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元夫の苦難38
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最近はレティシアが傍にいなくなった。
朝の差し入れもなくなり、友人達はレティシアの遊びが終わったと言っている。
唯一の救いなのは1年生の過激なファンの令嬢に追いかけられないことだ。
おかげで、帰りは玄関でレティシアを待ち寮まで送れるようになった。
登校するとリール嬢が近づいてきた。
「マール様、どういうことでしょう。どうしてレオ様は…」
冷笑を浮かべるリール嬢に嫌な予感しかしない。
月の最後の休養日にレオ様は外出許可が出る。
王家の事件後からレオ様には護衛騎士が手配されているため、こちらで護衛の手配をする必要はなくなった。
リール嬢の不満はビアードに遊びに来ることを言ってるんだろうか。
俺はレオ様の予定管理はしていないし、したくない。
「どうしてケトン領にレティシア達と遠乗りに行ったんですか?贈り物されて、馬に相乗りして、泉の中の幻想的な景色を楽しんで…」
全く状況がわからない。
レティシアは休養日は社交の予定が入っていたはずだ。
「俺に言われても…」
「レティシア達を餌にされたら敵いません」
餌!?
リール嬢の化けの皮がどんどん剥がれていく。
羨ましい視線を向けるバカな男に俺は代ってもらいたい。
「自分で誘えば頷いてくださると」
「言えません。レティシアは私の味方と思ってましたのに」
「リオ、エイミー」
冷笑を浮かべていたリール嬢がレオ様の声に愛らしい笑顔を浮かべて礼をした。
令嬢達の切り替えの速さは感心を通り越し恐い。
「おはようございます。レオ様」
「おはよう。これを二人に」
レオ様からリール嬢に貝殻を、俺には石が渡された。
「ケトン領の泉に初めて潜った。興味深いものが多くて有意義だった」
「ありがとうございます。嬉しいです」
俺が誘えばいいんだろうか?
「レオ様、リール嬢も是非また一緒に出掛けたいそうですよ」
「構わないけど、エイミーの好む場所はわからない」
「どうしてケトン領に?」
「ユーナが素材採集に興味があるから同行したいと頼まれた。ビアード領は危険だからとレティシア達に断られたけどケトン領も中々良い素材があり有意義だった。母上も喜ばれていた」
レオ様が満足そうに笑っているから、素材目当てで行ったのか。
レオ様の行動原理はサラ様か研究。
リール嬢は先ほどの冷笑が嘘のように愛らしい笑みを浮かべている。
「私はレオ様と一緒ならどこでも構いません。是非サラ様にご挨拶したいです。良ければ、うちで演奏会を開きますのでサラ様といかがですか?レオ様も一緒に演奏していただいたらサラ様も喜ばれますわ」
サラ様まで餌にするのか…。
「母上は賑やかな場は苦手だから」
「ビアード公爵夫人とレティシアも招待しましょう。ロキも一緒に弾いてくれるかしら」
「ロキが弾くなら友人を誘ってもいいだろうか?」
ロダにレティシアも巻き込まれた…。
「もちろんです。芸術は皆で楽しむものです。レオ様の呼びたい方を招待しましょう」
二人してレティシアを餌にするのはやめてほしい。
レオ様の取り合いに巻き込まれたくない。
目の前の二人よりも多忙なレティシアの暇な日は貴重なのに…。
「放課後、また練習しませんか?」
「生徒会がある。それにユーナに料理を教えてほしいと頼まれている」
ケトン嬢のほうが上手かもしれない。
「私も参加させてください。料理を教えてください」
「エイミーの綺麗な指に傷がついたら」
「レティシアに治してもらいますわ」
「レティシアも誘おうか。料理を教えてくれたのはレティシアだ」
レティシアを巻き込まないで欲しい。
治癒魔法なら教師に頼めばいいだろうが。
リール嬢が料理で怪我をすればレティシアが動揺するだろうなぁ。
「レオ様、俺とレティシアの時間をとらないでください」
「リオも来るか?歓迎する」
「俺はレティシアと二人っきりでいたいので。どうぞお構いなく」
レティシアが女の戦いに巻き込まれて震える姿が目に浮かぶ。
実は気が弱い一面があると知った時は驚いたけど物凄く可愛かった。
男子生徒に絡まれていたから声を掛けるといつもは流すのに俺の背中に隠れた姿に顔が緩んだ。
変態と呟く声を拾って引き剥がして、後日レティシアに近づかないように手を回した。
レティシアが変態と呟いた男子生徒は極度のシスコンで妹に恋していた。
レティシアが怖がる気持ちは理解した。でも、俺の胸に縋るレティシアを抱きしめて寝落ちする姿を堪能し二人で過ごせたのは役得だった。
目の前の会話に俺とレティシアの貴重な時間は彼女達によって無情にも潰されていく予感がしてならなかった。
****
レティシアの魔力を辿るとレオ様の部屋だった。
自由に出入りを歓迎されるレオ様の部屋に入るとレティシアが茫然としている。
抱き寄せると、銀の瞳が大きく開いて俺の胸元をギュっと掴む手に顔が緩みそうになるのを堪えた。
「レオ様に料理に誘われたんですが、どうしてか、ユーナ様とエイミー様が、高貴な二人が料理なんて」
「レオ様、俺達調子が悪いので失礼します」
ケトン嬢とリール嬢がエプロンをして笑顔で牽制している。
レオ様はいつもの無表情で何も気付かず料理に思考が集中している。
呆然として震えた手で固まっているレティシアを抱き上げて部屋から逃げることにした。抱き上げられたことにさえ気づいていないレティシアの耳に試しに囁く。
「シア、夢だよ」
「夢?そうですよね。疲れてるんですわ。ありえません」
頭を撫でるとゆっくりと目を閉じた。
混乱しているときは寝かせるのが一番かもしれない。
リオのフリに気付かないほど動揺している。
俺の部屋に入ると、ゆっくりと瞼が開きぼんやりと首を傾げる顔は可愛らしい。
「私は・・?」
「ぼんやりしてたから連れてきただけ。寝かせようか?」
「大丈夫です。降ろしてください。レオ様に呼ばれているので失礼します」
「レオ様がまた今度にしてほしいって」
「え?ありがとうございます。失礼します」
床に降ろしたレティシアが礼をした手を掴む。
「俺と過ごさないか?」
「いえ、予定が空いたなら訓練に行きます。今日はエイベルが訓練してるので混ざってきます。失礼します」
手を解いて礼をして立ち去った。
多忙なレティシアを捕まえるのは難しい。
楽しそうなレオ様には悪いけど、レティシアを引き剥がしたい。
レオ様はレティシアではなくビアードと過ごして欲しいけど色々役不足だよな。俺よりも王族であるレオ様が優先とわかっていても切ない。
朝の差し入れもなくなり、友人達はレティシアの遊びが終わったと言っている。
唯一の救いなのは1年生の過激なファンの令嬢に追いかけられないことだ。
おかげで、帰りは玄関でレティシアを待ち寮まで送れるようになった。
登校するとリール嬢が近づいてきた。
「マール様、どういうことでしょう。どうしてレオ様は…」
冷笑を浮かべるリール嬢に嫌な予感しかしない。
月の最後の休養日にレオ様は外出許可が出る。
王家の事件後からレオ様には護衛騎士が手配されているため、こちらで護衛の手配をする必要はなくなった。
リール嬢の不満はビアードに遊びに来ることを言ってるんだろうか。
俺はレオ様の予定管理はしていないし、したくない。
「どうしてケトン領にレティシア達と遠乗りに行ったんですか?贈り物されて、馬に相乗りして、泉の中の幻想的な景色を楽しんで…」
全く状況がわからない。
レティシアは休養日は社交の予定が入っていたはずだ。
「俺に言われても…」
「レティシア達を餌にされたら敵いません」
餌!?
リール嬢の化けの皮がどんどん剥がれていく。
羨ましい視線を向けるバカな男に俺は代ってもらいたい。
「自分で誘えば頷いてくださると」
「言えません。レティシアは私の味方と思ってましたのに」
「リオ、エイミー」
冷笑を浮かべていたリール嬢がレオ様の声に愛らしい笑顔を浮かべて礼をした。
令嬢達の切り替えの速さは感心を通り越し恐い。
「おはようございます。レオ様」
「おはよう。これを二人に」
レオ様からリール嬢に貝殻を、俺には石が渡された。
「ケトン領の泉に初めて潜った。興味深いものが多くて有意義だった」
「ありがとうございます。嬉しいです」
俺が誘えばいいんだろうか?
「レオ様、リール嬢も是非また一緒に出掛けたいそうですよ」
「構わないけど、エイミーの好む場所はわからない」
「どうしてケトン領に?」
「ユーナが素材採集に興味があるから同行したいと頼まれた。ビアード領は危険だからとレティシア達に断られたけどケトン領も中々良い素材があり有意義だった。母上も喜ばれていた」
レオ様が満足そうに笑っているから、素材目当てで行ったのか。
レオ様の行動原理はサラ様か研究。
リール嬢は先ほどの冷笑が嘘のように愛らしい笑みを浮かべている。
「私はレオ様と一緒ならどこでも構いません。是非サラ様にご挨拶したいです。良ければ、うちで演奏会を開きますのでサラ様といかがですか?レオ様も一緒に演奏していただいたらサラ様も喜ばれますわ」
サラ様まで餌にするのか…。
「母上は賑やかな場は苦手だから」
「ビアード公爵夫人とレティシアも招待しましょう。ロキも一緒に弾いてくれるかしら」
「ロキが弾くなら友人を誘ってもいいだろうか?」
ロダにレティシアも巻き込まれた…。
「もちろんです。芸術は皆で楽しむものです。レオ様の呼びたい方を招待しましょう」
二人してレティシアを餌にするのはやめてほしい。
レオ様の取り合いに巻き込まれたくない。
目の前の二人よりも多忙なレティシアの暇な日は貴重なのに…。
「放課後、また練習しませんか?」
「生徒会がある。それにユーナに料理を教えてほしいと頼まれている」
ケトン嬢のほうが上手かもしれない。
「私も参加させてください。料理を教えてください」
「エイミーの綺麗な指に傷がついたら」
「レティシアに治してもらいますわ」
「レティシアも誘おうか。料理を教えてくれたのはレティシアだ」
レティシアを巻き込まないで欲しい。
治癒魔法なら教師に頼めばいいだろうが。
リール嬢が料理で怪我をすればレティシアが動揺するだろうなぁ。
「レオ様、俺とレティシアの時間をとらないでください」
「リオも来るか?歓迎する」
「俺はレティシアと二人っきりでいたいので。どうぞお構いなく」
レティシアが女の戦いに巻き込まれて震える姿が目に浮かぶ。
実は気が弱い一面があると知った時は驚いたけど物凄く可愛かった。
男子生徒に絡まれていたから声を掛けるといつもは流すのに俺の背中に隠れた姿に顔が緩んだ。
変態と呟く声を拾って引き剥がして、後日レティシアに近づかないように手を回した。
レティシアが変態と呟いた男子生徒は極度のシスコンで妹に恋していた。
レティシアが怖がる気持ちは理解した。でも、俺の胸に縋るレティシアを抱きしめて寝落ちする姿を堪能し二人で過ごせたのは役得だった。
目の前の会話に俺とレティシアの貴重な時間は彼女達によって無情にも潰されていく予感がしてならなかった。
****
レティシアの魔力を辿るとレオ様の部屋だった。
自由に出入りを歓迎されるレオ様の部屋に入るとレティシアが茫然としている。
抱き寄せると、銀の瞳が大きく開いて俺の胸元をギュっと掴む手に顔が緩みそうになるのを堪えた。
「レオ様に料理に誘われたんですが、どうしてか、ユーナ様とエイミー様が、高貴な二人が料理なんて」
「レオ様、俺達調子が悪いので失礼します」
ケトン嬢とリール嬢がエプロンをして笑顔で牽制している。
レオ様はいつもの無表情で何も気付かず料理に思考が集中している。
呆然として震えた手で固まっているレティシアを抱き上げて部屋から逃げることにした。抱き上げられたことにさえ気づいていないレティシアの耳に試しに囁く。
「シア、夢だよ」
「夢?そうですよね。疲れてるんですわ。ありえません」
頭を撫でるとゆっくりと目を閉じた。
混乱しているときは寝かせるのが一番かもしれない。
リオのフリに気付かないほど動揺している。
俺の部屋に入ると、ゆっくりと瞼が開きぼんやりと首を傾げる顔は可愛らしい。
「私は・・?」
「ぼんやりしてたから連れてきただけ。寝かせようか?」
「大丈夫です。降ろしてください。レオ様に呼ばれているので失礼します」
「レオ様がまた今度にしてほしいって」
「え?ありがとうございます。失礼します」
床に降ろしたレティシアが礼をした手を掴む。
「俺と過ごさないか?」
「いえ、予定が空いたなら訓練に行きます。今日はエイベルが訓練してるので混ざってきます。失礼します」
手を解いて礼をして立ち去った。
多忙なレティシアを捕まえるのは難しい。
楽しそうなレオ様には悪いけど、レティシアを引き剥がしたい。
レオ様はレティシアではなくビアードと過ごして欲しいけど色々役不足だよな。俺よりも王族であるレオ様が優先とわかっていても切ない。
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