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第百十九話後編 変わった日常
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あたたかいものに包まれ体の力が抜けていく。
体がどんどん軽くなり、ふわふわした感じが気持ちいい。
ずっとここにいたい――――。
体に重さを感じ、名前を呼ぶ声がうるさいです。体がどんどん重くなり、風を感じる。耳に響く声がうるさいので目を開けました。
「レティシア!!起きろ。一人で泳ぐなと」
呆れた顔のエイベルに抱き上げられてました。体が重たくなった理由がわかりました。池の中で気持ち良く眠っていたのに…。そんなことを言われていたのはすっかり忘れてましたわ。同じく忘れているエイベルにも忠告しないといけませんわ。
「エイベル、危ないから水の中には入ってこないでください」
「安全に水の中に入る方法もある。お前の魔石を使えば問題ないだろう」
水の魔導士以外が水の深くに潜るのは危険なことです。
ちゃんと考えたのなら許してあげましょう。
心も落ち着き、笑顔も自然に作れます。令嬢モードも問題なく装備できますわ。
「そうですか。授業に戻ります」
「もう始まってる。散歩するか」
「エイベル?」
「見つかったら怒られるか」
笑ったエイベルが風を纏いました。
風に包まれ凄い速さで上空まで飛びました。風が気持ち良く、こんなに高い場所から学園を眺めるのは初めてです。
学園は広く第二寮の近くに泉が見えました。初めて知りましたわ。今度はあそこで泳ごうかな。どんな水が想像すると楽しくなり気分が浮上してきました。
「エイベル、是非もっと高く飛んで欲しいですが学園の結界に捕まりますよ」
学園はたくさんの結界で覆われています。エイベルの上昇が止まりました。
うっかりすることが多く間抜けなエイベルに笑ってしまいました。
お腹を抱えて笑ったのは久しぶりです。淑女としてはいけませんが人目がないので多めに見てもらいましょう。
エイベルと空の散歩を楽しむなんて昔は思いつきもしませんでした。
初めてエイベルと食堂で昼食を食べて午後から授業に戻りました。
明るく笑うフィルと心配そうな顔をするステラを抱きしめます。
お友達と過ごす時間は貴重です。
「変わらないものなんてありません」
「レティシア?」
「遊びに行きたいのに、なかなか時間がありません」
魔法の授業の演習を早く切り上げて遊びを提案してくれたフィルにステラも「名案です」と愛らしく笑いました。一緒に笑い合える存在がいるのは幸せなこと。膝の上でお昼寝は始めたディーネを撫でます。
今の世に変わらないものなんてありません。それでも私の心にある幸せな記憶は変わりません。胸に手を当てれば思い浮かぶ大事な世界だけは変わらないでしょう。
もう大丈夫です。リオに何を言われても殺気を向けられても気にしません。仮面夫婦ならぬ仮面婚約者を演じるだけですわ。公爵令嬢として物心ついた時から教わっていたこと。国と家の利のために嫁ぐ相手は選べません。当主の選んだ夫とうまくお付き合いするだけ。昔と違い変わりゆく世界で唯一変わらないものを持っていることに気付きましたから。幸せという名の―。
****
リオがマール公爵邸に帰ったと報告を聞いて安堵しました。
サイラス様達に感謝して魔石を贈りました。気にしなくていいと言われましたが本当に助かりました。
マール公爵からの命を叶えられたことに安堵した所為か微熱が出ました。忙しい時期に寝込むわけにはいきませんがマナが許してくれませんでした。なぜか風邪を引くとうまく魔法が発動せずに治癒魔法がかけられません。ディーネに頼むと、過剰な治癒魔法は危険だから駄目と言われたので大人しく部屋で休み任されている書類仕事を片付けました。
熱が下がり登校すると放課後にセリアが訪ねてきました。
セリアにはいくつか欲しい魔導具の作成を頼んでます。お礼に魔力と魔石と血を提供しているので低価格で協力してくれます。セリアに頻繁に依頼することになるなんて昔の私でしたらありえませんわ。いつもセリアの作る物騒な発明品に引いてましたもの。
「水流操作ができる魔導具はできそうですか?」
「膨大な量の水の魔石が必要になるから、現実的ではないわ」
「魔力の供給は魔導士がすれば?」
「それならおもしろそう。実用的ではあるわ。考えてみるわ。納品はビアード公爵家?」
使うのはマール公爵家ですが一度うちで動作を確認してからの方がいいでしょう。セリアの発明品は魔力の消費量や動作がおかしいことが多く、現実的も実用的も信用していけない言葉です。完成すればリオと取引が必要な時に使えるでしょう。マール公爵家からどんな命令を受けるかわからないのでいくつか取引に使えそうな物を作っておきましょう。変な物を贈って面倒なことになるのを避けるためにきちん確認しないといけません。準備は大事ですから。
「はい。お願いします」
「疲労が溜まってるようだけど、薬はいる?」
「お気持ちだけで。被験者になる気はありません」
「残念」
妖艶に笑うセリアは私の血を採取して帰っていきました。材料が足らずに会いにきたようです。自由なセリアはいつの世も羨ましいです。
私は療養していたので疲労は溜まっていませんよ。セリアは被験者探しに余念がありません。
セリアが堂々と被験者を探すのも前の世界とは違うことです。
****
多忙な日々に終わりが見えません。
ありがたいことにようやくリオのファンの令嬢達もわかってくださったのか問題を起こさなくなりました。リオのファンの令嬢の対処にあたる必要がなくなり、お昼休みに余裕ができました。ファンの令嬢達が大人しいならリオのことはもういいですわ。どうぞ恋人と学園生活を満喫してくださいませ。問題さえ起こさないなら私は関わりたくありません。公爵子息としてあるまじき行動への呆れも飲み込みます。リオはおかしい人とは気づいていました。殿下が咎めないなら家格が低い私が言葉を掛ける必要はありません。それに私が何を言っても無駄ですから。もしもビアードに婿入りするならきちんと向き合わないといけませんが、今は無関係ですから。婚約者の務めを放棄する代わりにマール公爵家から送られてくるリオの仕事を片付けます。リオが私を公爵令嬢に相応しくないと呟いたのは事実なので否定はしません。お互いさまですとは口にせず、気付かないフリをして立ち去りました。第二夫人を目指す恋人を受け入れてほしいなら両公爵と相談すればいいのです。私には関係ありませんし、説得する必要性も感じません。
「公爵令嬢として相応しくないわ」
「とうとうリオ様も気づかれたのね。まがいものを」
令嬢達の蔑んだ視線も聞こえるように話す言葉も直接は言われていないので聞き流します。平等の学園でもマール公爵子息の言葉の影響力は強い。大きな動きはありませんが準備をしておきましょう。殺意を向けられたならいつ仕掛けられても不思議ではありませんから。
私とリオに連名で送られた招待状はリオに見せません。
ドレスを着て、髪を整え化粧を施す。そして夜会に足を運びたくさんの貴族達と談笑をかわす。社交界は戦場です。弱みを見せれば付け込まれます。婚約者とも良好な関係を築いているように優雅に微笑みながら言葉を返す。愛人を持つ貴族も多くても社交界では仲睦まじく夫婦の絆が確かなものであるように振舞います。ビアード公爵令嬢として資質を疑われても多くの者がお戯れをと笑い飛ばせるほどの存在になれるように。アリア様やお母様の教え、貴族として公爵令嬢として誰もが認め道を開けたくなるように振舞うこと。それが自分と家を守るために必要な事。クロード様を否定する者がいても、クロード様を信じて隣で優雅に微笑みながら寄り添っていた頃のように。おかげで王太子の婚約者として周囲から認められてましたもの。私がビアード公爵家を信じて相応しく振舞うのならそう簡単には落とせません。ビアード公爵家もビアード公爵令嬢も負けません。リオが本気で動くなら私もお相手します。リオ達が二人の世界に夢中な間に私は自分の立ち位置を強固なものにします。婚約破棄すればすみますのに、わざわざ穏便でない方法を選ばれた時のために準備は整えていきます。リオを警戒する日が来るなんて思いませんでした。殺意を向けるほど嫌悪されているなら何をされても不思議ではありません。リオ達にとって私は邪魔な存在ですから。恋の魔法、欲に溺れた先にあるもの。その先に何があるかは当人達しか知らぬこと。
***
今のところマール公爵家から動きはありません。多忙ですが学園生活は落ち着いています。
セリアは先触れもなく訪問します。
最近は特に頻繁です。
怖いのでセリアから贈られた茶葉を使ってお茶をいれることはしません。
エイベルのお仕置きに使いましょうか…。危険なのでやめましょう。
セリアのお土産のアップルパイを食べながら魔導具の話をしているとノックの音が聞こえたので入出許可を出すとリオの侍従でした。
マール公爵家からの手紙を渡されました。ありえない内容に何度見直しても読み間違いではありませんでした。
リオは療養中だったとは気付きませんでした。
手紙には原因不明の毒に侵されているのでみてほしいと書いてあります。リオなら王国一の治癒魔導士のルーン公爵が治療してくださるので私が呼ばれる理由がありません。なにより不愉快にするだけなので近づきたくないんですがマール公爵の命をお断りできません。もしかしてルーン公爵が多忙で捕まらないんでしょうか?それとも極秘で処理したい理由?お断りできる理由はないので考えても仕方ありません。都合のつく時でいいと書いてあるので緊急性はないでしょう。丁度良く原因不明の毒なら目の前には適任者がいます。
「セリア、付き合ってくれませんか?」
セリアに手紙を見せると妖艶に微笑みました。
「中々おもしろい状況ね。用意してくるわ」
セリアは原因不明や怪しい物が大好きです。
セリアが用意している間に外出の手配を整えました。
マール公爵邸ではマール公爵夫人に出迎えられました。
リオは毒に侵されていても命に別状はないそうです。緊急なら私が呼ばれることはないとわかっていました。
マール公爵夫人に渡された毒の材料の甘い匂いの草に見覚えはありません。
セリアが目を輝かせてもらっていいか聞いています。セリア、不謹慎です。無駄とわかっていますが空気を読んで欲しいです。空気は吸うもので読む必要はないなんて言えるのはシオン一族だけですよ。
「リオの様子がおかしいから調べたわ。リオが夢中な令嬢の周りでは惚れ薬が出回っていた。令嬢の記憶を覗いたらリオもかなりの量を飲まされていたわ。解毒薬はなく、ルーンの治癒魔法も効かない」
惚れ薬?
惚れ薬は作成も使用も禁止されています。心を操るものは違法です。昔、似たようなものをセリアが作っていたのは気の所為ですよね…。
記憶晒し?解毒薬がなく、ずっと飲まされていた?
「毒を飲まされていたということですか。いつから…。どうしてそんなこと」
「ルーン公爵でも駄目だったわ。ルーン公爵は薬が体から抜けて心が戻るのを待つしかないと。私の声は届かない。レティシアの声なら届くかもしれない。リオは貴方が一番好きだから。会ってくれないかしら?」
治癒魔法は心には効きません。
マール公爵夫人の言葉に勘違いとお伝えしたいんですが…。私の言葉が届くとは思えません。縋られる視線に断ることはできません。マール公爵夫人が取り乱されているのは初めてです。
「お役に立てるかはわかりませんが」
「お願い」
マール公爵夫人に礼をしてリオの部屋にセリアと一緒に入室しました。
ベッドに座って虚空を見つめるリオがいました。マール公爵夫人の言葉がわかり思考が止まりました。
体がどんどん軽くなり、ふわふわした感じが気持ちいい。
ずっとここにいたい――――。
体に重さを感じ、名前を呼ぶ声がうるさいです。体がどんどん重くなり、風を感じる。耳に響く声がうるさいので目を開けました。
「レティシア!!起きろ。一人で泳ぐなと」
呆れた顔のエイベルに抱き上げられてました。体が重たくなった理由がわかりました。池の中で気持ち良く眠っていたのに…。そんなことを言われていたのはすっかり忘れてましたわ。同じく忘れているエイベルにも忠告しないといけませんわ。
「エイベル、危ないから水の中には入ってこないでください」
「安全に水の中に入る方法もある。お前の魔石を使えば問題ないだろう」
水の魔導士以外が水の深くに潜るのは危険なことです。
ちゃんと考えたのなら許してあげましょう。
心も落ち着き、笑顔も自然に作れます。令嬢モードも問題なく装備できますわ。
「そうですか。授業に戻ります」
「もう始まってる。散歩するか」
「エイベル?」
「見つかったら怒られるか」
笑ったエイベルが風を纏いました。
風に包まれ凄い速さで上空まで飛びました。風が気持ち良く、こんなに高い場所から学園を眺めるのは初めてです。
学園は広く第二寮の近くに泉が見えました。初めて知りましたわ。今度はあそこで泳ごうかな。どんな水が想像すると楽しくなり気分が浮上してきました。
「エイベル、是非もっと高く飛んで欲しいですが学園の結界に捕まりますよ」
学園はたくさんの結界で覆われています。エイベルの上昇が止まりました。
うっかりすることが多く間抜けなエイベルに笑ってしまいました。
お腹を抱えて笑ったのは久しぶりです。淑女としてはいけませんが人目がないので多めに見てもらいましょう。
エイベルと空の散歩を楽しむなんて昔は思いつきもしませんでした。
初めてエイベルと食堂で昼食を食べて午後から授業に戻りました。
明るく笑うフィルと心配そうな顔をするステラを抱きしめます。
お友達と過ごす時間は貴重です。
「変わらないものなんてありません」
「レティシア?」
「遊びに行きたいのに、なかなか時間がありません」
魔法の授業の演習を早く切り上げて遊びを提案してくれたフィルにステラも「名案です」と愛らしく笑いました。一緒に笑い合える存在がいるのは幸せなこと。膝の上でお昼寝は始めたディーネを撫でます。
今の世に変わらないものなんてありません。それでも私の心にある幸せな記憶は変わりません。胸に手を当てれば思い浮かぶ大事な世界だけは変わらないでしょう。
もう大丈夫です。リオに何を言われても殺気を向けられても気にしません。仮面夫婦ならぬ仮面婚約者を演じるだけですわ。公爵令嬢として物心ついた時から教わっていたこと。国と家の利のために嫁ぐ相手は選べません。当主の選んだ夫とうまくお付き合いするだけ。昔と違い変わりゆく世界で唯一変わらないものを持っていることに気付きましたから。幸せという名の―。
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リオがマール公爵邸に帰ったと報告を聞いて安堵しました。
サイラス様達に感謝して魔石を贈りました。気にしなくていいと言われましたが本当に助かりました。
マール公爵からの命を叶えられたことに安堵した所為か微熱が出ました。忙しい時期に寝込むわけにはいきませんがマナが許してくれませんでした。なぜか風邪を引くとうまく魔法が発動せずに治癒魔法がかけられません。ディーネに頼むと、過剰な治癒魔法は危険だから駄目と言われたので大人しく部屋で休み任されている書類仕事を片付けました。
熱が下がり登校すると放課後にセリアが訪ねてきました。
セリアにはいくつか欲しい魔導具の作成を頼んでます。お礼に魔力と魔石と血を提供しているので低価格で協力してくれます。セリアに頻繁に依頼することになるなんて昔の私でしたらありえませんわ。いつもセリアの作る物騒な発明品に引いてましたもの。
「水流操作ができる魔導具はできそうですか?」
「膨大な量の水の魔石が必要になるから、現実的ではないわ」
「魔力の供給は魔導士がすれば?」
「それならおもしろそう。実用的ではあるわ。考えてみるわ。納品はビアード公爵家?」
使うのはマール公爵家ですが一度うちで動作を確認してからの方がいいでしょう。セリアの発明品は魔力の消費量や動作がおかしいことが多く、現実的も実用的も信用していけない言葉です。完成すればリオと取引が必要な時に使えるでしょう。マール公爵家からどんな命令を受けるかわからないのでいくつか取引に使えそうな物を作っておきましょう。変な物を贈って面倒なことになるのを避けるためにきちん確認しないといけません。準備は大事ですから。
「はい。お願いします」
「疲労が溜まってるようだけど、薬はいる?」
「お気持ちだけで。被験者になる気はありません」
「残念」
妖艶に笑うセリアは私の血を採取して帰っていきました。材料が足らずに会いにきたようです。自由なセリアはいつの世も羨ましいです。
私は療養していたので疲労は溜まっていませんよ。セリアは被験者探しに余念がありません。
セリアが堂々と被験者を探すのも前の世界とは違うことです。
****
多忙な日々に終わりが見えません。
ありがたいことにようやくリオのファンの令嬢達もわかってくださったのか問題を起こさなくなりました。リオのファンの令嬢の対処にあたる必要がなくなり、お昼休みに余裕ができました。ファンの令嬢達が大人しいならリオのことはもういいですわ。どうぞ恋人と学園生活を満喫してくださいませ。問題さえ起こさないなら私は関わりたくありません。公爵子息としてあるまじき行動への呆れも飲み込みます。リオはおかしい人とは気づいていました。殿下が咎めないなら家格が低い私が言葉を掛ける必要はありません。それに私が何を言っても無駄ですから。もしもビアードに婿入りするならきちんと向き合わないといけませんが、今は無関係ですから。婚約者の務めを放棄する代わりにマール公爵家から送られてくるリオの仕事を片付けます。リオが私を公爵令嬢に相応しくないと呟いたのは事実なので否定はしません。お互いさまですとは口にせず、気付かないフリをして立ち去りました。第二夫人を目指す恋人を受け入れてほしいなら両公爵と相談すればいいのです。私には関係ありませんし、説得する必要性も感じません。
「公爵令嬢として相応しくないわ」
「とうとうリオ様も気づかれたのね。まがいものを」
令嬢達の蔑んだ視線も聞こえるように話す言葉も直接は言われていないので聞き流します。平等の学園でもマール公爵子息の言葉の影響力は強い。大きな動きはありませんが準備をしておきましょう。殺意を向けられたならいつ仕掛けられても不思議ではありませんから。
私とリオに連名で送られた招待状はリオに見せません。
ドレスを着て、髪を整え化粧を施す。そして夜会に足を運びたくさんの貴族達と談笑をかわす。社交界は戦場です。弱みを見せれば付け込まれます。婚約者とも良好な関係を築いているように優雅に微笑みながら言葉を返す。愛人を持つ貴族も多くても社交界では仲睦まじく夫婦の絆が確かなものであるように振舞います。ビアード公爵令嬢として資質を疑われても多くの者がお戯れをと笑い飛ばせるほどの存在になれるように。アリア様やお母様の教え、貴族として公爵令嬢として誰もが認め道を開けたくなるように振舞うこと。それが自分と家を守るために必要な事。クロード様を否定する者がいても、クロード様を信じて隣で優雅に微笑みながら寄り添っていた頃のように。おかげで王太子の婚約者として周囲から認められてましたもの。私がビアード公爵家を信じて相応しく振舞うのならそう簡単には落とせません。ビアード公爵家もビアード公爵令嬢も負けません。リオが本気で動くなら私もお相手します。リオ達が二人の世界に夢中な間に私は自分の立ち位置を強固なものにします。婚約破棄すればすみますのに、わざわざ穏便でない方法を選ばれた時のために準備は整えていきます。リオを警戒する日が来るなんて思いませんでした。殺意を向けるほど嫌悪されているなら何をされても不思議ではありません。リオ達にとって私は邪魔な存在ですから。恋の魔法、欲に溺れた先にあるもの。その先に何があるかは当人達しか知らぬこと。
***
今のところマール公爵家から動きはありません。多忙ですが学園生活は落ち着いています。
セリアは先触れもなく訪問します。
最近は特に頻繁です。
怖いのでセリアから贈られた茶葉を使ってお茶をいれることはしません。
エイベルのお仕置きに使いましょうか…。危険なのでやめましょう。
セリアのお土産のアップルパイを食べながら魔導具の話をしているとノックの音が聞こえたので入出許可を出すとリオの侍従でした。
マール公爵家からの手紙を渡されました。ありえない内容に何度見直しても読み間違いではありませんでした。
リオは療養中だったとは気付きませんでした。
手紙には原因不明の毒に侵されているのでみてほしいと書いてあります。リオなら王国一の治癒魔導士のルーン公爵が治療してくださるので私が呼ばれる理由がありません。なにより不愉快にするだけなので近づきたくないんですがマール公爵の命をお断りできません。もしかしてルーン公爵が多忙で捕まらないんでしょうか?それとも極秘で処理したい理由?お断りできる理由はないので考えても仕方ありません。都合のつく時でいいと書いてあるので緊急性はないでしょう。丁度良く原因不明の毒なら目の前には適任者がいます。
「セリア、付き合ってくれませんか?」
セリアに手紙を見せると妖艶に微笑みました。
「中々おもしろい状況ね。用意してくるわ」
セリアは原因不明や怪しい物が大好きです。
セリアが用意している間に外出の手配を整えました。
マール公爵邸ではマール公爵夫人に出迎えられました。
リオは毒に侵されていても命に別状はないそうです。緊急なら私が呼ばれることはないとわかっていました。
マール公爵夫人に渡された毒の材料の甘い匂いの草に見覚えはありません。
セリアが目を輝かせてもらっていいか聞いています。セリア、不謹慎です。無駄とわかっていますが空気を読んで欲しいです。空気は吸うもので読む必要はないなんて言えるのはシオン一族だけですよ。
「リオの様子がおかしいから調べたわ。リオが夢中な令嬢の周りでは惚れ薬が出回っていた。令嬢の記憶を覗いたらリオもかなりの量を飲まされていたわ。解毒薬はなく、ルーンの治癒魔法も効かない」
惚れ薬?
惚れ薬は作成も使用も禁止されています。心を操るものは違法です。昔、似たようなものをセリアが作っていたのは気の所為ですよね…。
記憶晒し?解毒薬がなく、ずっと飲まされていた?
「毒を飲まされていたということですか。いつから…。どうしてそんなこと」
「ルーン公爵でも駄目だったわ。ルーン公爵は薬が体から抜けて心が戻るのを待つしかないと。私の声は届かない。レティシアの声なら届くかもしれない。リオは貴方が一番好きだから。会ってくれないかしら?」
治癒魔法は心には効きません。
マール公爵夫人の言葉に勘違いとお伝えしたいんですが…。私の言葉が届くとは思えません。縋られる視線に断ることはできません。マール公爵夫人が取り乱されているのは初めてです。
「お役に立てるかはわかりませんが」
「お願い」
マール公爵夫人に礼をしてリオの部屋にセリアと一緒に入室しました。
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