【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!

黒木  鳴

文字の大きさ
115 / 164

115

しおりを挟む


「おまえ、一体……?」

「ああ、手を出すつもりはないから安心して?昨日もそう言っただろう?」

「……っ!?」

息を飲む音。

そう、コイツも昨日の放課後の話を知っている。

盗賊団なんてしているわりに他のメンバーは常識人も多いし、アダムが俺への嫌がらせを気にしていることは知っていた。
きっと小言を言ってもくれてたんじゃないかと思う。素直に聞くフィガロじゃないだろうが……。

そこへレイヴァンの件だ。
天下の侯爵家に喧嘩を売るなど後ろ暗いところのある身としては堪ったもんじゃないだろう。

実は昨日の昼休み、アダムもあの人だかりに居たんだよね。

シュヴァルツとしてはフィガロがこれ以上暴走しないように気を張っていたはずだ。
だから呼び出しの場に来るんじゃないかなーとは思っていた。

それであの探索魔法だ。

出入り厳禁の筈の閉ざされた屋上に気配を察知。
仮にも名だたる盗賊団だ、ちゃちな鍵なんてちょちょいのチョイだろう。

なので一連の経緯と昨日の話はアダムも扉の向こうの屋上で聞いていたはず。

軽く握った拳を後ろに反らす。
去り際に屋上の扉をトンッ!と叩いた動作をすれば意味はしっかりと伝わったようだ。

つぅとアダムの頬と首筋を汗が伝う。

フィガロにも気づかれていなかった自分の存在を気取られていたことは相当に衝撃だったらしい。
それに昨日、フィガロが時間前に周囲に居たことにも気づいてたしな俺。

まぁ、探索魔法の賜物たまものなんですけど。

卑怯なカマかけ第二段、大成功です。
効果は予想以上だ。

「そう警戒しなくても本当だって」

友好的な微笑みを保ったまま、少しだけ声を落としてそう告げる。
アダムが机の中身をぶちまけたからちょっと周囲の注目を浴びちゃってるし、念のため。

教科書を手に突っ立ったままのアダムに手で椅子を勧めれば、級友たちの視線を感じたのかアダムも友人との他愛無い話をしてるフリを装ってくれる。
頬杖で隠した口元引き攣ってるけど。

「その気があるなら嫌がらせが始まった時点で反撃しているし、そもそもフィガロを助けたりしない」

「助けた?」

「ま、頼まれたわけでもないし、余計なお世話だったかもだけど。街で偶然会ったんだよ」

ポケットからモノをる動作をして見せれば、前髪の隙間から僅かに覗く眉がしかめられた。

「アイツに手をだされたのか?」

「いいや?標的はクラウ・ソラスのメンバー。しかもむちゃくちゃ鋭い、手を出したらヤバそうな相手」

顔を寄せてこそっと告げれば、息を飲んだアダムは頭を抱えた。

うむ、気苦労多くて大変だな。

思わず肩をポンッってしてやりたくなったが、いま彼に追い打ちをかけてるのは俺ってことには目を瞑ろう。

「ちょうど顔見知りでもあったし、面倒ごとになりそうだったから手を出す前にフィガロに声掛けて止めたんだ。その時に手を出す相手ぐらい選べって、忠告もしたんだけど……まっさかレイヴァンまで巻き込もうとするとは思わなかったよ」

「…………悪い」

「ん、君を責めても仕方ないのはわかってるんだけどね。こっちも報復なんてしたくはないし、本人だけじゃ不安だから保護者さんにも話を通しておこうかなって」

よろしくね?と笑って一番上に積んだ数Ⅱの教科書を手に取る。

「……エバンスおまえ、何者なんだよ?」

「何者もなにもただのしがない伯爵家の次男坊だけど?」

「君らと違ってね」と唇の動きだけで呟いて、指を一本唇の前に立ててニッと笑う。
何故だか空気がざわつく雰囲気がした。

小首を傾げつつ、手にした数Ⅱをひらりと掲げる。

「これ、ありがとう。5限のあとで返しにくるよ」

4限が終わってからでもいいけど、それだと昼休み食堂に行くのを待たせることになるからな。アダムのクラスは2限で数Ⅱ終わってるし。

礼を告げて自分のクラスへと戻った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

【8話完結】魔王討伐より、不機嫌なキミを宥める方が難易度「SSS」なんだが。

キノア9g
BL
世界を救った英雄の帰還先は、不機嫌な伴侶の待つ「絶対零度」の我が家でした。 あらすじ 「……帰りたい。今すぐ、愛する彼のもとへ!」 魔王軍の幹部を討伐し、王都の凱旋パレードで主役を務める聖騎士カイル。 民衆が英雄に熱狂する中、当の本人は生きた心地がしていなかった。 なぜなら、遠征の延長を愛する伴侶・エルヴィンに「事後報告」で済ませてしまったから……。 意を決して帰宅したカイルを迎えたのは、神々しいほどに美しいエルヴィンの、氷のように冷たい微笑。 機嫌を取ろうと必死に奔走するカイルだったが、良かれと思った行動はすべて裏目に出てしまい、家庭内での評価は下がる一方。 「人類最強の男に、家の中まで支配させてあげるもんですか」 毒舌、几帳面、そして誰よりも不器用な愛情。 最強の聖騎士といえど、愛する人の心の機微という名の迷宮には、聖剣一本では太刀打ちできない。 これは、魔王討伐より遥かに困難な「伴侶の機嫌取り」という最高難易度クエストに挑む、一途な騎士の愛と受難の記録。 全8話。

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです

一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお) 同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。 時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。 僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。 本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。 だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。 なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。 「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」 ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。 僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。 その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。 悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。 え?葛城くんが目の前に!? どうしよう、人生最大のピンチだ!! ✤✤ 「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。 全年齢向けの作品となっています。 一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。 ✤✤

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

処理中です...