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元夫の苦難30
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レティシアから冷たい視線を向けられる日々が続いていた。
事情を話すとサイラス達に苦笑された。
「バカだな。レティシアは目立つこと嫌いなんだよ。見世物も。事情を話さなかったリオが悪い。リール嬢にきちんと頼ませればこんなことにはならなかったよ。画集があると知れたらさらに怒るだろうな」
「謝るしかないよ。話せばわかってくれるよ」
「レティシアは根に持たないから放っておけばいいよ。忘れるよ。一月くらいで」
「そんなに・・・・」
一月という言葉に気が遠くなった。
サイラスの助言通りに謝るために生徒会で捕まえようと思ったらいなかった。
「マール様、レティシアは私の演者なので茶会が終わるまで近づかないください」
「は?派閥が違うだろう」
「平等の学園です。私も本気で優勝を狙ってます。当分はレティシアは忙しいので。生徒会の仕事は全て私が引き受けます。リール様が相手でも負けません」
いつも静かで目立たないクラスメイトに好戦的な笑みを向けられた。
まさかレティシアが敵対派閥であるケトン侯爵令嬢の茶会の演者に選ばれるとは思わなかった。生徒会ではレティシアがレート嬢の次に懐いていた目の前の令嬢を敵に回すと厄介なので従うしかないか。
茶会まであと一月・・・。
昼食さえも作戦会議と後輩の教室に顔を見せなくなった。
母上の情報だと休養日はリール公爵夫人にビアードと一緒にレッスンを受けに通っているらしい。そのため空いた時間は社交で忙しく自由な時間はないらしい。茶会で敵対派閥の演者を引き受けたので、弁明もかねて同派閥の社交も積極的にこなしているらしい。
最近は常にレティシアはビアードと一緒だから寮まで送ることもできなかった。
レティシア達は放課後はいつも楽しそうに演奏室で過ごしている。ビアードの勝利に燃えている彼女に敵である俺が声を掛けるわけにはいかなかった。
この茶会にビアードの命運はかかってないけど立場上突っ込めない。
俺は目の前の二人の所為でレティシアに冷たい視線を向けられたのに、リール嬢もレオ様も楽しそうに練習している。
レティシア達のバイオリンの指導をロキがするなら俺がするのに・・。演者を引き受けたことを後悔した。
毎日練習しているレティシア達と違って俺は2回音合わせをしただけだった。リール嬢はレオ様と二人で過ごしたいようだ。レオ様は無自覚の天然タラシらしい。俺も必要以上に関わりたくないから邪魔するつもりもない。レート嬢とは違った意味で怖い令嬢だ。
空いた時間はサイラスを誘って訓練することにした。
「レティシアにフラれたんですね」
すれ違ったルメラ嬢に感じの悪い笑みを向けられた。
「私はレティシアに差し入れにいきます。邪魔しないでください」
性悪女に夢中になった男はバカだと思う。なんでどんどん仲良くなってるんだよ。サイラスに慰めるように肩を叩かれた。
****
ようやく茶会の日を迎えた。俺の出番は午後なの時間までは鍛錬していると訓練場にはビアードの姿もあった。
「エイベル様、クロード殿下がお呼びです。レティシア様から制服に着替えてクロード殿下と共に茶会に参加するよう伝えてほしいと」
レティシアの取り巻きのアロマの言葉が聞こえたので近づいた。
「何かあったのか?」
「マール様もご一緒にお願いします。詳しい話は生徒会室で」
着替えて生徒会室に行くとクロード殿下が冷たい顔をしていた。
「リオも一緒か。丁度いい。茶会で不正行為が行われた。平民の生徒に招待状が配られた。リール嬢の茶会にはエイベル、明日の茶会はリオとレオに参加を」
「殿下、レティシアは?」
「今日の茶会を2件頼んだ。リール嬢の茶会にレティシアとエイベルで参加させられないから私への招待を代わってもらった。今頃イーガン伯爵令嬢の茶会に参加してるだろう」
「殿下にイーガン嬢の招待状ですか?」
「ああ。調査は命じている。今は無事に終えることが優先だ」
「わかりました。失礼します」
イーガン伯爵令嬢と聞いて嫌な予感がする。
出番まで時間があるのでイーガン嬢の茶会に向かうとグレイ嬢とロキが冷たい空気を醸し出している。見学者は二人だけか。
趣味の悪い装飾の会場に引いた。ピアノは妹が演奏しているのか。
ロキ達が冷たい空気を纏っている理由はすぐにわかった。レティシアが侮辱を受けていた。
攫われたことや俺との婚約を責められているレティシアは穏やかな顔で躱しているが、教師は止めないのか。同席している若い教師は固まっていて役に立たない。
まずなんでレティシアが下座なんだよ。彼女は一番家格が高いのに。
あんな下座の席は過去に座ったことはないと思う。お茶もお菓子も手をつける様子はない。
給仕する挙動不審な侍女の動きが不自然だ。
侍女が蓋をしていないポットを持ってレティシアの後に近づいた。お湯をかけようとするので風の結界で包んだ。
侍女が体勢を崩して転んで本人にお湯がかかった。湯気がでてるが熱湯かよ…。
あれを背中にかけたら大火傷だ。治癒魔法で治せても苦痛はある。
レティシアが俺の結界を壊して治癒魔法をかけている。震える侍女を気遣っているけど、それ加害者だから。まずは状況確認をしてほしかった。突然結界に包まれたら警戒してほしい。
「うちの侍女が何かしました?」
「怪我は治しましたが動揺されてますので、休まれたほうが」
「私の茶会を壊したいんですか」
「大丈夫です。申し訳ありません」
動揺しない様子はイーガン嬢の指示か。
侍女の心配を主ではないレティシアだけがしている。この状況で動かない教師って職務怠慢だよな。
教師の位置ならお湯がかけられようとしたの見えたよな…。
風の結界を茶会の妨害と責めるか。あげく、まがいものの令嬢か。レティシアが反論せずに流すから言いたい放題だ。
この件は後日抗議しよう。
「リオ、時間だ」
レオ様に肩を叩かれた。
最後まで見学したいけどリール嬢の茶会に遅れたら後が怖い。
侍従を連れてくればよかった。気が進まないけど頼むか。
「ロキ、報復は俺がする。レティシアに出されたお茶とお菓子を手に入れられるか?」
「わかりました。お嬢様が顔を顰めたので手に入れます」
レティシアが社交の顔を崩すのは相当だよな。何か仕込んであるな。
「グレイ嬢、危険なら壊していい。責任は俺が持つ。魔石はあるか?」
「はい。お任せを」
「後で茶会の様子を教えてくれ。頼んだよ」
二人に任せて離れた。レティシアのためなら二人は味方だ。
グレイ嬢とは時々情報交換している。
何もなく無事に終わるといいんだけど。
招待客だと動けないからレティシア達の茶会の招待を誰かに代わってもらうかな…。
リール嬢の会場に着くと上品に飾りつけられている。
「今日はよろしくお願いします」
「ああ」
優勝は彼女と囁かれている。王子を演者に選んだのは彼女が初めてだろう。
時間になったので、礼をして演奏を始めた。
招待客にクロード殿下とビアードを見つけた令嬢達が集まってきた。
想像以上に見学者の人数がすごいな。
去年の茶会よりも凄い。
リール嬢目当ての男と俺達目当ての令嬢。そこにクロード殿下とビアードが加わればな…。
最近は俺のファンがまた増えて迷惑している。レティシアとの婚約披露で眼鏡を外したのが原因だよな。
学園で五指に入るモテ男の称号なんていらない。そのうちの二人はビアードとクロード殿下だ。
リール嬢に眼鏡は外して欲しいと頼まれたけど断った。これ以上令嬢達に関心を持たれたくない。
令嬢達の視線はレオ様にも注がれている。
無表情とはいえ、端正な容姿で優雅に演奏する姿は絵になるよな。
いつの間にか母上とリール公爵夫人が眺めていた。招待客として参加してるのは知ってたけど見学にくるとは思わなかった。
去年の茶会はレティシアがいたから楽しかった。目が合うと微笑みかけてくれて一緒に演奏するのは至福だった。リール嬢の細かい指導もレティシアさえいれば至福の時間だった。
見学に来てくれるだろうか。
そろそろイーガン嬢の茶会も終わるだろう。
だが見学者の中にレティシアの姿はなく、最後の曲の演奏が終わり礼をした。
リール嬢の茶会は無事に終わった。リール嬢はレオ様に令嬢が近づかないように傍にいるようだ。
二人に礼をして、レティシアの参加している茶会の見学に行くことにした。
「マール様、素敵でしたわ」
令嬢達に囲まれたが、相手は最低限しかしない。母上達はいつの間にかいなかった。
「用があるから」
レティシアが茶会の席で笑顔でお茶を飲んでる姿にほっとした。嫌なことも言われる様子はない。このお茶会は大丈夫そうだ。
「リオ、終わったら生徒会室に」
「わかりました」
会場を回っている殿下の声に頷いた。クロード殿下も忙しそうだ。
気付くと令嬢達の見学が増えていた。話しかけられるので適当に相槌をうち、見学することにした。
茶会が終わったので、声をかけようとすると、主催の令嬢がレティシアを追いかけていた。
「ビアード様、いかがでしたか?」
「素敵なお茶会でした。お勉強になりました」
「またお招きしても…」
「楽しみにしてます」
「ずっとお話したかったんです。ビアード家門に。魔導士として」
令嬢の言葉に嬉しそうな笑みを向けている。
「ビアードはいつでも歓迎致します。」
「今度、噂の訓練に」
「興味がありましたら是非。ただご満足いただけるものかは。ビアードは強さを求めるものは拒みません。立場に関係なく歓迎致します」
手を握り、うっとりしている令嬢に嫌な予感がして邪魔することにした。これ以上レティシアの信者はいらない。
「レティシア」
抱き寄せると目を大きく開けて見つめられた。間近でみるこの表情も物凄く久しぶりだ。
「リオ様、どうされました?」
向けられる視線に冷たさはない。
「大丈夫だったか?」
「ビアード家門に興味があるようです。魔導士の方に」
嬉しそうな笑顔に胸が暖かくなり抱きしめた。機嫌が直って良かった。頭を撫でるときょとんとされた。
「無事ならいい。殿下が呼んでる」
レティシアを連れて生徒会室に移動した。
視線を集めるのは気にしない。俺はレティシアしか興味がないから放っておいてほしい。何度も愛人も作る気はないと伝えても令嬢達には俺の言葉は全く聞こえないみたいだ。
「御苦労だった。どうだった?」
「すみません。まだ情報を集められてません。ただイーガン様のお茶会に殿下が招かれたことが違和感が。殿下が足を運ぶ価値のないお茶会でした」
「無礼な茶会だったんだろう」
殿下の耳にも入っているのか。
「はい。招待状を譲っていただいて良かったです。」
「報告は明後日でいい。演者だろう?」
「ありがとうございます。失礼します」
礼をして足早に去るレティシアの姿に違和感を感じた。
「殿下、イーガン嬢の茶会の報告は後日」
「ああ。追いかけていい」
殿下には敵わない。礼をして言葉に甘えた。
レティシアを探すと廊下の隅にしゃがんで丸まっていた。
「レティシア!?」
苦痛に顔を歪めいる様子に背中をゆっくり撫でると、拒否された。苦しそうに口元に当てたハンカチが鮮血に染まっていた。
抱き上げて保健室に急ぎ、ベットにおろした。
先生を呼びに行くべきか、でも側を離れて何かあったらたまらない。苦しそうな背中を撫でると拒否された。
扉が開きレオ様とビアードが入って来た。
「レティシア、何があった?」
「廊下で蹲ってて、血を吐いてたから保健室に」
レティシアに詰め寄るビアードに説明する。レオ様が静かに見ている。
レオ様がレティシアの額に手を当てると徐々に顔が穏やかになった。後でなんの魔法を使ったか教えてもらおう。
「治癒魔法使えるか?」
頷いたレティシアの隣に一瞬猫が見えたがすぐに消えた。
しばらくしてレティシアが、ふぅっと息を吐いて、笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます。もう大丈夫です」
「レティシア、何か変なものを食べたか?」
「苦くて渋いお茶と辛いケーキを一口食べたくらいですかね。ただ具合が悪くなったのは今だけです」
ビアードの眉間に皺が寄った。
やはり危ないものを食べさせられたのか。
「エイベル、レオ様のおかげでセリアにお世話にならずにすみました。お騒がせしました」
ベッドからおりて、ふらふらしているので抱き寄せた。
「すみません」
ビアードが頬に当てた手に気持ち良さそうな顔をしている。眠そうなレティシアを寮に送ることにした。
「茶会のことは聞いた」
「手に入ったか?」
「今、調べさせている」
イーガン嬢の茶会の件はロキが報告したのか。
俺も調べないとな。
***
クロード殿下に許可をもらいレティシアの参加する予定の茶会の招待は他の令嬢に代わってもらった。彼女も上位貴族だから問題ない。
そのかわり午前の茶会を1件受けた。向けられる視線が不快だったが当たり障りなくこなした。まだ時間はあるけど、レティシア達の会場を目指すことにした。会場の庭園にはすでに人が集まっていた。
生徒だけでなく、夫人達も集まっている。
母上とリール公爵夫人もいた。
「母上、どうされたんですか?」
「私の出席分は終えたわ。楽しそうな話を聞いたから」
「私は弟子のお手並み拝見よ」
「エイミーに優勝してほしいのでは?」
「芸術に順位は無粋よ。それにうちのエイミーもだけど、このお茶会もきっと初めての試みよ」
「テーマは遊び。会話を楽しむお茶会で五感でお楽しみくださいって何をするのかしら」
母上から冊子を見せられた。
招待される夫人には各お茶会のテーマと工夫がまとめられたものが配られていた。
「まだ始まるまで時間がありますが」
「リオもまだまだね。最終イベントの茶会は準備の段階から勝負が始まってるのよ。いかに先に人を集めるかよ。ケトン侯爵令嬢が狙っているのは上位貴族以外の生徒。集まっている生徒を見なさい」
周りには下位貴族や武門貴族とレティシア達のファンばかりだった。
「両派閥の中心人物がいるから派閥の関係者も見学にくるわ」
この会場は結界で覆われていない。
ただ水鏡がいたるところに設置され見学席にも演者の様子が見れるように用意されている。
サーカスではなく茶会が始まるんだよな?
水鏡に笑みを浮かべたケトン嬢が映った。
「見学いただきありがとうございます。前座をお楽しみください」
一度映像が消えると、水鏡の中には不機嫌そうなビアードの腕を抱いてニコニコしているレティシアと微笑ましい顔をして見ているグレイ嬢と緊張しているアリス嬢がいた。
「社交用で良いので笑ってください。お兄様」
「エイベル様の表情が固いわね。無礼講よ。レティシア、思いっきり笑わせて」
レティシアがきょとんとして、ビアードの頬に手を当てている。ケトン嬢は何を映しているんだ…。
「笑ってください。恥ずかしい話しますよ」
「そんなんで笑えるかよ」
レティシアに抱きつかれ、見上げられているビアードが羨ましい。
「本当に仲が良いわね」
「いい作戦ね。生徒達は麗しのビアード兄妹に夢中よ。二人の演奏姿が素敵で絵師に描かせたもの」
「よく面倒を見ていると思ったけど」
「エイベルはあまりセンスはないわ。従者のロキという拾い物をしたけど、うちには譲ってくれないって。週に1回通わせてるから引き抜くわ」
「ロキは二人のお気に入りだから無理でしょ」
「まだまだこれからよ。エイベルは笑ってるのにレティシアは気に入らないみたいね」
母上達は楽しそうに見ている。
「いつ見ても美しい」
「二人が一緒にいるのは…」
「素敵ですわ。このお二人にお仕えできるなんて」
「ビアードの至宝」
うっとりしている声も聞こえる。
「兄は妹を存分に甘やかす義務があります。笑ってください。減りませんから。可愛い妹の頼みがきけないんですか?」
「どこに笑う要素があるんだよ」
「時間がありません。フィルもソート様もいません。ステラとアリス様という可愛い後輩に囲まれて過ごせるなんて殿方の夢ですよ。両手に花です。でもエイベルには駄目か。剣を借りてきましょうか?」
盛大な笑いが沸き起こった。笑い声の正体は見学している武門貴族の男達だ。
「私はエイベルの笑わせ方も知らないなんて駄目な妹ですわ」
悲しそうなレティシアを乱暴に扱えるのはビアードだけだろう。
「ふざけてるだろう、離れろよ」
「お兄様が酷い。私はお兄様のために頑張ってるのに。リオ様の笑顔の大盤振る舞いを見習って。それは気持ち悪いからやはりいいです。どうして笑ってくれないんですか!?いい加減にしないと怒りますよ」
「わかったよ。これでいいか?」
「全然笑ってません。茶会が終わったら笑顔の練習です。たまにはお腹を抱えて笑ってください。くすぐればいいんですね。ディーネ」
「バカ、やめろ」
「レティシア、十分よ。ありがとう」
「不甲斐ない兄ですみません」
ビアードが謝るレティシアを見て苦笑している。母上に肩を叩かれた。
「リオ、まだまだね」
「絵師を連れてきたかったわ。前座でここまで盛り上げるなら本番はもっと凄いのかしら。楽しみね。レティシア達のやり取りを見ていたおかげでグレイ嬢達も緊張が解けているし、上手いわ」
「リオ、笑顔の大盤振る舞いって。その怪しい眼鏡で伝わるのかしら…」
いつの間にかさらに見学者が増えていた。
アナ達も見学に来ているのか。
レティシア達が礼をした。
レティシアがビアードに笑いかけると二人の演奏が始まった。
「やはり音が荒いわね。レティシアも本気で学べば良い奏者になれるのに」
「レティシアが望んでないでしょう。あの子は多忙なのよ。今や殿下の手伝いもしてるのよ」
「体さえ強ければ王太子妃も夢じゃないのに」
「レティシアはお兄様と一緒にいられるのが一番幸せだそうよ」
母上に遊ばれている。レティシアはやり取りを見られていると知ったら絶叫しそうだけどいいんだろうか……。
フルートを置いたレティシアが籠を抱えて花をまいている。ビアードに花を投げて睨まれている。
レティシアがアリス嬢に花をふりまき、二人が微笑み合った様子に悲鳴が聞こえた。
これはアリス嬢の人気があがるだろうか。グレイ嬢も伯爵令嬢の中では人気はある。二人共レティシアには遠く及ばないが。
「麗しのビアード兄妹」
「尊い!!」
甲高い歓声が響いた。
ビアードが笑いレティシアが拗ねた顔をしている。
「二人を並べると表情が変わるわよね。エイベルの時々見せる優しい笑みにファンが増えるわ」
「レティシアも社交の時とは別人ですね。テーマの通り遊んでますわ」
「エイミーも見学に来たの?」
「せっかくですから」
リール嬢がいた。レオ様は茶会に参加しているから一人なのか。
茶会では無表情のレオ様がレティシア達の様子に笑みをこぼした。リール嬢はレオ様を見に来たようだ。
魔法の気配がした。ビアード兄妹が楽器を置いている。
空から花が降ってきた。
会場を結界で覆わなかったのはレティシア達に任せたのか。この場の風はビアードの支配下か。
花の香りが漂い、レティシア達も花だらけだ。
レティシアが楽しそうに笑って可愛い。ビアードが体についた演者の花を風で振り落とした。漂う花の中で演奏する姿は幻想的だ。
久しぶりのずっと楽しそうに笑うレティシアは可愛いすぎる。これが全員に見られているのは複雑だ。また余計な虫が増えそうだ。
魔法を使ったり演奏したり過去に参加した茶会で一番楽しそうな様子だった。
空から水球とキラキラした粉と花びらが落ちてきた。
粉は魔石を砕いたものか。手元に浮いている水球が一斉に割れて飴と花びらと花の匂いが広がった。水しぶきで濡れたが、暖かい風が一気に乾かし、盛大な歓声が上がった。
最後にレティシアとビアードが楽しそうにバイオリンで一曲演奏した。
招待客が帰っても見学者は引かなかった。
演奏を終えた4人が礼をすると盛大な拍手が沸き起こった。茶会よりも演奏会の見学にきた雰囲気だけどいいんだろうか。
ケトン嬢と抱き合っていたレティシアが解放されてレティシアとビアードが近づいてきた。
「レティシア様、もっと見たい!!」
アナの声にレティシアが笑った。この状況で最初に声をかけたアナの度胸はすごい。
「お兄様、魔法で一戦やりましょうか。風読みのお披露目です」
「本気か?」
「ええ。」
「見ごたえないだろう」
悩んでいる二人にロキが近づいた。
「上空に上がって30秒待機してください。一気に落としてくださいね。」
ビアードが空に上がった。せっかくだから手伝うか。
水球で花を包んでいる肩に手を置いた。
「レティシア、俺が飛ばすよ」
「お願いします。水浸しにしても構いません」
楽しそうに笑うレティシアの期待に答えないと。久しぶりに向けられる無邪気な顔に顔が緩みそうになる。
「了解」
風魔法で水球を飛ばしてビアードにぶつける。たくさんあるからぶつけ放題だ。
幾つか囮で相殺させて、仕掛けていく。ビアードは単純だからすぐに引っかかるけど平気なんだろうか。濡れたビアードを見て隣で楽しそうに笑う声が聞こえた。
全ての水球が壊れるとビアードが降りてきた。
「エイベル、腕が落ちましたね」
「マールの風を使うなら先に言え」
「油断大敵ですわ。もうエイベルの役目は終わりですので訓練に行っていいですよ。お疲れ様でした。お兄様」
「お前もな。今日はゆっくり休めよ」
ビアードはレティシアの頭を撫でて濡れたまま立ち去ったけどいいんだろうか。
頭を撫でてもあそこまで無防備で気持ちよさそうな顔は俺個人には向けられない。
「マール様、ありがとうございました」
「構わないよ。複雑だ」
上品な笑みを浮かべられたのが寂しくて抱きしめた。せっかくなので魔力を送った。
「魔力はいりません」
「気持ち悪い?」
「いえ、ただ今日はそんなに使っていないので必要ないんです」
レティシアに魔力が送れることに安心した。合わない魔力は毒だから。以前俺の魔力を送ったら不快な顔をされたのは気になっていた。
グレイ嬢にレティシアを連れていかれてしまった。
「今回は作戦勝ちね。来年から茶会はかわるかしら」
「貴族の茶会としては評価できないわ。でも参加者を楽しませて引きつけるおもてなしの面では上出来。レティシアの主催のお茶会はどうなるのかしら」
「勝利の女神の称号が取られたわね」
「お母様、芸術に順位は関係ありません」
母上達は放っておいて俺はビアードを追いかけた。
イーガン嬢の茶会の情報を合わせたかった。
***
レティシアに出されたお茶とお菓子だけは別物だった。
イーガン商会は茶葉のブレンドが人気である。様々な効能のある茶葉を売り出している。ただ組み合わせによっては危険な効能もある。
毒ではない。胃に負担をかける配合で最も濃い物を出されたらしい。
ケーキに掛けられたのも刺激の強い香辛料だった。
まずいお茶もお菓子も嫌がらせだった。レティシアは胃が強くなかったので耐えきれずに血を吐いた。一口で血を吐くって、全部飲んだと思うと血の気が引いた。少量だったためじわじわと組織が傷つき、時間経過してから吐いたらしい。レオ様の魔法で刺激物により荒れた体を鎮静させ、自身の治癒魔法で修復して無事だった。
お湯をかけようとしたのは火傷を負わせて傷物にしたかった。
傷物になれば俺との婚約破棄されると。
茶会の招待状に手を回したのはイーガン嬢の席にいた教師だった。
茶会の招待客の生徒は助手の講師が選んでいた。貴婦人達は失礼のないように講師が担当していた。茶会にとっては招待される生徒は数合わせだ。そこまで重要視されない。
ただ招待客の選抜には暗黙のルールがある。上位貴族の茶会に招待されるのは上位貴族。
茶会は上位貴族のための授業だ。教師や貴婦人達の指導の下、ふさわしい茶会が催されるように。立派にこなせないと問題だが・・・。
下位貴族達はそこまで求められていない。
不正な招待状を受け取った生徒達の共通点はなかった。茶会の作法も知らない家に力のない者ばかりだった。
「レティシア、何か違和感があるのか?」
報告を聞いたクロード殿下の視線に怯えながらレティシアが口を開いた。
「作法もなく怯えた生徒が参加すれば、茶会の接待の計画が狂います。ユーナ様達の茶会の妨害をして得をするのは誰かと思いまして。殿下の婚約者の立場を狙っている家の関与が一番すっきりするんですが。でもクロード殿下の統治を乱すような愚かなことをするなど…」
「殿下、遅れて申しわけありません。やはり主犯はイーガン伯爵嬢です。もともと殿下に招待状を送るように手配させ、茶会で魅了作用のあるものを振舞う計画でした。教師も招待客も買収されてました。レティシアの参加で計画が狂ったようです。」
副会長が調べていたのか。
「杜撰過ぎないか」
「下位貴族ですから。王家の事情をご存知ないのでしょう。殿下の空いている時間にイーガン嬢の茶会の予定を組み招待状が送られました。講師は殿下のイーガン嬢の茶会の招待を知りませんでした」
「教師が不正に手を染めたか。来年は招待する生徒は生徒会で決めるか。いや、誰でもいいなら生徒は好きに招待させるか。イーガン嬢と関係者、教師は王宮に。エイベル、手配を。厳しく尋問するように。ビアードの訴状もまとめておけ」
「かしこまりました」
「エイベル、訴状は私が書きますよ」
レティシアに任せたら無罪になる。どうせ巻き込まれただけと言うだろう。
「レティシア、俺がビアードとまとめるよ。得意だから任せてよ」
「え?」
「母上から幾つか頼まれてるからそっちを頼むよ。訴状は俺が仕上げられるけど、」
「お構いなく、両方仕上げます。」
「わかったよ」
仕方ないから書き終わったのを直そう。
最終的にはビアード公爵家の判断だ。
会議は終わった。殿下の空気が冷たい。機嫌の悪いクロード殿下が怖いレティシアがレオ様を連れて一番に退室していった。各々殿下を刺激しないように仕事に戻ることにした。
事情を話すとサイラス達に苦笑された。
「バカだな。レティシアは目立つこと嫌いなんだよ。見世物も。事情を話さなかったリオが悪い。リール嬢にきちんと頼ませればこんなことにはならなかったよ。画集があると知れたらさらに怒るだろうな」
「謝るしかないよ。話せばわかってくれるよ」
「レティシアは根に持たないから放っておけばいいよ。忘れるよ。一月くらいで」
「そんなに・・・・」
一月という言葉に気が遠くなった。
サイラスの助言通りに謝るために生徒会で捕まえようと思ったらいなかった。
「マール様、レティシアは私の演者なので茶会が終わるまで近づかないください」
「は?派閥が違うだろう」
「平等の学園です。私も本気で優勝を狙ってます。当分はレティシアは忙しいので。生徒会の仕事は全て私が引き受けます。リール様が相手でも負けません」
いつも静かで目立たないクラスメイトに好戦的な笑みを向けられた。
まさかレティシアが敵対派閥であるケトン侯爵令嬢の茶会の演者に選ばれるとは思わなかった。生徒会ではレティシアがレート嬢の次に懐いていた目の前の令嬢を敵に回すと厄介なので従うしかないか。
茶会まであと一月・・・。
昼食さえも作戦会議と後輩の教室に顔を見せなくなった。
母上の情報だと休養日はリール公爵夫人にビアードと一緒にレッスンを受けに通っているらしい。そのため空いた時間は社交で忙しく自由な時間はないらしい。茶会で敵対派閥の演者を引き受けたので、弁明もかねて同派閥の社交も積極的にこなしているらしい。
最近は常にレティシアはビアードと一緒だから寮まで送ることもできなかった。
レティシア達は放課後はいつも楽しそうに演奏室で過ごしている。ビアードの勝利に燃えている彼女に敵である俺が声を掛けるわけにはいかなかった。
この茶会にビアードの命運はかかってないけど立場上突っ込めない。
俺は目の前の二人の所為でレティシアに冷たい視線を向けられたのに、リール嬢もレオ様も楽しそうに練習している。
レティシア達のバイオリンの指導をロキがするなら俺がするのに・・。演者を引き受けたことを後悔した。
毎日練習しているレティシア達と違って俺は2回音合わせをしただけだった。リール嬢はレオ様と二人で過ごしたいようだ。レオ様は無自覚の天然タラシらしい。俺も必要以上に関わりたくないから邪魔するつもりもない。レート嬢とは違った意味で怖い令嬢だ。
空いた時間はサイラスを誘って訓練することにした。
「レティシアにフラれたんですね」
すれ違ったルメラ嬢に感じの悪い笑みを向けられた。
「私はレティシアに差し入れにいきます。邪魔しないでください」
性悪女に夢中になった男はバカだと思う。なんでどんどん仲良くなってるんだよ。サイラスに慰めるように肩を叩かれた。
****
ようやく茶会の日を迎えた。俺の出番は午後なの時間までは鍛錬していると訓練場にはビアードの姿もあった。
「エイベル様、クロード殿下がお呼びです。レティシア様から制服に着替えてクロード殿下と共に茶会に参加するよう伝えてほしいと」
レティシアの取り巻きのアロマの言葉が聞こえたので近づいた。
「何かあったのか?」
「マール様もご一緒にお願いします。詳しい話は生徒会室で」
着替えて生徒会室に行くとクロード殿下が冷たい顔をしていた。
「リオも一緒か。丁度いい。茶会で不正行為が行われた。平民の生徒に招待状が配られた。リール嬢の茶会にはエイベル、明日の茶会はリオとレオに参加を」
「殿下、レティシアは?」
「今日の茶会を2件頼んだ。リール嬢の茶会にレティシアとエイベルで参加させられないから私への招待を代わってもらった。今頃イーガン伯爵令嬢の茶会に参加してるだろう」
「殿下にイーガン嬢の招待状ですか?」
「ああ。調査は命じている。今は無事に終えることが優先だ」
「わかりました。失礼します」
イーガン伯爵令嬢と聞いて嫌な予感がする。
出番まで時間があるのでイーガン嬢の茶会に向かうとグレイ嬢とロキが冷たい空気を醸し出している。見学者は二人だけか。
趣味の悪い装飾の会場に引いた。ピアノは妹が演奏しているのか。
ロキ達が冷たい空気を纏っている理由はすぐにわかった。レティシアが侮辱を受けていた。
攫われたことや俺との婚約を責められているレティシアは穏やかな顔で躱しているが、教師は止めないのか。同席している若い教師は固まっていて役に立たない。
まずなんでレティシアが下座なんだよ。彼女は一番家格が高いのに。
あんな下座の席は過去に座ったことはないと思う。お茶もお菓子も手をつける様子はない。
給仕する挙動不審な侍女の動きが不自然だ。
侍女が蓋をしていないポットを持ってレティシアの後に近づいた。お湯をかけようとするので風の結界で包んだ。
侍女が体勢を崩して転んで本人にお湯がかかった。湯気がでてるが熱湯かよ…。
あれを背中にかけたら大火傷だ。治癒魔法で治せても苦痛はある。
レティシアが俺の結界を壊して治癒魔法をかけている。震える侍女を気遣っているけど、それ加害者だから。まずは状況確認をしてほしかった。突然結界に包まれたら警戒してほしい。
「うちの侍女が何かしました?」
「怪我は治しましたが動揺されてますので、休まれたほうが」
「私の茶会を壊したいんですか」
「大丈夫です。申し訳ありません」
動揺しない様子はイーガン嬢の指示か。
侍女の心配を主ではないレティシアだけがしている。この状況で動かない教師って職務怠慢だよな。
教師の位置ならお湯がかけられようとしたの見えたよな…。
風の結界を茶会の妨害と責めるか。あげく、まがいものの令嬢か。レティシアが反論せずに流すから言いたい放題だ。
この件は後日抗議しよう。
「リオ、時間だ」
レオ様に肩を叩かれた。
最後まで見学したいけどリール嬢の茶会に遅れたら後が怖い。
侍従を連れてくればよかった。気が進まないけど頼むか。
「ロキ、報復は俺がする。レティシアに出されたお茶とお菓子を手に入れられるか?」
「わかりました。お嬢様が顔を顰めたので手に入れます」
レティシアが社交の顔を崩すのは相当だよな。何か仕込んであるな。
「グレイ嬢、危険なら壊していい。責任は俺が持つ。魔石はあるか?」
「はい。お任せを」
「後で茶会の様子を教えてくれ。頼んだよ」
二人に任せて離れた。レティシアのためなら二人は味方だ。
グレイ嬢とは時々情報交換している。
何もなく無事に終わるといいんだけど。
招待客だと動けないからレティシア達の茶会の招待を誰かに代わってもらうかな…。
リール嬢の会場に着くと上品に飾りつけられている。
「今日はよろしくお願いします」
「ああ」
優勝は彼女と囁かれている。王子を演者に選んだのは彼女が初めてだろう。
時間になったので、礼をして演奏を始めた。
招待客にクロード殿下とビアードを見つけた令嬢達が集まってきた。
想像以上に見学者の人数がすごいな。
去年の茶会よりも凄い。
リール嬢目当ての男と俺達目当ての令嬢。そこにクロード殿下とビアードが加わればな…。
最近は俺のファンがまた増えて迷惑している。レティシアとの婚約披露で眼鏡を外したのが原因だよな。
学園で五指に入るモテ男の称号なんていらない。そのうちの二人はビアードとクロード殿下だ。
リール嬢に眼鏡は外して欲しいと頼まれたけど断った。これ以上令嬢達に関心を持たれたくない。
令嬢達の視線はレオ様にも注がれている。
無表情とはいえ、端正な容姿で優雅に演奏する姿は絵になるよな。
いつの間にか母上とリール公爵夫人が眺めていた。招待客として参加してるのは知ってたけど見学にくるとは思わなかった。
去年の茶会はレティシアがいたから楽しかった。目が合うと微笑みかけてくれて一緒に演奏するのは至福だった。リール嬢の細かい指導もレティシアさえいれば至福の時間だった。
見学に来てくれるだろうか。
そろそろイーガン嬢の茶会も終わるだろう。
だが見学者の中にレティシアの姿はなく、最後の曲の演奏が終わり礼をした。
リール嬢の茶会は無事に終わった。リール嬢はレオ様に令嬢が近づかないように傍にいるようだ。
二人に礼をして、レティシアの参加している茶会の見学に行くことにした。
「マール様、素敵でしたわ」
令嬢達に囲まれたが、相手は最低限しかしない。母上達はいつの間にかいなかった。
「用があるから」
レティシアが茶会の席で笑顔でお茶を飲んでる姿にほっとした。嫌なことも言われる様子はない。このお茶会は大丈夫そうだ。
「リオ、終わったら生徒会室に」
「わかりました」
会場を回っている殿下の声に頷いた。クロード殿下も忙しそうだ。
気付くと令嬢達の見学が増えていた。話しかけられるので適当に相槌をうち、見学することにした。
茶会が終わったので、声をかけようとすると、主催の令嬢がレティシアを追いかけていた。
「ビアード様、いかがでしたか?」
「素敵なお茶会でした。お勉強になりました」
「またお招きしても…」
「楽しみにしてます」
「ずっとお話したかったんです。ビアード家門に。魔導士として」
令嬢の言葉に嬉しそうな笑みを向けている。
「ビアードはいつでも歓迎致します。」
「今度、噂の訓練に」
「興味がありましたら是非。ただご満足いただけるものかは。ビアードは強さを求めるものは拒みません。立場に関係なく歓迎致します」
手を握り、うっとりしている令嬢に嫌な予感がして邪魔することにした。これ以上レティシアの信者はいらない。
「レティシア」
抱き寄せると目を大きく開けて見つめられた。間近でみるこの表情も物凄く久しぶりだ。
「リオ様、どうされました?」
向けられる視線に冷たさはない。
「大丈夫だったか?」
「ビアード家門に興味があるようです。魔導士の方に」
嬉しそうな笑顔に胸が暖かくなり抱きしめた。機嫌が直って良かった。頭を撫でるときょとんとされた。
「無事ならいい。殿下が呼んでる」
レティシアを連れて生徒会室に移動した。
視線を集めるのは気にしない。俺はレティシアしか興味がないから放っておいてほしい。何度も愛人も作る気はないと伝えても令嬢達には俺の言葉は全く聞こえないみたいだ。
「御苦労だった。どうだった?」
「すみません。まだ情報を集められてません。ただイーガン様のお茶会に殿下が招かれたことが違和感が。殿下が足を運ぶ価値のないお茶会でした」
「無礼な茶会だったんだろう」
殿下の耳にも入っているのか。
「はい。招待状を譲っていただいて良かったです。」
「報告は明後日でいい。演者だろう?」
「ありがとうございます。失礼します」
礼をして足早に去るレティシアの姿に違和感を感じた。
「殿下、イーガン嬢の茶会の報告は後日」
「ああ。追いかけていい」
殿下には敵わない。礼をして言葉に甘えた。
レティシアを探すと廊下の隅にしゃがんで丸まっていた。
「レティシア!?」
苦痛に顔を歪めいる様子に背中をゆっくり撫でると、拒否された。苦しそうに口元に当てたハンカチが鮮血に染まっていた。
抱き上げて保健室に急ぎ、ベットにおろした。
先生を呼びに行くべきか、でも側を離れて何かあったらたまらない。苦しそうな背中を撫でると拒否された。
扉が開きレオ様とビアードが入って来た。
「レティシア、何があった?」
「廊下で蹲ってて、血を吐いてたから保健室に」
レティシアに詰め寄るビアードに説明する。レオ様が静かに見ている。
レオ様がレティシアの額に手を当てると徐々に顔が穏やかになった。後でなんの魔法を使ったか教えてもらおう。
「治癒魔法使えるか?」
頷いたレティシアの隣に一瞬猫が見えたがすぐに消えた。
しばらくしてレティシアが、ふぅっと息を吐いて、笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます。もう大丈夫です」
「レティシア、何か変なものを食べたか?」
「苦くて渋いお茶と辛いケーキを一口食べたくらいですかね。ただ具合が悪くなったのは今だけです」
ビアードの眉間に皺が寄った。
やはり危ないものを食べさせられたのか。
「エイベル、レオ様のおかげでセリアにお世話にならずにすみました。お騒がせしました」
ベッドからおりて、ふらふらしているので抱き寄せた。
「すみません」
ビアードが頬に当てた手に気持ち良さそうな顔をしている。眠そうなレティシアを寮に送ることにした。
「茶会のことは聞いた」
「手に入ったか?」
「今、調べさせている」
イーガン嬢の茶会の件はロキが報告したのか。
俺も調べないとな。
***
クロード殿下に許可をもらいレティシアの参加する予定の茶会の招待は他の令嬢に代わってもらった。彼女も上位貴族だから問題ない。
そのかわり午前の茶会を1件受けた。向けられる視線が不快だったが当たり障りなくこなした。まだ時間はあるけど、レティシア達の会場を目指すことにした。会場の庭園にはすでに人が集まっていた。
生徒だけでなく、夫人達も集まっている。
母上とリール公爵夫人もいた。
「母上、どうされたんですか?」
「私の出席分は終えたわ。楽しそうな話を聞いたから」
「私は弟子のお手並み拝見よ」
「エイミーに優勝してほしいのでは?」
「芸術に順位は無粋よ。それにうちのエイミーもだけど、このお茶会もきっと初めての試みよ」
「テーマは遊び。会話を楽しむお茶会で五感でお楽しみくださいって何をするのかしら」
母上から冊子を見せられた。
招待される夫人には各お茶会のテーマと工夫がまとめられたものが配られていた。
「まだ始まるまで時間がありますが」
「リオもまだまだね。最終イベントの茶会は準備の段階から勝負が始まってるのよ。いかに先に人を集めるかよ。ケトン侯爵令嬢が狙っているのは上位貴族以外の生徒。集まっている生徒を見なさい」
周りには下位貴族や武門貴族とレティシア達のファンばかりだった。
「両派閥の中心人物がいるから派閥の関係者も見学にくるわ」
この会場は結界で覆われていない。
ただ水鏡がいたるところに設置され見学席にも演者の様子が見れるように用意されている。
サーカスではなく茶会が始まるんだよな?
水鏡に笑みを浮かべたケトン嬢が映った。
「見学いただきありがとうございます。前座をお楽しみください」
一度映像が消えると、水鏡の中には不機嫌そうなビアードの腕を抱いてニコニコしているレティシアと微笑ましい顔をして見ているグレイ嬢と緊張しているアリス嬢がいた。
「社交用で良いので笑ってください。お兄様」
「エイベル様の表情が固いわね。無礼講よ。レティシア、思いっきり笑わせて」
レティシアがきょとんとして、ビアードの頬に手を当てている。ケトン嬢は何を映しているんだ…。
「笑ってください。恥ずかしい話しますよ」
「そんなんで笑えるかよ」
レティシアに抱きつかれ、見上げられているビアードが羨ましい。
「本当に仲が良いわね」
「いい作戦ね。生徒達は麗しのビアード兄妹に夢中よ。二人の演奏姿が素敵で絵師に描かせたもの」
「よく面倒を見ていると思ったけど」
「エイベルはあまりセンスはないわ。従者のロキという拾い物をしたけど、うちには譲ってくれないって。週に1回通わせてるから引き抜くわ」
「ロキは二人のお気に入りだから無理でしょ」
「まだまだこれからよ。エイベルは笑ってるのにレティシアは気に入らないみたいね」
母上達は楽しそうに見ている。
「いつ見ても美しい」
「二人が一緒にいるのは…」
「素敵ですわ。このお二人にお仕えできるなんて」
「ビアードの至宝」
うっとりしている声も聞こえる。
「兄は妹を存分に甘やかす義務があります。笑ってください。減りませんから。可愛い妹の頼みがきけないんですか?」
「どこに笑う要素があるんだよ」
「時間がありません。フィルもソート様もいません。ステラとアリス様という可愛い後輩に囲まれて過ごせるなんて殿方の夢ですよ。両手に花です。でもエイベルには駄目か。剣を借りてきましょうか?」
盛大な笑いが沸き起こった。笑い声の正体は見学している武門貴族の男達だ。
「私はエイベルの笑わせ方も知らないなんて駄目な妹ですわ」
悲しそうなレティシアを乱暴に扱えるのはビアードだけだろう。
「ふざけてるだろう、離れろよ」
「お兄様が酷い。私はお兄様のために頑張ってるのに。リオ様の笑顔の大盤振る舞いを見習って。それは気持ち悪いからやはりいいです。どうして笑ってくれないんですか!?いい加減にしないと怒りますよ」
「わかったよ。これでいいか?」
「全然笑ってません。茶会が終わったら笑顔の練習です。たまにはお腹を抱えて笑ってください。くすぐればいいんですね。ディーネ」
「バカ、やめろ」
「レティシア、十分よ。ありがとう」
「不甲斐ない兄ですみません」
ビアードが謝るレティシアを見て苦笑している。母上に肩を叩かれた。
「リオ、まだまだね」
「絵師を連れてきたかったわ。前座でここまで盛り上げるなら本番はもっと凄いのかしら。楽しみね。レティシア達のやり取りを見ていたおかげでグレイ嬢達も緊張が解けているし、上手いわ」
「リオ、笑顔の大盤振る舞いって。その怪しい眼鏡で伝わるのかしら…」
いつの間にかさらに見学者が増えていた。
アナ達も見学に来ているのか。
レティシア達が礼をした。
レティシアがビアードに笑いかけると二人の演奏が始まった。
「やはり音が荒いわね。レティシアも本気で学べば良い奏者になれるのに」
「レティシアが望んでないでしょう。あの子は多忙なのよ。今や殿下の手伝いもしてるのよ」
「体さえ強ければ王太子妃も夢じゃないのに」
「レティシアはお兄様と一緒にいられるのが一番幸せだそうよ」
母上に遊ばれている。レティシアはやり取りを見られていると知ったら絶叫しそうだけどいいんだろうか……。
フルートを置いたレティシアが籠を抱えて花をまいている。ビアードに花を投げて睨まれている。
レティシアがアリス嬢に花をふりまき、二人が微笑み合った様子に悲鳴が聞こえた。
これはアリス嬢の人気があがるだろうか。グレイ嬢も伯爵令嬢の中では人気はある。二人共レティシアには遠く及ばないが。
「麗しのビアード兄妹」
「尊い!!」
甲高い歓声が響いた。
ビアードが笑いレティシアが拗ねた顔をしている。
「二人を並べると表情が変わるわよね。エイベルの時々見せる優しい笑みにファンが増えるわ」
「レティシアも社交の時とは別人ですね。テーマの通り遊んでますわ」
「エイミーも見学に来たの?」
「せっかくですから」
リール嬢がいた。レオ様は茶会に参加しているから一人なのか。
茶会では無表情のレオ様がレティシア達の様子に笑みをこぼした。リール嬢はレオ様を見に来たようだ。
魔法の気配がした。ビアード兄妹が楽器を置いている。
空から花が降ってきた。
会場を結界で覆わなかったのはレティシア達に任せたのか。この場の風はビアードの支配下か。
花の香りが漂い、レティシア達も花だらけだ。
レティシアが楽しそうに笑って可愛い。ビアードが体についた演者の花を風で振り落とした。漂う花の中で演奏する姿は幻想的だ。
久しぶりのずっと楽しそうに笑うレティシアは可愛いすぎる。これが全員に見られているのは複雑だ。また余計な虫が増えそうだ。
魔法を使ったり演奏したり過去に参加した茶会で一番楽しそうな様子だった。
空から水球とキラキラした粉と花びらが落ちてきた。
粉は魔石を砕いたものか。手元に浮いている水球が一斉に割れて飴と花びらと花の匂いが広がった。水しぶきで濡れたが、暖かい風が一気に乾かし、盛大な歓声が上がった。
最後にレティシアとビアードが楽しそうにバイオリンで一曲演奏した。
招待客が帰っても見学者は引かなかった。
演奏を終えた4人が礼をすると盛大な拍手が沸き起こった。茶会よりも演奏会の見学にきた雰囲気だけどいいんだろうか。
ケトン嬢と抱き合っていたレティシアが解放されてレティシアとビアードが近づいてきた。
「レティシア様、もっと見たい!!」
アナの声にレティシアが笑った。この状況で最初に声をかけたアナの度胸はすごい。
「お兄様、魔法で一戦やりましょうか。風読みのお披露目です」
「本気か?」
「ええ。」
「見ごたえないだろう」
悩んでいる二人にロキが近づいた。
「上空に上がって30秒待機してください。一気に落としてくださいね。」
ビアードが空に上がった。せっかくだから手伝うか。
水球で花を包んでいる肩に手を置いた。
「レティシア、俺が飛ばすよ」
「お願いします。水浸しにしても構いません」
楽しそうに笑うレティシアの期待に答えないと。久しぶりに向けられる無邪気な顔に顔が緩みそうになる。
「了解」
風魔法で水球を飛ばしてビアードにぶつける。たくさんあるからぶつけ放題だ。
幾つか囮で相殺させて、仕掛けていく。ビアードは単純だからすぐに引っかかるけど平気なんだろうか。濡れたビアードを見て隣で楽しそうに笑う声が聞こえた。
全ての水球が壊れるとビアードが降りてきた。
「エイベル、腕が落ちましたね」
「マールの風を使うなら先に言え」
「油断大敵ですわ。もうエイベルの役目は終わりですので訓練に行っていいですよ。お疲れ様でした。お兄様」
「お前もな。今日はゆっくり休めよ」
ビアードはレティシアの頭を撫でて濡れたまま立ち去ったけどいいんだろうか。
頭を撫でてもあそこまで無防備で気持ちよさそうな顔は俺個人には向けられない。
「マール様、ありがとうございました」
「構わないよ。複雑だ」
上品な笑みを浮かべられたのが寂しくて抱きしめた。せっかくなので魔力を送った。
「魔力はいりません」
「気持ち悪い?」
「いえ、ただ今日はそんなに使っていないので必要ないんです」
レティシアに魔力が送れることに安心した。合わない魔力は毒だから。以前俺の魔力を送ったら不快な顔をされたのは気になっていた。
グレイ嬢にレティシアを連れていかれてしまった。
「今回は作戦勝ちね。来年から茶会はかわるかしら」
「貴族の茶会としては評価できないわ。でも参加者を楽しませて引きつけるおもてなしの面では上出来。レティシアの主催のお茶会はどうなるのかしら」
「勝利の女神の称号が取られたわね」
「お母様、芸術に順位は関係ありません」
母上達は放っておいて俺はビアードを追いかけた。
イーガン嬢の茶会の情報を合わせたかった。
***
レティシアに出されたお茶とお菓子だけは別物だった。
イーガン商会は茶葉のブレンドが人気である。様々な効能のある茶葉を売り出している。ただ組み合わせによっては危険な効能もある。
毒ではない。胃に負担をかける配合で最も濃い物を出されたらしい。
ケーキに掛けられたのも刺激の強い香辛料だった。
まずいお茶もお菓子も嫌がらせだった。レティシアは胃が強くなかったので耐えきれずに血を吐いた。一口で血を吐くって、全部飲んだと思うと血の気が引いた。少量だったためじわじわと組織が傷つき、時間経過してから吐いたらしい。レオ様の魔法で刺激物により荒れた体を鎮静させ、自身の治癒魔法で修復して無事だった。
お湯をかけようとしたのは火傷を負わせて傷物にしたかった。
傷物になれば俺との婚約破棄されると。
茶会の招待状に手を回したのはイーガン嬢の席にいた教師だった。
茶会の招待客の生徒は助手の講師が選んでいた。貴婦人達は失礼のないように講師が担当していた。茶会にとっては招待される生徒は数合わせだ。そこまで重要視されない。
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不正な招待状を受け取った生徒達の共通点はなかった。茶会の作法も知らない家に力のない者ばかりだった。
「レティシア、何か違和感があるのか?」
報告を聞いたクロード殿下の視線に怯えながらレティシアが口を開いた。
「作法もなく怯えた生徒が参加すれば、茶会の接待の計画が狂います。ユーナ様達の茶会の妨害をして得をするのは誰かと思いまして。殿下の婚約者の立場を狙っている家の関与が一番すっきりするんですが。でもクロード殿下の統治を乱すような愚かなことをするなど…」
「殿下、遅れて申しわけありません。やはり主犯はイーガン伯爵嬢です。もともと殿下に招待状を送るように手配させ、茶会で魅了作用のあるものを振舞う計画でした。教師も招待客も買収されてました。レティシアの参加で計画が狂ったようです。」
副会長が調べていたのか。
「杜撰過ぎないか」
「下位貴族ですから。王家の事情をご存知ないのでしょう。殿下の空いている時間にイーガン嬢の茶会の予定を組み招待状が送られました。講師は殿下のイーガン嬢の茶会の招待を知りませんでした」
「教師が不正に手を染めたか。来年は招待する生徒は生徒会で決めるか。いや、誰でもいいなら生徒は好きに招待させるか。イーガン嬢と関係者、教師は王宮に。エイベル、手配を。厳しく尋問するように。ビアードの訴状もまとめておけ」
「かしこまりました」
「エイベル、訴状は私が書きますよ」
レティシアに任せたら無罪になる。どうせ巻き込まれただけと言うだろう。
「レティシア、俺がビアードとまとめるよ。得意だから任せてよ」
「え?」
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「お構いなく、両方仕上げます。」
「わかったよ」
仕方ないから書き終わったのを直そう。
最終的にはビアード公爵家の判断だ。
会議は終わった。殿下の空気が冷たい。機嫌の悪いクロード殿下が怖いレティシアがレオ様を連れて一番に退室していった。各々殿下を刺激しないように仕事に戻ることにした。
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