待してある。ビアード嬢の招待は妻は不満そうだが、エレンの希望で折れたらしい。
挨拶を受けていると兄のエスコートでビアード嬢が現れる。多忙なビアード公爵は同行できなかったようだ。
社交デビューの時と同様に年齢に合わない上品なドレスを身に纏っている。学園に入学前の令嬢は可愛いさを押し出すドレスを身に纏うので、清楚で淑女らしい姿は珍しい。最年少なのに招待している令嬢達の中で一番落ち着いたドレスを纏っている。美しい顔立ちだが子供らしいドレスも似合うだろうに勿体ない。妻の視線は一瞬リオに向けられた。
リオがずっと見惚れ、ゲストからの挨拶をうわの空で受けているからか。これは本当に私の息子だろうか?
要領のいいリオなら私に慣れない令嬢を気遣うとそれらしい言い訳を告げ、彼女を追いかけると思っていたが、そんな余裕もないようだ。招待客からの挨拶が一段落する頃に視線を集めている二人がいた。美しい笑みを浮かべたビアード嬢とラル王国の外交官見習いの少年が軽やかに踊っている。
耳を傾けると話している言語がフラン王国語ではない。他にも彼女にダンスを申し込もうとしている子息がいるが、失礼してビアード嬢の手を取りダンスに誘い一番難しいと言われている海の皇国語で話しかけると流暢な言葉が返ってくる。訛りもなく聞きやすい言葉にダンスも上手く、リードをする必要がない。年齢のわりに優秀でビアード嬢の評価が少し良くなった。リオが近くにいるから譲ってあげようと、リオの誘いやすい位置に誘導して手を離した。
うまくリオが誘えた姿を見て、ダンスホールから離れる。息子より年下の令嬢のほうがダンスがうまい事実に傷ついても自業自得。
「マール公爵、御息女はもう婚約者を決めたのですか?マール公爵夫人譲りの美しさに、慎み深さ。もしもまだならうちの息子に」
令嬢への評価が厳しいと有名な伯爵の口からここまで褒め言葉が続くのは始めてだ。
ビアード嬢が娘と勘違いされているのか?
「申しわけありません。彼女はマールとは関係のない他家のご令嬢です」
「あの年齢で巧みに異国語を話すのか。フラン王国の教育は素晴らしいな。もし留学にくるならうちが後見につこう。是非うちに彼女を預けてほしい」
「ありがとうございます。」
ビアード嬢は招いた令嬢の中で一番幼いのに一番人気だった。
彼女が帰った後も巧みな話題に美しい言葉運びを披露したビアード嬢の話題で持ちきりで、招待した令嬢達は良縁を逃した。夫婦で動くことも多い外交官は特に優秀な人材の取り合いが激しいから仕方ない。
翌日は直接話さなかった貴族達からマールの縁者と勘違いされビアード嬢に縁談や留学の勧めの手紙が殺到した。彼女は2か国語しか話せないと言ったが、実際は5か国語話していた。流暢な言葉は流石マール公爵家と絶賛されたがうちの三男よりも有能かもしれない。リオに伝えようとしたら落ち込んでいるからやめた。リオが落ち込む姿は初めて見たが、からかうと妻に諌められるのでやめる。
後日ビアード公爵に探りをいれたら、他国の言語は教えていないらしい。国外に嫁がせることを聞いたら殺気を向けられたので、縁談や留学の話は丁重に断った。
普段は冷静なのに、私的な場で妻と娘が関わると心の狭い男になるのを、失念していた。
読書が趣味と聞いたので、豊富な話題は本の知識か。言語はビアードを、訪問する旅商人にでも習っているんだろうか?エレンが気に入る理由に納得し、もしもビアード嬢が望むならリオの婚約者として迎えるのもいいかもしれない。ビアード嬢が望まない限りは親馬鹿な父親が手放さない気がする。
***
息子達は令嬢に人気だったが末っ子は本命にだけは全く相手にされないらしい。
ビアード嬢がうちの茶会に参加すると知ったリオは前日の夜から帰り、エレンも帰国した。
リオが彼女の到着をそわそわと待ちビアードの馬車が到着すると、すぐに飛び出した。馬車から降り、息子に出迎えられたらビアード嬢は驚くだろう。リオが令嬢を自ら迎えに行くのは初めてである。
息子の愉快な姿を思い浮かべ庭園を眺めているとリオにサロンに案内されているはずのビアード嬢は私の前に一人で現れた。彼女は綺麗な所作で挨拶をして、恥じらいながら手紙を差し出す様子は愛らしかった。
子供が美しい庭園に見惚れ自由に歩いても咎めるつもりはない。
ようやく現れた息子は目を吊り上げて私を見ている。動揺している息子にエスコートをどうするか聞くと、私に譲る気はないようだ。
息子よ、動揺が滲み出て初恋相手が困惑していることに気づかないのはまずいだろう?私の息子はやはり恋愛音痴のようだ。
足早に去る動揺した息子のエスコートの杜撰さに苦笑しながら様子を見守り、ビアード嬢の手紙の封を切る。
流暢な字で挨拶が綴られて、リオの慌てる内容など一言も書いていないと笑ったのは二枚目を読むまでだった。美しく読みやすい古語で二人で話がしたいと綴られていた。妻への無礼はないと言っていたのはこのことだろう。綴りが難しく役に立たない古語は神官は習得しているが令嬢の教養にはない。うちの息子達にも学ばせていない。武門貴族の令嬢なのに優秀過ぎないか?彼女の聡明さを評価すべきか二人で話し合いたいという警戒心のなさを咎めるべきか・・・。私は妻一筋なので、手を出すつもりはないから彼女の思惑にのってみようか。それに愛らしい令嬢の誘いを無下にはできない。
ビアード公爵令嬢の度胸は父親譲りか、警戒心もなく私の部屋に入る姿は堂々としている。公爵相手だと初対面は緊張する令嬢ばかりで、緊張せず美しい笑みを浮かべ礼をする彼女はさらに予想を裏切る。
12歳の社交が苦手な武門貴族の令嬢に取引を持ちかけられるとは思わなかった。二人で話したいと譲る様子もない彼女が結界を提案した。彼女の結界という提案の甘さにやはり子供かと思った私が迂闊だった。
詠唱もなく一瞬で2つの結界を構築した。うちの侍従は簡易な結界なら魔法で話を聞けたが彼女の結界は隙がないから全く中の様子を確かめられないだろう。たぶん防音と目くらましの結界だろう。ビアード公爵家ではこの程度が常識ならば末恐ろしい。
魔法の腕はリオよりも上かもしれない。こんな高度な結界を無詠唱でリオは構築できないし、私も解除するのに時間がかかる。
レティシア・ビアードは規格外の令嬢だった。
揺さぶりも聞かず、怯えや戸惑いもなく子供らしくない。
儚げな外見とは違い度胸も据わり、エレンが気に入る理由がようやくわかった。確かに外交官として資質があるだろう。
話せば話すほど驚かされる。私と対等に取引できる令嬢はほぼいない。
そして、彼女の取引の対価に言葉を失う。
海の皇国の情報はほとんど手に入らない。海の皇国民は警戒心が強くよそ者に情報をもらさないと有名だ。
彼女は出会った旅人から話を聞いたらしい。
聞けば聞くほど知らない情報が。
信憑性はないと言ってもここまで情報を手に入れるのは誰にもできなかった。
信憑性のない情報でも隙なく交渉する姿は下手な外交官よりもうまい。そして情報の扱い方を委ね、自己責任と匂わせている。公爵相手に保険をかける余裕があるとは。無知なのか計算なのか…。
自分の目的を告げ協力を取り付ける前に対価を全て話すのは甘さなのか判断はつかない。
これだけ貴重な対価を用意し何を求めるのかと思えばある伯爵家の情報が欲しいと願うだけだった。
カマをかけると本当は自分で保護した家臣の情報を得るために海の皇国に行きたいと言う言葉に驚く。家臣の今後を相談するために使いを出すのではなく、自らが足を運ぼうとする者はほとんどいない。うちの息子達もそんな行動力はなく、まず使用人の幸せにそこまで心を配れないし介入しない。給金の分だけ働けばいいというスタンスだ。
彼女と話をするとまだまだ情報を持っていそうである。
海の皇国の視察に同行させるのも興味深い。どこまで彼女の力で調べられるか見てみたい。それに訪問すれば自分で情報を集められるという自信の根拠も。
やる気のない息子は視察の同行を断ったが彼女の名前を出すと即答で同行を希望した。
やる気のないリオは彼女という餌につられて海の皇国語を恐ろしい早さで習得した。普段もやる気を出してくれれば楽なんだが・・・。
夕方にエレンが執務室に訪ねてきた。
「義父様、ビアード様と二人っきりでどんなお話を?」
「海の皇国の視察に同行したいと頼まれた。ビアード公爵に反対されているらしい」
「外交官に興味を持ったのかしら?」
「ビアード公爵家が手放さないから外交官は無理だろう」
「未来は誰にもわかりません。彼女の同行は楽しそうですね。リオと進展はあるかしら?ビアード公爵夫人は説得しますから結果は教えて下さいね」
綺麗に笑ったエレンが一番難関のビアード公爵家の説得を引き受けてくれるらしい。
エレンが動いたおかげでビアード嬢の視察の同行許可をもらった。エレンと妻がビアード公爵夫人を説得してくれたおかげである。
ただこの視察に一つ問題がある。皇族とのやりとりもあり王族が同行予定。指名されたのはクロード殿下ではなくレオ殿下だった。レオ殿下は気まぐれで我儘、公務もしない問題児。大臣達も手をやいているが国王陛下は暖かく見守るため、諫めるのはクロード殿下だけ。
「アリア様、本当にレオ殿下を?」
「ええ。クロードも忙しいの。レオが受けてくれて良かったわ。お兄様なら問題ないでしょう?失敗しても構わないけど」
愉快に笑いお茶を飲む妹の思惑がわからない。妹は王家に嫁いで変わってしまった。
私の挨拶にレオ殿下は素っ気なく頷くだけで立ち去り会話が通じているか不安で堪らない。
顔を合わせられただけでも運がいいと侍女に慰められても、一切安心できる要素はない。
***
ビアード嬢を呼び視察の打ち合わせをしていた。
彼女は初めての国外の視察のため礼儀と教養の確認をするときちんと基本をおさえており、貴族の前に出しても問題はなさそうだ。レオ殿下よりよっぽど安心できる。彼女への試験を終えて、日程に自由日を3日与えると話すと目を丸くして嬉しそうに笑う顔は初めて見る年相応の表情だった。愛らしい笑顔に息子が夢中になる気持ちがわかった。
資料を持ちゆっくりと立ち上がった彼女の動きが止まり、何か聞きたいことでもあるのかと見ると、
「マール公爵、学園で会いますのでレオ様に資料を渡しましょうか?」
「え?」
「明日の放課後はレオ様とお茶をしますので」
彼女がレオ殿下と親しいことを忘れていた。
私はレオ殿下との関わり方がわからないので、ありがたい申し出に任せてみるか。
「頼むよ」
「かしこまりました。結果はお手紙でよろしいですか?」
「ああ。構わない」
レオ殿下の分の資料を渡すと退室の礼をして立ち去る。リオは別の課題を出しているので打ち合わせには同席させていない。
翌日の夜にビアード嬢から手紙が届いた。
「1日だけ空き時間が欲しい、予定に余裕をもたせてほしい」と綴られていた。
意味がわからず説明が欲しくて後日呼び出した。
「要望の説明を」
「レオ様は答えを出すまで時間がかかります。会談の時間が短すぎるそうです。あと物凄く集中力があるんですが、集中が切れると上手く思考ができません。集中が切れたら寝て回復するそうです。重要な会談は別日程で予定の一番最初に組んでほしいそうです」
「無表情で頷くのは」
「あれは集中が切れて、ぼんやりしてる時です。個人でやりたいことがあるので1日お休みがほしいそうです」
ぼんやりだと!?
ビアード嬢がずっと親し気にレオ殿下のことを話しているが別人じゃないだろうか?
1日休み?
「やりたいこと?」
「私が通訳しながらお世話します。私の護衛は優秀なので御身を危険にさらしません。外交の妨げになることはありませんのでご安心ください」
朗らかに笑う彼女の言葉は予想外ばかり。
遊びにいきたいとレオ殿下が言うのは想像できないが、二人で遊びにいきたいのか。
やはり私の知るレオ殿下とは別人。レオ殿下は彼女に任せたほうがいいかもしれない。私は殿下とは意志疎通ができない。
レオ殿下の機嫌を取れるだけでも同行させる価値がある。
レオ殿下との打ち合わせはビアード嬢を挟むと順調に終えた。レオ殿下の随行予定に王家から侍女や侍従もつかないことにビアード嬢は何も言わず護衛の手配だけ申し出る。
アリアがレオ殿下を一人だけで行かせる思惑がわからない。護衛の手配等必要なことをビアード嬢が申し出てくれるのがありがたく、残念ながらリオより有能だ。
***
準備は予想以上に楽に順調に進み、出立の日を迎える。
レオ殿下は護衛騎士を連れて現れた。王宮への迎えはいらないとレティシアに言われていたが時間通りに来たことに安堵する。
「レオ殿下、よろしくお願いします」
「ああ」
相変わらず無表情で何を考えているかわからない。
「マール公爵、マール様、このたびはよろしくおねがいします」
いつの間にかレティシアが傍にいたらしい。殿下への挨拶が後って大丈夫なんだろうか・・。
「こちらこそ」
礼をした彼女はレオ殿下のもとに行き、リオは見向きもされていない。彼女の様子を全く気にしてないのは慣れているんだろうか?
「レオ様、起きてください。また夜更かししたんですか?」
「起きてる。日差しが・・」
「良いお天気はありがたくすばらしいことです。仕方ありません。マール公爵、船に乗ってもいいですか?船室でレオ様を休ませたいんですが」
「ああ。構わないよ。リオ」
リオに指示を出し、案内させる。無表情の殿下はニコニコしているレティシアの言葉に頷いている。
レティシアはレオ殿下の世話をやき食事もレオ殿下の部屋で護衛と一緒にすませている。殿下の世話を頼んだがここまで献身的に世話をするとは思わなかった。そして大人しい殿下にも驚いている。
「マール公爵、見張り台に登ってもいいですか?」
「危ないよ」
「落ちたら、護衛騎士が風魔法で受け止めてくれます」
目を輝かせているレティシアに安全ならと許可を出す。危険があれば護衛騎士が止めるだろう。
「気をつけるんだよ」
「ありがとうございます。レオ様、お許しが出ました。行きましょう!!」
殿下も登るのか!?二人は一緒に見張り台に登っている。
しばらくしても二人は降りてこない。レティシアのはしゃいでいる声がかすかに聞こえてきた。
「リオ、大丈夫か?」
息子はレティシア達に存在を忘れられている。彼女に見惚れて私の言葉は届いていない。せっかくなので普段は逃げる息子にじっくり教育するか。レティシアの前ならしっかり学ぶだろう。
レオ殿下は不満も言わず癇癪もおこさず恐ろしいほど静かに過ごされている。レオ殿下とレティシアの親しそうな様子に妬かないリオは大丈夫なのか?
波が荒れるので船内に戻るようにレティシアに話すと水流操作を提案された。
レティシアはやはり魔法の適性があるらしい。海の波を操る水流操作をできる者は少ない。
あまりに見事だったので彼女に任せた。
リオにレティシアの付き添いをさせたから、多少は距離が近づくといいんだが…。水流操作の腕をもつ義娘は魅力的だ。風使いのリオと組ませれば確実に安全な船旅が約束される。
勢いよく扉が開き、レティシアに付き添わせたリオが部屋に駆け込んできた。
「父上、ビアード嬢が飛び込みました」
「は?」
「船の下に魔物がいると」
慌てて出て行くと、レティシアの侍女がタオルを用意している。
護衛騎士も焦った様子はなくレオ殿下と海を眺めている。
「そろそろ戻ってくるか?」
「さすがにお嬢様も、今日は水中で遊んだりしないので、すぐに上がってきますよ」
説明を求めるために近づくと波の音がして、大きい玉を抱えたレティシアが波に乗り、船に飛び降り華麗な着地を披露した。
笑顔で白い玉を渡されて困惑する。高価な素材ってどうして知っているんだろうか。当たり前のように話すけど一人で魔物を討伐したのか!?
侍女に着替えずに飛び込んだことを説教されているビアード公爵令嬢は私の常識とは違うらしい。
深窓の令嬢はビアード領では魔物退治もするのか?
レティシアは魔力をレオ殿下から分けてもらっている。彼女にとってはレオ殿下よりマール公爵家のほうが敬意を払っているのだろうか・・・。彼女はよくわからない。船を濡らした謝罪を受けたが、気にしていたのはそこではない。
レティシア達のおかげで予定よりも2日もはやく到着する。風と水の魔導士が揃ったからこそか。護衛騎士の風魔法の腕も見事でビアードの魔導士の質の高さに驚く。
最初の2日はレティシアの予定は自由にしていた。体の弱い彼女に船旅は過酷かと心配したがそんな気遣いはいらなかった。
屋敷に着き、私達は出かけるためレティシアの部屋を訪ねると誰もいない。
彼女の部屋の前でリオと頭を抱えていると正装に着替えたレオ殿下が近づいて来た。
「レティシアは出かけた」
「出かけたとは?」
「1時間前に。旅慣れしているから心配いらないって楽しそうにマオ達と出かけた。行先はわかるか?」
「行先は存じませんが暗くなる前には帰られます。お嬢様は門限は必ず守りますので」
レオ殿下とビアードの騎士の言葉に礼を言うとレオ殿下は静かに頷く。
公爵令嬢が旅慣れしているのか!?屋敷について、すぐに出かけたとは・・・。
初日の予定を終わらせて帰ると侍女だけが戻っている。侍女もレティシアの行き先は知らず暗くなる前には帰ると言われ待つしかなかった。
しばらくするとレティシアが私を訪ねた。
レオ殿下が私が探していたことを伝えてくれるとは思わなかった。ただレオ殿下への驚きは彼女の話を聞いて一瞬で吹き飛ぶ。
彼女の目的のメイ伯爵家の場所はすでに調べ終わり、明日には伯爵を訪ねるらしい。
恐ろしい行動力と情報収集能力。まさか半日でここまで調べられるとはうちの諜報部隊よりも優秀かもしれない。リオに見習って欲しい。
せっかくだからリオを監視につけるか。貴族とのやりとりを一人でさせるのは心配であり、外出先を告げずに未成年が出かけることも大人として見過ごせない。
「リオ、明日はビアード嬢について監視しろ」
「監視?」
「貴族と接触するかもしれない。外交問題」
「わかりました」
リオに外交の実地を教えるよりも彼女の監視のほうが重要だった。もし彼女から学び情報収集能力があがれば一石二鳥。レオ殿下がいれば相手をしてもらえるだろうか…。うちの息子は上機嫌で了承した。実地は教えてないが基本は叩き込んであるので心配ないだろう。
***
リオを監視につけたのは正解だった。
彼女は恐ろしい情報を掴んで帰ってきた。古語で書かれた報告書に言葉を失う。海の皇国での会話は全部皇族の耳に届くとは。どこまで本当かはわからなくても警戒は必要だ。
一番頭を抱えたいのは彼女が皇帝に献上されそうになったことだった。
「リオ、外交に参加させるべきか?」
「やめたほうがいいと思います」
明日からはレティシアを随行させる予定だった。一緒に過ごせると楽しみにしていたリオさえ断るならやめたほうがいいだろう。
彼女にはレオ殿下の世話と機嫌をとることだけ頼むことにした。もしレティシアを海の皇国に置いて帰ったらビアード公爵が恐ろしい。うちに騎士を差し向けられるかもしれない・・。ビアード公爵夫妻に必ず無事に連れて帰ると約束している。
そして彼女は大きな厄介者を抱えてきた。リオも事情を知らないらしい。
レティシアに亡命させたいと頼まれた男と面会すると片腕がなく、暗い顔で目が死んでいる。
「レティシア、本気かい?」
「はい。念願の荷物持ちです。しっかりお世話するのでサインをお願いします」
笑顔で渡された書類は亡命に必要な書類がそろえられている。
あとは私がサインさえすれば、亡命の手続きは終わりである。
「この書類は?」
「公爵令嬢の嗜みですわ。なにか足りない物があれば揃えますので教えてくださいませ。私のお部屋でお世話するので、屋敷に滞在することだけお許しください」
「部屋が余っているから一部屋与えるよ」
「ご迷惑は」
「構わないよ。年頃の君と同室のほうが問題だ」
「かしこまりました。お気遣いありがとうございます」
「もう遅いから休みなさい」
「はい。失礼します」
礼をして立ち去るレティシアにため息をこぼす。見知らぬ男を同室にさせたなどビアード公爵に知られればまずい。彼女の部屋にはベッドが一つしかないのにどうする気だったんだか・・。
念の為、もう一度男の様子は見に行くか。危険なら亡命させるわけにはいかない。たとえメイ伯爵の紹介状があっても。
男の部屋にはレティシアと護衛騎士がいる。
「マオ、起こしてください」
護衛騎士が寝ている男に声を掛けて、力づくで座らせた。
「お食事してください」
食事をとらない男にレティシアがため息を溢し、強引に男の口にスプーンを運んでいる。
「せっかく用意したので召し上がってください」
笑顔で圧力をかけながら食べさせている。全部食べ終わったので護衛騎士に男を拘束している風魔法を解かせた。無理矢理過ぎないか!?
「マナ、見張っててください。私の荷物持ちです。できれば王国語を覚えさせたいけどまだ無理ですね。何かあればマナに頼んでください。」
レティシアが部屋を出て行く。
それからは男に海の皇国語で話しかけそのあとは同じ言葉をフラン王国語で話しかけていた。反応しないのに一方的に話しかけている。レティシアが自ら世話するのか・・。
レティシアは男とレオ殿下の相手で忙しくリオは全く相手にされなかった。
暇な時間は常に男の部屋で一方的にフラン王国語を教えている。返答がなくても気にしないらしい。レティシアの無理矢理な看病と教育風景は男が憧れるシチュエーションなのに、全く羨ましいとは思えない。私ではなくリオが見たら違うんだろうか?
***
外交は順調に進んでいた。早く帰りたいリオと大人しいレオ殿下が真面目に取り組んでいるおかげだろう。もしかしたらカナトよりも才能があるかもしれない。
予想外を起こすのはレティシアだけ。
レティシアの引きは恐ろしく、偶然知り合った皇子を連れて帰ってきた。また駄目元で頼んだ情報も全て完璧に調べ上げている。公爵令嬢でなければうちの諜報部隊に大金を積んでも欲しい。
レティシアは私に皇子を紹介し礼をして退席した。
優秀な魔導士を欲しがる皇子と魔導士を派遣する取引をした。ビアードに劣っても、マールにも優秀な風の魔導士は豊富だ。時々息子達を紛れ込ませて探らせるのもいいし、閉鎖的な海の皇国の情報が手に入るのはありがたい。まさか皇子と繋がりができるとは思っていなかった。
レティシアは皇子に興味はないのか、その後は何も聞かれなかった。見送りにも出てこなかったが非公式なのでいいか。
最終日は休養日にあてていた。レティシアはレオ殿下と朝から出かけた。
彼女の勧めるギルドに行くと貴重な本で溢れていた。本を読んでいる間にリオに簡単な依頼を受けさせる。レティシアに相手にされないおかげで、息子に勉強させる時間はたくさんあった。
「換金お願いします」
聞き慣れた声に振り向くとレオ殿下とレティシアがいた。
袋の中から大量の素材を出している。
「軍資金はばっちりです」
「お疲れ様でした」
立ち去っていく二人は私のことは気づいていない。依頼をこなしているなんて初耳だった。危ないことはしないと約束させたんだけど・・。ビアードは常識がおかしいが、注意すべきだろうか?
「ルリ、帰るのか?」
「はい。今日はここまでです。今日はいい波でしたわ。失礼します」
冒険者と親しそうに話し、手を振ってギルドを出て行く。レティシアは12歳の公爵令嬢なのだろうか。気難しいといわれる冒険者とも打ち解けている。
「父上、もういいですか?」
帰ってきたリオに別の依頼書を渡す。
「報酬は好きに使っていい」
ため息をついたリオが依頼書を受け取り手続きに行く。リオは冒険者とは打ち解けられていない。やはりレティシアのほうが優秀なのか…。夕方までギルドで過ごし屋敷に帰り翌日に出国した。
リオはレティシアとは親しくなれなかった。ただ彼女にお茶に誘われたと顔を緩ませている。何度かレオ殿下と3人でお茶をしたらしい。3人で仲良くお茶するだけで喜ぶ息子が不憫だが、レオ殿下の扱い方がわかったと呟く息子を久しぶりに褒めた。レオ殿下の応対ができるなら非常にありがたいから今後も連れ出すか。さすがに毎回レティシアを借りられないだろう。
帰国し、ビアード公爵にレティシアを欲しいと言うと殺気を向けられた。ビアード公爵に勝てたらお付き合いを考えてもらえると恐ろしい笑顔で言われた。
「リオ、レティシアの婚約者候補になりたいなら、ビアード公爵に勝つのが条件らしい」
「修行してきます」
レティシアが絡むとリオが勤勉になる。
強さに全く興味がなかったリオが必死に訓練する姿を見ながら、リオは彼女にフラれたら他の相手を選べるのか不安を覚えた。
最近の息子はレティシアを中心に生きている気がしてならない。
息子の初恋が報われる様子は全くない。レティシアがリオに興味がないのは明らかである。
欲しい物のためなら手段を選ばないマールの血が兄弟の中で一番濃いのはリオかもしれない。
マールの執着はフラン王国一。
欲しい物を手に入れるために力を手に入れ家を大きくし気付いたら外交で王国一の立ち位置にいた。忠臣のビアードとは正反対で私利私欲の塊で大きくなった家。
私もマールの血が濃いからリオのことは責められない。
妻にリオの初恋を応援してほしいと相談するかな…。
リオが彼女に惹かれているのは気付いても婚約者として認めるかと聞かれると応援する気はおきない。
社交デビューでは視線を集めていたが特に興味は引かない。家の利もなく外見だけの令嬢を迎え入れる理由はない。リオはビアード公爵令嬢に会うために色々動き回っているが、家としては手を貸すつもりはない。珍しくリオが執務室に訪ねた。
「父上、次の試験で上位に入ればビアード孃をうちの夜会に招待してください」
一応上位にはいつも食い込んでいる。20位以下なら妻からの叱責を受けるのは、本人もわかっているから大体8~12位あたりを維持している。
「一位ならな」
「わかりました」
彼女と接点が欲しいリオの即答に苦笑を隠す。
リオは文句を言わずに頷き、学園に戻った。そして、初めて試験勉強をして一位をとって帰ってきた。
妻が結果を見ていつもやる気を出せばいいのにと普段から程よく手を抜く末っ子を眺めて苦笑している。要領のいい末っ子が一番育てにくいらしい。それでも妹と比べたら楽と笑う顔はどんなに年を重ねても美しい。義妹のローゼは確かに扱い辛く、よくルーン公爵家に嫁いだと関心する。ルーン公爵は完璧主義なせいか抜けている人間に弱いから仕方ないか。治癒魔道士と防御結界の腕は一流なのに戦闘センスだけはなく、攻撃と戦闘においては天才なローゼと足して割れば丁度いい。両極端なルーン公爵夫妻を見て育つ甥のエドワードの将来を妻は心配している。
***
ビアード嬢を招待する夜会はエレンが手紙で指定した。
異国の外交官が集まる夜会でビアード嬢を呼ぶ理由がなく、ビアード公爵家に招待状を送ると間違っていないか確認の文が来た。
リオとの取引だったので間違いなく是非参加してほしいと返事を送る。
呼ばなければ帰らず夜会にも顔を出さないリオが帰宅し、いつもは適当に服を着るのに、珍しく妻に相談していた。
本人は隠しているつもりでもリオの初恋はわかりやすすぎた。
今回の夜会はフラン王国の貴族は少ない。親交の深い外交官一家の接待目的である。フラン王国の恥を曝さないように礼儀作法が未熟な子女は招待せず、大人ばかりである。大人だけだと、接待すべき一家の子女が退屈するので、エレンや妻が許した令嬢は招待してある。ビアード嬢の招待は妻は不満そうだが、エレンの希望で折れたらしい。
挨拶を受けていると兄のエスコートでビアード嬢が現れる。多忙なビアード公爵は同行できなかったようだ。
社交デビューの時と同様に年齢に合わない上品なドレスを身に纏っている。学園に入学前の令嬢は可愛いさを押し出すドレスを身に纏うので、清楚で淑女らしい姿は珍しい。最年少なのに招待している令嬢達の中で一番落ち着いたドレスを纏っている。美しい顔立ちだが子供らしいドレスも似合うだろうに勿体ない。妻の視線は一瞬リオに向けられた。
リオがずっと見惚れ、ゲストからの挨拶をうわの空で受けているからか。これは本当に私の息子だろうか?
要領のいいリオなら私に慣れない令嬢を気遣うとそれらしい言い訳を告げ、彼女を追いかけると思っていたが、そんな余裕もないようだ。招待客からの挨拶が一段落する頃に視線を集めている二人がいた。美しい笑みを浮かべたビアード嬢とラル王国の外交官見習いの少年が軽やかに踊っている。
耳を傾けると話している言語がフラン王国語ではない。他にも彼女にダンスを申し込もうとしている子息がいるが、失礼してビアード嬢の手を取りダンスに誘い一番難しいと言われている海の皇国語で話しかけると流暢な言葉が返ってくる。訛りもなく聞きやすい言葉にダンスも上手く、リードをする必要がない。年齢のわりに優秀でビアード嬢の評価が少し良くなった。リオが近くにいるから譲ってあげようと、リオの誘いやすい位置に誘導して手を離した。
うまくリオが誘えた姿を見て、ダンスホールから離れる。息子より年下の令嬢のほうがダンスがうまい事実に傷ついても自業自得。
「マール公爵、御息女はもう婚約者を決めたのですか?マール公爵夫人譲りの美しさに、慎み深さ。もしもまだならうちの息子に」
令嬢への評価が厳しいと有名な伯爵の口からここまで褒め言葉が続くのは始めてだ。
ビアード嬢が娘と勘違いされているのか?
「申しわけありません。彼女はマールとは関係のない他家のご令嬢です」
「あの年齢で巧みに異国語を話すのか。フラン王国の教育は素晴らしいな。もし留学にくるならうちが後見につこう。是非うちに彼女を預けてほしい」
「ありがとうございます。」
ビアード嬢は招いた令嬢の中で一番幼いのに一番人気だった。
彼女が帰った後も巧みな話題に美しい言葉運びを披露したビアード嬢の話題で持ちきりで、招待した令嬢達は良縁を逃した。夫婦で動くことも多い外交官は特に優秀な人材の取り合いが激しいから仕方ない。
翌日は直接話さなかった貴族達からマールの縁者と勘違いされビアード嬢に縁談や留学の勧めの手紙が殺到した。彼女は2か国語しか話せないと言ったが、実際は5か国語話していた。流暢な言葉は流石マール公爵家と絶賛されたがうちの三男よりも有能かもしれない。リオに伝えようとしたら落ち込んでいるからやめた。リオが落ち込む姿は初めて見たが、からかうと妻に諌められるのでやめる。
後日ビアード公爵に探りをいれたら、他国の言語は教えていないらしい。国外に嫁がせることを聞いたら殺気を向けられたので、縁談や留学の話は丁重に断った。
普段は冷静なのに、私的な場で妻と娘が関わると心の狭い男になるのを、失念していた。
読書が趣味と聞いたので、豊富な話題は本の知識か。言語はビアードを、訪問する旅商人にでも習っているんだろうか?エレンが気に入る理由に納得し、もしもビアード嬢が望むならリオの婚約者として迎えるのもいいかもしれない。ビアード嬢が望まない限りは親馬鹿な父親が手放さない気がする。
***
息子達は令嬢に人気だったが末っ子は本命にだけは全く相手にされないらしい。
ビアード嬢がうちの茶会に参加すると知ったリオは前日の夜から帰り、エレンも帰国した。
リオが彼女の到着をそわそわと待ちビアードの馬車が到着すると、すぐに飛び出した。馬車から降り、息子に出迎えられたらビアード嬢は驚くだろう。リオが令嬢を自ら迎えに行くのは初めてである。
息子の愉快な姿を思い浮かべ庭園を眺めているとリオにサロンに案内されているはずのビアード嬢は私の前に一人で現れた。彼女は綺麗な所作で挨拶をして、恥じらいながら手紙を差し出す様子は愛らしかった。
子供が美しい庭園に見惚れ自由に歩いても咎めるつもりはない。
ようやく現れた息子は目を吊り上げて私を見ている。動揺している息子にエスコートをどうするか聞くと、私に譲る気はないようだ。
息子よ、動揺が滲み出て初恋相手が困惑していることに気づかないのはまずいだろう?私の息子はやはり恋愛音痴のようだ。
足早に去る動揺した息子のエスコートの杜撰さに苦笑しながら様子を見守り、ビアード嬢の手紙の封を切る。
流暢な字で挨拶が綴られて、リオの慌てる内容など一言も書いていないと笑ったのは二枚目を読むまでだった。美しく読みやすい古語で二人で話がしたいと綴られていた。妻への無礼はないと言っていたのはこのことだろう。綴りが難しく役に立たない古語は神官は習得しているが令嬢の教養にはない。うちの息子達にも学ばせていない。武門貴族の令嬢なのに優秀過ぎないか?彼女の聡明さを評価すべきか二人で話し合いたいという警戒心のなさを咎めるべきか・・・。私は妻一筋なので、手を出すつもりはないから彼女の思惑にのってみようか。それに愛らしい令嬢の誘いを無下にはできない。
ビアード公爵令嬢の度胸は父親譲りか、警戒心もなく私の部屋に入る姿は堂々としている。公爵相手だと初対面は緊張する令嬢ばかりで、緊張せず美しい笑みを浮かべ礼をする彼女はさらに予想を裏切る。
12歳の社交が苦手な武門貴族の令嬢に取引を持ちかけられるとは思わなかった。二人で話したいと譲る様子もない彼女が結界を提案した。彼女の結界という提案の甘さにやはり子供かと思った私が迂闊だった。
詠唱もなく一瞬で2つの結界を構築した。うちの侍従は簡易な結界なら魔法で話を聞けたが彼女の結界は隙がないから全く中の様子を確かめられないだろう。たぶん防音と目くらましの結界だろう。ビアード公爵家ではこの程度が常識ならば末恐ろしい。
魔法の腕はリオよりも上かもしれない。こんな高度な結界を無詠唱でリオは構築できないし、私も解除するのに時間がかかる。
レティシア・ビアードは規格外の令嬢だった。
揺さぶりも聞かず、怯えや戸惑いもなく子供らしくない。
儚げな外見とは違い度胸も据わり、エレンが気に入る理由がようやくわかった。確かに外交官として資質があるだろう。
話せば話すほど驚かされる。私と対等に取引できる令嬢はほぼいない。
そして、彼女の取引の対価に言葉を失う。
海の皇国の情報はほとんど手に入らない。海の皇国民は警戒心が強くよそ者に情報をもらさないと有名だ。
彼女は出会った旅人から話を聞いたらしい。
聞けば聞くほど知らない情報が。
信憑性はないと言ってもここまで情報を手に入れるのは誰にもできなかった。
信憑性のない情報でも隙なく交渉する姿は下手な外交官よりもうまい。そして情報の扱い方を委ね、自己責任と匂わせている。公爵相手に保険をかける余裕があるとは。無知なのか計算なのか…。
自分の目的を告げ協力を取り付ける前に対価を全て話すのは甘さなのか判断はつかない。
これだけ貴重な対価を用意し何を求めるのかと思えばある伯爵家の情報が欲しいと願うだけだった。
カマをかけると本当は自分で保護した家臣の情報を得るために海の皇国に行きたいと言う言葉に驚く。家臣の今後を相談するために使いを出すのではなく、自らが足を運ぼうとする者はほとんどいない。うちの息子達もそんな行動力はなく、まず使用人の幸せにそこまで心を配れないし介入しない。給金の分だけ働けばいいというスタンスだ。
彼女と話をするとまだまだ情報を持っていそうである。
海の皇国の視察に同行させるのも興味深い。どこまで彼女の力で調べられるか見てみたい。それに訪問すれば自分で情報を集められるという自信の根拠も。
やる気のない息子は視察の同行を断ったが彼女の名前を出すと即答で同行を希望した。
やる気のないリオは彼女という餌につられて海の皇国語を恐ろしい早さで習得した。普段もやる気を出してくれれば楽なんだが・・・。
夕方にエレンが執務室に訪ねてきた。
「義父様、ビアード様と二人っきりでどんなお話を?」
「海の皇国の視察に同行したいと頼まれた。ビアード公爵に反対されているらしい」
「外交官に興味を持ったのかしら?」
「ビアード公爵家が手放さないから外交官は無理だろう」
「未来は誰にもわかりません。彼女の同行は楽しそうですね。リオと進展はあるかしら?ビアード公爵夫人は説得しますから結果は教えて下さいね」
綺麗に笑ったエレンが一番難関のビアード公爵家の説得を引き受けてくれるらしい。
エレンが動いたおかげでビアード嬢の視察の同行許可をもらった。エレンと妻がビアード公爵夫人を説得してくれたおかげである。
ただこの視察に一つ問題がある。皇族とのやりとりもあり王族が同行予定。指名されたのはクロード殿下ではなくレオ殿下だった。レオ殿下は気まぐれで我儘、公務もしない問題児。大臣達も手をやいているが国王陛下は暖かく見守るため、諫めるのはクロード殿下だけ。
「アリア様、本当にレオ殿下を?」
「ええ。クロードも忙しいの。レオが受けてくれて良かったわ。お兄様なら問題ないでしょう?失敗しても構わないけど」
愉快に笑いお茶を飲む妹の思惑がわからない。妹は王家に嫁いで変わってしまった。
私の挨拶にレオ殿下は素っ気なく頷くだけで立ち去り会話が通じているか不安で堪らない。
顔を合わせられただけでも運がいいと侍女に慰められても、一切安心できる要素はない。
***
ビアード嬢を呼び視察の打ち合わせをしていた。
彼女は初めての国外の視察のため礼儀と教養の確認をするときちんと基本をおさえており、貴族の前に出しても問題はなさそうだ。レオ殿下よりよっぽど安心できる。彼女への試験を終えて、日程に自由日を3日与えると話すと目を丸くして嬉しそうに笑う顔は初めて見る年相応の表情だった。愛らしい笑顔に息子が夢中になる気持ちがわかった。
資料を持ちゆっくりと立ち上がった彼女の動きが止まり、何か聞きたいことでもあるのかと見ると、
「マール公爵、学園で会いますのでレオ様に資料を渡しましょうか?」
「え?」
「明日の放課後はレオ様とお茶をしますので」
彼女がレオ殿下と親しいことを忘れていた。
私はレオ殿下との関わり方がわからないので、ありがたい申し出に任せてみるか。
「頼むよ」
「かしこまりました。結果はお手紙でよろしいですか?」
「ああ。構わない」
レオ殿下の分の資料を渡すと退室の礼をして立ち去る。リオは別の課題を出しているので打ち合わせには同席させていない。
翌日の夜にビアード嬢から手紙が届いた。
「1日だけ空き時間が欲しい、予定に余裕をもたせてほしい」と綴られていた。
意味がわからず説明が欲しくて後日呼び出した。
「要望の説明を」
「レオ様は答えを出すまで時間がかかります。会談の時間が短すぎるそうです。あと物凄く集中力があるんですが、集中が切れると上手く思考ができません。集中が切れたら寝て回復するそうです。重要な会談は別日程で予定の一番最初に組んでほしいそうです」
「無表情で頷くのは」
「あれは集中が切れて、ぼんやりしてる時です。個人でやりたいことがあるので1日お休みがほしいそうです」
ぼんやりだと!?
ビアード嬢がずっと親し気にレオ殿下のことを話しているが別人じゃないだろうか?
1日休み?
「やりたいこと?」
「私が通訳しながらお世話します。私の護衛は優秀なので御身を危険にさらしません。外交の妨げになることはありませんのでご安心ください」
朗らかに笑う彼女の言葉は予想外ばかり。
遊びにいきたいとレオ殿下が言うのは想像できないが、二人で遊びにいきたいのか。
やはり私の知るレオ殿下とは別人。レオ殿下は彼女に任せたほうがいいかもしれない。私は殿下とは意志疎通ができない。
レオ殿下の機嫌を取れるだけでも同行させる価値がある。
レオ殿下との打ち合わせはビアード嬢を挟むと順調に終えた。レオ殿下の随行予定に王家から侍女や侍従もつかないことにビアード嬢は何も言わず護衛の手配だけ申し出る。
アリアがレオ殿下を一人だけで行かせる思惑がわからない。護衛の手配等必要なことをビアード嬢が申し出てくれるのがありがたく、残念ながらリオより有能だ。
***
準備は予想以上に楽に順調に進み、出立の日を迎える。
レオ殿下は護衛騎士を連れて現れた。王宮への迎えはいらないとレティシアに言われていたが時間通りに来たことに安堵する。
「レオ殿下、よろしくお願いします」
「ああ」
相変わらず無表情で何を考えているかわからない。
「マール公爵、マール様、このたびはよろしくおねがいします」
いつの間にかレティシアが傍にいたらしい。殿下への挨拶が後って大丈夫なんだろうか・・。
「こちらこそ」
礼をした彼女はレオ殿下のもとに行き、リオは見向きもされていない。彼女の様子を全く気にしてないのは慣れているんだろうか?
「レオ様、起きてください。また夜更かししたんですか?」
「起きてる。日差しが・・」
「良いお天気はありがたくすばらしいことです。仕方ありません。マール公爵、船に乗ってもいいですか?船室でレオ様を休ませたいんですが」
「ああ。構わないよ。リオ」
リオに指示を出し、案内させる。無表情の殿下はニコニコしているレティシアの言葉に頷いている。
レティシアはレオ殿下の世話をやき食事もレオ殿下の部屋で護衛と一緒にすませている。殿下の世話を頼んだがここまで献身的に世話をするとは思わなかった。そして大人しい殿下にも驚いている。
「マール公爵、見張り台に登ってもいいですか?」
「危ないよ」
「落ちたら、護衛騎士が風魔法で受け止めてくれます」
目を輝かせているレティシアに安全ならと許可を出す。危険があれば護衛騎士が止めるだろう。
「気をつけるんだよ」
「ありがとうございます。レオ様、お許しが出ました。行きましょう!!」
殿下も登るのか!?二人は一緒に見張り台に登っている。
しばらくしても二人は降りてこない。レティシアのはしゃいでいる声がかすかに聞こえてきた。
「リオ、大丈夫か?」
息子はレティシア達に存在を忘れられている。彼女に見惚れて私の言葉は届いていない。せっかくなので普段は逃げる息子にじっくり教育するか。レティシアの前ならしっかり学ぶだろう。
レオ殿下は不満も言わず癇癪もおこさず恐ろしいほど静かに過ごされている。レオ殿下とレティシアの親しそうな様子に妬かないリオは大丈夫なのか?
波が荒れるので船内に戻るようにレティシアに話すと水流操作を提案された。
レティシアはやはり魔法の適性があるらしい。海の波を操る水流操作をできる者は少ない。
あまりに見事だったので彼女に任せた。
リオにレティシアの付き添いをさせたから、多少は距離が近づくといいんだが…。水流操作の腕をもつ義娘は魅力的だ。風使いのリオと組ませれば確実に安全な船旅が約束される。
勢いよく扉が開き、レティシアに付き添わせたリオが部屋に駆け込んできた。
「父上、ビアード嬢が飛び込みました」
「は?」
「船の下に魔物がいると」
慌てて出て行くと、レティシアの侍女がタオルを用意している。
護衛騎士も焦った様子はなくレオ殿下と海を眺めている。
「そろそろ戻ってくるか?」
「さすがにお嬢様も、今日は水中で遊んだりしないので、すぐに上がってきますよ」
説明を求めるために近づくと波の音がして、大きい玉を抱えたレティシアが波に乗り、船に飛び降り華麗な着地を披露した。
笑顔で白い玉を渡されて困惑する。高価な素材ってどうして知っているんだろうか。当たり前のように話すけど一人で魔物を討伐したのか!?
侍女に着替えずに飛び込んだことを説教されているビアード公爵令嬢は私の常識とは違うらしい。
深窓の令嬢はビアード領では魔物退治もするのか?
レティシアは魔力をレオ殿下から分けてもらっている。彼女にとってはレオ殿下よりマール公爵家のほうが敬意を払っているのだろうか・・・。彼女はよくわからない。船を濡らした謝罪を受けたが、気にしていたのはそこではない。
レティシア達のおかげで予定よりも2日もはやく到着する。風と水の魔導士が揃ったからこそか。護衛騎士の風魔法の腕も見事でビアードの魔導士の質の高さに驚く。
最初の2日はレティシアの予定は自由にしていた。体の弱い彼女に船旅は過酷かと心配したがそんな気遣いはいらなかった。
屋敷に着き、私達は出かけるためレティシアの部屋を訪ねると誰もいない。
彼女の部屋の前でリオと頭を抱えていると正装に着替えたレオ殿下が近づいて来た。
「レティシアは出かけた」
「出かけたとは?」
「1時間前に。旅慣れしているから心配いらないって楽しそうにマオ達と出かけた。行先はわかるか?」
「行先は存じませんが暗くなる前には帰られます。お嬢様は門限は必ず守りますので」
レオ殿下とビアードの騎士の言葉に礼を言うとレオ殿下は静かに頷く。
公爵令嬢が旅慣れしているのか!?屋敷について、すぐに出かけたとは・・・。
初日の予定を終わらせて帰ると侍女だけが戻っている。侍女もレティシアの行き先は知らず暗くなる前には帰ると言われ待つしかなかった。
しばらくするとレティシアが私を訪ねた。
レオ殿下が私が探していたことを伝えてくれるとは思わなかった。ただレオ殿下への驚きは彼女の話を聞いて一瞬で吹き飛ぶ。
彼女の目的のメイ伯爵家の場所はすでに調べ終わり、明日には伯爵を訪ねるらしい。
恐ろしい行動力と情報収集能力。まさか半日でここまで調べられるとはうちの諜報部隊よりも優秀かもしれない。リオに見習って欲しい。
せっかくだからリオを監視につけるか。貴族とのやりとりを一人でさせるのは心配であり、外出先を告げずに未成年が出かけることも大人として見過ごせない。
「リオ、明日はビアード嬢について監視しろ」
「監視?」
「貴族と接触するかもしれない。外交問題」
「わかりました」
リオに外交の実地を教えるよりも彼女の監視のほうが重要だった。もし彼女から学び情報収集能力があがれば一石二鳥。レオ殿下がいれば相手をしてもらえるだろうか…。うちの息子は上機嫌で了承した。実地は教えてないが基本は叩き込んであるので心配ないだろう。
***
リオを監視につけたのは正解だった。
彼女は恐ろしい情報を掴んで帰ってきた。古語で書かれた報告書に言葉を失う。海の皇国での会話は全部皇族の耳に届くとは。どこまで本当かはわからなくても警戒は必要だ。
一番頭を抱えたいのは彼女が皇帝に献上されそうになったことだった。
「リオ、外交に参加させるべきか?」
「やめたほうがいいと思います」
明日からはレティシアを随行させる予定だった。一緒に過ごせると楽しみにしていたリオさえ断るならやめたほうがいいだろう。
彼女にはレオ殿下の世話と機嫌をとることだけ頼むことにした。もしレティシアを海の皇国に置いて帰ったらビアード公爵が恐ろしい。うちに騎士を差し向けられるかもしれない・・。ビアード公爵夫妻に必ず無事に連れて帰ると約束している。
そして彼女は大きな厄介者を抱えてきた。リオも事情を知らないらしい。
レティシアに亡命させたいと頼まれた男と面会すると片腕がなく、暗い顔で目が死んでいる。
「レティシア、本気かい?」
「はい。念願の荷物持ちです。しっかりお世話するのでサインをお願いします」
笑顔で渡された書類は亡命に必要な書類がそろえられている。
あとは私がサインさえすれば、亡命の手続きは終わりである。
「この書類は?」
「公爵令嬢の嗜みですわ。なにか足りない物があれば揃えますので教えてくださいませ。私のお部屋でお世話するので、屋敷に滞在することだけお許しください」
「部屋が余っているから一部屋与えるよ」
「ご迷惑は」
「構わないよ。年頃の君と同室のほうが問題だ」
「かしこまりました。お気遣いありがとうございます」
「もう遅いから休みなさい」
「はい。失礼します」
礼をして立ち去るレティシアにため息をこぼす。見知らぬ男を同室にさせたなどビアード公爵に知られればまずい。彼女の部屋にはベッドが一つしかないのにどうする気だったんだか・・。
念の為、もう一度男の様子は見に行くか。危険なら亡命させるわけにはいかない。たとえメイ伯爵の紹介状があっても。
男の部屋にはレティシアと護衛騎士がいる。
「マオ、起こしてください」
護衛騎士が寝ている男に声を掛けて、力づくで座らせた。
「お食事してください」
食事をとらない男にレティシアがため息を溢し、強引に男の口にスプーンを運んでいる。
「せっかく用意したので召し上がってください」
笑顔で圧力をかけながら食べさせている。全部食べ終わったので護衛騎士に男を拘束している風魔法を解かせた。無理矢理過ぎないか!?
「マナ、見張っててください。私の荷物持ちです。できれば王国語を覚えさせたいけどまだ無理ですね。何かあればマナに頼んでください。」
レティシアが部屋を出て行く。
それからは男に海の皇国語で話しかけそのあとは同じ言葉をフラン王国語で話しかけていた。反応しないのに一方的に話しかけている。レティシアが自ら世話するのか・・。
レティシアは男とレオ殿下の相手で忙しくリオは全く相手にされなかった。
暇な時間は常に男の部屋で一方的にフラン王国語を教えている。返答がなくても気にしないらしい。レティシアの無理矢理な看病と教育風景は男が憧れるシチュエーションなのに、全く羨ましいとは思えない。私ではなくリオが見たら違うんだろうか?
***
外交は順調に進んでいた。早く帰りたいリオと大人しいレオ殿下が真面目に取り組んでいるおかげだろう。もしかしたらカナトよりも才能があるかもしれない。
予想外を起こすのはレティシアだけ。
レティシアの引きは恐ろしく、偶然知り合った皇子を連れて帰ってきた。また駄目元で頼んだ情報も全て完璧に調べ上げている。公爵令嬢でなければうちの諜報部隊に大金を積んでも欲しい。
レティシアは私に皇子を紹介し礼をして退席した。
優秀な魔導士を欲しがる皇子と魔導士を派遣する取引をした。ビアードに劣っても、マールにも優秀な風の魔導士は豊富だ。時々息子達を紛れ込ませて探らせるのもいいし、閉鎖的な海の皇国の情報が手に入るのはありがたい。まさか皇子と繋がりができるとは思っていなかった。
レティシアは皇子に興味はないのか、その後は何も聞かれなかった。見送りにも出てこなかったが非公式なのでいいか。
最終日は休養日にあてていた。レティシアはレオ殿下と朝から出かけた。
彼女の勧めるギルドに行くと貴重な本で溢れていた。本を読んでいる間にリオに簡単な依頼を受けさせる。レティシアに相手にされないおかげで、息子に勉強させる時間はたくさんあった。
「換金お願いします」
聞き慣れた声に振り向くとレオ殿下とレティシアがいた。
袋の中から大量の素材を出している。
「軍資金はばっちりです」
「お疲れ様でした」
立ち去っていく二人は私のことは気づいていない。依頼をこなしているなんて初耳だった。危ないことはしないと約束させたんだけど・・。ビアードは常識がおかしいが、注意すべきだろうか?
「ルリ、帰るのか?」
「はい。今日はここまでです。今日はいい波でしたわ。失礼します」
冒険者と親しそうに話し、手を振ってギルドを出て行く。レティシアは12歳の公爵令嬢なのだろうか。気難しいといわれる冒険者とも打ち解けている。
「父上、もういいですか?」
帰ってきたリオに別の依頼書を渡す。
「報酬は好きに使っていい」
ため息をついたリオが依頼書を受け取り手続きに行く。リオは冒険者とは打ち解けられていない。やはりレティシアのほうが優秀なのか…。夕方までギルドで過ごし屋敷に帰り翌日に出国した。
リオはレティシアとは親しくなれなかった。ただ彼女にお茶に誘われたと顔を緩ませている。何度かレオ殿下と3人でお茶をしたらしい。3人で仲良くお茶するだけで喜ぶ息子が不憫だが、レオ殿下の扱い方がわかったと呟く息子を久しぶりに褒めた。レオ殿下の応対ができるなら非常にありがたいから今後も連れ出すか。さすがに毎回レティシアを借りられないだろう。
帰国し、ビアード公爵にレティシアを欲しいと言うと殺気を向けられた。ビアード公爵に勝てたらお付き合いを考えてもらえると恐ろしい笑顔で言われた。
「リオ、レティシアの婚約者候補になりたいなら、ビアード公爵に勝つのが条件らしい」
「修行してきます」
レティシアが絡むとリオが勤勉になる。
強さに全く興味がなかったリオが必死に訓練する姿を見ながら、リオは彼女にフラれたら他の相手を選べるのか不安を覚えた。
最近の息子はレティシアを中心に生きている気がしてならない。
息子の初恋が報われる様子は全くない。レティシアがリオに興味がないのは明らかである。
欲しい物のためなら手段を選ばないマールの血が兄弟の中で一番濃いのはリオかもしれない。
マールの執着はフラン王国一。
欲しい物を手に入れるために力を手に入れ家を大きくし気付いたら外交で王国一の立ち位置にいた。忠臣のビアードとは正反対で私利私欲の塊で大きくなった家。
私もマールの血が濃いからリオのことは責められない。
妻にリオの初恋を応援してほしいと相談するかな…。
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