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しおりを挟むそんなこんなで正式に婚約者になろうとも、もともといっしょに住んでいた僕らの生活は特に変わりなく過ぎていた。
相変わらず僕は朝起きては真面目に学園に通い、睡眠魔術の使い手との死闘を繰り広げたり、生徒会の仕事をがんばったりと我ながらえらい。
義兄さま…………じゃなかった、ギルは父さまのお仕事を手伝ったりバリバリと精力的に動いているみたいだ。
よくわからないけど「最後の最後で足を掬われたら堪らないからね。地盤はキッチリ固めないと」ってイイ笑顔で笑ってた。
基本的にはあまり変わらないけど、それでも変わったことがいくつかある。
ひとつが呼び名だ。
「婚約者なんだからちゃんと名前で呼んで?」
そうギルからおねだりされたのだが、基本的に義兄さまって呼ぶことが多かったから気を抜くとついまだその呼び名が口をでちゃうんだ。
それからやたらとスキンシップが増えた気がする。
前からスキンシップ多め(僕に対してだけ)なギルだったけど、婚約を発表してからは人前だろうと知ったことかとばかりに僕に触れてくる。
たぶん相手によってはわざと見せつけてる気がする。
別にいやじゃないんだけど、いまはともかく夏になったらちょっと暑そうだなってこっそり心配してたりする僕だ。
離れて、とか言ったらしょんぼりされてしまうんだろうか……。むぅ。
「セレナード?どうかした?」
「ううん。なんでもない」
ギルのお膝のうえで夏に対する対策を考えていたら声をかけられ、ふるふると首を横に振った。
僕は気づかいができるんだ。
「そうかい?」
不思議そうに首を傾げつつ、ペンを動かす手を止めたギルがチュッとつむじにキスしてくる。
僕を見つめる瞳は今日もハチミツみたいにとろとろだ。
だけどそのとろとろに甘い瞳の奥に最近はもっと甘ったるくてむせかえりそうな熱を感じる。
これはあれだろうか、前にギルが言ってた “どろどろ” で “重い” てやつだろうか。うん、たぶんそうだ。
ぎゅっと僕を抱きしめたギルの唇がむき出しの首筋を這った。
お洋服の首元を長い指がくいっと下ろし、そこにもギルの唇が落ちる。
チュッという音と、柔く吸い上げられる感覚。
僕からは見えない位置だけど、きっと鮮やかな赤い花が咲いていることだろう。
ギリギリお洋服で見えない位置に咲かされる花の名前はキスマークというらしい。
お風呂のときに鏡を見てはじめて発見したときはてっきり虫さされだと思った。
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