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06_彼は友達が少ない。
しおりを挟む「宿題、写させてくんねえ?」等の頼み事を断られた際に、
「頼むぜえ。友達だろう?」
と追いすがるのはよくある話で、対する追いすがられた側が、
「友達じゃねえわ」
と返すのは最早、お約束のようなものだが笹野君の場合は、
「友達じゃねえ」
「え~。そんなこと」
「お前は親友だ」
冗談なのか本気なのか、真顔でそんな事を言うものだから言われた方は笑って良いやら悪いやら、返す言葉を見失ってただ、
「お、おう」
頬の緩んだだらしのない顔で小さく頷く事くらいしか出来なくなってしまうのだった。
そんな場面を目撃していた笹野君の友人達は、
「笹野、百円くれねえ?」
「笹野、次の授業サボって外のコンビニまで行かねえ?」
「笹野、俺を殴ってくれ! グーで!! 思いっ切り!!!」
次々にビミョーな頼み事をしては断られると、
「友達だろう?」
「友達だろう?」
「友達じゃろうが?」
と追いすがっては、
「親友だ」
「親友だ」
「親友た」
の言葉を引き出していた。
友人ら曰く、
「面と向かって言われると照れるな」
「明らかに言わせてるんだけどな。それでもドキるな、コレは」
「俺だけ語尾が濁音じゃなかったのは何で? 噛んだの? わざと? え、何で?」
との事で、
「え、マジで? 何か面白そうだな」
「いいな。俺も言われたい」
「俺も。俺も」
笹野君の周辺では、笹野君に「親友だ」と言ってもらう事がちょっとしたブームかゲームのようになってしまった。その結果、
「親友だ」
「親友だ」
「親友だ」
「親友だ」
「親友だ」
・
・
・
笹野君の友人達は軒並み「親友」へとランクアップしてしまい、彼の「友達」は数少なくなってしまいましたとさ。
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