【完結】最後の人類の僕と唯一のアンドロイドの彼女が出会ったら(瓦礫の街、小さな花束)

田中マーブル(まーぶる)

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第2章:謎の町にて

スコールがやってきて……

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 宴は続く。
 男女は踊り、別の男女が歌う。
 ご馳走は人々の胃袋に吸い込まれ、また新たなご馳走を呼ぶ。
 日は昇りきり、ゆっくりと高度を下げようとしていた。
 彼らの言葉は僕の耳を素通りしていく。

「ランランラン。救世主様」

「ルンルンルン。救世主様」

「私を外に連れ出して」

 と青い瞳の踊り子。

「私も外に連れ出して」

 とは赤い瞳の踊り子。

 その冷たい手が僕の腕に絡まる。
 背筋がゾクリと震えた。

「イキマショウ、救世主様」

「イキマショウ、救世主様」

 二人に挟まれ僕はどうする事もできないでいる。
 
「どこに?」

 絞り出した言葉はたったの三文字。

「外の世界です」

「救世主様」

 広場を見渡せる場所から下りる。
 中央には噴水があり、リズミカルに水が吹き出ていた。

「出口はあっち」

「出口はそっち」

 同じ方向を指差す二人。
 薄暗い路地。
 歌い、踊り、華やかで、賑やかな広場とは正反対。
 音も無く、飾り気の無い、静かな、薄暗い路地。

 誰も僕を見向きもしない。
 ただ、歌い、ただ、踊る。
 連れ去られようとする僕に誰も気付きはしない。

 救世主とは何なんだ。

 ふとポツポツと地面に点々が現れる。空はいつしか暗くなり、雨粒が僕の顔に当たった。
 すぐにどしゃ降りに変わり、人々は我先にと散り散りに去っていく。

 僕は結局二人の踊り子から逃げる事ができなかった。
 近くの建物に入る。

「救世主様大丈夫?」

「救世主様拭いてあげる」

「だ、大丈夫だから」

 どこからか持ってきたタオルを受け取り自分で濡れた体を拭いた。

「違う」

「違う」

 何が?

「救世主様違う」

「違う」

 何だって?

「救世主様、私たちと同じニンゲンのはず」

「でもあなた、私たちと違う」

 どこを見て言ってるのだろうか。
 彼女たちの視線を追う。
 視線は僕の、お腹辺りだ。

「あっちの女が救世主様か?」

「いや、女はニンゲンじゃない」

「じゃあ、救世主様はどこだ?」

「救世主様はどこだ?」

 僕は逃げ出す。
 上半身裸のままで。
 シャツを掴んで建物から出る。

「偽者!」

「偽者!」

「捕まえろ!」

 誰もいない道で声だけがする。
 僕は走る。
 雨の中を走る。
 教会へ帰るために。
 広場を突き抜け無我夢中で走り続けた。

 道は分からない。
 どうやって来たのかも、どちらへ向かえば良いのかも。
 それでも走った。
 逃げるために。
 感じた憎悪を振り払うように。

 そしてとうとう教会に着いたのだが、そこはすでに人で溢れていた。
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