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第2章:謎の町にて
宴の始まり
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「救世主様、こちらです」
着いた広場にはすでに多く人が集まっていた。若い男女が下着姿のような格好でクルクル回り踊る。
「救世主様、踊りましょう」
「救世主様、歌いましょう」
「救世主様、ご馳走が来ましたよ」
「救世主様、こちらへ」
言われるがままについていく。階段を上り広場全体を見渡せる高い位置に来た。遠く街の境までが見える。
僕が案内された席にはご馳走が並んでいた。
色とりどりの野菜が使われた料理の数々。写真でしか見た事のなかったフルーツたち。美味しそうな香りが漂っていた。
「これは?」
茶色い塊が僕の目に止まった。
外は茶色くて、断面から見える中側は赤っぽい色をしている。
これも食べ物なんだろうか。
「お肉ですよ」
「初めて見る」
「豚肉、牛肉、鶏肉、ラム肉。色々なお肉料理です」
肉を食べた記憶はほぼ無い。
いつも食べていたのはジャガイモと野草ばかりだったから。
「トンカツ、牛肉のステーキ、唐揚げに、角煮。こちらはラム肉串焼き」
「これ、全部食べて良いの?」
「もちろんです。救世主様」
初めてのお肉。
ああ、こんな美味しい物があるなんて。
甘辛いトンカツソース、サクサクの食感、肉汁の旨味、全てが初めての体験。
彩り豊かな野菜も食べてみる。
これもまた初めての食感、野菜の香り、甘味、程よい苦味、全てが新鮮な体験だった。
「救世主様のおかげでこんなにも豪華な料理が現れました。ありがとうございます」
何だ。
「救世主様、さあ、一緒に踊りましょう」
「救世主様、さあ、一緒に歌いましょう」
何かおかしい。
何だか気持ちが悪い。
「あら」
「どうしたの?」
「ほら、あそこ」
指差された方に目をやる。
遠く遠くこの街の出口の辺り。
壁に囲まれた町にある壊れてしまった門の跡。
「子供が」
確かに子供がいる。
ここに来て初めて見る子供だ。
「私たちは救世主様と違ってここを出る事はないのです。あの子供を見れば分かります」
そう言われて僕は子供をじっと見る。
街を出ようとする子供。
パッと一瞬で子供が消えた。
「え?」
「さあ、救世主様、宴を楽しみましょう」
「あれは?」
「街を出ようとするとああなるのです。きっと今頃処理されています。救世主様が気に病む事はありません。時々ある事なのです」
「つまり……そういう事なの?」
「あの子供は死んだのか、という事でしょうか。そうです。仕方ありません」
「仕方ないって。誰も止めないの?」
「街から出られない事は教えています。でもいるのです。出ようとする者が必ず」
「だからって止めないなんて」
「私の子供ではないですから。知らない誰かを止めるなんておかしな話です」
何かが変な気がした。
まだ理由が分からないけど、ただただ異様で気持ちが悪い。
「救世主様。救世主様が来てくださって我々は宴を開く事ができました。救世主様も楽しんでくださいませ」
僕の食欲が急激に落ちる。
食べ物を見る事すら拒否しそうになるくらいに。
広場ではずっと露出の高い衣装の男女が同じ表情のまま踊り続けている。
そう、ずっと踊り続けている。
「救世主様、踊りましょう」
「救世主様、歌いましょう」
笑顔が怖い。
何故か彼らの笑みが異様なほど不気味に感じた。
僕はついてきてしまった事を後悔し始めていた。
着いた広場にはすでに多く人が集まっていた。若い男女が下着姿のような格好でクルクル回り踊る。
「救世主様、踊りましょう」
「救世主様、歌いましょう」
「救世主様、ご馳走が来ましたよ」
「救世主様、こちらへ」
言われるがままについていく。階段を上り広場全体を見渡せる高い位置に来た。遠く街の境までが見える。
僕が案内された席にはご馳走が並んでいた。
色とりどりの野菜が使われた料理の数々。写真でしか見た事のなかったフルーツたち。美味しそうな香りが漂っていた。
「これは?」
茶色い塊が僕の目に止まった。
外は茶色くて、断面から見える中側は赤っぽい色をしている。
これも食べ物なんだろうか。
「お肉ですよ」
「初めて見る」
「豚肉、牛肉、鶏肉、ラム肉。色々なお肉料理です」
肉を食べた記憶はほぼ無い。
いつも食べていたのはジャガイモと野草ばかりだったから。
「トンカツ、牛肉のステーキ、唐揚げに、角煮。こちらはラム肉串焼き」
「これ、全部食べて良いの?」
「もちろんです。救世主様」
初めてのお肉。
ああ、こんな美味しい物があるなんて。
甘辛いトンカツソース、サクサクの食感、肉汁の旨味、全てが初めての体験。
彩り豊かな野菜も食べてみる。
これもまた初めての食感、野菜の香り、甘味、程よい苦味、全てが新鮮な体験だった。
「救世主様のおかげでこんなにも豪華な料理が現れました。ありがとうございます」
何だ。
「救世主様、さあ、一緒に踊りましょう」
「救世主様、さあ、一緒に歌いましょう」
何かおかしい。
何だか気持ちが悪い。
「あら」
「どうしたの?」
「ほら、あそこ」
指差された方に目をやる。
遠く遠くこの街の出口の辺り。
壁に囲まれた町にある壊れてしまった門の跡。
「子供が」
確かに子供がいる。
ここに来て初めて見る子供だ。
「私たちは救世主様と違ってここを出る事はないのです。あの子供を見れば分かります」
そう言われて僕は子供をじっと見る。
街を出ようとする子供。
パッと一瞬で子供が消えた。
「え?」
「さあ、救世主様、宴を楽しみましょう」
「あれは?」
「街を出ようとするとああなるのです。きっと今頃処理されています。救世主様が気に病む事はありません。時々ある事なのです」
「つまり……そういう事なの?」
「あの子供は死んだのか、という事でしょうか。そうです。仕方ありません」
「仕方ないって。誰も止めないの?」
「街から出られない事は教えています。でもいるのです。出ようとする者が必ず」
「だからって止めないなんて」
「私の子供ではないですから。知らない誰かを止めるなんておかしな話です」
何かが変な気がした。
まだ理由が分からないけど、ただただ異様で気持ちが悪い。
「救世主様。救世主様が来てくださって我々は宴を開く事ができました。救世主様も楽しんでくださいませ」
僕の食欲が急激に落ちる。
食べ物を見る事すら拒否しそうになるくらいに。
広場ではずっと露出の高い衣装の男女が同じ表情のまま踊り続けている。
そう、ずっと踊り続けている。
「救世主様、踊りましょう」
「救世主様、歌いましょう」
笑顔が怖い。
何故か彼らの笑みが異様なほど不気味に感じた。
僕はついてきてしまった事を後悔し始めていた。
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