行方不明の幼馴染みが異世界で勇者になってたらしい

肉球パンチ

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第1章

第7話 転移

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「うわああぁぁぁ!!………あれ?」

自分の大声に驚いて目を覚まし、飛び起きた。
そう、。どうやら気を失っていたらしい。

キョロキョロと辺りを見回すと、さっきまでは草木が鬱蒼うっそうと生い茂る山の中にいたはずなのに、今は草原というか、少し開けた場所にいるようだ。まあ、開けているのはせいぜい20m四方くらいで、その周囲は木が乱立する山だか森だかのようだが…。

とりあえず立ち上がってみると、自分の体に特に不調はなさそうだ。さっきまでは膝の高さまで伸びた下草に隠れてよく見えなかったが、立ち上がったことで、数m離れたところにミーコとサーヤが、さらに二人とは別の方向に数m離れたところにはコータが倒れているのが見えた。ミーコとサーヤに近付いてみると、2人も別段怪我などは見受けられず、気を失っているだけのようだ。念のため呼吸や脈を確認するが、問題はなさそうだ。コータの方も2人と同じような様子だった。

全員無事なようで良かった。それに、さっきの俺の叫び声は誰にも聞かれていなかったようで安心した。落ち着いて思い返すと、いささか間抜けな目の覚め方だったからな。ミーコが聞いてたら大笑いされただろう。…いや、さすがのミーコでも、今の状況でそれはないか。まぁ、もし春樹に見られていたら、ヤツならこんな状況だろうと1ヶ月はこのネタでイジってきただろうけどな…。

それにしても、は一体どういう事なんだ?

あの時、春樹のスマホらしきものを発見したミーコが暴走したために、崖が崩れてしまった。そして、助けようとした皆も一緒に転落。このままほこらの屋根や地面に激突して怪我は確実、下手したら祠にぶつかってジ・エンドかもと肝を冷やした。そこまではいい。いや、全然よくはないんだが、おかしな事はなかったはずだ。

問題はその後だ。崖から落ちるとき、俺はかなり前傾姿勢になっていたせいで、腹ばいに近い状態で落下した。そのおかげ(?)で下の光景がはっきり見えていた。
あの祠は70~80cmくらいの高さで、扉もないような簡素な造りのものだったが、その中心部に青白い小さな光が浮かんでいるのが見えた。それだけでも十分不思議だが、足から落ちていったミーコがその光に触れた瞬間、そのまま吸い込まれていったのだ。それからパァッと光が広がって、俺も一緒に呑み込まれてしまった。
そして気が付いたらここで倒れていたというわけだ。
自分がハッキリと体験したことなのに、未だ信じられない気持ちが強い。

この場所にしたって、さきほどまでの山と同じところとは到底思えない。俺は自然科学を学んでおり、普通の人よりは植物に詳しいと自負じふしているのだが、似ている植物を知ってはいても、ここにあるのは初めて見るものばかりに思える。これは明らかにおかしい。

とにかく、皆を起こして状況を整理する必要がありそうだ。もしかしたら野生の獣に襲われるかもしれないし、いつまでも寝かせておくわけにもいかないからな。
それで、まずはサーヤを起こす。他の2人はウルサそうだから後回しだ。一通り怪我や痛むところがないかを確認してから、手分けして残りの2人を起こした。案の定、目を覚ましたミーコとコータの2人はすごい勢いでギャーギャー騒ぐ。

「優介さん!大丈夫っすか!?みんなケガは?ミーコちゃんは無事っすか?あれ?ここどこっすか?なんで自分寝て…?ってあれ?夢?いやいや、でも……「まぁちょっと落ち着け。みんな無事だから。はい、息を大きく吸ってー、吐いてー。はい、お茶飲んでー。」」

コータは目覚めてすぐに質問攻めにしてきた。あいかわらず早口でし立てるヤツだな。よく噛まないものだと感心する。皆の心配をしているようなので、とりあえず無事を伝えてから深呼吸させ、お茶を飲ませたら落ち着いたようだ。素直なヤツで指示にはすぐ従ってくれるので助かる。

さてミーコの方は、と振り向くと、先ほどまで必死な様子で泣きそうな声でギャーギャー言っていたのに、突如盛大な笑い声が聞こえた。見ると、サーヤがミーコのわき腹を思い切りくすぐっている。

「いにゃ~ははははっ、ちょ、やめ、やめて~ぃひひひひひっ、も、苦ひ、ゆるじで~! …はぁ、はぁ、はっ…ちょっとサーヤ、急に、なにすんのよ!はぁっ、はぁ。」

「だって、ミーコのマシンガントークが止まらないんだもの。こうでもしないとこっちの話聞かないでしょ?」

苦しそうなミーコに対して、サーヤはしれっと涼しい顔で言ってのけると、ゆっくりこちらに近付いてきた。

「お待たせしました。ミーコも落ち着いたみたいです。」

サーヤがそう、にこやかに告げてくる。なんか笑顔がちょっと怖いな。コータも引き気味になって、無意識なのか自分のわき腹をかばうように腕を当てている。サーヤは敵に回さないようにしよう。うん。

まぁ、これでとにかく静かになった。ミーコとコータには特に怪我などの確認はしなかったが、これだけ騒げるなら何ともないんだろう。

「とりあえず落ち着いて状況を整理しよう。崖から落ちた時に何があったか、自分が見たままを話してくれ。」

4人で輪になって座り、話を促す。順に話を聞いていったが、祠から出ていた青白い光に吸い込まれたのは間違いなさそうだ。そして、光に吸い込まれた後は、俺が起こすまで気を失っていたというのも全員共通していた。また、落ちていく途中で見た限り祠の周囲に人影はなく、ミーコが言うには、落ちていたスマホは春樹のもので間違いないらしい。

皆思うところがあるのか、考え込んでいる様子でしばし沈黙が流れた後、コータがおもむろに口を開く。

「あの、自分思うんすけど、これっていわゆる転移ってやつじゃないっすかね?漫画とかであるような、異世界とか過去とかに跳んじゃうってやつ。」

「あたしもそう思う!ていうか、絶対そうだよ!!そうじゃなきゃ、みんな怪我一つない理由がわかんないもん。崖から落ちたのは確実なんだし。」

コータの意見にすぐさまミーコが同意する。俺も、普通なら「どこか頭でもぶつけておかしくなったのか?」と言いたいところだが、実際に自分もあの光に吸い込まれ、現代日本とは思えない場所に知らぬ間に移動した。コータの考えを否定はできない。
サーヤも同じ考えなのか黙って頷き、3人そろってこちらを見てくるので、俺も一つ頷いて考えを述べる。

「俺もまだ信じられないが、転移したって考えは妥当だと思う。それに、この場所にある植物の様子からいって、俺の知る限り現代の日本ではありえない。更に言えば、確たる自信はないが、外国や過去のものでもないと思う。つまり、少なくともここは地球ではないんだろう。」
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