聖なるじゃがいもと聖女のなり損ない~中年教師、芋と塩と砂糖で魔王(と相棒)の胃袋を掴む~

うはっきゅう

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第6話:真の敵(アホ)と、聖なるじゃがいもの真実

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「うめええええ!」
「こっちの『塩味』も最高だ!」
「『砂糖味』のおかわりを!」

魔王城の大食堂は、今や、俺が経営(?)する『レストラン・サトウ』と化していた。
痩せこけていた魔物たちが、俺の作る『ポテサラ(塩)』と『スイートポテト(砂糖)』を夢中で頬張り、みるみる元気を取り戻していく。

「先生! 厨房! 芋が足りませんわ!」
ウェイトレス姿(魔王のお古のドレス)のソアラが、慌てて走ってくる。
「おう! 今ふかしてる!」
俺は厨房で、汗だくになって芋を潰していた。

「佐藤(芋神)よ! こっちのテーブルが空だぞ!」
四天王のアグニが、なぜかエプロンをつけて、ホールの手伝いをしている。
「わらわも手伝うのじゃ!」
魔王ルルも、コック帽をかぶって、必死に芋を潰している。(なお、半分くらいつまみ食いしてる)

(……なんだこれ)
平和だ。
めちゃくちゃ平和だ。
魔王軍、ただの『メシが食えなくてグレてた集団』だった。

「先生! わたくし、今、とっても幸せですわ!」
ソアラが、満面の笑みで、魔物たちに芋を配っている。
もう、彼女の魔力が暴走する気配は、どこにもなかった。
『聖女のなり損ない』? 冗談じゃねえ。こいつは、この食堂の『看板娘』だ。

(……これで、いいよな)
魔王は戦意喪失。魔物たちも満腹。
聖都に帰るのはごめんだが、ここで『食堂のおやじ』として生きていくのも、悪くない。
俺の異世界教師生活、第二の職場は魔王城でした、と。

そんな、平和(カロリー過多)な空気が流れていた、その時だった。

ドゴオオオオオオン!!!

魔王城が、激しく揺れた。
食堂の天井が、轟音と共に崩れ落ちる!

「きゃあああ!」
「な、何事だ!?」

崩れた天井の穴から、強い光と共に、一人の人物がゆっくりと降りてきた。
金ピカの法衣。枯れ木のような痩せた身体。
聖都の『教皇』だ。

「……見つけましたよ、ソアラ様。佐藤健太郎」
その目は、聖都で見た時とは違い、冷たく、人間離れした光を宿していた。

「教皇!? なんでここに!?」
「あなたたちを『追放』した時から、監視(マーカー)はつけてありましたので」

教皇は、芋まみれの食堂を見渡し、ふう、とため息をついた。
「……これは、これは。なんというザマでしょう。魔王と、聖女と、勇者(仮)が、芋を囲んで団欒とは。計画(プラン)が台無しです」

「計画?」

「ええ」
教皇は、ニヤリ、と歪んだ笑みを浮かべた。
「この世界は、人間と魔族の『闘争エネルギー』によって維持されているのです。光と闇が争い、その摩擦で世界は回る。……しかし、この代の魔王(ルル)は、あまりに非力で、闘争が生まれなかった」

「……何が言いたい」

「世界が、停滞し、死にかけていたのですよ。だから、我々は『起爆剤』を投入した」
教皇が、ソアラを指差す。

「それが、ソアラ様。あなたの『暴走する魔力』です」
「わたくしが……起爆剤……?」
「そうです。あなたの魔力を、魔王城で『自爆』させ、魔王軍を無理やり刺激し、大戦争を再開させる。佐藤健太郎、あなたの役目は、その『爆弾(ソアラ)』を、ここまで『運搬』することだったのですよ」

「なっ……!?」

俺は、あのチャラいアホ女神の言葉を思い出した。
『サトウさん、教師だったでしょ? 面倒見、いいっしょ?』
『まー、ちょっと『ワケあり』だけど、なんとかできるっしょ!』

「あの女神(アホ)……! 全部グルか!」
「左様。彼女は私の『部下』です。あなたに渡した『芋』『塩』『砂糖』は、ソアラ様を制御し、魔王城まで運ぶための、最低限の『燃料(アメとムチ)』にすぎません」

ソアラが、ガタガタと震え始めた。
「わたくしは……また……利用された、だけ……」

「さあ、ソアラ様。役目を果たしなさい」
教皇が、両手を広げる。
「その魔力を解放し、魔王城ごと、自爆なさい!」

「いやああああああ!」
ソアラが、耳を塞いで叫んだ!
ストレス! 絶望! 自己嫌悪!
再び、彼女の魔力が、黄金色の嵐となって吹き荒れ始めた!

「まずい! ソアラが!」
「よせ、ソアラ! 落ち着くのじゃ!」
魔王ルルが叫ぶ!

「無駄です」
教皇が冷たく言い放つ。
「彼女のトラウマは、我々が仕込んだもの。砂糖ごときで抑えられるレベルは、とっくに超えています!」

「ぐあああああ……!」
暴走する魔力(嵐)に、魔物たちが吹き飛ばされる!

「ふざけるなあああああ!!」
俺は、厨房に残っていた、最後の『麻袋(芋入り)』を掴み、ソアラに向かって突進した!

「先生!?」
「目を覚ませ! ソアラ!」

俺は、暴風の中心で、ソアラの頭を(芋袋で)思いっきり、ひっぱたいた!

ゴスッ!(鈍い音)

「痛っっっっっ!?」

ソアラの絶叫。
そして、ピタリ、と魔力嵐が止まった。

「……え?」
ソアラが、涙目で、たんこぶを押さえている。

「な、何なさるんですの! 先生!」
「この馬鹿弟子が! 周りを見ろ!」

俺は、ソアラの肩を掴み、厨房の方に向けた。
そこには、暴風に吹き飛ばされそうになりながらも、必死に『スイートポテト(ルルの食べかけ)』の皿を守っている、魔王ルルの姿があった。

「あ……ルルちゃん……」
「ソアラ……わらわの、ポテトが……」

「……ソアラ」
俺は、ソアラの目を、真っ直ぐ見た。
「お前はもう『なり損ない』でも『爆弾』でもねえ。ここの『看板娘』だ。そうだろ?」

「……!」

「利用された? 上等じゃねえか。だったら、利用し返してやれ。お前の『力』は、破壊のためじゃねえ。……もっと、別のことに使うためにあるんだろ?」

「……別の、こと……」
ソアラは、厨房で、目を輝かせて芋を頬張る魔物たちを見た。
そして、強く、頷いた。

「……はい、先生!」

教皇が、忌々しそうに舌打ちする。
「……くだらん。茶番は終わりです。ソアラ様がやらぬなら、私がやるまで」

教皇の体が、禍々しい紫色のオーラに包まれる!
「神の計画に逆らう愚か者どもよ。この世界と共に、消え去るがよい!」
その魔力は、ソアラの暴走すら、遥かに凌駕していた!

「くっ……! こいつ、強すぎる!」
アグニが剣を構えるが、動けない!

「ソアラ! ルル!」
俺は、最後の麻袋から、残った『芋』『塩』『砂糖』を、全てぶちまけた!

「先生!?」
「やるぞ! 俺たちの、最強のメニューを!」
俺はニヤリと笑った。

「世界が必要としてんのは『闘争エネルギー』なんかじゃねえ!」
「必要なのは……『幸福エネルギー(カロリー)』だ!」
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