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第二章・王都清掃 編
第14話:ゴミ(クズ)の終焉と、本物(ヒーロー)の旅立ち
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静寂。
ほんの数分前まで、華やかなワルツが流れていた王城の「王鷲の間」は、今や地獄のような惨状を呈していた。
呪詛の泥に足を取られ、動けなくなっている聖教騎士団。
リカルドの呪いに当てられ、床のあちこちで泡を吹いて倒れている貴族たち。
そして、全ての力を俺に「拾われ」、白目を剥いて気絶している元凶、ヴァレリウス大司教。
その混沌の中心で、ただ一人、玉座に座る男がゆっくりと立ち上がった。
国王、アルフォンス三世。
呪いの王冠(ゴミ)が外れた今、その虚ろだった瞳には、力強い「王」の意思が戻っていた。
「……私は」
国王が、絞り出すような声を上げた。
「私は、どれほどの時間、夢を見ていたのだ……。ヴァレリウス……あの売国奴め……!」
ギリッ、と奥歯を噛みしめる音が生々しく響く。
数年にも及ぶ「操り人形」としての記憶が、一気に蘇っているのだろう。
その怒りと屈辱は、想像を絶するものがある。
「陛下、ご無事で」
セシリアが、純白のドレスのまま、深々と頭を下げた。
「……おお、セシリアか! まこと、かたじけない……! そなたが、私を救ってくれたのだな」
「いえ、私ではございません。……この方、エディさんのお力です」
国王の鋭い視線が、俺を射抜いた。
俺は、血濡れた短剣を振り、血糊を床に落としながら、軽く会釈した。
「どうも。通りすがりの『ゴミ拾い』です。……国家転覆クラスの『粗大ゴミ』が落ちてたんで、掃除させてもらいました」
「……フッ」
国王は、張り詰めた表情をわずかに緩め、小さく笑った。
「見事な『掃除』だ。……その男、エディと言ったか。そなたたち『銀の翼』には、国を挙げて報いねばなるまい」
「その前に」
俺は、会場の隅を顎でしゃくった。
「まだ、掃除残りがいるみてえだぜ?」
全員の視線が、一点に集まる。
そこは、豪華な料理が並べられていたはずの、今はひっくり返ったテーブル。
その「下」から、金色の髪の毛が、情けなくはみ出していた。
「……おい」
国王の護衛として駆けつけた近衛騎士団の団長が、テーブルクロスを乱暴に捲り上げた。
「ひぃぃっ!?」
そこにいたのは、王都の民衆の嘲笑の的となった男。
勇者、レオン。
彼は、目を真っ赤に泣き腫らし、ガタガタと震えながら、恐怖に顔を引きつらせていた。
「ゆ、勇者レオン……殿……?」
騎士団長が、信じられないものを見る目で呟く。
「貴公は……国難を前に、テーブルの下で隠れていたのか……?」
「ち、違う! 違うんだ! 俺は、様子を窺っていただけで……! そうだ、こいつらだ!」
レオンは、引きずり出されると、狂ったように俺を指差した。
「こいつらが反逆者だ! 国王陛下に危害を加えようとしていた! 俺は陛下を守るために……!」
「「「…………」」」
白々しすぎる嘘。
その場にいた全員が、冷え切った目でレオンを見ていた。
正気に戻った国王が、魔物を見るような目で彼に尋ねた。
「……勇者レオン。私は、そなたを『魔王討伐の英雄』として、全幅の信頼を置いていたつもりだった。そなたが『聖剣』に選ばれた、唯一無二の存在だと」
「そ、そうです陛下! 俺こそが勇者! あのゴミ拾いとは違うんです!」
「では、聞くが」
国王の静かな声が、玉座の間に響き渡る。
「そなたが王都でパレードをしている間、エディたちはAランク魔獣を瞬殺し、昇格試験を突破したと聞く。なぜ、そなたはBランクダンジョンすら、まともに攻略できなくなっていたのだ?」
「そ、それは……! ポーションが足りなくて……!」
「スタンピードの際、そなたは後方で震えていたと聞く。なぜ、エディたちは民を守るため、最前線で戦っていたのだ?」
「あ、あれは……! 作戦だ! そう、作戦で!」
「そして、今。この国の頂点に巣食っていた『真の敵』ヴァレリウスを、エディたちが命を懸けて倒している間」
国王は、言葉を切った。
「そなたは、どこで何をしていた?」
「俺は……俺は…………」
レオンは、もはや何の言い訳も思い浮かばなかった。
彼の脳裏に浮かぶのは、「馬糞ダイブ」の屈辱と、テーブルの下で聞いた俺たちの戦闘音の「恐怖」だけだ。
「……もう、いい」
国王が、深くため息をついた。
「セシリア。そなたからも、何か言うことはあるか」
「はい」
セシリアが一歩前に出る。その瞳は、怒りではなく、深い憐れみをたたえてレオンを見ていた。
「陛下。私は、ヴァレリウス大司教の召喚に応じ、王都の教会へ向かいました。……ですが、それは罠でした」
「なに?」
「私は、大司教が『勇者』の名を使い、私腹を肥やし、国を乗っ取ろうとしている計画に、薄々気づき始めていたのです。……だから、ヴァレリウスは私を『聖女』から『異端者』に仕立て上げ、秘密裏に処分しようとしました。……エディさんたちに救われなければ、今頃私は、古代兵器の餌食になっていたでしょう」
国王が、苦渋に満ちた顔で目をつぶる。「……そうか。そなたも、犠牲者であったか」
「ですが」とセシリアは、今度はレオンを真っ直ぐに見据えた。
「レオン、あなたはそのヴァレリウスの甘言に乗り、彼が与える『名声』と『富』に溺れました。……そして何より、あなたたちのパーティーを陰で支え続けていたエディさんを、『ゴミ』と罵り、ダンジョンで追放した! 違いますか!?」
「ひっ……!」
レオンが、図星を突かれて息を呑む。
そうだ。あの日、聖女セシリアは教会に呼び出されて「不在」だった。
だが、レオンは、ガイルは、リリアは、その「良心」がいなくなった隙を狙うかのように、エディを切り捨てたのだ。
国王が、全てを理解した顔で、冷たく言い放った。
「……万死に値するな」
国王が、近衛騎士団長に命じた。
「そいつを捕らえろ。勇者の称号を剥奪の上、地下牢へ……」
「あ、待った」
俺は、その宣告を遮った。
「陛下。そいつの称号、わざわざ『剥奪』しなくてもいいですよ」
「……どういう意味だ?」
「だって、そいつが持ってる『勇者』って肩書きも、結局はヴァレリウスが与えた『メッキ』……つまり『ゴミ』でしょ?」
俺は、青ざめてへたり込むレオンの前に立った。
見下ろす俺の目は、ダンジョンで捨てられたあの日とは比べ物にならないほど、冷え切っていたはずだ。
「お前が持ってる『それ』、もういらないよな?」
『対象:レオン』
『拾得対象:【勇者の称号】、【聖剣の契約】、【光属性魔法LV7】』
『実行:概念拾得』
「あ…………あ…………?」
俺が右手をかざすと、レオンの体から、そして彼が腰に差していた「聖剣()」から、淡い光の粒子が抜け出し、俺の手に吸い込まれていった。
それは、彼が「勇者」であることの、最後の「証」だった。
「あ、ああ、あああぁぁぁぁぁっ!?」
レオンが、自分の体と剣を交互に見て、絶叫する。
力が、抜けていく。
自分が「特別」であるという、唯一無二のアイデンティティが、目の前の「ゴミ」に奪われていく。
「俺の……俺の力が……! 聖剣が……! やめろ、返せ! それは俺のモノだぁぁぁ!」
泣き叫び、俺に掴みかろうとするレオン。
だが、その腕は、あまりにも非力だった。
フェンが盾で軽く突き飛ばすだけで、レオンは無様に床を転がった。
「……もう、何も持ってないんだな、お前」
俺は、吸い取ったばかりの「光の力」を眺めた。
(……なるほどな。ヴァレリウスの【神聖魔法LV10】と比べると、こっちは随分と「薄っぺらい」力だ。……やっぱり、こいつも作られた英雄か)
俺は、その力を、ポイ、とゴミでも捨てるように虚空に放り投げた。
もう、俺には必要ない。
「……連れて行け」
国王が、冷たく言い放った。
騎士たちが、もはや「勇者」でも何でもなくなった、ただの金髪の青年を、両脇から引きずっていく。
「いやだ! いやだぁぁぁ! 俺は勇者だ! ゴミ拾いなんかにぃぃぃ!」
断末魔の叫びが、扉の向こうに消えていく。
……これで、本当の「終わり」だ。
俺を追放した者たちへの復讐は、今、ここに、完了した。
◇ ◇ ◇
数日後。
俺たちは、王城の玉座の間(綺麗に掃除された)に、再び呼び出されていた。
国王アルフォンス三世が、玉座から立ち上がり、俺たち四人の前で深々と頭を下げた。
「エディ殿、フェン殿、セシリア殿、リカルド殿。……この国の危機を救ってくれたこと、心より感謝申し上げる」
前代未聞の光景に、周囲の貴族たちが息を呑む。
国王は顔を上げ、宣言した。
「そなたたちには、望むだけの褒賞を与えよう。金か? 地位か? 望むなら、この国の爵位を与えてもいい」
破格の提案。
だが、俺は首を横に振った。
「あんたの国の爵位なんざ、興味ねえな。……だが、叶えてほしい『願い』が一つだけある」
「……申してみよ」
「俺たちに、『魔王討伐』の全権を委任してほしい」
国王が、目を見開いた。
「……本気か? ヴァレリウスやレオンは、『魔王討伐』を名目に権力を集めていた、ただの詐欺師だった。だが、魔王そのものは実在する。……この国が総力を挙げても、勝てるかどうか……」
「だから、俺たちが行くんだ」
俺は不敵に笑った。
「あんたたちが『総力』と呼んでるもんが、俺から見りゃ『ゴミ』の山にしか見えねえからな」
「……面白いことを言う」
国王は、隣に立つギルド総帥ガンドルフと目を合わせ、頷いた。
「よかろう。……だが、魔王城には、古代の大結界が張られている。それを解くには、大陸に散らばる『四つの神殿』を攻略し、四宝玉を集めねばならん。……それこそが、本来の『勇者』が歩むべき道だったのだ」
「神殿攻略、ね」
リカルドが、面倒くさそうに頭を掻いた。
「つまり、あれだろ? 厄介な罠と、クソみてえなボスが待ってる、古代の『ゴミ溜め』だろ?」
「その通りだ」
国王が笑う。
「最高の『ゴミ拾い』日和ではないか?」
「……ハッ。言ってくれるぜ」
俺は、仲間たちの顔を見回した。
フェンが、嬉しそうに尻尾を振っている。
「エディさんと一緒なら、地獄の果てでも!」
セシリアが、慈愛に満ちた笑みで頷く。
「それが、真に世界を救う道ならば。喜んでお供します」
リカルドが、やれやれと肩をすくめる。
「しゃーねえな。大将の『お宝(ガラクタ)集め』に付き合ってやるよ。酒代、ツケとけよ」
最高の仲間たちだ。
俺は、王都の遥か彼方、魔王城のある北の大地を見据えた。
「行くか。……世界一、派手な『大掃除』にな」
こうして。
偽りの勇者は失墜し、本物の英雄が、真の魔王討伐へと旅立った。
俺をゴミ扱いした奴らへの復讐は終わった。
だが、俺たちの伝説は、まだ始まったばかりだ。
ほんの数分前まで、華やかなワルツが流れていた王城の「王鷲の間」は、今や地獄のような惨状を呈していた。
呪詛の泥に足を取られ、動けなくなっている聖教騎士団。
リカルドの呪いに当てられ、床のあちこちで泡を吹いて倒れている貴族たち。
そして、全ての力を俺に「拾われ」、白目を剥いて気絶している元凶、ヴァレリウス大司教。
その混沌の中心で、ただ一人、玉座に座る男がゆっくりと立ち上がった。
国王、アルフォンス三世。
呪いの王冠(ゴミ)が外れた今、その虚ろだった瞳には、力強い「王」の意思が戻っていた。
「……私は」
国王が、絞り出すような声を上げた。
「私は、どれほどの時間、夢を見ていたのだ……。ヴァレリウス……あの売国奴め……!」
ギリッ、と奥歯を噛みしめる音が生々しく響く。
数年にも及ぶ「操り人形」としての記憶が、一気に蘇っているのだろう。
その怒りと屈辱は、想像を絶するものがある。
「陛下、ご無事で」
セシリアが、純白のドレスのまま、深々と頭を下げた。
「……おお、セシリアか! まこと、かたじけない……! そなたが、私を救ってくれたのだな」
「いえ、私ではございません。……この方、エディさんのお力です」
国王の鋭い視線が、俺を射抜いた。
俺は、血濡れた短剣を振り、血糊を床に落としながら、軽く会釈した。
「どうも。通りすがりの『ゴミ拾い』です。……国家転覆クラスの『粗大ゴミ』が落ちてたんで、掃除させてもらいました」
「……フッ」
国王は、張り詰めた表情をわずかに緩め、小さく笑った。
「見事な『掃除』だ。……その男、エディと言ったか。そなたたち『銀の翼』には、国を挙げて報いねばなるまい」
「その前に」
俺は、会場の隅を顎でしゃくった。
「まだ、掃除残りがいるみてえだぜ?」
全員の視線が、一点に集まる。
そこは、豪華な料理が並べられていたはずの、今はひっくり返ったテーブル。
その「下」から、金色の髪の毛が、情けなくはみ出していた。
「……おい」
国王の護衛として駆けつけた近衛騎士団の団長が、テーブルクロスを乱暴に捲り上げた。
「ひぃぃっ!?」
そこにいたのは、王都の民衆の嘲笑の的となった男。
勇者、レオン。
彼は、目を真っ赤に泣き腫らし、ガタガタと震えながら、恐怖に顔を引きつらせていた。
「ゆ、勇者レオン……殿……?」
騎士団長が、信じられないものを見る目で呟く。
「貴公は……国難を前に、テーブルの下で隠れていたのか……?」
「ち、違う! 違うんだ! 俺は、様子を窺っていただけで……! そうだ、こいつらだ!」
レオンは、引きずり出されると、狂ったように俺を指差した。
「こいつらが反逆者だ! 国王陛下に危害を加えようとしていた! 俺は陛下を守るために……!」
「「「…………」」」
白々しすぎる嘘。
その場にいた全員が、冷え切った目でレオンを見ていた。
正気に戻った国王が、魔物を見るような目で彼に尋ねた。
「……勇者レオン。私は、そなたを『魔王討伐の英雄』として、全幅の信頼を置いていたつもりだった。そなたが『聖剣』に選ばれた、唯一無二の存在だと」
「そ、そうです陛下! 俺こそが勇者! あのゴミ拾いとは違うんです!」
「では、聞くが」
国王の静かな声が、玉座の間に響き渡る。
「そなたが王都でパレードをしている間、エディたちはAランク魔獣を瞬殺し、昇格試験を突破したと聞く。なぜ、そなたはBランクダンジョンすら、まともに攻略できなくなっていたのだ?」
「そ、それは……! ポーションが足りなくて……!」
「スタンピードの際、そなたは後方で震えていたと聞く。なぜ、エディたちは民を守るため、最前線で戦っていたのだ?」
「あ、あれは……! 作戦だ! そう、作戦で!」
「そして、今。この国の頂点に巣食っていた『真の敵』ヴァレリウスを、エディたちが命を懸けて倒している間」
国王は、言葉を切った。
「そなたは、どこで何をしていた?」
「俺は……俺は…………」
レオンは、もはや何の言い訳も思い浮かばなかった。
彼の脳裏に浮かぶのは、「馬糞ダイブ」の屈辱と、テーブルの下で聞いた俺たちの戦闘音の「恐怖」だけだ。
「……もう、いい」
国王が、深くため息をついた。
「セシリア。そなたからも、何か言うことはあるか」
「はい」
セシリアが一歩前に出る。その瞳は、怒りではなく、深い憐れみをたたえてレオンを見ていた。
「陛下。私は、ヴァレリウス大司教の召喚に応じ、王都の教会へ向かいました。……ですが、それは罠でした」
「なに?」
「私は、大司教が『勇者』の名を使い、私腹を肥やし、国を乗っ取ろうとしている計画に、薄々気づき始めていたのです。……だから、ヴァレリウスは私を『聖女』から『異端者』に仕立て上げ、秘密裏に処分しようとしました。……エディさんたちに救われなければ、今頃私は、古代兵器の餌食になっていたでしょう」
国王が、苦渋に満ちた顔で目をつぶる。「……そうか。そなたも、犠牲者であったか」
「ですが」とセシリアは、今度はレオンを真っ直ぐに見据えた。
「レオン、あなたはそのヴァレリウスの甘言に乗り、彼が与える『名声』と『富』に溺れました。……そして何より、あなたたちのパーティーを陰で支え続けていたエディさんを、『ゴミ』と罵り、ダンジョンで追放した! 違いますか!?」
「ひっ……!」
レオンが、図星を突かれて息を呑む。
そうだ。あの日、聖女セシリアは教会に呼び出されて「不在」だった。
だが、レオンは、ガイルは、リリアは、その「良心」がいなくなった隙を狙うかのように、エディを切り捨てたのだ。
国王が、全てを理解した顔で、冷たく言い放った。
「……万死に値するな」
国王が、近衛騎士団長に命じた。
「そいつを捕らえろ。勇者の称号を剥奪の上、地下牢へ……」
「あ、待った」
俺は、その宣告を遮った。
「陛下。そいつの称号、わざわざ『剥奪』しなくてもいいですよ」
「……どういう意味だ?」
「だって、そいつが持ってる『勇者』って肩書きも、結局はヴァレリウスが与えた『メッキ』……つまり『ゴミ』でしょ?」
俺は、青ざめてへたり込むレオンの前に立った。
見下ろす俺の目は、ダンジョンで捨てられたあの日とは比べ物にならないほど、冷え切っていたはずだ。
「お前が持ってる『それ』、もういらないよな?」
『対象:レオン』
『拾得対象:【勇者の称号】、【聖剣の契約】、【光属性魔法LV7】』
『実行:概念拾得』
「あ…………あ…………?」
俺が右手をかざすと、レオンの体から、そして彼が腰に差していた「聖剣()」から、淡い光の粒子が抜け出し、俺の手に吸い込まれていった。
それは、彼が「勇者」であることの、最後の「証」だった。
「あ、ああ、あああぁぁぁぁぁっ!?」
レオンが、自分の体と剣を交互に見て、絶叫する。
力が、抜けていく。
自分が「特別」であるという、唯一無二のアイデンティティが、目の前の「ゴミ」に奪われていく。
「俺の……俺の力が……! 聖剣が……! やめろ、返せ! それは俺のモノだぁぁぁ!」
泣き叫び、俺に掴みかろうとするレオン。
だが、その腕は、あまりにも非力だった。
フェンが盾で軽く突き飛ばすだけで、レオンは無様に床を転がった。
「……もう、何も持ってないんだな、お前」
俺は、吸い取ったばかりの「光の力」を眺めた。
(……なるほどな。ヴァレリウスの【神聖魔法LV10】と比べると、こっちは随分と「薄っぺらい」力だ。……やっぱり、こいつも作られた英雄か)
俺は、その力を、ポイ、とゴミでも捨てるように虚空に放り投げた。
もう、俺には必要ない。
「……連れて行け」
国王が、冷たく言い放った。
騎士たちが、もはや「勇者」でも何でもなくなった、ただの金髪の青年を、両脇から引きずっていく。
「いやだ! いやだぁぁぁ! 俺は勇者だ! ゴミ拾いなんかにぃぃぃ!」
断末魔の叫びが、扉の向こうに消えていく。
……これで、本当の「終わり」だ。
俺を追放した者たちへの復讐は、今、ここに、完了した。
◇ ◇ ◇
数日後。
俺たちは、王城の玉座の間(綺麗に掃除された)に、再び呼び出されていた。
国王アルフォンス三世が、玉座から立ち上がり、俺たち四人の前で深々と頭を下げた。
「エディ殿、フェン殿、セシリア殿、リカルド殿。……この国の危機を救ってくれたこと、心より感謝申し上げる」
前代未聞の光景に、周囲の貴族たちが息を呑む。
国王は顔を上げ、宣言した。
「そなたたちには、望むだけの褒賞を与えよう。金か? 地位か? 望むなら、この国の爵位を与えてもいい」
破格の提案。
だが、俺は首を横に振った。
「あんたの国の爵位なんざ、興味ねえな。……だが、叶えてほしい『願い』が一つだけある」
「……申してみよ」
「俺たちに、『魔王討伐』の全権を委任してほしい」
国王が、目を見開いた。
「……本気か? ヴァレリウスやレオンは、『魔王討伐』を名目に権力を集めていた、ただの詐欺師だった。だが、魔王そのものは実在する。……この国が総力を挙げても、勝てるかどうか……」
「だから、俺たちが行くんだ」
俺は不敵に笑った。
「あんたたちが『総力』と呼んでるもんが、俺から見りゃ『ゴミ』の山にしか見えねえからな」
「……面白いことを言う」
国王は、隣に立つギルド総帥ガンドルフと目を合わせ、頷いた。
「よかろう。……だが、魔王城には、古代の大結界が張られている。それを解くには、大陸に散らばる『四つの神殿』を攻略し、四宝玉を集めねばならん。……それこそが、本来の『勇者』が歩むべき道だったのだ」
「神殿攻略、ね」
リカルドが、面倒くさそうに頭を掻いた。
「つまり、あれだろ? 厄介な罠と、クソみてえなボスが待ってる、古代の『ゴミ溜め』だろ?」
「その通りだ」
国王が笑う。
「最高の『ゴミ拾い』日和ではないか?」
「……ハッ。言ってくれるぜ」
俺は、仲間たちの顔を見回した。
フェンが、嬉しそうに尻尾を振っている。
「エディさんと一緒なら、地獄の果てでも!」
セシリアが、慈愛に満ちた笑みで頷く。
「それが、真に世界を救う道ならば。喜んでお供します」
リカルドが、やれやれと肩をすくめる。
「しゃーねえな。大将の『お宝(ガラクタ)集め』に付き合ってやるよ。酒代、ツケとけよ」
最高の仲間たちだ。
俺は、王都の遥か彼方、魔王城のある北の大地を見据えた。
「行くか。……世界一、派手な『大掃除』にな」
こうして。
偽りの勇者は失墜し、本物の英雄が、真の魔王討伐へと旅立った。
俺をゴミ扱いした奴らへの復讐は終わった。
だが、俺たちの伝説は、まだ始まったばかりだ。
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これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
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