10 / 12
平民のギラン
しおりを挟む
このままではこの国が終わる。どうしたものかと考えて、やっぱり答えは一つしかなかった。
(私がストーリーを進めること…)
だが私は、[ヒロイン]、リリアーナ・エーデルではない。[悪役令嬢]のアリアンヌ・レーナードなのだ。
本来ヒロインと真逆の位置にある悪役令嬢が、ヒロインになれるのだろうか。
「…はぁ…」
だがしかし、ここでぐだぐだ考えて立ち止まっている暇がないのも事実。昔(前世)の偉い人も言っていた。為せば成る、為さねば成らぬ、何事も、と。ならばそろそろ腹を決めねばなるまい。
(そうと決まれば…)
ぐっ、と拳を握りしめ、エド兄様の部屋へと突撃する。勢いをつけるため助走をつけ、バンっという音と共に開け放たれた扉の向こうには、読書中だったのだろう。膝の上で分厚い本を開きながら、その端正なお顔の目と口をぽかんと開けてこちらを向く、エド兄様がいた。
「エドにいさま!」
「え、え、どうしたの、アリア」
ただならぬ様子の私にすっかり戸惑っているエド兄様の姿に、畳み掛けるなら今だ、と確信した私は、小走りでエド兄様の側まで向かい、ずずいっと顔を近付けて言い放った。
「まちにまいりましょう!なかまをあつめるのです!」
たっぷり五秒の間の後に、エド兄様が漸く放った言葉は、たったの一文字だった。
「…は?」
あれから三日後。はじめは断固として拒否していたものの、結局私にとても甘いエド兄様は今こうして私に付き合い、共に街を歩いていた。
「で?」
「はい?」
いかにも不機嫌です、というように後ろを歩くエド兄様が、不意に言葉をかけてくる。
「はい?じゃなくて!なんで僕達はこんな店もなにもない住宅街を歩いてる訳?」
「もう、なんどもせつめいしたでしょう?わたくしたちはギランをむかえにきたのです!」
「僕だって、反対だって何度も言ったのに!アリアは僕だけじゃ不満なわけ!?」
「そういうわけではありませんが、ギランはとてもあたまがよくてじゅうなんなんです。いろいろとアドバイスがほしくて…」
伊達に平民の身で学園に特待生として入ったわけではない。ちゃらんぽらんなフリをしていた物の、他の生徒の様に家庭教師がついていた訳でもないのに常に最高峰の教育をされていた殿下とトップ争いをしていたのだから、その実力は折り紙つきだ。
それに、ギランは幼い頃から様々な仕事をして沢山の経験を積んでいた為かとても広い視野を持っている。確かに腹を決めたものの、未だ不安が残る将来のイベント攻略について何かしら意見が貰えるかもしれない。
だが、エド兄様はそれが不満らしい。アレク様はそういうことなら、と割とあっさりと承諾してくれたのだが(微妙に苦々しい顔をしていたのは見なかったことにする)、我が兄上様はどうにもそうはならなかった。
「えっと、おうとのホーレンのあたりだから…、このあたりでまちがいない、はず!です!」
「筈って…、というかアリア、ホーレンはそれなりに広い訳だけど、ここからはどうやって探すつもりなの?」
「それはもちろん、ひとにきくのです!」
「あっそ、僕は手伝わないからね!」
それから一時間、二時間と経って、一向に集まらない情報とそれに比例するようにしょぼくれる私と上機嫌になっていくエド兄様。
最終的には私を抱き上げたり撫でたりしながら、意気揚々と帰りの時間を告げるエド兄様と、沈んだ表情でお兄様にされるがままな私という図ができていた。
「アリア、アリア、可愛いアリアっ!もう充分だよねっ?帰るよねっ?」
「も、もうすこしだけ…」
「だぁめっ」
「…うぅ…」
もう少しだけ、というお願いも、可愛い顔をしたエド兄様に駄目という言葉で一刀両断されてしまい、泣く泣く帰ろうとしたその時。
「っ、リリアーナ…!!」
信じられないという様な声色でリリアーナを呼ぶ、探し人が現れた。
(私がストーリーを進めること…)
だが私は、[ヒロイン]、リリアーナ・エーデルではない。[悪役令嬢]のアリアンヌ・レーナードなのだ。
本来ヒロインと真逆の位置にある悪役令嬢が、ヒロインになれるのだろうか。
「…はぁ…」
だがしかし、ここでぐだぐだ考えて立ち止まっている暇がないのも事実。昔(前世)の偉い人も言っていた。為せば成る、為さねば成らぬ、何事も、と。ならばそろそろ腹を決めねばなるまい。
(そうと決まれば…)
ぐっ、と拳を握りしめ、エド兄様の部屋へと突撃する。勢いをつけるため助走をつけ、バンっという音と共に開け放たれた扉の向こうには、読書中だったのだろう。膝の上で分厚い本を開きながら、その端正なお顔の目と口をぽかんと開けてこちらを向く、エド兄様がいた。
「エドにいさま!」
「え、え、どうしたの、アリア」
ただならぬ様子の私にすっかり戸惑っているエド兄様の姿に、畳み掛けるなら今だ、と確信した私は、小走りでエド兄様の側まで向かい、ずずいっと顔を近付けて言い放った。
「まちにまいりましょう!なかまをあつめるのです!」
たっぷり五秒の間の後に、エド兄様が漸く放った言葉は、たったの一文字だった。
「…は?」
あれから三日後。はじめは断固として拒否していたものの、結局私にとても甘いエド兄様は今こうして私に付き合い、共に街を歩いていた。
「で?」
「はい?」
いかにも不機嫌です、というように後ろを歩くエド兄様が、不意に言葉をかけてくる。
「はい?じゃなくて!なんで僕達はこんな店もなにもない住宅街を歩いてる訳?」
「もう、なんどもせつめいしたでしょう?わたくしたちはギランをむかえにきたのです!」
「僕だって、反対だって何度も言ったのに!アリアは僕だけじゃ不満なわけ!?」
「そういうわけではありませんが、ギランはとてもあたまがよくてじゅうなんなんです。いろいろとアドバイスがほしくて…」
伊達に平民の身で学園に特待生として入ったわけではない。ちゃらんぽらんなフリをしていた物の、他の生徒の様に家庭教師がついていた訳でもないのに常に最高峰の教育をされていた殿下とトップ争いをしていたのだから、その実力は折り紙つきだ。
それに、ギランは幼い頃から様々な仕事をして沢山の経験を積んでいた為かとても広い視野を持っている。確かに腹を決めたものの、未だ不安が残る将来のイベント攻略について何かしら意見が貰えるかもしれない。
だが、エド兄様はそれが不満らしい。アレク様はそういうことなら、と割とあっさりと承諾してくれたのだが(微妙に苦々しい顔をしていたのは見なかったことにする)、我が兄上様はどうにもそうはならなかった。
「えっと、おうとのホーレンのあたりだから…、このあたりでまちがいない、はず!です!」
「筈って…、というかアリア、ホーレンはそれなりに広い訳だけど、ここからはどうやって探すつもりなの?」
「それはもちろん、ひとにきくのです!」
「あっそ、僕は手伝わないからね!」
それから一時間、二時間と経って、一向に集まらない情報とそれに比例するようにしょぼくれる私と上機嫌になっていくエド兄様。
最終的には私を抱き上げたり撫でたりしながら、意気揚々と帰りの時間を告げるエド兄様と、沈んだ表情でお兄様にされるがままな私という図ができていた。
「アリア、アリア、可愛いアリアっ!もう充分だよねっ?帰るよねっ?」
「も、もうすこしだけ…」
「だぁめっ」
「…うぅ…」
もう少しだけ、というお願いも、可愛い顔をしたエド兄様に駄目という言葉で一刀両断されてしまい、泣く泣く帰ろうとしたその時。
「っ、リリアーナ…!!」
信じられないという様な声色でリリアーナを呼ぶ、探し人が現れた。
0
あなたにおすすめの小説
婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。
乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが
侑子
恋愛
十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。
しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。
「どうして!? 一体どうしてなの~!?」
いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。
悪役令嬢に転生しましたが、全部諦めて弟を愛でることにしました
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したものの、知識チートとかないし回避方法も思いつかないため全部諦めて弟を愛でることにしたら…何故か教養を身につけてしまったお話。
なお理由は悪役令嬢の「脳」と「身体」のスペックが前世と違いめちゃくちゃ高いため。
超ご都合主義のハッピーエンド。
誰も不幸にならない大団円です。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
小説家になろう様でも投稿しています。
私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!
杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。
彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。
さあ、私どうしよう?
とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。
小説家になろう、カクヨムにも投稿中。
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています
月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、大好きだったアニメの世界。
しかも私は、未来で断罪される運命の悪役令嬢になっていた。
破滅を回避するために決めたことはただ一つ――
嫌われないように生きること。
原作知識を頼りに穏やかに過ごしていたはずなのに、
なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、
気づけば全員から溺愛される状況に……?
世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、
無自覚のまま運命と恋を変えていく、
溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。
悪役令嬢に転生したけど、知らぬ間にバッドエンド回避してました
神村結美
恋愛
クローデット・アルトー公爵令嬢は、お菓子が大好きで、他の令嬢達のように宝石やドレスに興味はない。
5歳の第一王子の婚約者選定のお茶会に参加した時も目的は王子ではなく、お菓子だった。そんな彼女は肌荒れや体型から人々に醜いと思われていた。
お茶会後に、第一王子の婚約者が侯爵令嬢が決まり、クローデットは幼馴染のエルネスト・ジュリオ公爵子息との婚約が決まる。
その後、クローデットは体調を崩して寝込み、目覚めた時には前世の記憶を思い出し、前世でハマった乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生している事に気づく。
でも、クローデットは第一王子の婚約者ではない。
すでにゲームの設定とは違う状況である。それならゲームの事は気にしなくても大丈夫……?
悪役令嬢が気付かない内にバッドエンドを回避していたお話しです。
※溺れるような描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
※少し設定が緩いところがあるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる