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第三章
芸術は爆発なのか。
しおりを挟む「こ、この絵は……?」
たまたま私の部屋を見たのか。いや、すぐにジュリオと警察が来て運ばれて行ったから見れるはずがない。
私はゆっくりとアルベルトから離れる。
「あぁ、作品を残して置きたくてね。中々上手くいったんだよ。」
「さく……ひん……」
「イージッタは良くなかったよね、見るに値しなかった。ニーナも汚かったから、綺麗にしたんだ。」
「……」
どう返事をしたらいいのかわからない。
自然とアルベルトを否定するように首を振りながら距離をとることしか出来なかった。
「君もわかってくれてると思ったんだけど、違ったんだね。」
アルベルトがゆっくり近づいてくる。手に持っているのは絵を描く時に使ってたであろう重しだ。
「染めてあげるよ。」
アルベルトが重しを振り上げてきた。
「ひっ……」
腕で頭を庇うが、衝撃は何もない。
恐る恐る目を開けてアルベルトの様子を見ると、振り上げてた腕を取り押さえてくれてる人がいた。
「たくっ……何やってんだよ。」
「何、メルクリオ。」
「こんな夜にお前らこそ何やってんだ。痴話喧嘩にしてはやりすぎじゃねぇの。」
そんな事を言いながらもメルクリオは肩で息をして、服もこちらで貸し出しされた寝間着の浴衣姿だ。
メルクリオが呼んでくれたのだろう、その後すぐにジュリオと警察もやってきて、アルベルトは警察に連行されることになった。
「アルベルト、何でこんなことになっちゃったんだろ。」
私の知ってるアルベルトはメアリーに恋をして、メアリーの姿を絵に描いてた。
まさか私が下手に介入してしまったから、メアリーに恋をしなかったから、こうなってしまったのだろうか。
「……大丈夫かよ。」
メルクリオは慰めてくれるつもりなのか、私が一人で中庭に残っていると一緒にいてくれた。
「あぁ、うん。ありがとう、良く気づいてくれたね。」
「はっ、たまたまだよ。」
「意外に優しいよね。」
「優しくねぇよ。知るか。」
憎まれ口を叩きながらも行くぞと手を差しのべてくれた。その手を握り返し、部屋まで送って貰った。
少しの時間だがゆっくり寝てから全校集会へと向かった。
ニーナは自殺、アルベルトは家庭の事情で退学になったと説明があった。
アルベルトの話を聞こうと集会後にすぐにジュリオに話しかける。
「ねぇ、アルベルトは何でニーナを……」
「俺もそう思ってたんだけど、どうも話を聞くと違うみたいだね。」
「え、でもあの絵は犯人じゃないと描けないと思うけど。……」
「うん、アルベルトはニーナの部屋で死体を見つけて、汚いと思って綺麗にしたくて、部屋は血まみれだったからたまたま綺麗な隣の部屋に入ったらしい。」
「殺したわけじゃないってこと?」
「警察の見解はニーナは自殺、だからね。」
「芸術家……か。」
サイコパスとも呼べるのかもしれない。
ニーナは死体でも何でもなく、ただの表現に使う材料の1つだったのか。
「けど、警察が最初に部屋を探した時には何もなかったんだよね。」
どこからアルベルトがやったのかはわからない。
ニーナの部屋も私の部屋も鍵はかかっていた。
「そうだね、ジュリアが共犯ならすんなり謎は解けそうなんだけど。」
「残念だけどね。」
ジュリオも違うとわかってるのだろう。顔がニヤけている。
「だね。ただもうジュリアを犯人じゃない前提で会って欲しい人がいるんだ。」
「会ってほしい人?」
「俺は今回の事件も含めてジュリアが何か関係してると思ってる。だから視てもらいたくてね。」
「ヒミコに視てもらうってこと?そんな深くまでわかるの?」
「うん。他にもちょっと色々やるけどね、最終手段だよ。少しは謎が解けるヒントは得られるだろう。」
私も謎が解けるならば協力しない選択肢はない。
放課後、ジュリオとヒミコの元へと向かうことにした。
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