【R18】Actually

うはっきゅう

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本編

破壊される信条

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 カシャッ。
 無機質なシャッター音が、静まり返ったスイートルームに響いた。

「……いい顔だ。さっきまでの威勢はどこ行ったんだ?」

 ソラは、片手に最新のスマートフォンを構え、ソファに押し倒されたチカを見下ろしていた。
 レンズの向こうにあるのは、アイドル「イグナイト」のセンターボーカルとして輝くチカの姿ではない。
 シャツの前を無理やりはだけさせられ、ベルトを緩められ、両手首を頭上で自身のネクタイによって拘束された、無惨な獲物の姿だ。

「……と、るな……っ」 
「記念撮影だっつったろ? ほら、こっち見ろよ」

 ソラはスマホを持ったまま、もう片方の手でチカの顎を強引に掴み、レンズの方へ向けさせた。
 画面に映る自分。
 恐怖と屈辱で歪み、瞳が潤んでいる。
 その情けない顔が、高画質の動画として記録されていく。

「……やめろ……消せ……っ!」
「暴れるな。ブレるだろ」

 ソラは、楽しそうにチカの腹部を膝で押さえつけると、空いた手で、ゆっくりとチカの素肌を這い始めた。
 冷たい指先。
 それが、鎖骨から胸、そして腹筋の溝をなぞるように下りていく。
 ただ触れるだけではない。まるで品定めをするように、あるいは実験動物の反応を確かめるように、時折爪を立て、皮膚を抓る。

「……ひっ……!」
「へえ。ここ、弱いのか」

 脇腹の薄い皮膚を爪で引っかかれ、チカの体がビクリと跳ねる。
 ソラは、その反応を見逃さなかった。

「トキは知ってんのかな? お前のここが、こんなに敏感だってこと」
「……あいつの、名前を……出すな……っ」
「出すよ。何度でもな」

 ソラは、スマホのレンズをチカの顔に近づけながら、囁くように言った。
「お前がここでこうしてんのは、全部あいつのためだろ? だったら、あいつのことを考えながら感じろよ。……それが『愛』ってやつだろ?」

 詭弁だ。
 だが、チカには反論する言葉も気力も奪われていた。
 ソラの手が、ズボンのファスナーを下ろす。
 金属が噛み合うジジッという音が、チカの心臓を冷たく鷲掴みにする。

「……や、やめ……」
「嫌がってる割には、どうなってんだろうな? 中身は」

 ソラの手が、下着の中に無遠慮に侵入した。
 直接、触れられる。
 最も無防備で、最も他人に触れられたくない場所。
 チカにとって、それはナイフで刺されるに等しい衝撃と嫌悪だった。

「―――ッ!!??」

 チカは、喉の奥で悲鳴を殺し、全身を硬直させた。
 他人の手。
 トキではない、粗雑で、悪意に満ちた手。
 それが、チカの自身を鷲掴みにし、質量を確かめるように弄り回す。

「……おやおや」

 ソラが、口の端を吊り上げて笑った。

「……元気じゃねえか」
「……ち、がう……っ!」
「何が違うんだ? こんなに硬くなってるぜ?」

 嘘だ。
 信じない。
 だが、ソラの手の中で、チカのそれは確かに熱を持ち、脈打っていた。
 恐怖。緊張。そして、与えられる摩擦への、純粋に生物的な反応。
 心がどれだけ拒絶しても、若い肉体は刺激に対して正直すぎた。

「……いやだ、はなせ……っ、さわるな……っ!」
「口ではそう言ってるけどな。……ほら、見てみろよ」

 ソラは、スマホのカメラを下に向けた。
 画面越しに、自分の恥部が弄ばれている光景が見える。
 ソラの指が動くたびに、ビクビクと反応してしまう自分の体。

「……みたく、ない……っ」
「見ろ。これが現実だ。お前は今、大嫌いな俺に触られて、感じてるんだよ」
「かんじて、ない……っ! ただの、生理現象……だ……!」
「生理現象ねえ。……じゃあ、どこまで耐えられるか、実験してみるか」

 ソラは、弄る速度を上げた。
 単調な愛撫ではない。
 指の腹で執拗に擦り、敏感な裏筋を爪で刺激する。
 快楽を与えようとする愛撫ではなく、神経を逆撫でし、強制的に反応を引き出そうとする、拷問のような手つき。

「……あっ、う……ッ!」
「声、我慢すんなよ。……イグナイトのメインボーカル様だろ? いい声で鳴けよ」
「……んぐ、っ、ぅぅ……!」

 チカは、必死で唇を噛み締め、声を押し殺した。
 ここで声を出したら、本当に負けだ。
 心を許したわけじゃない。
 これはただの反射だ。
 そう自分に言い聞かせ、天井の一点を睨みつける。
 トキの顔を思い出そうとする。
 あいつの、不器用で優しい手を。

(……助けて、トキ……)

 だが、現実にチカを支配しているのは、ソラの暴力的な指先だった。
 強弱のつかない、ただ刺激だけを追求した摩擦が、チカの理性を削り取っていく。
 熱い。
 汚いのに、気持ち悪いのに、下半身に血が集まり、頭が痺れてくる。

「……ほら、濡れてきたぜ」
 ソラが、指先に付着した先走りを、ネチャ、と音を立てて伸ばした。
「トキにも、こんなにすぐ垂らすのか? ……尻軽だなァ」
「……っ、ころす……!」
「殺す? 俺を? ……こんなに気持ちよくしてやってるのに?」

 ソラは、ズボンと下着を一気に引き剥がした。
 冷たい空気が、熱を持った下半身に触れる。
 完全な露呈。
 ソラは、剥き出しになったチカの股間を、スマホで接写し始めた。

「いい絵だ。……このままファンクラブ限定動画で配信してやりたいくらいだな」
「……っ、ぅ……」
「さあ、次はどうする? ……手じゃ、もう物足りないか?」

 ソラは、スマホをサイドテーブルに置き(録画状態のままだ)、チカの足の間に顔を埋めた。

「……ひッ!?」

 熱く、湿った感触が、先端を包み込んだ。
 口。
 ソラが、チカの自身を口に含んだのだ。

「……や、め……やめろ……ッ!!」

 チカは半狂乱になって腰を捻った。
 嫌だ。
 それだけは嫌だ。
 あいつの唾液が、自分の体につく。
 あいつの口内という、最も不潔で生々しい場所に、自分が飲み込まれる。
 排泄物を塗りたくられたような不快感がチカを襲った。

 だが、ソラはチカの太ももを強く押さえつけ、逃げ場を封じると、さらに深く吸い上げた。
 水音が、静かな部屋に響く。
 巧みだった。
 悔しいけれど、絶望的なほどに、ソラの舌使いは巧みだった。
 舌先で転がし、喉奥で締め付け、吸い上げる。

「……んグッ、あ……っ、……ぁ……!」

 拒絶の叫びが、いつの間にか、甘い喘ぎに変わろうとしていた。
 脳がバグを起こす。
 汚い。気持ち悪い。吐き気がする。
 なのに、腰が勝手に浮き上がり、快楽を貪ろうとする。

(……なんで……なんで……っ)

 トキ以外の男に、こんなことをされて。
 気持ちいいなんて、思うはずがない。
 思っちゃいけない。

「……んッ、……プハッ」

 ソラが、一度口を離した。
 銀色の糸が、チカの先端とソラの唇の間にかかる。
 その光景を見た瞬間、チカの羞恥心は限界を超えた。

「……はぁ、……はぁ……っ」
「……どうした? すげえビクビクしてるぞ」
 ソラは、ねっとりとした目でチカを見上げた。
「トキの尺八と、どっちが気持ちいい?」
「……し、ね……っ」
「答えないなら、やめない」

 再び、口が含まれる。
 今度は、さらに激しく、深く。
 まるで、チカの魂ごと吸い尽くそうとするかのように。

「……あ、あぁっ! ……ん、く、ぅぅ……ッ!」

 ダメだ。
 もう、耐えられない。
 脳髄が白く弾ける。
 理性が、生理的な快感の波に飲み込まれていく。
 チカの足の指が、ぎゅっと丸まり、シーツを掻きむしる。
 腰が跳ねる。
 ソラの頭を突き放そうとする手つきが、いつしか、快楽に耐えるようにその髪を掴んでいた。

「……う、う……っ!」

 チカの悲鳴じみた声。
 ソラは、喉を鳴らして笑うと、最後の一撃を加えた。
 強く吸い上げながら、指で根本を締め上げる。

「―――ッ!!!!」

 チカの視界が真っ白になった。
 体の中の熱いものが、一気に噴き出す。
 ソラの口の中に、自身の欲望を吐き出す屈辱と快感。
 その瞬間、チカの頭の中からは、トキのことも、イグナイトのことも、すべてが消し飛んでいた。
 ただ、獣のような快楽だけが、そこにあった。

 ハァ、ハァ、ハァ……。
 荒い呼吸だけが残る。
 チカは、虚脱状態で天井を見上げていた。
 目尻から、ツー、と涙が伝い落ちる。
 やってしまった。
 感じて、果ててしまった。
 この男の口の中で。

「……ごちそうさん」
 ソラが、口元を手の甲で拭いながら、チカの顔を覗き込んだ。
 その顔は、勝者の優越感に満ちていた。
「……たっぷり出たな。……美味かったぜ、チカ」
「……う、……ぅぅ……」
「泣くなよ。気持ちよかったんだろ?」

 ソラは、チカの頬に残る涙を舐め取った。
「これで、第一段階クリアだ。……お前はもう、俺で『イケる』身体になった」
 その宣告は、死刑判決よりも重く、チカの心に突き刺さった。
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