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ビアード公爵令嬢の婚約者1 リオ視点
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ビアード公爵夫妻に面会依頼を出し何度も断られている。門前払いされても話を聞いてもらえるまで頼むと決めている。
サイラス達にはビアード公爵家は正面から攻めろ、カナト兄上がターナー伯爵からビアードの男は正々堂々と挑むなら向き合ってくれると助言をくれた。
サイラス達の言う通り正面突破、正々堂々を好むビアード公爵家に義姉上の助言のような小細工が通じるようには思えなかった。レティシアも怒らせると贈り物では許してくれない。好物の蜂蜜を見せるとさらに機嫌が悪くなる。反省して謝ればすぐに許してくれるけど。無防備で可愛らしいレティシアの取り締まり中に手を出して怒らせたから次は気をつける。根に持たないレティシアは反省して謝罪するならどんなことも許してしまう。すでにシオン嬢とも仲直りしており新しい魔導具を開発している。怪しいシオン嬢と二人にしないようにレティシアに譲った俺の部屋で面会させている。シオン嬢が迷惑そうに見ているのは気にしない。
ビアード公爵の休みはレオ様が教えてくれた。多忙なビアード公爵の貴重な休みはビアード公爵夫人は邸内にいるとレティシアが言っていた。ビアード公爵夫妻が確実にビアード公爵邸にいる日に訪問を決めた。
ビアード公爵邸に着くと無表情の執事長に迎えられ案内された。門前払いにならないことに安心したけど、使用人達の視線は冷たい。今までの親しみが嘘のようにローナさえも悲しい視線を向ける。
案内された部屋に入ると冷たい顔のビアード公爵夫妻が座っている。
床に膝を降ろして頭を下げる。
「このたびは申しわけありませんでした」
「謝罪はいらない。斬りたくなるから足を踏み入れないでほしい」
「斬ってご満足いただけるなら、構いません。腕でも、足でも。命以外なら差し出します」
「書類にサインをして婚約解消するだけでいいわ。責任はうちが、全てはビアードで請け負うわ」
「どうか婚約解消はお許しください。彼女と共に歩むためならどんなことでもします」
「なんでもねぇ」
殺気を纏うビアード公爵と冷たい空気のビアード公爵夫人に情けなくても頭を下げて懇願するしか思いつかない。守ると誓ったレティシアを傷つけたのは事実だ。それでも諦めたくなかった。愛しくてたまらない少女のいない人生なんて。俺と一緒にいたいと言ってくれたレティシアが望む形で受け入れてもらえるように足掻くしかない。床に額をつけて許されるまで顔は上げない。力づくで追い出されないだけまだマシだ。扉が開く音がしたけど顔は上げない。人目を気にする余裕はない。プライドも矜持もレティシアとの未来のためなら迷うことなく捨てられる。
「お父様、お母様、おやめください!!この件は私に非があります。リオに剣を向けるのが私情であるなら私はお父様に反抗致します」
「レティ、どうして、髪はどうしたの!?」
「髪はセリアの所為です。伸びますので気にしないでください。ビアード公爵家のために婚約解消、破棄するなら受け入れます。もしも私の身を案じてでしたらお考え直しをお願い致します」
いるはずのないレティシアの声に驚いて顔をあげた。
レティシアにだけは懇願している姿を見られたくなかったから母上に頼んだ。うちでお茶会に参加しているのになんでいるんだよ。
「酷い事をされたら言えと言っただろう?」
「されてません。酷いのは私です。婚約者が毒に侵されたのに気付きませんでした。私は自分の保身のためにリオと向き合わず逃げました。ビアード公爵令嬢としてあるまじき失態です。婚約者が苦しんでいるのに私は逃避ばかりしてました。リオが咎を受けるなら私も受けます。リオを斬るなら私も斬ってください」
「シア、これは俺の責任だよ。こんなことしないで」
隣に膝をついて頭を下げるレティシアの肩に手を置いても首を振って頭を上げてくれない。
「違います。カナ兄様に聞きました。今までリオがビアードのために動き私の身を案じて内密に処理してくださったことも。それなのに私がリオにしたことは…。お父様、お母様、どうか冷静になってください。私のためを想ってくださるならどうかお考え直しを。親子の情ではなくビアード公爵夫妻としてのご判断を。リオは私の婚約者としてずっと動いてくださっていました。私はリオの婚約者なのに」
レティシアは頭を上げない。レティシアは何も悪くない。懺悔するレティシアの言葉を遮るために、言葉を被せて隣で頭を下げる。
「ビアード公爵夫妻、二度と裏切るようなことはしません。次は斬ってください。どうかレティシアの婚約者でいることを許してください」
沈黙が続きしばらくすると息を吐く音が聞こえた。
「二人共頭を上げなさい。レティが望むなら反対するつもりはないわ」
「レティはお父様よりリオか」
頭を上げると笑っているビアード公爵夫人に悔しそうなビアード公爵の顔が見えて、冷たい空気も殺気もいつの間にか消えた。
「お父様が大好きです。でもお父様はお母様のものですわ。何があろうとお父様への気持ちは変わりません」
顔をあげてニコリと可愛らしく笑うレティシアにビアード公爵が緩んだ顔で笑う。見たことのない顔に驚くが動揺を見せないように真剣な顔を作る。まだ終わってないから。
「婚姻の条件にもう一つ加える。エイベルの同意だ。他の女に現を抜かせば斬る」
「ありがとうございます」
殺気混じりの強い瞳で見られるが視線を逸らさず見つめ返す。俺にとってはレティシアの冷たい視線以上に怖いものは存在しない。婚約者でいることを許してもらえるだけでもありがたい。
「お茶にしましょうか。ゆっくり話を聞かせてほしいわ。レティが反抗するなんて初めて」
ビアード公爵夫人の楽しそうな声にビアード公爵の視線が俺から逸れた。楽しそうな視線を向けられているレティシアが引きつった笑みを浮かべているので頭を撫でるとふんわり笑う。
「中立じゃないのか?」
「余計なお世話でしたか?」
首を傾げ悪役令嬢ごっこで浮かべる悪戯っぽく笑うレティシアは可愛らしい。
「助かったけど見られたくなかった」
「お気になさらず。ですが次、リオを傷つけるようなことを言ったら怒りますから覚えておいてください」
笑顔で圧力をかける逆らってはいけない時の顔をしているレティシアを抱き寄せる。
「ごめん」
「仕方ないから許してあげます。もう痛いことも苦しいこともないですか?」
頬に添えられた指に手を重ね先ほどとは違い心配そうな顔に笑いかける。
「シアさえ傍にいてくれればな」
「婚姻前に手を出したらわかっているか」
ビアード公爵の冷たい声に慌ててレティシアの手を解き離れる。
「立ちなさい。今回は見逃しますがビアード公爵家が膝を折るのは王家にだけよ」
ビアード公爵夫人の声にレティシアの手を取って立ち上がる。
「リオも迂闊なことは気をつけなさい。毒の耐性ないんだから」
「望むなら手配するが」
「いりません。リオに毒の耐性なんて必要ありませんわ」
「せっかくだから」
「危ないことはやめてください」
レティシアが嫌がっているので、毒の耐性については後日相談しよう。
二度と毒に侵され狂うようなことは避けたい。ビアード公爵夫妻は事情を知っているのか?
ビアード公爵夫妻とお茶を飲んだ後はビアード公爵家の使用人の態度は元に戻っていた。レティシアが隣にいるおかげかもしれないが。レティシアがいても、あんなに簡単に説得できるとは思わなかった。
婚約破棄されないことに力が抜けた。後日ビアード公爵夫妻と家臣達には贈り物を届けよう。お茶会を終えてレティシアに案内された部屋にいる人物に驚く。カナト兄上がロダと一緒にお茶を飲みながらローナ達にもてなされている。
「お待たせして申しわけありません」
「間に合ったか。おめでとう。歓迎するよ。これは魔導具のお礼だから受け取ってほしい」
「まぁ。これは、ありがとうござます。カナ兄様」
「可愛い義妹のためならいくらでも取り寄せるよ。処分に困る物があるなら相談に乗るよ。頼りない弟のことも含めて義兄としていつでも力になるよ」
「カナ兄様、ありがとうございます」
カナト兄上とレティシアが親し気に話している。物凄く懐いていないか?兄上が渡す蜂蜜を嬉しそうに受け取っている。
「遠慮なく。リオが迷惑をかけたから、困っているなら遠慮なく教えてほしい」
「お気遣いありがとうございます。邪魔なものはありますが、」
「うちに取り扱えないものはない」
優しく微笑むカナト兄上にレティシアは頷いて案内してくれたのは厳重に結界で封印してある部屋だった。
「この部屋には魔導具が置かれています。魔力を流さないようにお願いします。魔法が使えないように魔法陣を仕掛けておりますがお二人が力を合わせると解除されてしまうので」
部屋の中には大量の見たことのない魔導具があり、兄上の口角が上がった。
「サラ様とレオ様が趣味で作った魔導具とセリアの失敗作です。ビアードで役に立たず、処分も大変なので引き取ってもらえるならありがたいです」
「うちは喜んで引き取らせてもらうけど、どれも高額で取引される物だがいいのか?」
「売買されるなら作成者と相談してください。ビアードには必要ないです」
「シア、本当にいいのか?」
「ビアードには騎士の訓練と戦闘、伝達以外の魔導具はいりません。利益のためのやり取りに時間を割くなら訓練を選びます。物騒な物ばかりですが引き取っていただけるならお金を支払ってでもお願いしたいですわ」
「任されるよ。商売も取り引きもうちの十八番だ」
「さすがマール公爵家。感謝致します。後日まとめてマール公爵邸に届けますわ」
助かったと嬉しそうに笑うレティシア。兄上には余計なことを言わずに見ていろと視線を送られた。レティシア、兄上は好意で動いてないから。頼りになる優しい兄って勘違いしている。話し合いを終えて兄上と一緒にマール公爵邸への馬車に揺られている。
「兄上、どうしてここに」
「追跡魔法を仕込んでいること以外のリオの暗躍をお茶会で話したんだよ。リオがビアード公爵邸に訪問しているとエレンが話して一瞬顔色が悪くなったレティシアに母上が退席を許したから俺が風で送った。聞きたいこともあったし、ロキ達の様子も見たかったから。有意義な取引だった。感謝の言葉はないか?」
文句を言っても倍返しされるだけだ。
「ありがとうございました」
「退席したが夫人達は快く送り出したよ。レティシアの不敬が咎められることはない」
俺がビアード公爵家を訪ねたことを聞いて慌てて帰ってきたのか。お茶会に参加した夫人達は快く送り出してくれたって後日凄い噂になってるだろうな。
レティシアはうちの派閥の夫人達の一番の注目の的。本当に俺と婚姻できるか賭けがされているらしい。その賭けは俺も参加していいんだろうか。
マール公爵邸に帰るとエレン義姉上に誘われビアード公爵家に取り入るための会議が始まった。
サイラス達にはビアード公爵家は正面から攻めろ、カナト兄上がターナー伯爵からビアードの男は正々堂々と挑むなら向き合ってくれると助言をくれた。
サイラス達の言う通り正面突破、正々堂々を好むビアード公爵家に義姉上の助言のような小細工が通じるようには思えなかった。レティシアも怒らせると贈り物では許してくれない。好物の蜂蜜を見せるとさらに機嫌が悪くなる。反省して謝ればすぐに許してくれるけど。無防備で可愛らしいレティシアの取り締まり中に手を出して怒らせたから次は気をつける。根に持たないレティシアは反省して謝罪するならどんなことも許してしまう。すでにシオン嬢とも仲直りしており新しい魔導具を開発している。怪しいシオン嬢と二人にしないようにレティシアに譲った俺の部屋で面会させている。シオン嬢が迷惑そうに見ているのは気にしない。
ビアード公爵の休みはレオ様が教えてくれた。多忙なビアード公爵の貴重な休みはビアード公爵夫人は邸内にいるとレティシアが言っていた。ビアード公爵夫妻が確実にビアード公爵邸にいる日に訪問を決めた。
ビアード公爵邸に着くと無表情の執事長に迎えられ案内された。門前払いにならないことに安心したけど、使用人達の視線は冷たい。今までの親しみが嘘のようにローナさえも悲しい視線を向ける。
案内された部屋に入ると冷たい顔のビアード公爵夫妻が座っている。
床に膝を降ろして頭を下げる。
「このたびは申しわけありませんでした」
「謝罪はいらない。斬りたくなるから足を踏み入れないでほしい」
「斬ってご満足いただけるなら、構いません。腕でも、足でも。命以外なら差し出します」
「書類にサインをして婚約解消するだけでいいわ。責任はうちが、全てはビアードで請け負うわ」
「どうか婚約解消はお許しください。彼女と共に歩むためならどんなことでもします」
「なんでもねぇ」
殺気を纏うビアード公爵と冷たい空気のビアード公爵夫人に情けなくても頭を下げて懇願するしか思いつかない。守ると誓ったレティシアを傷つけたのは事実だ。それでも諦めたくなかった。愛しくてたまらない少女のいない人生なんて。俺と一緒にいたいと言ってくれたレティシアが望む形で受け入れてもらえるように足掻くしかない。床に額をつけて許されるまで顔は上げない。力づくで追い出されないだけまだマシだ。扉が開く音がしたけど顔は上げない。人目を気にする余裕はない。プライドも矜持もレティシアとの未来のためなら迷うことなく捨てられる。
「お父様、お母様、おやめください!!この件は私に非があります。リオに剣を向けるのが私情であるなら私はお父様に反抗致します」
「レティ、どうして、髪はどうしたの!?」
「髪はセリアの所為です。伸びますので気にしないでください。ビアード公爵家のために婚約解消、破棄するなら受け入れます。もしも私の身を案じてでしたらお考え直しをお願い致します」
いるはずのないレティシアの声に驚いて顔をあげた。
レティシアにだけは懇願している姿を見られたくなかったから母上に頼んだ。うちでお茶会に参加しているのになんでいるんだよ。
「酷い事をされたら言えと言っただろう?」
「されてません。酷いのは私です。婚約者が毒に侵されたのに気付きませんでした。私は自分の保身のためにリオと向き合わず逃げました。ビアード公爵令嬢としてあるまじき失態です。婚約者が苦しんでいるのに私は逃避ばかりしてました。リオが咎を受けるなら私も受けます。リオを斬るなら私も斬ってください」
「シア、これは俺の責任だよ。こんなことしないで」
隣に膝をついて頭を下げるレティシアの肩に手を置いても首を振って頭を上げてくれない。
「違います。カナ兄様に聞きました。今までリオがビアードのために動き私の身を案じて内密に処理してくださったことも。それなのに私がリオにしたことは…。お父様、お母様、どうか冷静になってください。私のためを想ってくださるならどうかお考え直しを。親子の情ではなくビアード公爵夫妻としてのご判断を。リオは私の婚約者としてずっと動いてくださっていました。私はリオの婚約者なのに」
レティシアは頭を上げない。レティシアは何も悪くない。懺悔するレティシアの言葉を遮るために、言葉を被せて隣で頭を下げる。
「ビアード公爵夫妻、二度と裏切るようなことはしません。次は斬ってください。どうかレティシアの婚約者でいることを許してください」
沈黙が続きしばらくすると息を吐く音が聞こえた。
「二人共頭を上げなさい。レティが望むなら反対するつもりはないわ」
「レティはお父様よりリオか」
頭を上げると笑っているビアード公爵夫人に悔しそうなビアード公爵の顔が見えて、冷たい空気も殺気もいつの間にか消えた。
「お父様が大好きです。でもお父様はお母様のものですわ。何があろうとお父様への気持ちは変わりません」
顔をあげてニコリと可愛らしく笑うレティシアにビアード公爵が緩んだ顔で笑う。見たことのない顔に驚くが動揺を見せないように真剣な顔を作る。まだ終わってないから。
「婚姻の条件にもう一つ加える。エイベルの同意だ。他の女に現を抜かせば斬る」
「ありがとうございます」
殺気混じりの強い瞳で見られるが視線を逸らさず見つめ返す。俺にとってはレティシアの冷たい視線以上に怖いものは存在しない。婚約者でいることを許してもらえるだけでもありがたい。
「お茶にしましょうか。ゆっくり話を聞かせてほしいわ。レティが反抗するなんて初めて」
ビアード公爵夫人の楽しそうな声にビアード公爵の視線が俺から逸れた。楽しそうな視線を向けられているレティシアが引きつった笑みを浮かべているので頭を撫でるとふんわり笑う。
「中立じゃないのか?」
「余計なお世話でしたか?」
首を傾げ悪役令嬢ごっこで浮かべる悪戯っぽく笑うレティシアは可愛らしい。
「助かったけど見られたくなかった」
「お気になさらず。ですが次、リオを傷つけるようなことを言ったら怒りますから覚えておいてください」
笑顔で圧力をかける逆らってはいけない時の顔をしているレティシアを抱き寄せる。
「ごめん」
「仕方ないから許してあげます。もう痛いことも苦しいこともないですか?」
頬に添えられた指に手を重ね先ほどとは違い心配そうな顔に笑いかける。
「シアさえ傍にいてくれればな」
「婚姻前に手を出したらわかっているか」
ビアード公爵の冷たい声に慌ててレティシアの手を解き離れる。
「立ちなさい。今回は見逃しますがビアード公爵家が膝を折るのは王家にだけよ」
ビアード公爵夫人の声にレティシアの手を取って立ち上がる。
「リオも迂闊なことは気をつけなさい。毒の耐性ないんだから」
「望むなら手配するが」
「いりません。リオに毒の耐性なんて必要ありませんわ」
「せっかくだから」
「危ないことはやめてください」
レティシアが嫌がっているので、毒の耐性については後日相談しよう。
二度と毒に侵され狂うようなことは避けたい。ビアード公爵夫妻は事情を知っているのか?
ビアード公爵夫妻とお茶を飲んだ後はビアード公爵家の使用人の態度は元に戻っていた。レティシアが隣にいるおかげかもしれないが。レティシアがいても、あんなに簡単に説得できるとは思わなかった。
婚約破棄されないことに力が抜けた。後日ビアード公爵夫妻と家臣達には贈り物を届けよう。お茶会を終えてレティシアに案内された部屋にいる人物に驚く。カナト兄上がロダと一緒にお茶を飲みながらローナ達にもてなされている。
「お待たせして申しわけありません」
「間に合ったか。おめでとう。歓迎するよ。これは魔導具のお礼だから受け取ってほしい」
「まぁ。これは、ありがとうござます。カナ兄様」
「可愛い義妹のためならいくらでも取り寄せるよ。処分に困る物があるなら相談に乗るよ。頼りない弟のことも含めて義兄としていつでも力になるよ」
「カナ兄様、ありがとうございます」
カナト兄上とレティシアが親し気に話している。物凄く懐いていないか?兄上が渡す蜂蜜を嬉しそうに受け取っている。
「遠慮なく。リオが迷惑をかけたから、困っているなら遠慮なく教えてほしい」
「お気遣いありがとうございます。邪魔なものはありますが、」
「うちに取り扱えないものはない」
優しく微笑むカナト兄上にレティシアは頷いて案内してくれたのは厳重に結界で封印してある部屋だった。
「この部屋には魔導具が置かれています。魔力を流さないようにお願いします。魔法が使えないように魔法陣を仕掛けておりますがお二人が力を合わせると解除されてしまうので」
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「売買されるなら作成者と相談してください。ビアードには必要ないです」
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「任されるよ。商売も取り引きもうちの十八番だ」
「さすがマール公爵家。感謝致します。後日まとめてマール公爵邸に届けますわ」
助かったと嬉しそうに笑うレティシア。兄上には余計なことを言わずに見ていろと視線を送られた。レティシア、兄上は好意で動いてないから。頼りになる優しい兄って勘違いしている。話し合いを終えて兄上と一緒にマール公爵邸への馬車に揺られている。
「兄上、どうしてここに」
「追跡魔法を仕込んでいること以外のリオの暗躍をお茶会で話したんだよ。リオがビアード公爵邸に訪問しているとエレンが話して一瞬顔色が悪くなったレティシアに母上が退席を許したから俺が風で送った。聞きたいこともあったし、ロキ達の様子も見たかったから。有意義な取引だった。感謝の言葉はないか?」
文句を言っても倍返しされるだけだ。
「ありがとうございました」
「退席したが夫人達は快く送り出したよ。レティシアの不敬が咎められることはない」
俺がビアード公爵家を訪ねたことを聞いて慌てて帰ってきたのか。お茶会に参加した夫人達は快く送り出してくれたって後日凄い噂になってるだろうな。
レティシアはうちの派閥の夫人達の一番の注目の的。本当に俺と婚姻できるか賭けがされているらしい。その賭けは俺も参加していいんだろうか。
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