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繰り返しの弊害
しおりを挟む『ようやく逢えたな…、リリアーナ…!』
この、王太子様の意味不明な言葉の意味がようやく分かった。彼は私が前世プレイしていた君婚の[アレクセイ]なのだ。
そして私が新しくゲームをする度にその人生を繰り返し、それでも尚ヒロインを…否、その向こう側にいた私を愛している、[アレクセイ]だったのだ。
「お前を一目見たとき、すぐに分かった。お前はリリアーナの向こう側にいた誰かで、俺達が何度でも恋をした[リリアーナ]なのだと」
「でん、か…」
「アレクと呼べ、アリアンヌ。…お前には、そう呼ばれたい」
きっとこの人は分かっている。幾度となく起こっていた[繰り返し]は、私が引き起こしていたことなのだと。そしてそれを分かった上で、私にこんな微笑みを向けるのだ。でも…
「わたし、は…」
私には、その想いに応えられるだけの想いもなければ覚悟もない。
無理だ、と思った。だって、プレイしていたゲームの中で、誰がキャラクターが生きているなんて思うだろうか。ゲームはゲームで、現実ではない。私は彼らに萌えることはあっても、恋をすることはなかった。そして、会ったばかりの人間にそこまでの恋愛感情を抱くことは、不可能に等しい。
「待ってやる」
「…え?」
途方に暮れる私に、手を差し伸べてきたのは王太子殿下…アレク様だった。
「待ってやる。お前が、本当の意味で俺を選ぶまで、いつまででも待ってやる。どんなに時間が掛かろうと、お前に会えるまでの時間とは比べるまでもなく短いだろうからな、何も問題はない」
まぁ、口説きはするがな。と締めくくったアレク様は、だから安心しろとばかりにまた優しく微笑んだ。
何故だろう。涙が溢れて止まらない。どんなに拭っても拭っても、止まる気配が全くない。
「な、何故泣く!?俺が何かしたのか!?」
「ち、ちがっ…!わかんなっ…!」
慌てているアレク様には申し訳ないのだが、自分でも自分がなんで泣いているのかわからないのに、答えられる訳がない。涙は止まらないのに、おろおろしているアレク様がなんだかおかしくて笑ってしまう。
「ふ、ふふっ」
「…よし、折角人が心配してやっているのに笑う様な人間に慈悲は必要ないな!」
「えっ、ちょっ…!ひゃ!あはははははっ!くすぐった…!」
笑った私を見て大丈夫だと判断したのだろう。アレク様は実に楽しそうに私を擽り始め、いつの間にか私の涙も生理的な笑い涙に変わっていた。
「あはははははははっ!も、もうやめ…!あはははっ、」
「やめるものか!ははっ、この不敬者めっ!」
けれどしつこいまでに続いていた擽りが急にぴたりと止まり、不審に思って息を整えながらアレク様の方を見れば、そこにはなにやら不穏な空気を纏ったお兄様が居た。
そして気付く。お兄様…エドワード・レーナードは紛れもなく、君婚の攻略対象の一人だ。そしてアレク様から聞いた話から察せられるに、恐らく彼にも[繰り返し]の記憶がある。
「お言葉ですが殿下。いくら殿下といえど、婚約者でもないアリアンヌにその様な無体はどうかと」
「エドワード…!」
「…おにい、さま」
「聞いちゃったんだね、可愛い僕のアリア…。ごめんね、騙すつもりはなかったんだ。君がもっと大きくなって、この世界に馴染めたらって思ってた」
(一緒だ…)
君婚での[エドワード]のバットエンドは、リリアーナが[エドワード]を庇って重症を負い、それを見た[エドワード]がヤンデレ化するというものだった。そして今のお兄様は、そのバットエンドで見たお兄様と全く一緒。しかも私はそのルートが大分好きだった為、何度もそのエンドを迎えていた。…つまり。
「可愛い僕のアリアンヌ。さ、お家に帰ろう?そしてこれからは、二人でずっとあの時みたいに過ごそうね。大丈夫、貴族間での兄妹婚は珍しいものでもないから、ちゃんとまた結婚できるよ」
(や、ヤンデレだー!!)
お兄様は、ばっちりヤンデレてた。
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