行方不明の幼馴染みが異世界で勇者になってたらしい

肉球パンチ

文字の大きさ
36 / 44
第1章

第35話 感覚

しおりを挟む
あまりの疲労に、朝起きられるのか心配だったが、6時の鐘の音とともにスッキリと目が覚めた。まぁ、昨夜は9時の鐘を聞く前に寝てしまったので、9時間以上も寝ていたのだ。目が覚めるのも当然か…。

時刻を知らせる教会の鐘は、朝6時から夜9時まで3時間毎に鳴らされる。夜間はさすがに鳴らさないらしい。3時間毎だけじゃ少し不便というか、ついつい懐中時計で時間を確認してしまうが、だいぶ朝型の生活には馴染んだな。つい10日くらい前には朝6時頃に寝ることだってあったのに…。

それから裏の井戸で顔を洗って皆と合流し、いつも通り朝食をいただきに食堂へ行く。朝はお客もかなり少ないので、他の客から離れた席に座って食べながら、昨夜できなかった相談をした。

まず、それぞれステータスを申告していく。すると、皆それぞれレベル1~2アップしており、具体的にはコータがレベル12、ミーコがレベル11、俺とサーヤがレベル10になっていた。まだまだしばらくかかると思っていたが、早々にとりあえずの目標であった「全員がレベル10以上」は達成できてしまったようだ。

訓練場での特訓の数日と昨日の成果を比べれば、やはり実戦での経験値の高さがわかる。それに、アヤメさんも言っていたように、「経験値とは別に得られる経験」がやはり大きい。モンスターと相対した時の心構えだとか、連係のポイントとか、モンスターの動き、自分達の力など、数え上げたらキリがない。それに、戦闘中以外でも注意すべき点や食用になる草や実、解体の仕方など本当に勉強になった。

「とりあえず最低ラインの目標レベルはクリアしたが、これからどうする?」

3人に問いかけたが、サーヤとコータは口を開かず、気遣わしげな表情でミーコの様子を窺う。春樹の捜索が目的なわけだから、ミーコの気持ちをなるべく優先したいという考えだろうか。視線を集めているミーコは、俯いて唇を引き結び、手に持ったキーホルダーを真剣な目で見つめている。
皮製でイニシャルが入ったそのキーホルダーは、去年のクリスマスに春樹がミーコに贈ったもので、色違いの同じものを、春樹も鍵に付けていたはずだ。外出時はいつも、財布や鍵はポケットに入れていたはずなので、今も同じキーホルダーを持っている可能性は高い。アリアに来てから、ミーコは時々こうしてキーホルダーをじっと見つめている時があるのだ。

しばしの沈黙の後、ミーコは何かを決意したように話し出した。

「モンスターもいるし、魔族の話聞いちゃったから、1日でも早くハル兄を見つけたい!    けど……うん、まだ安心して旅はできない、かな。もう少し力付けなきゃダメだと思う」

「……そうっすね!    自分ももう少しレベル上げてからがいいと思うっす。先輩ならきっと大丈夫っすよ、ね?」

「私も、捜すのは早い方がいいとは思いますけど、もう少しケインさんに色々教えてもらいたいですね。力もそうだけど、もっとアリアのことを知っておいた方がいいと思いますし」

きっぱり言い切ったミーコに続いて、コータもサーヤも真剣な面持ちで答える。昨日の魔国の噂を今まで特に話題には出さなかったが、皆それぞれに気にしていたんだろう。しかし、それでも皆今はまだ実力を付ける時だと判断しているようだ。昨日の戦闘で、ある程度の自信はついたものの、同時にまだまだ安心は出来ない事もよく分かったからな。

「そうだな。ちゃんと力や知識を身に付けておいた方が、効率良く捜せるかもしれないしな。
よし! じゃあ引き続きケインさんに実戦訓練をお願いするか」

「「はい!」」「うっす!」

皆食事も終わっていたので、返事を聞いてすぐさま立ち上がろうとすると、サーヤがおずおずと声をかけてくる。

「あ、あの、ケインさんのところへ行く前に、アヤメさんに用事があるんですが…、いいですか?」

「アヤメさんに? そりゃいいけど、どうかしたのか?」

アヤメさんへの用件を先に済ますのは別に全然構わないんだが……、何かサーヤは言いにくそうにしているな。

「えーと、あの、私、魔力の流れを感じられるようになったんです。それで、適性を調べたくて…」

ああ、なるほど。できない仲間だった俺に言いにくかったのか。サーヤはMPも多いし、後衛なんだから魔法が使えるのはいいことじゃないか。多少悔しくはあるが、別に嫌な気分になったりはしないさ。

「そうか。何の適性があるのか楽しみだな。早く行こう」

「はいっ!」

その後、朝食の片付けが終わって手が空いたアヤメさんをつかまえて、サーヤの適性を調べた。魔道具の炎は白。回復が主体の光魔法の適性だった。これは正直ありがたい。
白い炎は、本当に白かった。と言ったら変かもしれないが、俺の予想ではもっと透明っぽいぼんやりした感じなのかと思っていたのだ。しかし、実際に見た白い炎は煙とか雲をロウソクの炎の形に切り取ったかのように、白くユラユラと揺れていた。そんな不思議な光景に、俺だけでなく皆も興味津々でしばらく炎を見つめていた。

ーーーーーーーーーー

その後、昨日持ち込んだ肉の代金をアヤメさんから受け取り、その中から改めて5泊分の宿代と昨日のサンドイッチ代を支払った。今日を含めてあと4日はみっちり実戦訓練を重ね、同時に当面の旅費を稼ぎ、最後の1日で旅の準備を整える予定だ。

本当は、期限を切るよりもレベルいくつ以上などの具体的な目標を決めた方がいいとは思う。しかし、昨日、国境付近で魔族やモンスターが暴れているとのうわさを聞いてしまったことで、程度の差はあれど、やはり皆春樹を心配する気持ちは強くなっているようだ。ミーコに関しては、「今すぐ捜しに行きたい」と言わないのが意外なくらい迷っていたしな。

そういう状況なので、レベルばかりに気を取られて訓練するのはよろしくない。すでに最低限のレベルには達しているわけだし。それならば、むしろ期限を決めて、それまでに旅ができる力(戦闘に関することだけでなく、知識や心構えも含めて)を身に付ける、という目標の方が遥かに有意義だということで期限を決めた。

今日はケインさんから昨日の素材の買い取り代金を受け取るため、ケインさんの家に朝9時頃行く予定だ。改めてあと4日の実戦訓練をお願いしてから、できればケインさんと相談しながら装備の購入をしたいと考えている。引き受けてくれるといいんだが……。

前にドラムさんの店で扱っている武器について聞いてみたが、中古の武器などは3千リアくらいからあるらしい。昨日のかせぎだけで全員分の武器防具をそろえられるとは思わないが、それでもだいぶマシにはなるだろう。

ケインさんの家に向かう道すがら、気になっていたことをサーヤに質問してみた。

「魔力の流れを感じられるようになったのは昨日なんだろう? 何かキッカケとかあったのか?」

「キッカケというか、昨日寝る前にベッドに横になった時、日課になってる練習を一応したんです。もう眠くて半分ウトウトしてたんですけど、何度かやってたら急にフッと体が軽くなったような感じがしたんです」

「ウトウトしながら……?」

「はい。最初は気のせいかなと思ったんですけど、何度か続けてやってみたらできるようになりました」

「なるほど。そういえば、俺は考え過ぎなんだろうってケインさんが言ってたな…。あー、クソッ! 昨夜ゆうべは睡魔に負けてやらなかったけど、やればよかったな…。それで、魔力の流れってどんな感じなんだ?」

「えーと、タピオカですかね?」

「……たぴおか?」

「はい。なんか丸いゼリーみたいなのがずーっと繋がって、ストローを通っていくような感じですね」

「……コータが言ってたのとは随分違うな」

「コータさんはなんて言ってたんですか?」

「血管みたいな管の中を、ミミズがドリルみたいに回転しながら進んでく感じだってさ」

「それは…ちょっと嫌ですね。タピオカでよかった」

……それにしても違い過ぎじゃないか?
この際もう、ミーコにも聞いてみるか。

「ミーコ! ミーコは身体の中の魔力の流れって、どんな風に感じるんだ?」

俺たちの少し前を、コータと並んで歩いているミーコに尋ねる。

「ん~? 魔力の流れ? そーだなー、あ、あれ! 名前なんだっけ? 白くてドロ~っとネバ~っとしてて、鼻水みたいななんとかイモってやつ! あれが流れてく感じ?」

「とろろか?「そう、それ!」……って、食べ物を鼻水みたいとか言うなよ。っつーか、だったらもう最初から鼻水でいいだろ。」

「えー、鼻水にだってイロイロあるでしょー!? ドロドロのとかー、水みたいなのとかー、ネバーっとしてんのとか……」

「女子高生がそんな鼻水について語るなよ」

「ユウ兄が話ふったんじゃん! だいたい女子高生ったって、アリアじゃ「みんな感じ方はけっこうバラバラなんですね」」

ミーコがまだ何か言っているが、サーヤはぶった切って気にせず普通に話しかけてくるので、俺もこっちに乗ることにする。

「だな。感じ方の差なのか適性の差なのか……」

「あまり気にしない方がいいかもしれないですね。私も身体に意識を向けてただけで、特に何も考えずにやってたら、何となくできた感じですし」

「何も考えずに、か。なるほど。ん~、まぁそれも含めて、とりあえず試すだけ試してみるさ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...