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しおりを挟む空は暗さを増し、ガタガタと揺れる窓ガラスが不安を募らせる。
ゼリファンたちが屋敷を出てから二時間弱。
雨と風はますます強さを増していた。
誰も彼もが自然に言葉少なになり、視線が不安そうに外へと走る。
「皆さま大丈夫でしょうか?」
「ゼリファンも一緒ですから問題はないでしょう」
窓を眺めながらポツリと零されたリーゼロッテ様の問いにすぐさまリードさんが笑顔で答えた。安心させるような柔らかな笑顔のリードさんの言葉にマルクさんも「心配ありません」と力強く頷く。
近衛騎士のマルクさんとリードさんはゲームキャラでもなく、顔を会わすのも初めてだ。
マルクさんは硬派な感じの男前、リードさんは優し気な風貌で、王族らを警護する近衛だけあって丁寧かつ貴族感が強い。
同じ戦闘職でもクラウ・ソラスとはまた違った雰囲気だ。
ゼリファンたちが出て行ってから何となく気になって閉めそびれている扉からふとシエルの姿が見えた。
年若い専属メイドにくっつきこちらを窺う姿に「失礼」と王子らに断りを告げ側へと向かう。
困ったように頭を下げるメイドときゅっと手を握ってくるシエル。
雨風も強くなってきたし、ときおりゴロゴロという音も鳴りだしていた。
きっと怖くなったんだろう、と突然の来客にほったらかし気味だったシエルの髪をそっと撫でる。
おろおろするメイドに「ここはいいよ」と告げシエルを連れて部屋へと戻る。
幼いシエルが不敬をするのも心配だが、放っておくわけにもいかない。
事情はカイルが事前に説明してくれてるし、彼らなら大丈夫だろうと一緒にいる許可をとった。
「その子がラファエルの親戚の……」
「シエルです。シエル、ご挨拶は?」
「シ、シエルです……。よろしくお願いします」
幾分小さな声ながらもちゃんと挨拶できたシエルの髪をよくできましたの意味を込めて撫で、ソファへと座らせた。
王子らの自己紹介も終わったあとでシエルも何か飲むかなと立ち上がれば、一緒に立ち上がろうとするシエルを制する。
「カップとポットを取ってくるだけだ。座ってていいよ」
ほんの数十秒のことなのに隣に戻るまで視線がずっとついてくる。
突然の客人には使用人たちだけでなく、幼いシエルにまで負担をかけてしまっているようだ。ただでさえシエルは人見知りだしな。
申し訳ない気分でお皿に菓子を取り分けてやれば途端にその顔が綻んだ。
「あまりラファエルとは似ていないんですね」
直球なレイヴァンの言葉に思わず苦笑いが浮かぶ。
シエルは絶世の美少年だし、性格も確かに似てないからな。
暗闇にカッと光の筋が走った。
数秒の後にドドドォオン!!と轟音が鳴り響く。
「きゃ!」
「わぁ!!」
肩を竦ませ声を上げるリーゼロッテ様とシエル。
兄さんと同じで雷が大の苦手なシエルはもはや半泣きだ。
うぅぅ、とくぐもった声を上げるシエルの頭をそっと引き寄せた。
胸に抱き込むようにそっとポンポンと頭を叩く。
「大丈夫。ここには落ちないよ。光ってから音が聞こえるまで数秒あっただろう?あれは遠くに落ちた証拠だ」
「そうなの?」
「うん。だから怖くない」
ぎゅうとしがみ付いてくるシエルを宥めながら、リーゼロッテ様は大丈夫だろうかと視線を向ければ、彼女の左側のソファに腰かけるレイヴァンの表情も強張っていた。
レイヴァンも雷が苦手なんだろうか?
ちょっと意外に思って声を掛けようとしたところで更なる雷鳴が響き渡った。
夕食の時刻になってもゼリファンたちは戻っては来ないまま、重苦しい雰囲気で夕食を終えた。
シエルが寝入ってしまった頃にようやく響いたドアノッカーの音。慌てて出迎えた玄関にはずぶ濡れの三人の姿があった。
その表情はどこか暗く、アレンに至っては俯いて表情も見えないままカイルに支えらていて、思わず怪我の心配をしたが三人とも怪我はないようだ。
タオルを渡すときに触れたゼリファンの手は、血が通っていないかのように冷たくて。
その冷たさが頭からずっと離れなかった。
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