【ゴミ拾い】と呼ばれ勇者パーティーを追放された俺…だがこのスキル、実はSSSランクの【万物拾得】だったらしい。

うはっきゅう

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第二章・王都清掃 編

第12話:勇者の威厳(メッキ)が剥がれる時

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 王都アルカディア。
 巨大な城壁に囲まれた、この国の中枢。
 中央には白亜の王城がそびえ立ち、その周りを貴族街、商業区、居住区が取り囲む、人口100万人を誇る大都市だ。

 その正門前は、長蛇の列でごった返していた。

「止まれ! 身分証の提示を!」
「荷台の中身を改める! 教会の許可証は持っているか!」

 検問が、異常なほど厳しい。
 特に「亜人」や「身なりの悪い者」に対する当たりがきついようだ。

「……こりゃあ、入るだけで日が暮れちまいそうだな」
 馬車の御者台で、リカルドが気だるげに欠伸をする。
 だが、その目は鋭く衛兵たちの動きを観察していた。
「教会の騎士が混じってる。……俺みたいな『呪い持ち』や、フェンちゃんみたいな亜人は、難癖つけられて別室行きかもな」

「心配無用だ」
 俺はニヤリと笑い、馬車を降りた。

「エディさん? どうするんですか?」
 セシリアが不安そうに窓から顔を出す。

「ちょっと『掃除』してくる。……見ててみな」

 俺は、列を無視して堂々と検問の最前列へと歩いていった。

「おい貴様! 列に並べ! 貴様のような……」
 教会騎士の一人が、俺の胸ぐらを掴もうと手を伸ばす。

 その瞬間。
 俺は、新しく解放された力を発動させた。

『対象:検問所の衛兵たち』
『拾得対象:【警戒心ビジランス】、【敵意ホスティリティ】』
『実行:概念拾得コンセプト・ルート

 シュンッ……。

 俺の手の中に、黒い靄のようなものが集まり、そして霧散した。
 それは、彼らが俺たちに向けていた「疑念」や「差別意識」そのもの。

「……あ、あれ?」
 騎士の手が、空中で止まった。
 怒りに歪んでいた顔が、急に憑き物が落ちたようにポカンとなる。

「ご苦労様です。Aランク冒険者パーティー『銀の翼』です。通っても?」
 俺がギルドカード(Aランクの金色)を見せると、騎士はまるで親しい友人に会ったかのような笑顔になった。

「お、おお! これはこれは! どうぞお通りください! 荷物検査? いえいえ、英雄殿を疑うなんてとんでもない!」

「「「えええええええ!?」」」

 並んでいた商人たちが目を剥く中、俺たちはフリーパスで王都の門をくぐり抜けた。

 馬車の中で、リカルドが腹を抱えて笑っている。
 「傑作だぜ! あの堅物騎士が、尻尾振って見送ってやがる! 大将、何やったんだ?」
 「あいつらの『警戒心』を拾って捨てただけだ。……ま、ゴミ拾いの応用だよ」

 これが『概念拾得コンセプト・ルート』。
 物理的なモノだけでなく、感情や場の空気すらも支配する、真のチート能力だ。



◇ ◇ ◇



 王都のメインストリートは、活気に満ちていた。
 だが、その賑わいには、どこか「作られた」ような違和感があった。

 パパパパパァーン!

 突然、ファンファーレが鳴り響く。
 人々が慌てて道の端に寄り、平伏する。

「勇者様のお通りだー!」
「光の剣、レオン様に道を開けろー!」

 道の向こうからやってきたのは、金銀財宝で飾り立てられた豪華絢爛なパレードだった。
 白馬に跨り、煌びやかな鎧を着て、気取った笑顔で手を振る金髪の男。
 勇者レオンだ。
 後ろには、不機嫌そうな魔術師リリアと、疲れ切った顔の戦士ガイルもいる。

「キャー! レオン様ー!」
「こっち向いてー!」

 黄色い声援が飛ぶ。
 だが、俺には分かった。
 最前列で叫んでいるのは、教会に雇われたサクラだ。
 一般市民たちの目は冷めており、中には「またかよ……」「税金の無駄遣いが」と陰口を叩く者もいる。

「……相変わらず、中身のない男ですね」
 セシリアが、冷ややかな声で呟く。
 かつては憧れ、慕っていた相手。だが今の彼女の目には、ただの「憐れなピエロ」にしか映っていないようだ。

 その時。
 パレードが進み、俺たちの目の前を通り過ぎようとした瞬間。

「……ん?」
 レオンが、俺たちに気づいた。
 いや、正確には、群衆の中で一際目立つ美女二人――フェンとセシリアに目が止まり、その横にいる俺を見て、顔を引きつらせたのだ。

「と、止まれェッ!!」

 レオンが叫び、パレードが急停止する。
 彼は馬の上から、信じられないものを見るような目で俺を指差した。

「エ……エディ!? な、なぜ貴様ごとき『ゴミ』が王都にいる!?」

 その大声に、周囲の視線が一斉に俺たちに集まる。

「よぉ、久しぶりだなレオン。元気そうで何よりだ」
 俺は軽く手を挙げた。
「Aランクになったからな。魔王討伐の挨拶に来てやったんだよ」

「Aランク……だと……!?」
 レオンが絶句する。
 そしてすぐに、顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。

「ふざけるな! 貴様のようなFランクの落ちこぼれが! 詐欺だ! ギルドを騙して潜り込んだに違いない! 衛兵! こいつらを捕らえろ!」

 喚き散らす勇者。
 その醜態に、周囲の空気が凍りつく。
 だが、レオンは気づかない。自分のプライドを守ることに必死で、周りが見えていないのだ。

「……見苦しいですね」
 フェンが嫌悪感を隠そうともせず言い放つ。
「エディさんは実力で上がってきました。貴方達とは違うんです」

「黙れ亜人風情が! ……おいエディ! 今すぐ土下座して詫びるなら、見逃してやらんでもないぞ? さあ、俺の靴を舐めろ!」

 レオンが、馬の上から足を突き出す。
 完全に、俺を見下している態度。

 俺は、ため息をついた。
 ……せっかくの王都入りだ。穏便に済ませたかったが、向こうから売ってくるなら仕方がない。
 特大の「恥」をかかせてやる。

『対象:勇者レオン』
『拾得対象:【平衡感覚バランス】、【威厳ディグニティ】』
『実行:概念拾得コンセプト・ルート

 俺が心の中で念じた、その瞬間。

「さあ、早くなめ……うわっぷ!?」

 レオンの体が、ありえない方向に傾いた。
 まるで、世界が回転したかのように。

 ドサァッ!!

 華麗な白馬の上から、勇者様が頭から落下した。
 しかも、運の悪いことに――そこは、直前に馬が粗相をしたばかりの、「馬糞」の山の上だった。

 ベチャッ。

「ぶべラッ!?」

 情けない音と共に、勇者の顔面が茶色い物体に埋没する。

 シーン……。
 一瞬の静寂。

「……ぷっ」

 誰かが吹き出した。
 それが引き金となり、爆笑の渦が巻き起こった。

「あはははは! 見ろよ勇者様!」
「クソまみれだぞ!」
「自分で落ちたぞ、かっこ悪すぎる!」

 人々が腹を抱えて笑う。
 それは、今まで積み上げられてきた「勇者の虚像」が、音を立てて崩れ去った瞬間だった。

「な、な、な……!?」
 レオンが顔を上げる。その顔は汚物にまみれ、涙目で震えている。
 そして、何より恐ろしいのは――
 彼が纏っていたはずの、勇者特有の「オーラ」や「威圧感」が、完全に消え失せていることだ。
 今の彼は、ただの「汚れた若造」にしか見えない。
 俺が【威厳】を奪い取ったからだ。

「おいおい、大丈夫かよ勇者サマ」
 俺はしゃがみ込み、レオンを見下ろした。

「足元がお留守だぜ? ……それとも、それがお前の本当の『実力』か?」

「き、貴様ぁぁぁ……! 何をした! 何をしやがったぁぁぁ!!」

 レオンが錯乱して叫ぶが、もはや誰も彼を畏怖しない。
 リリアとガイルが慌てて助け起こすが、彼らもまた、俺と目が合うと怯えたように視線を逸らした。
 本能で理解したのだ。
 今のエディは、自分たちが知っている「ゴミ」ではない、と。

「行くぞ、みんな」
 俺は興味を失ったように立ち上がった。
「ギルド本部へ向かう。……道化の相手は疲れるからな」

 俺たちが歩き出すと、群衆がモーセの海割りのように道を開けた。
 その背中には、畏敬の眼差しが注がれている。
 一方、クソまみれの勇者は、民衆の嘲笑の中で喚き続けていた。

 これぞ、完全なる「世代交代」。
 王都の勢力図が、たった今、塗り替えられたのだ。



◇ ◇ ◇



 王都ギルド本部。
 その最上階にある執務室で、俺たちは一人の人物と対峙していた。

 身長2メートルを超える巨漢。
 白髪のオールバックに、顔を走る古傷。
 ギルド総帥(グランドマスター)、ガンドルフ。
 かつて「剣聖」と呼ばれた、生ける伝説だ。

「……なるほど。ジークから報告は受けている」
 ガンドルフの野太い声が響く。
「腐敗した教会、傀儡の王、そして堕ちた勇者……。この国は今、内側から腐り落ちようとしている」

 彼は、鋭い眼光で俺を見た。

「エディ。お前の力が必要だ。……だが、今のままでは動けん。王を操る『黒幕』を炙り出すには、決定的な証拠と、民衆を納得させる『実績』がいる」

「魔王討伐、ですか」
 俺が尋ねると、ガンドルフは首を横に振った。

「それもだが……まずは『王』だ」
 ガンドルフが地図の一点を指差す。

「来週、王城で『建国記念舞踏会』が開かれる。そこに、今の国王陛下が姿を現すはずだ。……だが、噂では、陛下はすでに『自我を失っている』らしい」

「……なるほど」
 リカルドがニヤリと笑う。
「その舞踏会に潜り込んで、陛下の『正気』を取り戻せってか? ……あるいは、操っている『糸』を切るか」

「話が早くて助かる」
 ガンドルフは、一枚の招待状を俺たちの前に置いた。

「Aランク冒険者パーティー『銀の翼』を、国賓として招待する。……派手に暴れてこい。後の責任はワシが持つ」

 俺は、その招待状を手に取り、不敵に笑った。

「了解だ、ジジイ……いや、総帥。最高のショーを見せてやるよ」

 王城への潜入。
 そして、国を操る黒幕との対決。
 俺たちの「ゴミ拾い」は、ついに国家レベルの「大掃除」へと発展しようとしていた。
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