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従者と銀のお姫様は長い旅に出ました。
はるか遠い国へ、雪の国を目指してふたりは足を進めます。
旅の途中で、ふたりは砂漠の国に立ち寄りました。そこで銀のお姫様は、砂漠の国の富豪に求婚されます。
多くの財産を有する富豪は、誠実な青年であり周囲の人から慕われています。
身分を隠し、平民の服装をしていても銀のお姫様の高貴な美しさには変わりありません。なにより、心優しい銀のお姫様に富豪は惹かれたのです。
その話を聞いた従者は、銀のお姫様を砂漠の国に置いて自分だけ旅の続きに出ようとします。
「姫様、どうかお幸せに」
従者は、ぽつりと呟きます。
自分といるより富豪と一緒にいた方が幸せになるだろうと考え、身を引こうと決めたのです。
ですが、銀のお姫様は求婚を断って従者を追いかけました。
お姫様は従者に追いつくと、涙が次々と溢れ出てきました。
「私の幸せを勝手に決めないで。それに、私は死にたくないという理由だけで貴方の手をとったのではないわ」
命の終わり方を、自分の運命を勝手に決められてきたお姫様はとても辛かったのです。
そんな中で、銀のお姫様だけを守ると手を差し伸べてくれたのは従者だけでした。
水の豊かな国ではきっと今頃、銀のお姫様と従者は国を見捨てた裏切り者と罵られていることでしょう。
もしくは、銀のお姫様を攫った悪党だと従者だけが悪役になっているかもしれません。
誰にでも優しい王子様や人望のある富豪でもない、銀のお姫様のためだけに悪役になることを厭わない従者に心惹かれたのです。
「私だけを大切にしてくれる貴方。私はあの夜から貴方だけを見つめているのよ」
「姫様…。俺は姫様を愛しています。これからもずっと」
銀のお姫様と従者は互いに想いを伝え合い、結ばれたのです。
旅を続け、ふたりは雪の国にたどり着きました。そして、幸せな時間がゆっくりと過ぎていくのでした。
「ねぇ、奥さん。もう聞いたかい?水の豊かな国の王様が退位した話」
「いえ、初めて聞きました。詳しく教えてくださいますか?」
「王様がね、姫様を魔物への生贄にしたくなくてさ。背格好の似た少女を姫様の身代わりにしたんだけど、そんなのすぐバレちまったって!」
「それは魔物の怒りを買ってしまったことでしょう」
「そうだね。ここからが面白いところなんだけど、魔物が身代わりの少女をえらく気に入ってしまったみたいでね。王族を城から追い出して、身代わりの少女を女王様にしたって話だよ」
「ええっ!」
「貴族制度をなくして格差を狭めようとしていて、新しい女王様は歓迎されているのだって。魔物は人間の姿になって女王様を支えているみたいだけど、その魔物がとてつもなく綺麗な顔立ちをしているとかでさあ!王族だった連中はさぞや悔しがっているだろうね」
水の豊かな国の末路は、銀のお姫様と従者は後に知ることになります。
「姫様、どうされたのですか」
「…2人だけの時とはいえ、その姫様って呼び方はそろそろ辞めてもらえないかしら。あと、その丁寧な話し方も」
「それは中々に難しいですね。気長に待っていただけると嬉しいです」
じとりと従者を見ると、従者は愛おしげに銀のお姫様に微笑みかけました。
ふたりは、自分たちだけのために生きて行くと決めたのです。
時に困難を乗り越えながらも、いつまでも幸せに暮らしていくのでしょう。
はるか遠い国へ、雪の国を目指してふたりは足を進めます。
旅の途中で、ふたりは砂漠の国に立ち寄りました。そこで銀のお姫様は、砂漠の国の富豪に求婚されます。
多くの財産を有する富豪は、誠実な青年であり周囲の人から慕われています。
身分を隠し、平民の服装をしていても銀のお姫様の高貴な美しさには変わりありません。なにより、心優しい銀のお姫様に富豪は惹かれたのです。
その話を聞いた従者は、銀のお姫様を砂漠の国に置いて自分だけ旅の続きに出ようとします。
「姫様、どうかお幸せに」
従者は、ぽつりと呟きます。
自分といるより富豪と一緒にいた方が幸せになるだろうと考え、身を引こうと決めたのです。
ですが、銀のお姫様は求婚を断って従者を追いかけました。
お姫様は従者に追いつくと、涙が次々と溢れ出てきました。
「私の幸せを勝手に決めないで。それに、私は死にたくないという理由だけで貴方の手をとったのではないわ」
命の終わり方を、自分の運命を勝手に決められてきたお姫様はとても辛かったのです。
そんな中で、銀のお姫様だけを守ると手を差し伸べてくれたのは従者だけでした。
水の豊かな国ではきっと今頃、銀のお姫様と従者は国を見捨てた裏切り者と罵られていることでしょう。
もしくは、銀のお姫様を攫った悪党だと従者だけが悪役になっているかもしれません。
誰にでも優しい王子様や人望のある富豪でもない、銀のお姫様のためだけに悪役になることを厭わない従者に心惹かれたのです。
「私だけを大切にしてくれる貴方。私はあの夜から貴方だけを見つめているのよ」
「姫様…。俺は姫様を愛しています。これからもずっと」
銀のお姫様と従者は互いに想いを伝え合い、結ばれたのです。
旅を続け、ふたりは雪の国にたどり着きました。そして、幸せな時間がゆっくりと過ぎていくのでした。
「ねぇ、奥さん。もう聞いたかい?水の豊かな国の王様が退位した話」
「いえ、初めて聞きました。詳しく教えてくださいますか?」
「王様がね、姫様を魔物への生贄にしたくなくてさ。背格好の似た少女を姫様の身代わりにしたんだけど、そんなのすぐバレちまったって!」
「それは魔物の怒りを買ってしまったことでしょう」
「そうだね。ここからが面白いところなんだけど、魔物が身代わりの少女をえらく気に入ってしまったみたいでね。王族を城から追い出して、身代わりの少女を女王様にしたって話だよ」
「ええっ!」
「貴族制度をなくして格差を狭めようとしていて、新しい女王様は歓迎されているのだって。魔物は人間の姿になって女王様を支えているみたいだけど、その魔物がとてつもなく綺麗な顔立ちをしているとかでさあ!王族だった連中はさぞや悔しがっているだろうね」
水の豊かな国の末路は、銀のお姫様と従者は後に知ることになります。
「姫様、どうされたのですか」
「…2人だけの時とはいえ、その姫様って呼び方はそろそろ辞めてもらえないかしら。あと、その丁寧な話し方も」
「それは中々に難しいですね。気長に待っていただけると嬉しいです」
じとりと従者を見ると、従者は愛おしげに銀のお姫様に微笑みかけました。
ふたりは、自分たちだけのために生きて行くと決めたのです。
時に困難を乗り越えながらも、いつまでも幸せに暮らしていくのでしょう。
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