英雄の弾丸

葉泉 大和

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1-34 始まりの裏切り

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「ハハっ! これは、俺の宝……! これだけあれば、俺は自由に生きられる! 何だって出来る!」

 リバンの笑い声が耳に入る度に、カペルの中で確実に何かが崩れ落ちていった。

 ――正気を保つ方法が、分からない。

 膝を床に着いていた状態から、カペルは勢いよく体ごと床に倒れ込んだ。

「カペル、お前は最後まで本当に利用しやすい駒だったよ。でも、俺の本性を知っちまったら、お前はもう要らない。約束通り、お前はブロイク団から離れろ」

 リバンは一切の感情が籠っていない言葉を、カペルに吐き捨てた。
 その言葉を聞き、リバンが最初から自分のことを使い捨てる気だったということに、今更になってカペルはようやく気付いた。
 カペルに完全に興味を失くしたリバンは、ポルトの財産が入った袋を背負いながら、部屋を出ようとしていた。

「……ぐ。待、て……」

 全てを捨てて倒れてしまいたいという絶望感と、ここでリバンを逃がしたら駄目だという使命感がカペルの中で織り交ざる中、使命感が若干勝り、リバンを制止する言葉が口から出た。

 その言葉で、リバンは足を止めた。だが、リバンの表情は、道端で生死を彷徨っている小動物を見ているかのように興味がなさそうだった。
 カペルはリバンが立ち止まったことを良しとし、口を開こうとした。

 しかし、カペルの中で何を言うのかは決まっていなかった。むしろ、考えがまとまらないと言った方が正しいだろう。
 意識が離れそうな中で物事を考えるのは辛かった。何も考えずに出る言葉が、自分が本当にリバンに言いたいことのはずだと思い、カペルは心のままに言葉を綴ることにした。

「……この、一か、月……」

 カペルは薄れゆく意識の中、本心のまま言葉を紡いだ。

「俺の夢を、認めてくれた、ことは、何だった、んだ……?」

 カペルは弱々しくも、ようやくリバンに問いかけることが出来た。
 そして、そのことを口に出したことで、カペルは更に自分の中で築き上げたものが崩れてしまった。

 溜め息を一つ吐いたリバンは、ポケットから煙草を一本取り出した。

「純粋すぎるお前に忠告をしてやろう」

 リバンはゆっくりと甚振るかのように時間をかけて、煙草の火を点けた。

 カペルの視界には、もう何も映らない。聴覚だけは生きている。意識が切り離されるのも、時間の問題だろう。でも、その時間さえも待てない。
 リバンの言葉を聞いたなら、もう何もかもが終わってしまう気がした。だから、リバンが言葉を言う前に――、

 ――早く、早く、意識よ、途切れろ。

 しかし、カペルは力強く念じるものの、残酷にもまだ世界と繋がってしまっている。

 リバンは煙草を吸い、長く息を吐くと――、

「人は私利私欲のためなら、簡単に裏切る。――だから、人の言葉なんて信じるな」

 リバンの短くも重く鋭い言葉は、カペルの心を押し潰すには十分だった。リバンがどんな表情をしているかカペルには分からない。けれど、きっとあまりにも冷徹な顔を見せていることだろう。
 カペルは何の言葉も反応も返すことは出来ず、抜け殻のようにリバンの足に目を向けていた。もちろん、カペルの視界には何も映されていない。

 そして、その時を見計らったかのように、アスワード邸中に大きな警報が響き渡った。この警報はリバンの煙草の火をきっかけにして反応したものだ。

 この警報を聞くと、リバンは口角を上げた。そして――、

「幕引きだ。お前も早くここから抜け出すことだ。……出来るなら、だけどな」

 そうカペルに言い捨てると、リバンは歯止めが利かなくなったように笑い声を上げた。
 そして、リバンは火の点いた煙草をカペルの目の前に捨てると、山ほどの財産を袋に入れたとは思えない速さで、この場から逃げ出した。

 カペルは倒れたまま、何も身動きが取れずにいた。
 主人がいなくなったにも関わらず、未だ火の点いている煙草は、もくもくと煙を出し続けていた。不快な煙が、容赦なくカペルの体の中に侵入する。

 カペルは糸一つ繋がっている意識の中、リバンの言葉を反芻していた。

 そんなことはない。人は人同士信じあってこそ生きられる――、昔の純粋だったカペル・リューグならそう言ったかもしれない。

 しかし、信頼していたリバンに裏切られ、悪事にも手を貸してしまったカペルは、リバンの言葉を認めざるを得なかった。
 何より――、人を幸せにすると言いながら最後の最後には自分に関する疑問を優先にする、という矛盾をもって自分自身を裏切ってしまったのだから、人の言葉なんて信じてはいけないに違いない。

 カペルは自らを嘲笑するように、唇を歪めた。

 心の中に煙が渦巻く。これはきっと目の前の煙草が原因ではないだろう。あんなにも輝いていたはずの心は、煙によって覆われて、今では何も感じない。

 警報の音が頭に響いて来る。五月蠅い。足音も、消えろ。この世界も、何もかも。俺を裏切った世界なんていらない。もう全部全部全部全部全部、

 ――消えてしまえ。

 そう願うよりも早く、光に満ちていたカペルの世界は、完全に暗闇に落ちた。


 目を開けると、何も見えなかった。
 深く、深い闇。
 そこは、自分の存在さえも疑うほど、漆黒の世界だった。

 ――現実か、夢か。生きているのか、死んだのか……。

 カペルは一瞬考えたが、そんなことはもうどっちでも良かった。この状況がカペルには心地が良かったのだ。
 もう何にも触れられずに生きられる――、そう思うだけで周りは暗いのに、気分が晴れやかになる。
 そう思い、自分の世界に閉じ籠ろうとした時だった。

 ――ここで終わるのか。

 カペルの心に、何者かの声が直接響き渡った。

 ――そうだ。人に裏切られ、自分でさえも自分を裏切って……俺は疲れた。

 カペルは頭の声に対して何者か問わず、当たり前のように答えた。そう答えないと、この心地良い世界から追い出される気がしたからだ。

 ――そうか。なら、お前の体を私にくれ。

 そう語られ、一瞬カペルの言葉が詰まった。あの世界に未練はないが、急に体をくれと言われて、体を渡す人間がどこにいるだろうか。

 ――……お前は今の自分が置かれている状況を分かっていないようだな。

 躊躇するカペルに、明らかに嘆息の混じった声が漏れた。その声に反応して、黒しか存在しない世界に、突如一筋の光が差し込んだ。
 光の先には、カペルがいた。死んだような目をして、虚空を眺めている。

「カペル・リューグ。お前はアスワード邸襲撃の実行犯として罪人となった。これから、ダオレイス中の極悪人が集う収容所、ジェンドに投獄する。……まぁ、この声が届いているかも分からないけど」

 生気のない顔をしたカペルに向かって、誰かが声を掛けた。
 当のカペルはこの暗闇の世界にいるはずなのに、状況が掴めなかった。

 ――それが、お前が今現実で置かれている状況だ。お前はリバンという人間に裏切られ、アスワードの財産を盗んだ犯人に仕立て上げられ、罪人になった。

 カペルの戸惑いに気付いているかのように、心の中で説明が入った。

 ――このままでは、お前は罪人として一生をジェンドで過ごすだろう。だから、そうならないために、お前の体を私にくれ。

 自分が置かれている状況を見ても、カペルはすぐに頷くことは出来なかった。今ここで頷いては、取り返しのつかない状況に陥ってしまうような気がした。

 ――仕方ない。今から三年後、この地に世界、いや歴史を覆すほどの事件が起こる。そこで、お前はジェンドから抜け出すといい。しかし、その後、お前に絶望が襲い掛かるだろう。その時、全てを私に委ねるか否か――、答えを出せ。

 その言葉を最後に、暗く心地の良かった世界からカペルは追放されてしまった。


 投獄されてからの期間、カペルには記憶が存在しなかった。ただ、己の心を憎悪で燃やすには、十分すぎる時間だった。

 そして、三年の時が経ち、カペルの心が憎悪に満たされた頃、ある事件が起こった。
 この事件によって、サルバシオン大陸に構えているジェンドに投獄されていた罪人全員が脱獄した。世界政府最大の留置所で処刑場でもあるジェンドは、これによりもぬけの殻となってしまった。歴史上、世界政府で一度も起こったことのない一大事件だ。
 もちろん、カペルもこの時にジェンドから逃げ出した。

 あの時の言葉の通りに、この事件は「災厄の解放」と呼ばれ、本当に世界規模で名を刻む事件となった。

 そして、脱獄したカペルは、アスワードの町に向かった。
 しかし、アスワードの町は、もうカペルの知っている町ではなかった。
 アスワード家を始めとして、アスワードに住む貴族全員が、貧民街に住む人々を奴隷として働かせ、お金を稼ぐという暴挙に出ていた。
 これは、三年前にカペルとリバンがアスワード邸に侵入し、財産を盗んだことが原因だった。盗まれた財産を取り戻すという名目をポルトは掲げているらしい。しかし、結局のところ、財産を盗まれた腹いせを貧民街の人にぶつけているに過ぎなかった。
 自分が犯してしまった行動の軽率さに、カペルは誰もいないアスワードの貧民街で、声を上げて、倒れるまで叫び続けた。


 ――また来たか。

 気付くと、カペルは周りが何も見えない漆黒の世界に再びいた。

 ジェンドに投獄されている時に何度も願ったが辿り着かなかった場所に来れたことに、カペルは自分でも驚くほどに心が躍っていた。しかし、それも束の間、カペルは現実の光景を思い出してしまった。

 ――三年前、私が言った通りになっただろう。どうだ、これで私に体を預けた方がいいことが分かっただろう。

 カペルは声に頷きながら、まだ迷っていた。ここに来れたことは嬉しい。しかし、体を委ねるのは別の話だ。カペルには、体を委ねたその後のことが気掛かりだった。

 その思いも見通しているのか、姿が見えないはずの声が、確かに笑みを浮かべた。

 ――……なに。悪いようにはしない。むしろ、私がお前を守ろう。お前が望む通りの世界を作ろう。
 ――俺の、望む世界……。

 人と人とが手を取り合って生きられる世界を作りたかった。でも、そんなの幻想に過ぎなかった。そんな世界を作ることが出来ないのは、もう身をもって分かっている。

 ――前を見よ。

 その声に反応して、三年前と同じように、再び目の前に一筋の光が現れた。しかし、三年前と違うのは、カペルの意志とは関係なく、カペルの体が動いていることだ。
 カペルの体がいる場所、それはアスワード邸だった。

 ――私に体を預けるとはどういうことか、その目に焼き付けよう。

 その声が響いた瞬間、まるで未来を先読みするかのように、光の先の景色が流れ始めた。世界の動きが、何十倍も早くなっている。

 その早くなった世界の中、カペルの体がポルトの付き人らしき人間に嘘を吹き込み、アスワード邸が乱れていくのを、カペルは見逃さなかった。そして混乱に乗じて、カペルの体は、ポルトを斬った。

 そして、時間はまさに光の如く流れ――、結果を言うならアスワードは平和を手にしていた。奴隷のように扱われていた貧民街の人は、前とも違う、普通の生活を送るようになっていた。それだけでなく、ハワードという人物が、カペルのことを慕うようにもなった。

 カペルは一瞬のように流れた一日を光を通して見て、絶句していた。

 あんなにも願っていた平和を、この声の言う通りに任せたら、瞬間で手に入れてしまったのだ。――それも、なんも苦労せずに。

 ――いったい、あなたは誰なんだ……?
 ――私はシエルだ。

 カペルの問いに答えた声は低く、重く、冷たく、威厳のある声だった。
驚いたカペルだったが、その言葉の意味を理解してくると、だんだんと笑いがこみ上げて来た。シエルとは何千年も前に生きていた人間の名前のはずだ。カペルにはなんかの本で昔に読んだ覚えがあった。

 カペルのように理想を追いかけて、夢半ばで亡くなった英雄の名。

 そんな英雄の名前が出てくるのだから、笑わずにはいられるだろうか。しかし、この空間を占める雰囲気は一切の嘘を交えているようには感じられなかった。

 ――もしお前の体を私に委ねるなら、ここで宣言するがいい。

 心の中に声が響き渡ると、強制的に黒い世界が消えてゆく。


 目を開けたら、目の前の状況が変わっていた。
 カペルはどこかの町に立ち尽くしていて、目の前には倒れ込んでいる少年がいた。
 周りを見回すことで、カペルは現実を把握しようとする。カペルが倒れ込んだアスワードの貧民街と見た目が似ていたが、明らかに違った。
 場所は廃墟と化している町。けれど、その見た目からこの町が襲撃されたのは、二、三日前と言ったところだ。その証拠に、周りには死体の山がたくさんあった。嫌な死臭が鼻を掠める。天気は、全てを洗い流すような雨。

 カペルは何の感情もなく、ただ道に転がっている小石を拾うような感覚で地面に倒れている少年に近づいた。

「シエル、シエル」

 けれど、カペルの思いとは裏腹に、少年には息があった。

 少年は死んだように倒れていたが、呼吸をしていることによって、微かに体が上下していた。だが、放っておくのであれば、この少年が命を落とすのも時間の問題だろう。

 世界を濡らす雨が、優しく少年の体を打ち付ける。しかし、その優しさでさえも、少年の心を穿つには十分すぎるほど痛々しい。

 英雄の名を呼ぶ少年のことを見下ろしながら、カペルは冷静に考えていた。そして、先ほどの心に響く声の言わんとすることを理解した。

 ――俺じゃ誰も救えない。人間の力なんて、たかが知れている。

 だから、

「私はシエル・クヴントだ。命が欲しければ、ついてこい」

 カペルは世界に挑戦状を叩きつけるように、全てを委ねる覚悟を持って、少年に向けてそう断言した。

 次の瞬間、カペルの意志は引きずり込まれるように、闇に消えた。

 最後にカペルが見た景色は、少年が生きるために立ち上がる姿と、水たまりに浮かんだ禍々しく笑う今まで一度も見たことのない自身の姿だった。
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