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狩人たち
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鬱蒼とした森の中を必死に走り抜けていく。
履いていたヒールはとっくに脱げ、気に入っていたブラウスは破れて先ほどから止まらない鼻血で汚れている。
足の裏も傷まみれだろう。だが、気にしていられなかった。
「あっ!」
木の根に引っ掛かり盛大に地面に倒れる。
どうしてこうなった?
女はさらに増えた傷に苦しみながら、頭の中で考えていた。
昨日はいつも通りだった。いつも通り学校にいき、いつも通りダイナーでのアルバイトを終えたはず。
気づいたら森の中だった。
自分のほかに数人いたらしいが、見知った人物はおらずそれどころか人種もバラバラだった。
それでも何とか情報を集めようと集まりだしたとき、
目の前の男が倒れた。
物陰から撃たれたらしい。頭から血を流し、動かなくなった。
誰かがあげた悲鳴をきっかけに、茫然としていた自分たちは一斉にバラバラになり逃げだし今に至る。
あちこちから悲鳴や銃声が何度も聞こえてきた。
女は地面を這いずりながら嗚咽をもらす。
どうやら、転んだ拍子に足を挫いたらしい。手のひらを血で滲ませながら少しずつ前へ進んでいく。
その手を、黒い靴が踏みつける。
硬いプレートが入っている靴は、まるで卵の殻を潰すように女の手の骨を砕いた。
つんざくような悲鳴が辺りに響き渡ると同時に銃声が鳴り、女はこめかみから赤い液体を流しながら動かなくなった。
女の頭を撃ちぬいた男は、表情一つ変えず麻袋を広げ始め、人一人入りそうなそれに、女の遺体を詰めるとロープで括り引きずっていった。
シルバーブロンドを髪を無造作に一つに結び妙に肌の白い男は、ずるずると機械的に運んでいく。
麻袋から染み出た血が地面に模様を描き絨毯のようになっていた。
しばらく進むと森は開け、木製でできた柵で囲まれた一軒家と小さな小屋、そしてコンクリートの建物が現れた。
男はどうやら家の裏側らしい、柵の出入り口の前に行くと、つけられた鉄製のカギを開け重い麻袋を傷つけないように気を付けながら敷地内に入っていく。
どことなく牧歌的な雰囲気のある家とは違い、その場にふさわしくないほど無機質なその建物の近くまで運ぶと
一度ロープから手を放し、軽く背中を伸ばす。
そこまでの距離ではなかったがそこそこ重みのある荷物を運ぶには、細身の男には少しきつかったらしく軽く体を休ませていると、重い鉄製の扉がきしみながら開き始めた。
少し開いたその奥からのそりと人影が見えた。
人目を引くほど大柄な男だ。少しダボついた作業着にエプロンをつけているため、一見わかりづらいがめくられた腕は筋肉がついており、まるで岩石のような体つきをしていることがわかる。
大男は細身の男と麻袋を交互に見ると、無言で扉を前回にし中へと誘う。
室内には赤黒いシミのついたテーブルやバケツがあり、壁には大ぶりの鉈や包丁がぎっしりと並べられてあった。
また天井には、複数のフックがぶら下がっておりそれぞれに一人ずつ、さかさまにされた人間がつるされている。
明らかに生きていないそれらに対して気にも留めずに男たちは麻袋から冷たくなった女を出すと、他と同じように足をフックにかけ釣り上げた。
「残りのやつらは?」
大男は手慣れたしぐさで女の服を裂きながら、細身の男に尋ねる。
「あと一人…おそらくもう捕まる。体力が限界だろう」
細身の男は、近くの丸椅子を引き寄せると腰を掛け、胸ポケットから煙草を取り出しながら答えた。
あっという間に裸にされた女の首に、大ぶりの包丁が刺さる。
勢いよく血液が噴き出し下に置かれたバケツに溜まっていく。
ぴちゃぴちゃと音を立てて溜まっていくそれをぼんやり眺めながら、煙草を口にくわえ火をつけた。
「生け捕りのほうが良いんだけどな、今日は人数が多いから仕方ない…少しは手伝ってくれないか?」
放血が終わったものから、首を切り落とし皮をはいでいく。手慣れた様子でこなしていく大男は、悠々と煙草を吸っている男をちらりと見ながら話した。
「後でな。今日は粘るやつらが多くて疲れたんだよ」
うまそうに煙を吐き出しながらどことなくぼんやりした様子の男を見て、嘘ではないと判断したのか何も言わずに作業が進んでいく。
いつから始めたのかもう、思い出せないこの狩り。
罪悪感もとっくに麻痺してしまっていたか、もしくは
「ん?こいつ臓器が破れてるじゃないか。珍しいなそこまで殴るなんて」
「あー…なんか、ビンが割れてたみたいでそれで大暴れしたからつい…森を清掃しないとだめだな。ゴミがあるなんて」
そもそも、そんな心を持ち合わせてないのか。
また、銃声が響き渡る。
最後の一人も終わったらしい。
履いていたヒールはとっくに脱げ、気に入っていたブラウスは破れて先ほどから止まらない鼻血で汚れている。
足の裏も傷まみれだろう。だが、気にしていられなかった。
「あっ!」
木の根に引っ掛かり盛大に地面に倒れる。
どうしてこうなった?
女はさらに増えた傷に苦しみながら、頭の中で考えていた。
昨日はいつも通りだった。いつも通り学校にいき、いつも通りダイナーでのアルバイトを終えたはず。
気づいたら森の中だった。
自分のほかに数人いたらしいが、見知った人物はおらずそれどころか人種もバラバラだった。
それでも何とか情報を集めようと集まりだしたとき、
目の前の男が倒れた。
物陰から撃たれたらしい。頭から血を流し、動かなくなった。
誰かがあげた悲鳴をきっかけに、茫然としていた自分たちは一斉にバラバラになり逃げだし今に至る。
あちこちから悲鳴や銃声が何度も聞こえてきた。
女は地面を這いずりながら嗚咽をもらす。
どうやら、転んだ拍子に足を挫いたらしい。手のひらを血で滲ませながら少しずつ前へ進んでいく。
その手を、黒い靴が踏みつける。
硬いプレートが入っている靴は、まるで卵の殻を潰すように女の手の骨を砕いた。
つんざくような悲鳴が辺りに響き渡ると同時に銃声が鳴り、女はこめかみから赤い液体を流しながら動かなくなった。
女の頭を撃ちぬいた男は、表情一つ変えず麻袋を広げ始め、人一人入りそうなそれに、女の遺体を詰めるとロープで括り引きずっていった。
シルバーブロンドを髪を無造作に一つに結び妙に肌の白い男は、ずるずると機械的に運んでいく。
麻袋から染み出た血が地面に模様を描き絨毯のようになっていた。
しばらく進むと森は開け、木製でできた柵で囲まれた一軒家と小さな小屋、そしてコンクリートの建物が現れた。
男はどうやら家の裏側らしい、柵の出入り口の前に行くと、つけられた鉄製のカギを開け重い麻袋を傷つけないように気を付けながら敷地内に入っていく。
どことなく牧歌的な雰囲気のある家とは違い、その場にふさわしくないほど無機質なその建物の近くまで運ぶと
一度ロープから手を放し、軽く背中を伸ばす。
そこまでの距離ではなかったがそこそこ重みのある荷物を運ぶには、細身の男には少しきつかったらしく軽く体を休ませていると、重い鉄製の扉がきしみながら開き始めた。
少し開いたその奥からのそりと人影が見えた。
人目を引くほど大柄な男だ。少しダボついた作業着にエプロンをつけているため、一見わかりづらいがめくられた腕は筋肉がついており、まるで岩石のような体つきをしていることがわかる。
大男は細身の男と麻袋を交互に見ると、無言で扉を前回にし中へと誘う。
室内には赤黒いシミのついたテーブルやバケツがあり、壁には大ぶりの鉈や包丁がぎっしりと並べられてあった。
また天井には、複数のフックがぶら下がっておりそれぞれに一人ずつ、さかさまにされた人間がつるされている。
明らかに生きていないそれらに対して気にも留めずに男たちは麻袋から冷たくなった女を出すと、他と同じように足をフックにかけ釣り上げた。
「残りのやつらは?」
大男は手慣れたしぐさで女の服を裂きながら、細身の男に尋ねる。
「あと一人…おそらくもう捕まる。体力が限界だろう」
細身の男は、近くの丸椅子を引き寄せると腰を掛け、胸ポケットから煙草を取り出しながら答えた。
あっという間に裸にされた女の首に、大ぶりの包丁が刺さる。
勢いよく血液が噴き出し下に置かれたバケツに溜まっていく。
ぴちゃぴちゃと音を立てて溜まっていくそれをぼんやり眺めながら、煙草を口にくわえ火をつけた。
「生け捕りのほうが良いんだけどな、今日は人数が多いから仕方ない…少しは手伝ってくれないか?」
放血が終わったものから、首を切り落とし皮をはいでいく。手慣れた様子でこなしていく大男は、悠々と煙草を吸っている男をちらりと見ながら話した。
「後でな。今日は粘るやつらが多くて疲れたんだよ」
うまそうに煙を吐き出しながらどことなくぼんやりした様子の男を見て、嘘ではないと判断したのか何も言わずに作業が進んでいく。
いつから始めたのかもう、思い出せないこの狩り。
罪悪感もとっくに麻痺してしまっていたか、もしくは
「ん?こいつ臓器が破れてるじゃないか。珍しいなそこまで殴るなんて」
「あー…なんか、ビンが割れてたみたいでそれで大暴れしたからつい…森を清掃しないとだめだな。ゴミがあるなんて」
そもそも、そんな心を持ち合わせてないのか。
また、銃声が響き渡る。
最後の一人も終わったらしい。
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