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19/1/4

 最近、動悸と眩暈がやたらと多い。こうして母さんの病室でメモ帳にこの文を書き殴っている今もそうだ。手を握りながら片手で書き殴ると言うのも、少し不躾な話ではあるが。
 何かの予兆か、あるいは単純に体調が悪いだけなのか。
 精神と肉体は我々が思っている以上に強い繋がりを持っている。片方がやられるともう片方もやられる。
 しかし、この体調不良が肉体の訴える不調なのか、精神から来ているものなのかは、案外当人だけでは判断しきれない。生物の体は難しい、と心の底から思う。
 今ここで書いているのには当然、理由がある。
 今しか書けないからだ。そして今しか書けないものがあるからだ。
 いつも流れを書いているノートを今は持ち合わせていない。だからこそ書けるものがあると思う。涙を流しながらでも書けるものがあると思う。
 僕は対人恐怖症を患っている。元々きらいはあったが、昨年の9月にそれは決定的なものとなった。
 しかし、精神的に酷い状態になると、一周まわって他人からの意識を自身の中で完全にシャットアウト出来ることに気が付いた。
 シャットアウトしてしまえば人目を気にせずに外に出られる。だから今は外に出られている。当然、そのツケは今の状況が落ち着いたら、もしくは家に着いたら間違いなく回って来るだろう。今までずっとそうだったからだ。動悸や眩暈もその一種なのかもしれない。





19/1/31

 そんな文章を書いていたあの時から、既に27日も経ってしまっていた。書ききることも、掻き切ることも出来ずに。
 翌日を境に、僕はより閉鎖的になり、同時に何もかもを隠蔽するようになった。外に出るのは犬の散歩と病院と、どうしても必要な買い出しだけになった。それ以外、必要無くなってしまったのだ。

 僕は、灯火に細い香を近付けて焔のお零れを頂くと、小さな灰の丘に添えた。
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