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5話 日常
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ジリジリジリッ
アラームで目が覚めるといつも通りスマホで時間を確認する。時刻は5時半だ。隣に寝ているリナを起こさないようにゆっくりと寝室を出る。
今日は少し早めにアラームをセットした。それは、リナのお留守番用のお昼を作るという仕事があるからだ。
リナはこの散らかった部屋を片付けてくれると宣言していたので俺も飛び切りのお弁当を作らなきゃな。
冷蔵庫を開け、残っている食材を確認する。
「おっ、なかなかあるな」
自炊はたまにするので、食材や調味料などはしっかりと揃っている。食材を取り出したら、不慣れな包丁捌きで肉や野菜を切っていく。
アスパラガスを豚肉で包んで焼いたり卵焼きを作ったりとブッサイクなタコさんウインナーなども弁当箱に詰め込んだ。
この時点で近くギリギリの時間になったので、まだ起きていないリナに置き手紙を書いて家を出た。
* * *
「ふわぁぁ」
ホームルーム前の教室は少し騒がしい。窓際の席に座る俺は、暖かい太陽の光を浴びながらあくびをひとつ。
「おっ成、夜更かしでもしたのか?」
学校の机にうなだれていた俺に横尾 一芽が話しかけてくる。こいつは俺の友達で、入学式の日の席が近かったことをきっかけに仲良くなった。
「ちょっとな」
「えっ?もしかして、女子とスマホでやり取りしてたのかっ?」
「なわけないだろ」
夜に美少女にひっつかれたから眠れなかったなんて言えるわけもないので、適当に話を逸らしておく。
一芽は目の前の席に座り、背もたれに両腕を置いて体を預けている。
「お前こそどうなんだよ、あいつとは進展あったのか?」
「全然だ。俺も今年中には彼女を作りたいよぉ」
「それはこっちもだ」
一芽はモテる!…はずなのだ。喋らなければ。
せっかく顔が整っているのに、チャラさが目立ってしまっている。クセの強い性格もが女子ウケが悪いのだ。
本人は彼女が欲しいと嘆いているが全くできる気配がない。
「なぁ成、放課後にファミレスよらないか?ほら、もうすぐ期末テストだろ?」
俺らには1週間後に期末テストという地獄のイベントが控えている。進学校であるこの神辺高校の定期テストの重要性は言うまでもないだろう。だから本当だったら二つ返事で返すところだが、家にはリナが待っている。
「すまん、今日は用事があってな」
「どうしたんだ?お前いつもだったら必ず行くだろ。お前っ、本格的に女が出来たな?」
「出来たら嬉しいがな」
どうしてこいつは勘がいいんだ!?正確ではないが惜しいところをついてくる。一芽は俺の表情を伺いながら、何か考えた笑みを浮かべる。
「じゃあ、いいよお前ん家で勉強しよう。安心しろ、邪魔はしねぇよ。もし、その用事ってやつが女子との共同作業なら諦めるが」
「それはちがうだろっ!」
「じゃ、本日お邪魔させてもらうぜっ!」
押し切られてしまった。絶対に一芽は俺が何か隠し事をしていると気がついているだろう。ごめんリナ、これは俺の責任だ。
_______________________
「んん…」
目を開けた私は、なぜか成のベッドの上にいる。そうだった、添い寝をあんなに簡単に断られたから無理やりでも隣で寝てやろうとここにきたんだった。残念ながら彼はもう寝ていて、それで私もそのまま寝落ちしてしまったのか。
「私、もしかしたら!?」
急にいやらしいことが頭を横切った。
見た目とは裏腹に、結構な紳士的な成のことだからそんなことはないだろうとそこまで心配はしないが、一応ベッドの匂いをチェックする。
「大丈夫そうね」
私は立ち上がりリビングへ向かう。成は学校と言っていたからもういないみたいね。
ソファに腰を下ろすとテーブルの上に小包が置かれている。その小包の下には1枚の紙が。その紙を開くと慌てた字でメッセージが書かれている。
『リナへ
お昼ご飯はこれを食べてください。帰りは夕方ごろです。朝ごはんはパンを食べてね。もし、掃除をするのならば掃除機を使うと早いと思うぞ。行ってきます。』
私はこの手紙で目の前の小包がお弁当だと理解する。成って、数日間の関係なのに布団やお弁当の用意をしてくれたりと、結構優しい面があるのよね。
成に『数日なら家に居ていい』と言われてから私はこの家にずっと居座れるにはどうすればいいのだろうと考えた。
そこで私が思いついた作戦…それは成を私に惚れさせることよ!!
私は成に近づいて、キュンキュンしてもらおうとしているのだが…あいつ私に興味なさすぎない!?買い物の時も、ちゃっかり腕を掴んでみたけれど、簡単に振り解かれてしまったわ!
このままだと本当に数日で追い出されてしまうわよ!
私は焦る。すると急に良い案が思い浮かぶ。
「そうだ!掃除よっ。成の高感度も上げれて、私がこの家にいるメリットも作れるし、私も少しは長生きできるはず!」
そう考えた私は、朝食パンを頬張ると早速掃除に取り掛かる。
手紙にあった掃除機という名の機械に触れる。手紙には親切に掃除機の使い方が書かれている。本当になんなんだか。
「まずは、この尻尾のようなものを壁の穴に刺して…真ん中の赤いボタンを押すのか」
ポチッ
ブオオオオン
「うわっ」
突然掃除機が暴れ出すので思わず驚いてしまった。とてもデジャブを感じる。
初めのうちは大変だったが、すぐに使い慣れてしまった。
不必要そうなプリントや雑誌などはゴミ袋に詰め込み、自慢の力でマンション外のゴミ捨て場まで持ち運ぶ。流石の私でもゴミ捨て場くらいは分かるわよ。
ゴミを捨てたら、掃除をして床に舞い落ちてきたほこりを雑巾で拭いて、どんどん部屋を綺麗にしていく。
「よいしょ!おおーっ」
部屋が輝いて見える。これなら、成も私を追い出したくはならないわねっ!
掃除も終わり、そろそろお腹が空いてくる時間になる。
「部屋も片付いたし、成のお弁当を食べようかなっ!」
お弁当をを開けると、色とりどりのバランスの良いおかずが並んでいる。成って意外と女子力高いんだ、片付けは置いといて。
早速、アスパラの肉巻きに舌鼓を打つ。
「うん、おいしいっ!」
このブッサイクなタコさんウインナーも面白い。
成の作ったお弁当は味付けの加減が上手に出来ていて、あっという間に完食してしまった。お弁当箱はその場で綺麗に洗って片付けた。
今日はお弁当を作らせちゃって成に負担を与えちゃったな。今度はしっかり手伝おう。
絶対にこれからもここで過ごすんだから。
もう二度とあんな風にはならないんだから。
【余談】
今回は主人公の親友の登場回でした!一芽君の話もしていこうと思うので一芽君をよろしくお願いします。
アラームで目が覚めるといつも通りスマホで時間を確認する。時刻は5時半だ。隣に寝ているリナを起こさないようにゆっくりと寝室を出る。
今日は少し早めにアラームをセットした。それは、リナのお留守番用のお昼を作るという仕事があるからだ。
リナはこの散らかった部屋を片付けてくれると宣言していたので俺も飛び切りのお弁当を作らなきゃな。
冷蔵庫を開け、残っている食材を確認する。
「おっ、なかなかあるな」
自炊はたまにするので、食材や調味料などはしっかりと揃っている。食材を取り出したら、不慣れな包丁捌きで肉や野菜を切っていく。
アスパラガスを豚肉で包んで焼いたり卵焼きを作ったりとブッサイクなタコさんウインナーなども弁当箱に詰め込んだ。
この時点で近くギリギリの時間になったので、まだ起きていないリナに置き手紙を書いて家を出た。
* * *
「ふわぁぁ」
ホームルーム前の教室は少し騒がしい。窓際の席に座る俺は、暖かい太陽の光を浴びながらあくびをひとつ。
「おっ成、夜更かしでもしたのか?」
学校の机にうなだれていた俺に横尾 一芽が話しかけてくる。こいつは俺の友達で、入学式の日の席が近かったことをきっかけに仲良くなった。
「ちょっとな」
「えっ?もしかして、女子とスマホでやり取りしてたのかっ?」
「なわけないだろ」
夜に美少女にひっつかれたから眠れなかったなんて言えるわけもないので、適当に話を逸らしておく。
一芽は目の前の席に座り、背もたれに両腕を置いて体を預けている。
「お前こそどうなんだよ、あいつとは進展あったのか?」
「全然だ。俺も今年中には彼女を作りたいよぉ」
「それはこっちもだ」
一芽はモテる!…はずなのだ。喋らなければ。
せっかく顔が整っているのに、チャラさが目立ってしまっている。クセの強い性格もが女子ウケが悪いのだ。
本人は彼女が欲しいと嘆いているが全くできる気配がない。
「なぁ成、放課後にファミレスよらないか?ほら、もうすぐ期末テストだろ?」
俺らには1週間後に期末テストという地獄のイベントが控えている。進学校であるこの神辺高校の定期テストの重要性は言うまでもないだろう。だから本当だったら二つ返事で返すところだが、家にはリナが待っている。
「すまん、今日は用事があってな」
「どうしたんだ?お前いつもだったら必ず行くだろ。お前っ、本格的に女が出来たな?」
「出来たら嬉しいがな」
どうしてこいつは勘がいいんだ!?正確ではないが惜しいところをついてくる。一芽は俺の表情を伺いながら、何か考えた笑みを浮かべる。
「じゃあ、いいよお前ん家で勉強しよう。安心しろ、邪魔はしねぇよ。もし、その用事ってやつが女子との共同作業なら諦めるが」
「それはちがうだろっ!」
「じゃ、本日お邪魔させてもらうぜっ!」
押し切られてしまった。絶対に一芽は俺が何か隠し事をしていると気がついているだろう。ごめんリナ、これは俺の責任だ。
_______________________
「んん…」
目を開けた私は、なぜか成のベッドの上にいる。そうだった、添い寝をあんなに簡単に断られたから無理やりでも隣で寝てやろうとここにきたんだった。残念ながら彼はもう寝ていて、それで私もそのまま寝落ちしてしまったのか。
「私、もしかしたら!?」
急にいやらしいことが頭を横切った。
見た目とは裏腹に、結構な紳士的な成のことだからそんなことはないだろうとそこまで心配はしないが、一応ベッドの匂いをチェックする。
「大丈夫そうね」
私は立ち上がりリビングへ向かう。成は学校と言っていたからもういないみたいね。
ソファに腰を下ろすとテーブルの上に小包が置かれている。その小包の下には1枚の紙が。その紙を開くと慌てた字でメッセージが書かれている。
『リナへ
お昼ご飯はこれを食べてください。帰りは夕方ごろです。朝ごはんはパンを食べてね。もし、掃除をするのならば掃除機を使うと早いと思うぞ。行ってきます。』
私はこの手紙で目の前の小包がお弁当だと理解する。成って、数日間の関係なのに布団やお弁当の用意をしてくれたりと、結構優しい面があるのよね。
成に『数日なら家に居ていい』と言われてから私はこの家にずっと居座れるにはどうすればいいのだろうと考えた。
そこで私が思いついた作戦…それは成を私に惚れさせることよ!!
私は成に近づいて、キュンキュンしてもらおうとしているのだが…あいつ私に興味なさすぎない!?買い物の時も、ちゃっかり腕を掴んでみたけれど、簡単に振り解かれてしまったわ!
このままだと本当に数日で追い出されてしまうわよ!
私は焦る。すると急に良い案が思い浮かぶ。
「そうだ!掃除よっ。成の高感度も上げれて、私がこの家にいるメリットも作れるし、私も少しは長生きできるはず!」
そう考えた私は、朝食パンを頬張ると早速掃除に取り掛かる。
手紙にあった掃除機という名の機械に触れる。手紙には親切に掃除機の使い方が書かれている。本当になんなんだか。
「まずは、この尻尾のようなものを壁の穴に刺して…真ん中の赤いボタンを押すのか」
ポチッ
ブオオオオン
「うわっ」
突然掃除機が暴れ出すので思わず驚いてしまった。とてもデジャブを感じる。
初めのうちは大変だったが、すぐに使い慣れてしまった。
不必要そうなプリントや雑誌などはゴミ袋に詰め込み、自慢の力でマンション外のゴミ捨て場まで持ち運ぶ。流石の私でもゴミ捨て場くらいは分かるわよ。
ゴミを捨てたら、掃除をして床に舞い落ちてきたほこりを雑巾で拭いて、どんどん部屋を綺麗にしていく。
「よいしょ!おおーっ」
部屋が輝いて見える。これなら、成も私を追い出したくはならないわねっ!
掃除も終わり、そろそろお腹が空いてくる時間になる。
「部屋も片付いたし、成のお弁当を食べようかなっ!」
お弁当をを開けると、色とりどりのバランスの良いおかずが並んでいる。成って意外と女子力高いんだ、片付けは置いといて。
早速、アスパラの肉巻きに舌鼓を打つ。
「うん、おいしいっ!」
このブッサイクなタコさんウインナーも面白い。
成の作ったお弁当は味付けの加減が上手に出来ていて、あっという間に完食してしまった。お弁当箱はその場で綺麗に洗って片付けた。
今日はお弁当を作らせちゃって成に負担を与えちゃったな。今度はしっかり手伝おう。
絶対にこれからもここで過ごすんだから。
もう二度とあんな風にはならないんだから。
【余談】
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