追憶令嬢のやり直し

夕鈴

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第百十三話 克服

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最近はクロード殿下の無表情も冷たい空気も慣れました。
夢の世界の苦しそうなお顔を見たら無表情もブリザードもマシですわ。
不機嫌なクロード殿下も笑顔で対応できます。
クロード殿下のお茶の誘いも笑顔で応じられるようになりました。

「心境の変化があったのか?」
「はい。私は両殿下の健やかなお姿を見られることに幸せを感じてます。許されるならクロード殿下好みに侍女も教育しますわ」
「任せるよ。いずれ女性も王宮で召し抱えたい。補佐官に任命したら受けるか?」

フラン王国の貴族は男尊女卑。夫の一歩後に控えて影で暗躍しながら夫と家を守ります。カトリーヌ様が嘆いていましたが時代が変わる可能性を信じて留学に旅立ちました。二度目の人生ではクロード様とカトリーヌ様が男尊女卑の考えを廃し、女性の当主や文官も取り立てていました。感情の読めないお顔のクロード様へ返す言葉は考えるまでもありません。

「お父様のお考え次第ですわ。他国は女性の大臣もいますし留学からカトリーヌ様が帰国されれば心強いですわ。私個人は殿下のお役に立つなら謹んでお受けしますわ。身分を問わないなら優秀な生徒をクロード殿下のために集めますわ」
「反対しないのか?」

私の申し出は多くの貴族は認めないでしょう。クロード殿下が平民の生徒の成長を喜んでいるのも夢物語と笑われる理想が現実になることを知っています。そしてクロード様の意思の強さも。そして私も宰相一族の娘であり妃教育も受けてきたので、できることがあります。クロード様のために家臣を取り込む方法も仕込まれております。暗躍は妻の役目ですから。

「聡明なクロード殿下のお考えですもの。重鎮達は反対しますがクロード殿下が命じるなら手回し致しますわ」
「私の味方か」

無表情のクロード殿下。
今の私は殿下に信用されてません。公爵令嬢として務めを放棄した代償です。信じてもらえずとも私は構いません。アリア様直伝の優雅な笑みを浮かべビアード公爵令嬢らしく正直に私の決意を伝えます。

「はい。私はクロード殿下の臣下です。最後までお付き合い致します」

「殿下、お願いがあります」

入ってきたのはユーナ様でした。まだ会議が始まるには早い時間です。クロード殿下とのお茶の時間は終わりでしょうか。

「レオの外出許可は定例通りだ。これ以上は公務に支障が出る」

私以外にもレオ様の外出許可を願う方がいるんですね。
レオ様がしっかり公務をされる姿に感動しています。サラ様がシオンに帰られてから見違えるように変わられたと王宮で囁かれています。
しかも王位を継ぐのはクロード殿下とバカな貴族を追い払っています。継承権がないんですから、唆すことはやめていただきたいです。

「レオ様の公務のお手伝いをさせてください。レティシアが殿下を手伝うなら、私も許されます」

ユーナ様の申し出は危険です。私は体が弱い設定で婚約者がいるのでお側にいても婚約者候補と憶測を呼びません。

「ユーナ様、噂になりますわ」
「構いません。レオ様の補佐官は私が立候補します。試験はいつでしょう!?」
「聞いていたのか」

気配がありませんでしたわ。意気揚々と話されるユーナ様の思い切りの良さに驚きます。

「はい。カトリーヌ様も喜びます。女性の裁判官になりたいと留学されてますから。私はレオ様のお傍にいるためなら噂は気にしません。むしろ婚約者候補に選んでいただきたいですわ。」

ユーナ様の豹変にクロード殿下も戸惑っています。
物凄く気持ちがわかります。
物静かなユーナ様がクロード殿下に直談判とは…。

「恋とは人を変えるんですね」
「レティシアの婚約者もその一人だろう」
「それは違って欲しいです。殿下も気をつけてください。本当に」
「大丈夫か?私にはわからない世界だ」

このクロード殿下は大丈夫そうです。
前の世界に捕らわれるより新たな世界で幸せを見つけてほしいです。
ユーナ様がレオ様の補佐官になりたいと熱弁してます。
レオ様は人気者です。エイミー様とユーナ様ほど積極的な令嬢はいませんが…。
私は今世はクロード殿下と向き合おうと思います。
今世は脱貴族はやめてしっかりお仕えします。クロード殿下のお嫁さん探しはしませんが優秀な臣下の勧誘したいなら手を回そうと思います。
私はレオ様の側近にはラウルが欲しいのですが。
レオ様はサモン様とも仲が良いので、側近には悪くありません。
リオはクロード殿下の側近の打診は断りました。ビアードで過ごすそうです…。
殿下の打診を断るなんてありえません。
肩を叩かれ、顔をあげると役員が揃ってましたわ。
お茶をしている場合ではありませんでした。
カップを片付けて、会議の準備をしました。
視線を集めているのはなんででしょうか。ユーナ様との話し合いはすでに終わっていました。
いつの間にかクロード殿下の機嫌が悪くなってます。
私はもう怖くありません。それよりも恐ろしい生前のクロード殿下を知っていますから。
機嫌が悪くても健やかなことは素晴らしいです。暗いお顔や恋に狂ったお顔と比べればなんてことありません。
気にせず会議に集中することにしました。
資料を見て機嫌が悪くなった理由に納得しました。レオ様が問題を起こしました。
レオ様の部屋を爆発させました。被害の大きさは、またセリアと怪しい実験をしたんでしょうか。
大事な御身を…。
無表情の両殿下の睨み合いにこの二人が仲良くなれるのか不安になってきました。
レオ様がクロード殿下に言い返せるようになっただけでも良い事としましょう。

頭を思いっきり叩かれました。

「空気を読め。その顔やめろ」

エイベルの言葉にうっかり笑みを浮かべで両殿下を見ていたことに気付きました。あの世界は私しか知らないから仕方ありませんわ。
リオがエイベルを睨んでます。二人は喧嘩をしないでください。
この二人の仲の悪さはなんとかならないでしょうか…。私を挟んで睨み合う二人にため息を我慢します。逃げたいですが会議が終わってません。仕方ありません。

「恐れながら殿下、兄弟喧嘩は後にしてください。先に会議を終わらせないと各々困りますわ」
「レティシア、空気を読めと」
「セリアが悪いんですよ。セリアが部屋を爆発させるなんてよくあることですよ。レオ様でもセリアは止められません。セリアを止められる方は存在しません。」
「レティシアなら止められるだろう?」

レオ様に勘違いされました。睨み合いが終わったからいいでしょう。

「できません。被験者を差し出すか未知の素材を提供するしか思いつきません」
「ビアード様、その話を詳しくお願いします。シオン様とお付き合いしたいんですが」
「セリアの被験者になる覚悟があるなら。」

なぜかセリアとの関わり方についての会議が開かれました。
セリア、どうして色んな方に迷惑かけてるんですか!?
被験者探しに余念のないセリアの所為で被害者が多いそうです。
国の発展のためか…とクロード殿下は呆れてレオ様は騙される方が悪いと言いました。
レオ様の情操教育が心配になってきました。研究一番のシオン一族の血が目覚めたんでしょうか。
レオ様、セリアの真似は一番いけません!!
王族の男は狂っていると言った大魔導士様の言葉が頭をよぎりました。
たぶんお二人は大丈夫ですわ。
そう信じないとビアード公爵令嬢として生きると決めた決意が揺らぎそうになります。
クロード殿下と向き合う覚悟を決めたことも…。
無駄とはわかりますが、合意のない方を被験者にしてはいけないとセリアに話しましょう。
魔石を渡せば応じてくれるでしょうか…。
シオン一族との関わり方はよくわかりません。
結局セリアにはわかってもらえませんでした。
法は犯してないものって笑みを向けられ魔力を捧げさせられました。
いつの世もセリアには敵いませんわ。
心が疲れたのでロキを抱きしめて癒されることにしました。
ロキはマトモに育ってくださいね。無邪気な笑みを浮かべるロキに救われますわ。
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