まーぶる掌編集

田中マーブル(まーぶる)

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ある夜の告白(虫ダメな方はご遠慮ください)

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「殺したよ! 一人だよ、一人でやったんだよ! すごいでしょ!」

 ほろ酔いの彼女はご機嫌だ。

「なにバカな事言ってんだ。殺すなんて物騒なワードぶっ込んでんじゃねーよ」

 ピーナッツを彼女に向けて飛ばすと、見事なまでにオデコに当たった。

「いったーい。ホントだもん。やっつけてやったもん。女の子が一人で立ち向かったんだよ。褒めてくれても良いじゃん」

 彼女はむくれた顔をして缶ビールをあおる。

「で、本当はなにがあったんだ?」

 俺は二本目の缶ビールに手を掛けた。確か、キッチンの棚にとっておきがあったはずだ。彼女は苦手だって言ってたから一人で食べてやろう。変な事を言うバツだ。

「本当なんだって。殺したの。すっごい怖かったんだからね」

「それで?」

 ぶっきらぼうに答えつつ棚から缶詰めを出す。少し値が張った牡蠣の甘辛煮。爪楊枝と共に座卓に置く。

「本当に死んだが不安だったから、最後、思いっきり叩き潰したの」

 いやいや、叩き潰すとか絶対無理だから。女の子に出来るはずがない。

「ゴミ箱見てみたら良いよ」

「ゴミ箱?」

「まー君がビール買いに行ってた時に出たんだよ」

 はぁ。
 まだそんな事を……。

「感謝してよね。アイツを殺れる女の子なんていないんだから」

 まてよ?
 もしかして……。

「そのままゴミ箱に捨てたのか?」

「そうだよ」

 慌ててゴム手袋をしてゴミ箱を漁る。
 うわ! マジか。
 俺はソレをビニール袋に入れた。そしてゴミ箱を除菌シートで丁寧に拭く。

「手、ちゃんと洗ったか?」

「?」

「洗えよ」

「……分かった」

 ふと部屋の隅に目がいく。潰した跡が残っていた。ああ、やんなるな。黙ってそこもキレイに拭いた。ここに引っ越して一年半、初めて出たかもしれない。明日ホウ酸団子を買って来るか。

「洗って来たよ」

 彼女は俺の持ってきた缶ビールを開けた。

 今日は缶詰めを開けるのは止めておこう。

 ゴキブリの処理なんてしたら、とてもじゃないけど何も口にできないから。

終わり
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