追憶令嬢のやり直し

夕鈴

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第七十七話 後編 祭

お祭りの日を迎えました。
私の当番は午後なので午前は自由です。リオに見回りを手伝って欲しいと言われたので、頷くとなぜか手を引かれて歩いています。

「午後はずっと踊るのか?」
「はい。短い曲ばかりなので去年ほど過酷ではありません」
「レティシアのクラスは午後に行くよ」
「マール様、」
「リオ」
「リオ様、見回りなんですよね?別々のほうが効率的ですよ。先ほどから遊んでるようにしか見えないんですけど」
「体験するのも大事だろう?二人っきりになれないのは残念だけど。あげるよ」

色とりどりの花の展示をしている教室から出ると、紺の花を髪に飾られました。いつ花を買ったのかわかりません。

「レティシア様!!リオ様!!」

アナが元気に手を振っているので中に入ると絵が飾られてます。絵を売るお店ですね。展示してある絵に驚きました。風景画もありますが、見覚えのある生徒の絵もたくさん描かれています。

「アナ、どうして私の絵が売ってますの!?」
「人気だからです。レティシア様の絵は人気だから、たくさん用意してます」

頭が痛くなってきました。許可してませんわ。私とエイベルの絵もありますわ。

「アナ、絵師と責任者は誰だ?」
「皆で描きました」
「レティシアの絵を全種類欲しいんだが」

リオは苦言を言うのかと思えば違うようです。諦めるしかありません。各クラスの企画にはクロード殿下の許可があるので、余計なことは言えませんね。愛らしいアナの笑みを見たら余計に言えなくなりました。

「リオ様、いりません。行きますよ。アナ、頑張ってね」

リオの手を引いて、見回りを再開します。別々に回るというのは聞いてもらえませんでした。不満そうな顔をしてますが気にしません。

「レティシア様!!」

ベリーに誘われたので中に入ると中は森のような空間が広がっています。ベリーは頭に兎の耳を付けて兎の描かれたエプロンをしています。綺麗めな顔立ちですが今日のベリーは可愛いです。 
せっかくなので案内される席に座りメニューを見て、私は驚きました。蜂蜜が、蜂蜜のケーキが2種類も。蜂蜜の紅茶も気になりますがお値段がお安すぎて心配になります。
食べたいけどいいんでしょうか。こんなにお手頃なら普段は食べれない生徒の皆様に。
悩んでいると目の前に蜂蜜のケーキが2つと蜂蜜アイスに蜂蜜の紅茶が置かれました。

「俺が注文したけど、違った?」

リオに笑いかけられ目の前の蜂蜜を前に我慢できませんでした。口に含んだ甘みがたまりません。

「蜂蜜がこんなにお安いなんて。私がこんなに味わったら他の生徒の分が」
「蜂蜜は癖が強いからあまり人気がないんだよ」
「まぁ!?でしたら、心置きなく堪能しますわ」

リオも幸せそうにチョコケーキを食べています。美味しいものは人を幸せにしますわ。

「レティシア様、これを」

悪戯っぽい顔で笑ったベリーがクッキーをくれました。

「レティシア様のために用意しました。内緒です」
「ありがとうございます。あとで大事にいただきますわ」

愛らしい笑顔のベリーにはなんの返礼をしましょうか・・。
蜂蜜は美味しいですがお腹が苦しくなってきました。

「食べようか?」

笑っているリオに甘えて頷きます。

「ありがとうございます」

リオに残りのケーキを渡して紅茶を楽みましょう。もう少し大きい胃袋があるといいのに。
お金を払おうとするとリオに負けました。リオと一緒だといつもお金を払われてしまいます。マール公爵家はビアード公爵家以上にお金がありそうなので今日は気にするのはやめましょう。

次のクラスは工房でした。見回りなのに遊んでいるリオに突っ込むのはやめました。
木細工や装飾品など、色々なものが売ってます。自分で作れる体験コーナーもあります。
初級は木箱、中級はブローチ、上級はオルゴールですか。

「せっかくだからやろうか。」

リオに木箱のセットを渡されました。いつの間に会計をすませてるんでしょうか。
座って、生徒に教えてもらいながら木箱を組み立てます。木の板に絵を掘る!?初級ですか!?
見本の鳥を真似して、彫りますがうまくいきません。刺繍より難しいです。彫り終わっても、鳥に見えません・・・。
隣で笑い声が聞こえました。リオがお腹を抱えて笑ってます。

「これ、あげるから怒んないで。いいと思うよ」

見事な花が彫ってあるオルゴールを手の上に置かれました。リオの作ったものと比べると余計に虚しくなってきました。材料の無駄使いをしてしまいました。

「レティシアの木箱は俺が貰ってもいい?」
「はい?どう見ても失敗」
「いや、一生懸命作ったのわかるよ。愛らしいよ。鳥に見える」

頭を撫でて宥められてます。ただリオの笑いがおさまってません。

「こんなもので良ければ。持って帰ればエイベルに笑われるだけですもの」
「ありがとう。」

こんなもので嬉しそうに笑うのは不思議です。オルゴール、受け取ってしまいましたがいいのでしょうか。ただ上機嫌で私の手を引くリオに返すのも気が引けます。
自由時間も残り少ないので、エイベルのクラスに行きました。
エイベルのクラスは騎士との対戦会を行ってます。
3人の騎士に勝つと豪華賞品がもらえます。
エイベルにサイラス様にソート様って勝たせる気があるか疑問です。賞品の一つに各門下の第一次試験合格証ってなにを考えてますの!?他にも剣や盾、お菓子等色々用意してます。各門下のおもてなし券も非常に気になります。参加賞に各門下の訓練申請書ってなんですか?私は午後に向けて体力温存しないといけないので参加できません。3人に勝つならスカウトしたい気持ちはわかりますけど…。学園行事を見込みのある生徒のスカウトと自分達の訓練に使うとは思いませんでした。
教室には各3家の紹介の展示もされています。

「一戦やってくかな」

商品を見ていたリオがつぶやきました。

「リオ様?」
「リオ、勝ち目あるの?」

サイラス様が苦笑してます。戦闘センス抜群の三人、特にサイラス様の巧みさにもエイベルの速さにもソート様の力にもリオが勝てると思いませんが…。

「剣を落とさせればいいんだろう?方法はある」
「誰からにする?」
「ビアード」

嫌そうな顔のエイベルを見て、リオがニヤリと笑いました。握った手を強く引かれて唇が重なり、思いっきり胸を押して離れます。視線が集まってます。無礼ですわ。

「何しますの!?」
「レティシアに勝利を捧げるから見ててよ」

笑顔のリオが髪に口づけを落として離れていきました。睨んでも全く効果がないんですよね…。女慣れしているからか視線も気にならないとは。婚約したのは、ん?

「マール、手を出すなと!!」
「婚約したからいいだろう?責任とるよ」
「ふざけんな」

エイベルとリオが剣を合わせてますがエイベルは興奮して剣筋が乱れてます。

「エイベル、落ち着いてください。その剣の乱れは相応しくありません。ビアードの名を」

肩を叩かれ振り向くとソート様が笑っています。

「これは遊びだから。本気の手合わせじゃない」
「ソート様」
「動揺させる作戦は悪くない。ほら、」

宥めるように頭を撫でられ、視線を戻すとエイベルがリオに負けました。情けないです。
その後のサイラス様とソート様はリオに何か呟かれて剣を置き、あっさりリオが勝ちました。ありえませんわ。

「これって、ずるくありませんか?」
「駄目とは書かれてないだろう?」
「性格悪いですわ」
「否定はしない。欲しい物も手に入ったし行くか」

明るい笑顔のリオからビアードのおもてなし券を見せられました。そんなものが欲しかったんでしょうか。

「券がなくても、おもてなししますよ」
「他の男がレティシアにおもてなしされるのが嫌なだけ。これを使ったら」
「俺が直々にもてなしてやるよ。レティシアは茶を運ばせるくらいだ」

やっぱりそのもてなしには私も組み込まれてるんですね……。商品の相談はしてほしかったです。そしたら参加賞にビアードの試供品を用意しましたのに。新しい乾燥食を

「俺はレティシアにもてなしを受けるからいらない。」

腰を抱かれて抱き寄せられました。エイベルのおもてなし?

「エイベルが人をおもてなしするのは初めてです。リオ様、受けてください」
「レティシアが隣にいるなら仕方ないから受けてやるよ。一人とは書いてないからな」

リオとエイベルが睨み合い、放っておきたいですが大事な話が終わってません。

「エイベル、遊びとはいえしっかりしてください。ビアードを名乗るなら」
「わかったよ。レティシア、早く食事をしろ。これから当番だろうが」
「たくさん食べたから大丈夫です。リオ様、私はここで」
「俺も行くよ。義兄上、頑張れよ」

嫌そうな顔のエイベルが何か言ってますがソート様がいるので任せ、リオに手を引かれて会場に着きました。

「レティシア、また後でな」

頬に口づけられ、文句を言おうとするとすでにいませんでした。リオって動きが早いんですよね……。

「後で?」
「レティシア、遅いわ。支度して」

ドレスを着たエイミー様に腕を引かれて準備室に入りました。まだ担当の時間よりも少し早いんですが。

「エイミー様、私は仮面に制服で」
「駄目。ドレスは決めてあるの。一度着飾りたかったの」

確かにドレスを着て支度するなら時間はギリギリです。ドレスコードがないから制服のつもりでしたのに。
愛らしいお顔なのにエイミー様の目がギラギラして怖いです。
濃いピンクのドレスに花やレースが散りばめられてます。中々派手というか、社交デビューの令嬢が着るような人目を集め家の豊かさを象徴するようなドレスですよ。子供向けのデザインですよ。
エイミー様とマナに着替えさせられ、頭は2つのお団子にまとめられ、花が飾られていきます。私は社交デビューは4年前に済ませました。お団子が熊の耳のように見えてしまいます。

「エイミー様。これはさすがに」
「ツインテールにする?」
「いえ、なんでもありません」

これ以上幼い装いにされたらたまりません。
仮面があるのが救いです。もう諦めましょう。絶対に仮面は外しません。
私は会場に出るとリアナとステラがいました。ステラが笑顔で近づいてきたのでステラの手を取って踊ります。

「ステラ、どう?」
「滞りなく。大きな揉め事もおきてません」
「良かったわ」

ステラには私を嫌う令嬢達のクラスを見にいってもらいました。私を嫌う令嬢達の家はステラの家と同派閥なので適任でした。
ステラと別れても私は踊り続けました。男子生徒が想像よりも、たくさん来るので驚きました。仮面をしても私と正体が見つかっているのは恥ずかしいです。
エイミー様の演奏が始まると美しい音色にうっとりしてしまいます。突然腰を抱かれる腕に驚くのはやめました。踊るのかと思えば会場の隅に連れ出されました。
私の仮面を外そうとするリオの手を止めました。

「駄目?」
「駄目です」
「絶対に可愛いのに」
「お戯れを。エイミー様に遊ばれました。恥ずかしいので絶対に仮面は外しません」
「レティシアが選ぶドレスじゃないよな」
「マール様」
「リオ」
「リオ様、お暇なら令嬢達と踊ってあげてください。視線を集めてますわ」
「レティシアに会いにきただけ。残念ながらそろそろ行かないと。またな」
「私は一人で大丈夫です」
「冷たいな」

拗ねた声なのに顔は笑っているリオが離れて行きました。私は役目を果たすために踊ります。
男子生徒は制服姿ばかりですね。女生徒は半々です。
自分のドレスを他の誰かが着ているのは違和感がありますね。
お祭りは無事に終わりました。多少の揉め事はあったようですが、生徒会や先生達が収めたようです。殿下も満足のいく結果に喜ばれて何事もなく終わって良かったです。
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