前世の記憶を思い出した皇子だけど皇帝なんて興味ねえんで魔法陣学究めます

当意即妙

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人間関係が広がるお年頃

年相応の行動

その後俺はロヴィーサ嬢とイェレの3人でアウクスティの花壇の世話をした。イェレは手馴れており、作業が倍早く終わった。

「……凄いですね。もう終わってしまいました」

「あったりまえだろ!俺はアティの手伝いでよくこの花壇の世話をしてたんだからな!」

イェレは自慢げに胸を張る。その姿が可愛らしくて俺は思わずクスクスと笑った。イェレは不機嫌そうに頬を膨らます。

「なんだよ大人ぶって笑いやがって!お前、俺と同い年だろ!」

「私は13歳ですよ?」

「……えっ?嘘!俺より2つも上!?」

イェレは大袈裟に驚く。なんだよどうせ俺は変装してもチビで童顔だよこんちくしょう。俺が2つ上、ってことはイェレはアウクスティと同い年か。

「じゃあエル兄って呼んだ方が良いか?」

「いえ、別にどっちでも良いですよ」

「じゃあアティはお前のことなんて呼んでた?」

「えっと……」

俺はどう答えようか迷った。何せアウクスティは俺のこと『兄上』と呼んでいる。流石に年上とは言え友達に『兄上』はないだろ。てかイェレには普通に『エル』って呼んで欲しいし。

「エル、ですね」

「そっか。なら俺もエルって呼ぶ!」

イェレは太陽のような笑顔でそう言う。俺みたいな見た目天使中身変人とは大違いの、年相応の輝かしい笑顔だ。嘘ついた罪悪感が……。

てか同世代の友達とこんな風に話すのって、前世ぶりだ。今世では周りに大人しかいないし、ロヴィーサ嬢はなんか友達って感じじゃないし。

「花壇の世話も終わったことだし、こっち来いよエル!他の子も紹介してやるから!」

「うわっ!ちょっ!急に引っ張らないでください!」

イェレはガシッと俺の手を掴んで引っ張った。俺は突然のことによろける。倒れかけた俺をヴァイナモが腰に手を回して受け止めてくれた。やだヴァイナモったらぐう紳士!

「大丈夫……かっ!?エル!」

「ありがとうございます、ヴァイ……兄!」

危ない!いつもの癖でヴァイナモって呼びかけた!変装魔法ありこの顔はヴァイ兄!デンエルの兄貴!ヴァイナモも敬語使いかけたよね2人して危なっかしいなおい!

「すまんエル!まさかこれくらいで転けるなんて思わなかったぜ!お前思った以上にひょろひょろだな!」

「失礼ですね少し気にしているのですよ?」

俺はムスッとむくれた。確かに天使な容姿いつもの姿も気に入ってるけど、やっぱり男の子としてチビでひょろひょろなのはちょっと……とは思う。

「……エルは今のままで十分可愛いと思うぞ」

「……そう言うことじゃないのですよヴァイ兄」

ヴァイナモは少しズレたフォローを入れてきた。確かに俺は天使で可愛い自分で言うなしけど!?思春期の男の子に『可愛い』はないんじゃないかなヴァイナモ??

……ちょっとだけ、ほんのちょびっとだけ嬉しかったけど。

少し赤い頬を隠すように手で覆っていると、イェレがヴァイナモを指差した。

「この人エルのお兄ちゃん?ヴァイ兄って言うの?」

「……ああ、俺はヴァイと言う。エルをよろしく頼む」

「おう!よろしくなヴァイ兄!」

イェレが手を差し伸べたので、ヴァイナモは戸惑いながらも握手した。やだイェレったらコミュ力高い!俺とは大違い!

「ヴァイ兄もサム兄も来いよ!みんな向こうにいるからさ!」

「いや、俺は……」

「はい~。行きましょう~。ヴァイも行きますよ~」

「うわっ、さ……サム兄さん押すな!」

イェレは握手した手でヴァイナモを引っ張り、もう片方の腕で俺を引っ張った。サムエルも便乗してヴァイナモをグイグイ押す。俺はふと傍にちょこんと立っているロヴィーサ嬢が目に入った。少し羨ましそうにこちらを見ている。

「ロヴィさんも一緒に行きましょう!」

「えっ!?わっ、私は……」

「そうだぜ!ロヴィ姉も一緒に遊ぶぞ!」

俺はロヴィーサ嬢に手を差し伸べた。ロヴィーサ嬢は戸惑いながらも、嬉しそうに微笑んでおずおずと俺の手を握り返した。

「……はい。行きます」

「そんじゃレッツゴー!」

イェレが走り出したので俺とロヴィーサ嬢はよろけながらも並んで走る。イェレが楽しそうに笑うもんだから、こっちも自然と笑顔になる。

……なんかこう言う年相応の行動って、新鮮だな。いつもだったら年相応って言っても演技だし。こう自然と子供みたいに走り回って笑うって、今までになかったな。

……楽しい。


* * *


その後俺たちは孤児院の子供たちといっぱい遊んだ。

普段図書館の小部屋に閉じこもって研究している俺には、彼らの外遊びはハードだった。割と広い庭を走り回るのってめっちゃしんどい。出不精の俺にこの遊びは早すぎた。

それはロヴィーサ嬢も同じだったらしく、直ぐにギブアップして木陰で休んでいた。まあロヴィーサ嬢は魔法を常に展開しとく必要があるから、余計に疲れるんだけどね。

ぜえぜえ言ってる俺とロヴィーサ嬢を見かねたのか、イェレは動き回る遊びをやめ、室内遊びに変えた。と言っても外でやるんだけどね。今、教会の方で結婚式をやってるから、その隣にある孤児院の建物で騒ぐことを禁止されているそうだ。

俺は木陰で物語の読み聞かせを始めた。皇子の教養として、ある程度の童話は覚えているからね。みんな目を輝かせて聞いてくれたから、なんだかこっちも嬉しくなった。前世の弟妹を思い出したら余計に……ね。懐かしく感じた。

ヴァイナモは活発少年たちとずっと鬼ごっこをして走り回っていた。ヴァイナモも活発少年たちも体力そこ知らずだな!?ちょっと休憩しないと倒れるんじゃない?大丈夫?

ヴァイナモは小さい子の面倒を見たことがないらしく初めは戸惑っていたけど、だんだんコツを掴んだのか最後には子供たちとめっちゃ仲良しになってた。ヴァイナモの友好関係が広がって主嬉しい誰目線やねん

サムエルはもちろん歌。遊び疲れた子供に子守歌を歌っていた。やだサムエルったら気が利く!と一瞬思ったけど、多分サムエルは自分が歌いたいから歌ってるだけだよね。顔見りゃわかる。めっちゃ生き生きしてるもん。

ロヴィーサ嬢は木陰ですやすや眠っている。肩を揺らして起こそうとしたけど、ビクともしない。多分魔力切れだろう。まあ普通に生活するのも6時間しか出来ないのに、あんな走り回ったらそりゃ直ぐに体力消耗するわな。俺はそっとロヴィーサ嬢にブランケットを掛けてあげた。


* * *


そんなこんなで帰る時間となった。迎えの馬車がやって来たロヴィーサ嬢は馬車に乗り込むと、こちらに振り返って手を振った。みんな一瞬キョトンとしたけど、直ぐに笑顔を咲かせて全力で手を振り返した。俺も小さく手を振り返す。

ロヴィーサ嬢の馬車が見えなくなった頃、俺はイェレたちの方を振り返った。

「では私たちもそろそろ帰りますね。今日はありがとうございました」

「おう!次はいつ来れる?」

「うーん……。少なくとも1ヶ月は先ですね」

「そんなに先なのかよ!?」

「すみません……」

イェレは残念そうに言うけど、俺はサルメライネン伯爵領に行かなきゃだしな……。ちょっと寂しい。

「……まっ、お前にも色々あるんだろ?なら無理強いはしないけどよ。絶対、また来いよ!」

「……はい。また会いましょう」

こちらの事情を察してくれたイェレが、笑顔で小指を立ててくる。俺は微笑みながら、その指に自分の小指を絡ませ、指切りげんまんをした。
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