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第七十八話 愚考
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リオと出かけるとお金を出してもらってばかりです。
欲しい物を聞くと時間と言われます。お金は有り余っていると聞くと何も言えなくなります。
「どうした?」
ペンを止めているのに気づきました。リオの部屋で仕事をしていたことを思い出しました。
「いえ、なんでもありません」
リオのことは後で悩むことにして手元の書類に集中しましょう。ペンを走らせお茶の香りに顔を上げるとレオ様がいました。
「レオ様、声をかけてください」
「集中してたから。これを見せたくて」
袋から瓶が出てきました。瓶の中には動く木が入っています。笑顔のレオ様が瓶から出すと、木が歩いてます。
「レオ様、それ危険ですよ。特にレオ様は駄目です」
「見てて」
レオ様が笛を吹くと踊り、笛を止めると一瞬止まって、また歩き出しました。
「面白いだろ?もう少し欲しいんだけどまた育ててほしい」
楽しそうなレオ様に協力したいですが、御身の安全が第一です。王族でなくても安全優先です。
「嫌ですよ。動く木なんて恐怖ですよ。起きたら自分がミイラになってるなんてゾッとします」
「なんでレティシアの育てたのだけ、こうなったんだろうか。わかるか?」
木が揺れています。レオ様は木と話すんですか!?
寒気がしてきました。
「そうか・・」
「レオ様、私は心配でたまりません。研究するのは良いですが、眠った方が。眠る時はその木は封印してくださいよ。貴方も、レオ様に危害を加えたら燃やしますよ。こっちこないでください」
近づいてくる木から距離を取ります。
「レオ様、これ危険です。処分しましょう。私は火の魔石持ってますわ」
ポケットからフィルの魔石を取り出します。
リオが瓶の中に木をいれました。初めてリオが頼もしく見えましたわ。
「なにがそんなに怖いんだ?」
不思議そうな顔をするレオ様に頭が痛くなってきました。表情豊かになったことは嬉しいですが・・。
「世の中には人をミイラにする木の魔物もいます。土と水属性の魔導士は要注意ですよ」
「喜んでくれると思ったんだが・・・。エイベルは喜んだのに。自由自在に動く木がいればできることが増えるって」
さらに頭を抱えたくなりました。
「ポンコツ・・・。気にしないでください。うちの兄も最近頭がおかしいみたいですわ。ビアード領で育てるなら私が責任もって焼き討ちにしますわ。動く木に襲われビアード公爵家断絶・・。木が」
「レティシア、落ち着いて」
「私はやることができたので失礼しますわ」
エイベルと話をしないといけません。こないだのハリーから預かった薬草で作った苦いお茶を飲ませても反省しませんでした。
私は二人に礼をしてエイベルの部屋に急ぎましょう。
エイベルもリオもポンコツでビアードは大丈夫なんでしょうか・・・。
****
エイベルの部屋に行くと課題をしていました。
「エイベル、魔木をビアードで育てるなんて許しませんよ!!」
「俺が責任持つ」
自信満々に言いますが責任って絶対に危険性をわかってませんよね・・。
「育てられないでしょう」
「小遣いでやる」
エイベルは訓練が趣味なのでお金を使いません。必要な物は与えられるのでお小遣いはほとんど貯金です。予算も場所も魔導士もエイベルなら用意できます。
「焼き討ちにしますわ」
「なんでわからないんだ」
「私のセリフですわよ。魔物ですよ。害がなく住み着くならいいですが、育てることは許しません」
「いつも魔物を見逃すやつのセリフには」
「状況が違います。徹底的に邪魔しますので覚悟してください」
ロキがお茶を用意してくれたので、喧嘩はやめました。エイベルはビアード公爵夫人に相談して叱ってもらいましょう。ロキにエイベルが怪しい木に手を出したら教えてくれるように頼みました。
その晩、夢にエイベルが木を指揮している姿をみました。寒気がして再び寝付くことはできませんでした。
***
頭から木を指揮するエイベルが離れません。ビアードの制服を着た木が剣で戦う光景が・・。
全然授業に集中できません。
今日はエイベルは殿下の傍に控える日です。放課後にエイベルの部屋でお菓子を作りましょう。何も考えたくない時は料理が一番です。訓練だと集中できないから駄目なんです。気付くと、辺りは真っ暗になってました。大量のお菓子は…。明日はお茶会を開きましょう。
そういえばアナが男性は手作りを喜ぶと言っていました。エドワード様もロキと作ったお菓子を喜んで食べてくれます。リオのお礼になるでしょうか。
チョコのお菓子を包みましょうか。フィルなら袋にいれるだけでいいんですが、さすがに包まないと失礼ですよね。道具を取りに行くのは面倒ですわ。透明の袋に入れて、リボンをつけて、帰りに花でも摘んで添えましょう。
予備用の髪をまとめるリボンをポケットから出して、リオの分は包み終わりました。あとは大量に作ったお菓子を片付けます。明日はエイベルの部屋で皆でお茶会です。甘い匂いに苦しめばいいんです。この甘いケーキをエイベルに食べさせますわ。私に悪夢を見させた仕返しです。
真っ暗なので急いで帰らないといけません。木が襲ってきたらどうしましょう。恐ろしい…。
玄関にはリオがいました。遅くまで訓練していたんでしょうか。そういえば、
「リオ様、あげます」
リオに渡してから花をまだつけてないことに気付きました。
「ごめんなさい。やっぱり返してください」
「え?」
「まだ花を添えてませんでした」
「花?いや、これで十分だよ。作ったのか?」
嬉しそうに笑っているので失礼ではなさそうです。
「はい。お礼です」
「ありがとう。嬉しいよ」
勢いよく抱きしめられました。このリオは抱きつき癖があるので驚かなくなりました。
「送るから、帰ろうか」
上機嫌なリオに手を引かれて寮まで送ってもらいました。お礼になったなら良かったですわ。
***
最近よく眠れません。木が夢に出てきます。今世になって不眠になるのは初めてです。
私はどうしてリオの部屋にいるんでしょうか。歩いてきた記憶はありません。リオの腕の中にいる状況がよくわかりませんが頭を撫でる手が気持ちが良いことだけがわかります。
「レティシア、眠れてないのか?」
「いえ、」
「木に襲われるのか?」
「なんで?」
もしかして夢?
ぼんやりしてうまく頭が働きません。
「魘されてたから。木がって。そんなに怖いのか?」
「夢の中でエイベルが木にビアードの制服を着て指揮してるんです。現実ではバカなことを」
「バカなこと?」
「動く木をビアードで育てるって。苦い回復薬作りも諦めないし。もうどうすれば」
最近のエイベルのことを思い出すと頭が痛くなってきました。
「俺がなんとかするよ。なんでそんなに怖いんだ?」
「木の魔物は土属性と水属性の魔導士を取り込みミイラにするものもいます。安易に攻撃すると吸収されて・・・・・」
「ビアード領に生息にするのか?」
「今のところ見たことありません。森の国にたくさん生息する魔物です。なんで薬草を育ててたら動く木になったんでしょうか。あの薬草さえ育てなければ。エイベルが苦い回復薬に興味を持つから・・・。騎士なのに危機感が」
「魔物の育成は違法だからな。俺に任せてよ。ビアードに説明するよ。」
「エイベルは全然言うこと聞きません」
「交渉は俺の方が得意だから。これでも先輩だから」
「リオ様は時々頼もしいですね。私、頭がおかしい人ばかりでビアードの未来が不安でたまりません」
「ビアードがおかしいのはよく知ってるよ。もう少し眠るか?」
「膝貸してください」
リオの膝を枕にして眠ることにしました。
眠くてたまりません。ここは二番によく眠れる場所なんです。
***
目を開けると状況が全くわかりません。なんでリオの膝の上で眠ってるんでしょうか。
「申し訳ありません」
起き上がろうとすると頭を撫でられました。
「もう少し眠ってていいよ」
懐かしい感触に瞼の重みに耐えきれず再び目を閉じました。
***
目を覚ますとリオの膝を枕に眠っていたことに驚きました。幸せな夢を見た気がします。頭の上で書類を読むのも頭を撫でてくれるところもそっくりです。駄目です。この部屋には思い出がありすぎます。抱き上げて抱きしめてくれるところも。私のリオが恋しい。最近は大丈夫だったのに。
「ごめんなさい。失礼します」
腕から抜け出したいのに解けない。強く抱きしめる腕は違う。歪んでいく視界に涙が我慢できません。涙を拭う手の優しさは同じ。
「泣いていいよ。俺はリオが好きな君が好きなんだ」
今世は自分の弱さが嫌になります。
自分の弱さが嫌い。優しい手を振り解けない。私は優しい彼に何も返せない。顔を上げると優しい瞳と目が合います。昔から好きでたまらなかった瞳と。
「よわくて、ごめんなさい」
「俺が守るから弱くていいよ。傍にいてくれるだけでいい。強がらないでいいよ。我慢しないで」
陽気な声に小さく笑ってしまいました。目の前にいるのは違う人です。
「私、我儘です」
「大歓迎。いくらでも叶えるよ。ビアードのバカは俺がなんとかしてやるから、一人で頑張らなくていい。何か企んでるなら手を貸すよ」
顔を上げると明るく笑いかけられました。
「立場的にはエイベルのが上です」
「頭を使えばいいんだよ。レティシアの自慢の兄より俺の方が優秀だから」
「自意識過剰ですわ。否定はしません。エイベルは座学は駄目ですから」
「まずは動く木のことは諦めさせてあげるよ」
「どうして知ってますの?私、ここにきた記憶がないんですが」
「ぼんやりしてたから保護しただけ。寝かせ方を覚えたから眠れなかったらおいで」
どういうことでしょうか。私、魔法の演習をおえて、ぼんやり歩いたあとの記憶がないんですけど・・。
「お気持ちだけで」
「名残惜しいけどそろそろ帰らないとか。抱いて帰ろうか?」
「歩けます。お世話になりました」
リオの腕を振り解いて立ち上がりました。久々にすっきりしましたわ。
「暗いから送るよ」
リオに手を引かれて寮に帰りました。
マナの用意した食事を食べて、ベッドに入るとぐっすり眠れました。
眠れることがこんなに幸せなこととは知りませんでした。
翌日、エイベルが木を育てることは諦めたと聞いて初めてリオと婚約してよかったと思いました。エイベルのバカを止めてくれるならありがたいです。どうかリオがまともに育ってくれることを願いましょう。
おかげで不眠が解消しました。
欲しい物を聞くと時間と言われます。お金は有り余っていると聞くと何も言えなくなります。
「どうした?」
ペンを止めているのに気づきました。リオの部屋で仕事をしていたことを思い出しました。
「いえ、なんでもありません」
リオのことは後で悩むことにして手元の書類に集中しましょう。ペンを走らせお茶の香りに顔を上げるとレオ様がいました。
「レオ様、声をかけてください」
「集中してたから。これを見せたくて」
袋から瓶が出てきました。瓶の中には動く木が入っています。笑顔のレオ様が瓶から出すと、木が歩いてます。
「レオ様、それ危険ですよ。特にレオ様は駄目です」
「見てて」
レオ様が笛を吹くと踊り、笛を止めると一瞬止まって、また歩き出しました。
「面白いだろ?もう少し欲しいんだけどまた育ててほしい」
楽しそうなレオ様に協力したいですが、御身の安全が第一です。王族でなくても安全優先です。
「嫌ですよ。動く木なんて恐怖ですよ。起きたら自分がミイラになってるなんてゾッとします」
「なんでレティシアの育てたのだけ、こうなったんだろうか。わかるか?」
木が揺れています。レオ様は木と話すんですか!?
寒気がしてきました。
「そうか・・」
「レオ様、私は心配でたまりません。研究するのは良いですが、眠った方が。眠る時はその木は封印してくださいよ。貴方も、レオ様に危害を加えたら燃やしますよ。こっちこないでください」
近づいてくる木から距離を取ります。
「レオ様、これ危険です。処分しましょう。私は火の魔石持ってますわ」
ポケットからフィルの魔石を取り出します。
リオが瓶の中に木をいれました。初めてリオが頼もしく見えましたわ。
「なにがそんなに怖いんだ?」
不思議そうな顔をするレオ様に頭が痛くなってきました。表情豊かになったことは嬉しいですが・・。
「世の中には人をミイラにする木の魔物もいます。土と水属性の魔導士は要注意ですよ」
「喜んでくれると思ったんだが・・・。エイベルは喜んだのに。自由自在に動く木がいればできることが増えるって」
さらに頭を抱えたくなりました。
「ポンコツ・・・。気にしないでください。うちの兄も最近頭がおかしいみたいですわ。ビアード領で育てるなら私が責任もって焼き討ちにしますわ。動く木に襲われビアード公爵家断絶・・。木が」
「レティシア、落ち着いて」
「私はやることができたので失礼しますわ」
エイベルと話をしないといけません。こないだのハリーから預かった薬草で作った苦いお茶を飲ませても反省しませんでした。
私は二人に礼をしてエイベルの部屋に急ぎましょう。
エイベルもリオもポンコツでビアードは大丈夫なんでしょうか・・・。
****
エイベルの部屋に行くと課題をしていました。
「エイベル、魔木をビアードで育てるなんて許しませんよ!!」
「俺が責任持つ」
自信満々に言いますが責任って絶対に危険性をわかってませんよね・・。
「育てられないでしょう」
「小遣いでやる」
エイベルは訓練が趣味なのでお金を使いません。必要な物は与えられるのでお小遣いはほとんど貯金です。予算も場所も魔導士もエイベルなら用意できます。
「焼き討ちにしますわ」
「なんでわからないんだ」
「私のセリフですわよ。魔物ですよ。害がなく住み着くならいいですが、育てることは許しません」
「いつも魔物を見逃すやつのセリフには」
「状況が違います。徹底的に邪魔しますので覚悟してください」
ロキがお茶を用意してくれたので、喧嘩はやめました。エイベルはビアード公爵夫人に相談して叱ってもらいましょう。ロキにエイベルが怪しい木に手を出したら教えてくれるように頼みました。
その晩、夢にエイベルが木を指揮している姿をみました。寒気がして再び寝付くことはできませんでした。
***
頭から木を指揮するエイベルが離れません。ビアードの制服を着た木が剣で戦う光景が・・。
全然授業に集中できません。
今日はエイベルは殿下の傍に控える日です。放課後にエイベルの部屋でお菓子を作りましょう。何も考えたくない時は料理が一番です。訓練だと集中できないから駄目なんです。気付くと、辺りは真っ暗になってました。大量のお菓子は…。明日はお茶会を開きましょう。
そういえばアナが男性は手作りを喜ぶと言っていました。エドワード様もロキと作ったお菓子を喜んで食べてくれます。リオのお礼になるでしょうか。
チョコのお菓子を包みましょうか。フィルなら袋にいれるだけでいいんですが、さすがに包まないと失礼ですよね。道具を取りに行くのは面倒ですわ。透明の袋に入れて、リボンをつけて、帰りに花でも摘んで添えましょう。
予備用の髪をまとめるリボンをポケットから出して、リオの分は包み終わりました。あとは大量に作ったお菓子を片付けます。明日はエイベルの部屋で皆でお茶会です。甘い匂いに苦しめばいいんです。この甘いケーキをエイベルに食べさせますわ。私に悪夢を見させた仕返しです。
真っ暗なので急いで帰らないといけません。木が襲ってきたらどうしましょう。恐ろしい…。
玄関にはリオがいました。遅くまで訓練していたんでしょうか。そういえば、
「リオ様、あげます」
リオに渡してから花をまだつけてないことに気付きました。
「ごめんなさい。やっぱり返してください」
「え?」
「まだ花を添えてませんでした」
「花?いや、これで十分だよ。作ったのか?」
嬉しそうに笑っているので失礼ではなさそうです。
「はい。お礼です」
「ありがとう。嬉しいよ」
勢いよく抱きしめられました。このリオは抱きつき癖があるので驚かなくなりました。
「送るから、帰ろうか」
上機嫌なリオに手を引かれて寮まで送ってもらいました。お礼になったなら良かったですわ。
***
最近よく眠れません。木が夢に出てきます。今世になって不眠になるのは初めてです。
私はどうしてリオの部屋にいるんでしょうか。歩いてきた記憶はありません。リオの腕の中にいる状況がよくわかりませんが頭を撫でる手が気持ちが良いことだけがわかります。
「レティシア、眠れてないのか?」
「いえ、」
「木に襲われるのか?」
「なんで?」
もしかして夢?
ぼんやりしてうまく頭が働きません。
「魘されてたから。木がって。そんなに怖いのか?」
「夢の中でエイベルが木にビアードの制服を着て指揮してるんです。現実ではバカなことを」
「バカなこと?」
「動く木をビアードで育てるって。苦い回復薬作りも諦めないし。もうどうすれば」
最近のエイベルのことを思い出すと頭が痛くなってきました。
「俺がなんとかするよ。なんでそんなに怖いんだ?」
「木の魔物は土属性と水属性の魔導士を取り込みミイラにするものもいます。安易に攻撃すると吸収されて・・・・・」
「ビアード領に生息にするのか?」
「今のところ見たことありません。森の国にたくさん生息する魔物です。なんで薬草を育ててたら動く木になったんでしょうか。あの薬草さえ育てなければ。エイベルが苦い回復薬に興味を持つから・・・。騎士なのに危機感が」
「魔物の育成は違法だからな。俺に任せてよ。ビアードに説明するよ。」
「エイベルは全然言うこと聞きません」
「交渉は俺の方が得意だから。これでも先輩だから」
「リオ様は時々頼もしいですね。私、頭がおかしい人ばかりでビアードの未来が不安でたまりません」
「ビアードがおかしいのはよく知ってるよ。もう少し眠るか?」
「膝貸してください」
リオの膝を枕にして眠ることにしました。
眠くてたまりません。ここは二番によく眠れる場所なんです。
***
目を開けると状況が全くわかりません。なんでリオの膝の上で眠ってるんでしょうか。
「申し訳ありません」
起き上がろうとすると頭を撫でられました。
「もう少し眠ってていいよ」
懐かしい感触に瞼の重みに耐えきれず再び目を閉じました。
***
目を覚ますとリオの膝を枕に眠っていたことに驚きました。幸せな夢を見た気がします。頭の上で書類を読むのも頭を撫でてくれるところもそっくりです。駄目です。この部屋には思い出がありすぎます。抱き上げて抱きしめてくれるところも。私のリオが恋しい。最近は大丈夫だったのに。
「ごめんなさい。失礼します」
腕から抜け出したいのに解けない。強く抱きしめる腕は違う。歪んでいく視界に涙が我慢できません。涙を拭う手の優しさは同じ。
「泣いていいよ。俺はリオが好きな君が好きなんだ」
今世は自分の弱さが嫌になります。
自分の弱さが嫌い。優しい手を振り解けない。私は優しい彼に何も返せない。顔を上げると優しい瞳と目が合います。昔から好きでたまらなかった瞳と。
「よわくて、ごめんなさい」
「俺が守るから弱くていいよ。傍にいてくれるだけでいい。強がらないでいいよ。我慢しないで」
陽気な声に小さく笑ってしまいました。目の前にいるのは違う人です。
「私、我儘です」
「大歓迎。いくらでも叶えるよ。ビアードのバカは俺がなんとかしてやるから、一人で頑張らなくていい。何か企んでるなら手を貸すよ」
顔を上げると明るく笑いかけられました。
「立場的にはエイベルのが上です」
「頭を使えばいいんだよ。レティシアの自慢の兄より俺の方が優秀だから」
「自意識過剰ですわ。否定はしません。エイベルは座学は駄目ですから」
「まずは動く木のことは諦めさせてあげるよ」
「どうして知ってますの?私、ここにきた記憶がないんですが」
「ぼんやりしてたから保護しただけ。寝かせ方を覚えたから眠れなかったらおいで」
どういうことでしょうか。私、魔法の演習をおえて、ぼんやり歩いたあとの記憶がないんですけど・・。
「お気持ちだけで」
「名残惜しいけどそろそろ帰らないとか。抱いて帰ろうか?」
「歩けます。お世話になりました」
リオの腕を振り解いて立ち上がりました。久々にすっきりしましたわ。
「暗いから送るよ」
リオに手を引かれて寮に帰りました。
マナの用意した食事を食べて、ベッドに入るとぐっすり眠れました。
眠れることがこんなに幸せなこととは知りませんでした。
翌日、エイベルが木を育てることは諦めたと聞いて初めてリオと婚約してよかったと思いました。エイベルのバカを止めてくれるならありがたいです。どうかリオがまともに育ってくれることを願いましょう。
おかげで不眠が解消しました。
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