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第七十四話 帰国
フラン王国に帰国しました。
リオからストーム様の入った鳥籠を渡されて驚きました。エイベルが貸したそうです。鳥籠にストーム様をいれるなんてなんてことを・・・。
目視できるように擬態するのは精霊には魔力消費が激しく疲れることなのに・・。
ストーム様に謝ると「大丈夫」と可愛らしく笑いお許しくださっているのでエイベルに文句を言うのはやめました。ストーム様からエイベルの様子を聞いてエイベルが仕事をためてないか心配になったので、ストーム様とマオの力を借りて風と水を操り船を速めました。
船の速度が速く船長に怪訝な目で見られましたが笑みを浮かべてごまかしました。船旅は安全であればいいんです。遅れはいけませんが、早く到着する分には問題ありませんわ。
フラン王国に到着してもすぐには船から降りられませんでした。いくつか手続きがあるそうです。
リオが手続きを引き受けてくれるため甲板でぼんやり座って待っているとぽかぽかと暖かい日差しに眠くなってきました。
起きたら馬車の中でリオに抱き寄せられていて驚きました。
「もう少しで着くから」
「すみません。私」
「疲れてたんだろう。着いたら起こすから眠ってていいよ」
優しく笑う顔に力が抜けました。申し訳ありませんが今だけは甘えて体を借りることにしました。ずっと魔法を使っていたので疲れました。頭を撫でる手の優しさと見慣れた景色に帰ってきたことをようやく実感しました。馴染んだビアードの空気とリオの懐かしい温もりに瞼が重くなり目を閉じました。ビアード公爵邸に着きリオに起こされると体が軽くなりました。馬車で眠って魔力が回復したんでしょうか?
ビアード公爵邸では中に入った途端に勢いよくビアード公爵夫人に抱きしめられました。使用人達も集まり号泣する姿に申しわけない気持ちになりました。私は大丈夫ってエイベルに伝えたんですが・・・。
「レティ、よかったわ」
「ご心配をおかけしてすみません。」
「貴方が無事ならいいのよ。旦那様は帰ってこれないわ。エイベルも殿下の傍にずっと控えてるわ」
「私はどう動けばよろしいでしょうか?」
「医務官に診察。社交は休んでいいわ。しばらくは、うちでゆっくり休んで」
ビアードが多忙な時期にのんびりしているわけにはいきません。
ここで甘えは許されません。それにほとんどぼんやりしてただけなので元気です。
眉を下げて心配そうな顔の優しいビアード公爵夫人に微笑みかけます。
「お母様、私は大丈夫です。ビアードが大変な時期に私だけ休むわけにはいきません。体はなんともありません。丁重に軟禁されていただけで怖い思いもしてませんわ。私の役割と状況を教えてください」
ビアード公爵夫人がほっと息を吐いて、笑みを浮かべました。相当心配をかけたようです・・・。
「怖い思いもしなかったのね。良かったわ。詳しい話は明日しましょう。一つだけ大事な話をするわ。リオと婚約を結んだわ。この件が落ち着くまでは婚約の継続を。その後はうちが望むなら破棄して構わないと。全てはマールが引き受けるそうよ」
戻ってすぐに婚約破棄すれば私に事情があると疑われます。私のために動いて全部自分で責任を負うなんて何を考えてるんでしょう。
「レティはどうしたい?」
優しい瞳で見つめられてます。
リオは本当に私のためだけに婚約したんでしょうか。頼んでいませんが、リオに全部押し付けて、利用するだけ利用するなんてできません。
私が巻き込んだなら責任を取らないといけませんかね。事後処理も全部丸投げしましたので尚更・・・。マールに全部任せていいと言われましたので・・・。リオと関わりたくありませんでしたが、仕方ありません。ルーンなら利がなければ利用して破棄。でもビアードは利よりも優先すべきものがあります。
「両公爵の了承があるならお受けします」
「リオのこと嫌なんじゃないの?」
「お母様達のような恋愛感情はありません。もしも私のために動いてくれたなら、そんなマール様に、全てを背負わせたら後悔します。ビアードとして認められるならですが」
「好みじゃないでしょ?」
私を気遣うビアード公爵夫人は優しいです。もともと政略結婚するつもりでしたし、どんな相手でも拒否するつもりはありませんでした。笑みを浮かべます。
「ビアードでのマール様の描く立ち位置はエイベルの邪魔になりません。後方支援と領地経営等を考えるなら悪くない縁談かと」
「うちの子達は本当に家のことしか頭にないのね。わかったわ。レティが受け入れるなら婚約はそのまま。当分は騒がしいけど、無理しないでね」
「はい」
使用人達に声を掛けて、訓練場にも顔を出しました。
ローナには泣かれ、ナギも抱きついて離れませんでした。
多大な心配をかけたので、謝罪と感謝を告げるとさらに使用人達が号泣しました。
今度は絶対にお守りしますと騎士の方々に跪かれて引きました。攫われたのは学園なのに・・・。
騎士達を宥めて、違う意味で疲れました。大事にされていることがわかり、照れて笑ってしまいました。ビアードの方々は直球なのでわかりやすく時々恥ずかしくなってしまいます。
私も彼らに恥じないように頑張ろうと気合いをいれました。たとえ私がまがいものであっても。
医務官に診察を受け、純潔の証明書が発行されました。気恥ずかしいものがありましたが必要なことなので仕方がありません。
ビアード公爵は多忙のため屋敷に帰ってきませんでした。
心配されていると思うので、手紙と体力回復を付与した魔石を送りました。
やるべきことも終えて自室の中を見回すと日記の封印が解かれてました。
執事長が早まってエイベルに私の遺書を渡したことを知らされて唖然としました。
一応、国外逃亡する時用に託しておいたんですが・・・。これはお説教でしょうか?エイベルならごまかせますわ。
過剰に気遣うビアード公爵夫人と使用人達のためにいつもより明るく元気に振るまいました。学園に戻る日にはビアードの皆様の表情が明るくなりほっとしました。ちょっとのお出かけが中々の大惨事を起こしていました。皆様、過保護過ぎませんか!?
***
寮の自室に帰ると、マナとロキが控えていました。
「お嬢様」
駆け寄るロキを抱きしめました。
「ご無事で」
泣いているロキの背中を叩いているとマナに抱きしめられました。
「心配しました。ご無事で。次は連れてってください」
「もう攫われたりしませんよ。心配かけてごめんなさい。エイベルをありがとう」
「エイベル様も会いたいって」
「人目のない時間に会いに行きますわ。今はロキとマナと過ごします。ロキのお茶が飲みたいわ。マナのクッキーも」
二人が嬉しそうに笑い離れていきました。
「ディーネ、ありがとう」
「次は一緒がいいわ」
「旅に出る時はディーネだけは連れていきます。私の相棒はディーネだけだもの。今日は一緒に寝てね」
抱きしめると、笑うディーネが可愛いです。
お茶をしながらロキ達に学園の状況を教えてもらいました。
夕方に人目を盗んでエイベルに会いに行きました。
レオ様を転移魔法で送ったことは怒りましたが、本気で心配かけたようなのでお説教はやめました。レオ様だけは信じて待っていてくれたみたいです。
一番信じて欲しかったエイベルに信じてもらえなかったのは悲しかったです。
明日から大変なことになるのはわかっているので、レオ様のお茶に癒されながら思考をまとめました。エイベルからのお説教がなかっただけが救いですわ。
***
登校すると視線を集めました。
目立たないように早朝に登校したのに意味はありませんでした。
「レティシア様、お帰りなさいませ」
登校してきたステラに勢いよく抱きつかれました。
「学園で攫われるとはな。当分は騒がしいな」
明るく笑うフィルの言葉に苦笑しました。
大変面倒な事態ですが、国のことを思えば悪くはありませんわ。攫われたのが私で良かったです。海の皇国の魔法で簡単に国にも学園にも侵入できることがわかりましたし。
「殿下の御身を守るためにお役に立てたなら良かったと思います。結界の見直しが行われたのでもう安全ですかね。個人的には平穏に過ごしたいですが」
「当分、面会が凄いだろうな」
「気が重いです。私のことなど放っておいていただきたいですわ」
乱暴に頭を撫でるフィルに抱きついて離れないステラ。勢いよく教室のドアが開きました。この乱暴な開け方でうちの教室に入るのは一人だけです。
「レティシア!!」
「リアナ、おはようございます」
「ステラ様、代わって」
ステラが離れる様子がありません。肩が濡れているので泣いてます。ステラの背中をゆっくりと叩きます。優しいステラにも相当心配をかけたんですね。
リアナに笑みを向けます。
「リアナ、貴方の指導が役に立ちましたわ」
「覚えておくと便利でしょ?」
得意気な顔に苦笑するしかありません。
「ええ。ただあまり使わないでほしいですが」
「リアナ様、言葉遣いがいけません」
いつの間にかベリーがいました。私がいない間もリアナが問題を起こさないように見張ってくれたみたいです。私の友人を名乗りたいならと、リアナに最低限の教養が必要と指導してくれてます。今のリアナは男爵令嬢としては相応しくないので非常に助かります。よく喧嘩をしてますが、それも仲の良い事と思うことにしました。
「ベリー、ありがとう」
「レティシア様のためですもの。お帰りなさい。またご指導お願いします」
「ただいま帰りました。もちろんです。」
授業の時間が近づいたので、各々の席に戻り解放されました。
私の攫われた事件は学園内でも大きな話題になってました。気にかけてくださる方に笑顔でお礼を言い、気づくと放課後になりました。レオ様もこっそり会いにきてくれました。
さて一番恐れていた時間がやって参りました。
生徒会室に行くとクロード殿下に見つめられました。
「レティシア、無事だったか」
「申しわけありませんでした」
「無事ならいい」
お咎めがないことにほっと息をつき、小さく笑ったクロード殿下に驚いたのは内緒です。
クロード殿下より幾つか書類を預かり、仕事に取り掛かりました。
***
海の皇国とフラン王国で話し合いがされました。
海の皇国には海の魔法を通さない封印石があるそうです。今回の賠償の一つとして封印石が贈られました。フラン王国での魔法の行使は禁止の条約を結んだそうです。またいくつか海の皇国の魔法が明かされたそうですがそれは一部の方しか教えていただけないようです。今後は海の皇国の方が潜むことはできなくなりました。私への謝罪は傷心を理由にビアード公爵夫妻が代わって対応してくださいました。メイ伯爵家は取りつぶし、メイ伯爵夫人は幽閉が決まりました。
ロダ様にはお話してません。ロダ様は王宮に行き帰ってきていません。ビアード公爵夫人にロダ様のことは口出し禁止と言われました。
ロダ様は無関係なのに・・・。王宮で元気にしているとレオ様が教えてくれたので気にするのはやめました。
***
レオ様に部屋にいてほしいと言われたので部屋で待っていると転移魔法でロダ様と一緒に帰ってきました。
「ロダ様、お久しぶりです」
「攫われたって」
心配そうな顔をするロダ様に笑いかけます。
「閉じ込められただけなので心配いりません。食事も出ましたし、体も綺麗にしていただきました。私はただぼんやりしていただけですわ」
「辛い思いを」
「私は怖い思いをしてません。ビアードとしては国防の見直しに役に立てたので感謝してます。もともと伯爵夫人には嫌われてました。この件はビアードの問題でロダ様達は無関係ですよ。巻き込んでしまったナギには申しわけないですが。覚えていなくて良かったです。ロダ様はお体はいかがですか?王宮で酷いことはされてませんか?」
「調査の協力を頼まれているだけだよ」
「ご協力ありがとうございます。いつでも帰ってきてください。私達は貴方の味方です」
「ロダ、そろそろ戻ろう」
「レオ様、お気をつけて」
転移魔法で去っていく二人を手を振って見送りました。ロダ様がお元気そうで良かったです。
海の皇国の件が落ち着いたのかはよくわかりません。ロキ達のことは何も心配いらないとマール公爵からお手紙をいただきました。
帰国して一月たつ頃にようやく私の周りは落ち着きを取り戻しました。
リオからストーム様の入った鳥籠を渡されて驚きました。エイベルが貸したそうです。鳥籠にストーム様をいれるなんてなんてことを・・・。
目視できるように擬態するのは精霊には魔力消費が激しく疲れることなのに・・。
ストーム様に謝ると「大丈夫」と可愛らしく笑いお許しくださっているのでエイベルに文句を言うのはやめました。ストーム様からエイベルの様子を聞いてエイベルが仕事をためてないか心配になったので、ストーム様とマオの力を借りて風と水を操り船を速めました。
船の速度が速く船長に怪訝な目で見られましたが笑みを浮かべてごまかしました。船旅は安全であればいいんです。遅れはいけませんが、早く到着する分には問題ありませんわ。
フラン王国に到着してもすぐには船から降りられませんでした。いくつか手続きがあるそうです。
リオが手続きを引き受けてくれるため甲板でぼんやり座って待っているとぽかぽかと暖かい日差しに眠くなってきました。
起きたら馬車の中でリオに抱き寄せられていて驚きました。
「もう少しで着くから」
「すみません。私」
「疲れてたんだろう。着いたら起こすから眠ってていいよ」
優しく笑う顔に力が抜けました。申し訳ありませんが今だけは甘えて体を借りることにしました。ずっと魔法を使っていたので疲れました。頭を撫でる手の優しさと見慣れた景色に帰ってきたことをようやく実感しました。馴染んだビアードの空気とリオの懐かしい温もりに瞼が重くなり目を閉じました。ビアード公爵邸に着きリオに起こされると体が軽くなりました。馬車で眠って魔力が回復したんでしょうか?
ビアード公爵邸では中に入った途端に勢いよくビアード公爵夫人に抱きしめられました。使用人達も集まり号泣する姿に申しわけない気持ちになりました。私は大丈夫ってエイベルに伝えたんですが・・・。
「レティ、よかったわ」
「ご心配をおかけしてすみません。」
「貴方が無事ならいいのよ。旦那様は帰ってこれないわ。エイベルも殿下の傍にずっと控えてるわ」
「私はどう動けばよろしいでしょうか?」
「医務官に診察。社交は休んでいいわ。しばらくは、うちでゆっくり休んで」
ビアードが多忙な時期にのんびりしているわけにはいきません。
ここで甘えは許されません。それにほとんどぼんやりしてただけなので元気です。
眉を下げて心配そうな顔の優しいビアード公爵夫人に微笑みかけます。
「お母様、私は大丈夫です。ビアードが大変な時期に私だけ休むわけにはいきません。体はなんともありません。丁重に軟禁されていただけで怖い思いもしてませんわ。私の役割と状況を教えてください」
ビアード公爵夫人がほっと息を吐いて、笑みを浮かべました。相当心配をかけたようです・・・。
「怖い思いもしなかったのね。良かったわ。詳しい話は明日しましょう。一つだけ大事な話をするわ。リオと婚約を結んだわ。この件が落ち着くまでは婚約の継続を。その後はうちが望むなら破棄して構わないと。全てはマールが引き受けるそうよ」
戻ってすぐに婚約破棄すれば私に事情があると疑われます。私のために動いて全部自分で責任を負うなんて何を考えてるんでしょう。
「レティはどうしたい?」
優しい瞳で見つめられてます。
リオは本当に私のためだけに婚約したんでしょうか。頼んでいませんが、リオに全部押し付けて、利用するだけ利用するなんてできません。
私が巻き込んだなら責任を取らないといけませんかね。事後処理も全部丸投げしましたので尚更・・・。マールに全部任せていいと言われましたので・・・。リオと関わりたくありませんでしたが、仕方ありません。ルーンなら利がなければ利用して破棄。でもビアードは利よりも優先すべきものがあります。
「両公爵の了承があるならお受けします」
「リオのこと嫌なんじゃないの?」
「お母様達のような恋愛感情はありません。もしも私のために動いてくれたなら、そんなマール様に、全てを背負わせたら後悔します。ビアードとして認められるならですが」
「好みじゃないでしょ?」
私を気遣うビアード公爵夫人は優しいです。もともと政略結婚するつもりでしたし、どんな相手でも拒否するつもりはありませんでした。笑みを浮かべます。
「ビアードでのマール様の描く立ち位置はエイベルの邪魔になりません。後方支援と領地経営等を考えるなら悪くない縁談かと」
「うちの子達は本当に家のことしか頭にないのね。わかったわ。レティが受け入れるなら婚約はそのまま。当分は騒がしいけど、無理しないでね」
「はい」
使用人達に声を掛けて、訓練場にも顔を出しました。
ローナには泣かれ、ナギも抱きついて離れませんでした。
多大な心配をかけたので、謝罪と感謝を告げるとさらに使用人達が号泣しました。
今度は絶対にお守りしますと騎士の方々に跪かれて引きました。攫われたのは学園なのに・・・。
騎士達を宥めて、違う意味で疲れました。大事にされていることがわかり、照れて笑ってしまいました。ビアードの方々は直球なのでわかりやすく時々恥ずかしくなってしまいます。
私も彼らに恥じないように頑張ろうと気合いをいれました。たとえ私がまがいものであっても。
医務官に診察を受け、純潔の証明書が発行されました。気恥ずかしいものがありましたが必要なことなので仕方がありません。
ビアード公爵は多忙のため屋敷に帰ってきませんでした。
心配されていると思うので、手紙と体力回復を付与した魔石を送りました。
やるべきことも終えて自室の中を見回すと日記の封印が解かれてました。
執事長が早まってエイベルに私の遺書を渡したことを知らされて唖然としました。
一応、国外逃亡する時用に託しておいたんですが・・・。これはお説教でしょうか?エイベルならごまかせますわ。
過剰に気遣うビアード公爵夫人と使用人達のためにいつもより明るく元気に振るまいました。学園に戻る日にはビアードの皆様の表情が明るくなりほっとしました。ちょっとのお出かけが中々の大惨事を起こしていました。皆様、過保護過ぎませんか!?
***
寮の自室に帰ると、マナとロキが控えていました。
「お嬢様」
駆け寄るロキを抱きしめました。
「ご無事で」
泣いているロキの背中を叩いているとマナに抱きしめられました。
「心配しました。ご無事で。次は連れてってください」
「もう攫われたりしませんよ。心配かけてごめんなさい。エイベルをありがとう」
「エイベル様も会いたいって」
「人目のない時間に会いに行きますわ。今はロキとマナと過ごします。ロキのお茶が飲みたいわ。マナのクッキーも」
二人が嬉しそうに笑い離れていきました。
「ディーネ、ありがとう」
「次は一緒がいいわ」
「旅に出る時はディーネだけは連れていきます。私の相棒はディーネだけだもの。今日は一緒に寝てね」
抱きしめると、笑うディーネが可愛いです。
お茶をしながらロキ達に学園の状況を教えてもらいました。
夕方に人目を盗んでエイベルに会いに行きました。
レオ様を転移魔法で送ったことは怒りましたが、本気で心配かけたようなのでお説教はやめました。レオ様だけは信じて待っていてくれたみたいです。
一番信じて欲しかったエイベルに信じてもらえなかったのは悲しかったです。
明日から大変なことになるのはわかっているので、レオ様のお茶に癒されながら思考をまとめました。エイベルからのお説教がなかっただけが救いですわ。
***
登校すると視線を集めました。
目立たないように早朝に登校したのに意味はありませんでした。
「レティシア様、お帰りなさいませ」
登校してきたステラに勢いよく抱きつかれました。
「学園で攫われるとはな。当分は騒がしいな」
明るく笑うフィルの言葉に苦笑しました。
大変面倒な事態ですが、国のことを思えば悪くはありませんわ。攫われたのが私で良かったです。海の皇国の魔法で簡単に国にも学園にも侵入できることがわかりましたし。
「殿下の御身を守るためにお役に立てたなら良かったと思います。結界の見直しが行われたのでもう安全ですかね。個人的には平穏に過ごしたいですが」
「当分、面会が凄いだろうな」
「気が重いです。私のことなど放っておいていただきたいですわ」
乱暴に頭を撫でるフィルに抱きついて離れないステラ。勢いよく教室のドアが開きました。この乱暴な開け方でうちの教室に入るのは一人だけです。
「レティシア!!」
「リアナ、おはようございます」
「ステラ様、代わって」
ステラが離れる様子がありません。肩が濡れているので泣いてます。ステラの背中をゆっくりと叩きます。優しいステラにも相当心配をかけたんですね。
リアナに笑みを向けます。
「リアナ、貴方の指導が役に立ちましたわ」
「覚えておくと便利でしょ?」
得意気な顔に苦笑するしかありません。
「ええ。ただあまり使わないでほしいですが」
「リアナ様、言葉遣いがいけません」
いつの間にかベリーがいました。私がいない間もリアナが問題を起こさないように見張ってくれたみたいです。私の友人を名乗りたいならと、リアナに最低限の教養が必要と指導してくれてます。今のリアナは男爵令嬢としては相応しくないので非常に助かります。よく喧嘩をしてますが、それも仲の良い事と思うことにしました。
「ベリー、ありがとう」
「レティシア様のためですもの。お帰りなさい。またご指導お願いします」
「ただいま帰りました。もちろんです。」
授業の時間が近づいたので、各々の席に戻り解放されました。
私の攫われた事件は学園内でも大きな話題になってました。気にかけてくださる方に笑顔でお礼を言い、気づくと放課後になりました。レオ様もこっそり会いにきてくれました。
さて一番恐れていた時間がやって参りました。
生徒会室に行くとクロード殿下に見つめられました。
「レティシア、無事だったか」
「申しわけありませんでした」
「無事ならいい」
お咎めがないことにほっと息をつき、小さく笑ったクロード殿下に驚いたのは内緒です。
クロード殿下より幾つか書類を預かり、仕事に取り掛かりました。
***
海の皇国とフラン王国で話し合いがされました。
海の皇国には海の魔法を通さない封印石があるそうです。今回の賠償の一つとして封印石が贈られました。フラン王国での魔法の行使は禁止の条約を結んだそうです。またいくつか海の皇国の魔法が明かされたそうですがそれは一部の方しか教えていただけないようです。今後は海の皇国の方が潜むことはできなくなりました。私への謝罪は傷心を理由にビアード公爵夫妻が代わって対応してくださいました。メイ伯爵家は取りつぶし、メイ伯爵夫人は幽閉が決まりました。
ロダ様にはお話してません。ロダ様は王宮に行き帰ってきていません。ビアード公爵夫人にロダ様のことは口出し禁止と言われました。
ロダ様は無関係なのに・・・。王宮で元気にしているとレオ様が教えてくれたので気にするのはやめました。
***
レオ様に部屋にいてほしいと言われたので部屋で待っていると転移魔法でロダ様と一緒に帰ってきました。
「ロダ様、お久しぶりです」
「攫われたって」
心配そうな顔をするロダ様に笑いかけます。
「閉じ込められただけなので心配いりません。食事も出ましたし、体も綺麗にしていただきました。私はただぼんやりしていただけですわ」
「辛い思いを」
「私は怖い思いをしてません。ビアードとしては国防の見直しに役に立てたので感謝してます。もともと伯爵夫人には嫌われてました。この件はビアードの問題でロダ様達は無関係ですよ。巻き込んでしまったナギには申しわけないですが。覚えていなくて良かったです。ロダ様はお体はいかがですか?王宮で酷いことはされてませんか?」
「調査の協力を頼まれているだけだよ」
「ご協力ありがとうございます。いつでも帰ってきてください。私達は貴方の味方です」
「ロダ、そろそろ戻ろう」
「レオ様、お気をつけて」
転移魔法で去っていく二人を手を振って見送りました。ロダ様がお元気そうで良かったです。
海の皇国の件が落ち着いたのかはよくわかりません。ロキ達のことは何も心配いらないとマール公爵からお手紙をいただきました。
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