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第三章
意外とキャーとは出ない。
しおりを挟む「……リア、ジュリア!」
目が覚めるとジュリオと連れて来られた警察の姿があった。どうやらまた気を失っていたらしい。
いや、こんな光景は慣れるものではないから当たり前だろう。
「部屋に……」
「あぁ。意味がわからないよ。」
私も意味がわからなかった。
何故ニーナはドレスを着ていたのか。
何故ニーナは私の部屋にいたのか。
何故ニーナが死んでしまったのか。
警察により、ニーナの遺体は運ばれていった。
その頃にはメアリーも来てくれて慰めてくれた。
「ジュリア、可哀相に。何故ジュリアばっかりこんな目に……」
本当に、何故私ばかりこんな目にあっているのだろう。
小説ではメアリーが主人公だったが、こんな事件は起こってなかったはずだ。なんせ恋愛小説なのだから。
「国に戻るまで私の部屋に一緒に来る?このまま交換留学が続くのかはわからないけど……」
「うん……それどころじゃないよね……」
ニーナも貴族令嬢だ。こんな事件が起こるのは学園の責任問題以上に国際問題にも繋がりかねない。
「いや、交換留学は続くよ。ジュリアが希望するなら学園に戻るのは検討するけどね。」
シャマリオ先生がロウ先生とやってきた。
二人とも顔色は青いが、シャマリオ先生はいつもより真剣な顔をしていた。
「こんな事件があっても続けるなんて……異常です!」
「明日に緊急集会で全校生徒に伝えるけど、ニーナは自殺と判断された。」
「自殺、わざわざ私の部屋でですか?ニーナの部屋に血痕もあったのに?」
どれだけ科学捜査がなくても、警察が無能だとしてもその判断はないだろう。
ジュリオの方をみるも、ふるふると首を振られてしまった。
「ジュリアさん、あなたには別の部屋はもちろんご用意します。国に戻られるにしても今日の部屋は必要でしょう。」
私の疑問には誰も答えてくれず、ロウ先生に案内されて新しい部屋に案内された。
明日もあるため普通に寝ないといけないが、眠れる訳がなかった。
新しい部屋の窓からは池や灯籠の光が灯った中庭が見えた。
「あ、アルベルト……」
中庭でアルベルトが絵を描いているのが見えた。夜の景色の絵を描いてるのだろうか。
どうせ寝れないので、声をかけてみようと中庭へ向かうことにした。
「……こんばんわ……」
「こんばんわ。」
おぉ、無視されるかとも思ったが、挨拶は返ってきた。
「こんな夜に絵を描くなんてすごいね。」
「別に。」
ううむ、会話が続かない。
「そういえばさ、中等部の時にもこんな夜で大変だったよね。月明かりは今日の方があるけど、雲が月を隠すと暗くなるしね。」
まさかあんなに夜が暗いとは思っていなかった。
今日は月明かりがなくても灯籠のお陰でまだ安心感はある。
「そうだね、あれは良くなかった。」
「あの日、さ……夜に……その……」
嫌な気持ちがあると良いことを期待してしまう。
あの時に暗闇の不安を安心させてくれたように、今の気持ちも安心させて欲しいと思い、誰かを頼りたかった。
「あぁ、こうする?」
アルベルトは振り返り私を抱き締めてくれた。
あの日のように肩は叩いてくれなかったが、このまま寝れそうな気がするなと安易に思ってしまう。
「あの時も見ないようにも庇ってくれたよね。」
「うん。」
抱き締めかえそうとした時、雲の隙間から月明かりが照らし、アルベルトの描いてた絵が見えた。
描かれた絵は私が見たままの、ドレス姿のニーナの絵だった。
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