追憶令嬢のやり直し

夕鈴

文字の大きさ
207 / 286

元夫の苦難38

しおりを挟む
最近はレティシアが傍にいなくなった。
朝の差し入れもなくなり、友人達はレティシアの遊びが終わったと言っている。
唯一の救いなのは1年生の過激なファンの令嬢に追いかけられないことだ。
おかげで、帰りは玄関でレティシアを待ち寮まで送れるようになった。
登校するとリール嬢が近づいてきた。

「マール様、どういうことでしょう。どうしてレオ様は…」

冷笑を浮かべるリール嬢に嫌な予感しかしない。
月の最後の休養日にレオ様は外出許可が出る。
王家の事件後からレオ様には護衛騎士が手配されているため、こちらで護衛の手配をする必要はなくなった。

リール嬢の不満はビアードに遊びに来ることを言ってるんだろうか。
俺はレオ様の予定管理はしていないし、したくない。

「どうしてケトン領にレティシア達と遠乗りに行ったんですか?贈り物されて、馬に相乗りして、泉の中の幻想的な景色を楽しんで…」

全く状況がわからない。
レティシアは休養日は社交の予定が入っていたはずだ。

「俺に言われても…」
「レティシア達を餌にされたら敵いません」

餌!?
リール嬢の化けの皮がどんどん剥がれていく。
羨ましい視線を向けるバカな男に俺は代ってもらいたい。

「自分で誘えば頷いてくださると」
「言えません。レティシアは私の味方と思ってましたのに」

「リオ、エイミー」

冷笑を浮かべていたリール嬢がレオ様の声に愛らしい笑顔を浮かべて礼をした。
令嬢達の切り替えの速さは感心を通り越し恐い。

「おはようございます。レオ様」
「おはよう。これを二人に」

レオ様からリール嬢に貝殻を、俺には石が渡された。

「ケトン領の泉に初めて潜った。興味深いものが多くて有意義だった」
「ありがとうございます。嬉しいです」

俺が誘えばいいんだろうか?

「レオ様、リール嬢も是非また一緒に出掛けたいそうですよ」
「構わないけど、エイミーの好む場所はわからない」
「どうしてケトン領に?」
「ユーナが素材採集に興味があるから同行したいと頼まれた。ビアード領は危険だからとレティシア達に断られたけどケトン領も中々良い素材があり有意義だった。母上も喜ばれていた」

レオ様が満足そうに笑っているから、素材目当てで行ったのか。
レオ様の行動原理はサラ様か研究。
リール嬢は先ほどの冷笑が嘘のように愛らしい笑みを浮かべている。

「私はレオ様と一緒ならどこでも構いません。是非サラ様にご挨拶したいです。良ければ、うちで演奏会を開きますのでサラ様といかがですか?レオ様も一緒に演奏していただいたらサラ様も喜ばれますわ」

サラ様まで餌にするのか…。

「母上は賑やかな場は苦手だから」
「ビアード公爵夫人とレティシアも招待しましょう。ロキも一緒に弾いてくれるかしら」
「ロキが弾くなら友人を誘ってもいいだろうか?」

ロダにレティシアも巻き込まれた…。

「もちろんです。芸術は皆で楽しむものです。レオ様の呼びたい方を招待しましょう」

二人してレティシアを餌にするのはやめてほしい。
レオ様の取り合いに巻き込まれたくない。
目の前の二人よりも多忙なレティシアの暇な日は貴重なのに…。

「放課後、また練習しませんか?」
「生徒会がある。それにユーナに料理を教えてほしいと頼まれている」

ケトン嬢のほうが上手かもしれない。

「私も参加させてください。料理を教えてください」
「エイミーの綺麗な指に傷がついたら」
「レティシアに治してもらいますわ」
「レティシアも誘おうか。料理を教えてくれたのはレティシアだ」

レティシアを巻き込まないで欲しい。
治癒魔法なら教師に頼めばいいだろうが。
リール嬢が料理で怪我をすればレティシアが動揺するだろうなぁ。

「レオ様、俺とレティシアの時間をとらないでください」
「リオも来るか?歓迎する」
「俺はレティシアと二人っきりでいたいので。どうぞお構いなく」

レティシアが女の戦いに巻き込まれて震える姿が目に浮かぶ。
実は気が弱い一面があると知った時は驚いたけど物凄く可愛かった。
男子生徒に絡まれていたから声を掛けるといつもは流すのに俺の背中に隠れた姿に顔が緩んだ。
変態と呟く声を拾って引き剥がして、後日レティシアに近づかないように手を回した。
レティシアが変態と呟いた男子生徒は極度のシスコンで妹に恋していた。
レティシアが怖がる気持ちは理解した。でも、俺の胸に縋るレティシアを抱きしめて寝落ちする姿を堪能し二人で過ごせたのは役得だった。

目の前の会話に俺とレティシアの貴重な時間は彼女達によって無情にも潰されていく予感がしてならなかった。




****

レティシアの魔力を辿るとレオ様の部屋だった。
自由に出入りを歓迎されるレオ様の部屋に入るとレティシアが茫然としている。
抱き寄せると、銀の瞳が大きく開いて俺の胸元をギュっと掴む手に顔が緩みそうになるのを堪えた。

「レオ様に料理に誘われたんですが、どうしてか、ユーナ様とエイミー様が、高貴な二人が料理なんて」

「レオ様、俺達調子が悪いので失礼します」

ケトン嬢とリール嬢がエプロンをして笑顔で牽制している。
レオ様はいつもの無表情で何も気付かず料理に思考が集中している。
呆然として震えた手で固まっているレティシアを抱き上げて部屋から逃げることにした。抱き上げられたことにさえ気づいていないレティシアの耳に試しに囁く。

「シア、夢だよ」
「夢?そうですよね。疲れてるんですわ。ありえません」

頭を撫でるとゆっくりと目を閉じた。
混乱しているときは寝かせるのが一番かもしれない。
リオのフリに気付かないほど動揺している。
俺の部屋に入ると、ゆっくりと瞼が開きぼんやりと首を傾げる顔は可愛らしい。

「私は・・?」
「ぼんやりしてたから連れてきただけ。寝かせようか?」
「大丈夫です。降ろしてください。レオ様に呼ばれているので失礼します」
「レオ様がまた今度にしてほしいって」
「え?ありがとうございます。失礼します」

床に降ろしたレティシアが礼をした手を掴む。

「俺と過ごさないか?」
「いえ、予定が空いたなら訓練に行きます。今日はエイベルが訓練してるので混ざってきます。失礼します」

手を解いて礼をして立ち去った。
多忙なレティシアを捕まえるのは難しい。
楽しそうなレオ様には悪いけど、レティシアを引き剥がしたい。
レオ様はレティシアではなくビアードと過ごして欲しいけど色々役不足だよな。俺よりも王族であるレオ様が優先とわかっていても切ない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に

ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。 幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。 だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。 特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。 余計に私が頑張らなければならない。 王妃となり国を支える。 そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。 学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。 なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。 何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。 なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。 はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか? まぁいいわ。 国外追放喜んでお受けいたします。 けれどどうかお忘れにならないでくださいな? 全ての責はあなたにあると言うことを。 後悔しても知りませんわよ。 そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。 ふふっ、これからが楽しみだわ。

悪役令嬢の逆襲

すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る! 前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。 素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!

しつこい公爵が、わたしを逃がしてくれない

千堂みくま
恋愛
細々と仕事をして生きてきた薬師のノアは、経済的に追い詰められて仕方なく危険な仕事に手を出してしまう。それは因縁の幼なじみ、若き公爵ジオルドに惚れ薬を盛る仕事だった。 失敗して捕らえられたノアに、公爵は「俺の人生を狂わせた女」などと言い、変身魔術がかけられたチョーカーを付けて妙に可愛がる。 ジオルドの指示で王子の友人になったノアは、薬師として成長しようと決意。 公爵から逃げたいノアと、自覚のない思いに悩む公爵の話。 ※毎午前中に数話更新します。

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

私と義弟の安全は確保出来たので、ゆっくり恋人を探そうと思います

織り子
恋愛
18歳で処刑された大公家の令嬢、セレノア・グレイス。 目を覚ますと――あの日の6年前に戻っていた。 まだ無邪気な弟ルシアン、笑う両親。 再び訪れる“反逆の運命”を知るのは、彼女だけ。 ――大公家に産まれた時点で、自由な恋愛は諦めていた。だが、本当は他の令嬢達の話を聞くたびにうらやましかった。人生1度きり。もう少し花のある人生を送りたかった。一度でいいから、恋愛をしてみたい。 限られた6年の中で、セレノアは動き出す。 愛する家族を守るため、未来を変えるために。 そして本当の願い(恋愛)を叶えるために。

良くある事でしょう。

r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。 若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。 けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。

彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~

プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。 ※完結済。

処理中です...